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JAN/2013

知らぬ間に洗脳されている!? “メディア”が作る女性が働きにくい社会【連載:阿部志穂のワークライフバランス最前線vol.9】

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キャリアジャーナリスト・阿部志穂
キャリアジャーナリスト・阿部志穂の
ワークライフバランス最前線

働く女性がワークとライフの両方を充実させていくためには何が必要? そんな根源的なテーマに、キャリアジャーナリスト・阿部志穂が切り込みます! 社会や企業がプロデュースする制度や環境、そして働く女性自身の意識。世の中はどんどん変わっています。ワークライフバランスの“今”を知り、人生を楽しみながら長く働き続けていくためのヒントを探っていきましょう。

阿部 志穂(あべ しほ)
フリーランスライター。JCDA認定キャリア・ディベロップメント・アドバイザー(CDA)。女性誌、ビジネス誌を中心に、ライフキャリア、ワークライフバランス、就・転職、資格、生涯学習にまつわる記事を15年にわたって執筆。「豊かな生き方」「人生の転機」をテーマに著名人インタビューも多数手がける。最近気になっているキーワードは「ソーシャル」。自身のワークライフバランス達成度は「80点ぐらいなもんかしら?」
本音白書

Woman type読者のみなさん、明けましておめでとうございます。

まったりペースで更新を続けているこの連載も、おかげさまで無事2年目を迎えることができました(^-^)。

連載スタートから丸1年の間に、「ワークライフバランス(以下、WLB)」という言葉もずいぶんと浸透してきましたよね。
最近では、もう一歩踏み込んで、「ワークライフミックス」とか、「ワークライフシナジー」と表現する人が出てきたり、「そもそも、ワークとライフを天秤にかける発想はおかしいのでは?」といった議論が巻き起こったりと、日本のWLBも第2、第3の段階を迎えつつあるなと感じています。

そんな環境の変化も反映して、今年はWLBのニュース的なお話以外にも、働くこと全般のお話、知っているとますます仕事が楽しくなるようなお話もどんどん取り上げていこうと思っています。
今年も「ワークライフバランス最前線」をよろしくお願いします(^-^)!

ということで、2013年の1回目は、身近なテレビや雑誌についてのお話から。

仕事していても、していなくても、
「お母さんはご飯を作り続ける人」?

昨年末、私のFacebookのウォールに、とあるCMの映像が投稿され、ちょっとした議論を呼んだことがありました。

そのCMとは、「働くお母さんの1日」を追った某食品メーカーのもので、「毎日毎日ご飯を作ってくれるお母さんって、ホントに偉大だよね」という賞賛のメッセージを込めたものデス…と、そのメーカーはうたっていました。

ですが、私のウォールでのそのCMに対するコメントには、「違和感を感じる」「好意的には取れない」といったものが目立ったのです。

こうしたネガティブなコメントが集まった理由は、CMの以下のような内容からでした。

・ 妻と夫、子ども2人の4人家族の設定なのに、夫は3食1度も家族と食事をしていない。

・ 共働き設定のはずなのに、ほとんどすべての家事を妻がやっている(保育園に子どもを送るのも迎えに行くのも妻、お弁当を含む3食すべて妻が作成、買い物も妻、洗濯も妻。夫は朝の子どものお着替えの手伝いのみ、放映時間にして0.5秒)

・ その山のような家事と仕事を、妻は必死に、けれど笑顔を絶やさずやっている。

もしかすると、目にした人も多いかもしれないこのCM。

見ていない人も、こんな内容に対してどんな風に感じますか? やはり違和感がある? それとも、とくに何もおかしな印象は受けない?

阿部自身、このCMを初めて目にしたときは、「あら~、こんな映像を見て、『やっぱり育児しながら働くのって超大変じゃん!』『やっぱり男子は家事・育児に協力してくれないんだぁ』なんて感じる未婚女子が増えたら困っちゃうなぁ」と感じてしまいました。

このCMに限らず、テレビや雑誌などを注意して見ていると、“男女の役割固定感”に「ああ、言われてみれば!」と気づくこと、きっとたくさんあると思います。

たとえば、報道番組で政治や経済などのニュースを読み上げるのは男性で、女性キャスターはお天気や街の話題などを担当していることが多いのはナゼなの? 

あの育児長寿番組のタイトルは、なぜ「おかあさんといっしょ」なの? 「おとうさんといっしょ」じゃダメなの? 

広告に描かれるお母さんらしい登場人物はなぜいつもエプロン姿なの? スーツ姿で働いているお母さんの方が増えていると思うんだけど? とかとか。

こういった映像って、意識して見ていないと、なんとなく頭の中を通過してしまって、疑問を感じたり、憤ったり、感心したりということ、正直あんまりないですよね。

でも、何気なく目にしているものって、実は意外に潜在意識に強く焼き付くんです。そして、知らず知らずのうちにけっこうな影響を受けている。

この現象、わりと問題だなと阿部は思うのです。

何気なく見ている映像でも
実は、しっかり影響されてます

組織の中で女性がどんどん活躍し、昇進も当たり前の世界。

女性が子どもを産んでもダンナさんと家事・育児をばっちり分担してWLBを実現するのが当たり前の世界。

そういう世界がなかなかやってこないのは、こういったメディアからの刷り込みによって、実は、私たち女性の方も無意識に考えや行動を制限したり、過去の常識に自分を縛り付けたりしている部分もあるからなのでは……。

そう問われると、自信を持って「NO」とは言えない気がしてしまいませんか?

さて、このFacebookで議論が巻き起こったのとほぼ時を同じくして、非常にタイムリーかつ興味深いイベントが都内で行われました。
『日本のメディアにダイバーシティはあるのか?』と名打ったフォーラム。

発起人は、イクメンの普及に力を入れるNPO法人 ファザーリングジャパン、ファウンダーの安藤哲也さんと、前回もこのページにご登場いただいた、NPO法人 ダイバーシティコミュ代表理事の森林育代さんです。

本音白書
2012年12月6日(木)に開催された『日本のメディアにダイバーシティはあるのか?』主催者の安藤さん(左)と森林さん(右)。フォーラムには80名ほどが参加した

「男子から」「地域から」と、活動の対象は違えど、ダイバーシティー(多様性を認め合う価値観)を社会に浸透させることで、誰もが生きやすく、働きやすく、ハッピーな世の中を作っていくことを目標に活動を続けているお2人。

雑誌やテレビなど、メディアで表現され続けるジェンダー・バイアス(男女の役割について固定的な観念を持つこと)が色濃く出た情報の数々にはずっと違和感を感じていたそうで、このフォーラムは満を持しての開催となったようです。

1970年代から「ジェンダー(社会的、文化的な性差のありよう)とメディア」の研究を続けてこられた、和光大学名誉教授・井上輝子先生によるヒザを打ちまくる講演とか(70年代には「私作る人、僕食べる人」というキャッチコピーのCMなど、さすがにどうよ!と思うものがけっこうあったようです)、新聞記者や広告代理店のクリエイターなど、メディアを作る側の方たちによるパネルディスカッションなど盛りだくさんの内容。

フォーラム全体を通して感じたのは、私たちは、「夫は仕事で妻は家事・育児」という親世代からの価値観の影響を間違いなく受けているということ。

これは、作り手のメディア側の人間たちにしても、実は同じ。

性別による役割を押し付けたり、女性を男性より下に見ているといった悪意からでは決してなく、刷り込みによって無意識に「子どもがいる女性ならエプロンでしょう」「ご飯を作るのはお母さんでしょう」というビジュアルを作り出してしまう。そんな現象が、思っている以上に多く存在しているのかもしれません。メディアの側の人たちだって、親世代からの価値観を多分に受けて育ってきているわけですから。

本音白書
フォーラム第3部では、「コラージュによる育児雑誌の男女像分析」のグループワークを実施。育児雑誌の中の人物写真を切り取り、男女、大人・子どもなど、属性分けして模造紙に貼っていく。すると、それぞれの数量や色、写真の構図などにさまざまな差が。ジェンダー・バイアスのかかった情報が可視化されていく

だとしたら、ネットから情報をセレクトするときのように、テレビや雑誌などの情報に触れるときも、受け手となる私たち側がもっと「メディアリテラシー(情報を活用する能力)」を高めていく必要があるのかもしれません。

フォーラム主催者のお一人である安藤哲也さんは、「性差は生まれながらにあるのだから、男女が完全に平等になることはあり得ません。でも、だからといって支配したりされたりするのではなく、違いを認め合って、お互いが納得できるハッピーな関係を大切な人たちと作れるようになるためにも、無意識にメディアに刷り込まれた価値観に気づくことはとても大切ですよ」と話してくれました。

内閣府による調査で、「結婚したら、男性は家族のために働き続けなければいけないと思いますか?」との質問を投げかけたところ、「YES」と答えた男性は77.0%、対して女性は80.2%と、むしろ男性よりも多かったのだとか。

つまり、性別による役割を押し付けられているのは女性だけではないってこと。
家電や洗剤のCMで「家事は女性がするもの」と刷り込まれているのと同様、栄養ドリンクや金融商品の広告などで、男性側の役割も「一家の稼ぎ頭たれ」と刷り込まれ続けている部分も皆無とはいえませんよね。

その決めつけられた役割に、少しでも違和感を感じることがあるのなら、簡単に受け流したりせずに、そのモヤモヤの原因を探ってみるのも大切なことかもしれません。

ちなみに、ダイバーシティコミュの森林さんは、例のFacebookでの議論を目にした翌日には、CMを制作した企業に意見書を提出したといいます。
そして、1週間後にはその企業から「今後、十分留意します」との回答を受け取ったというのですから、小さな声でも上げていくことには意義があるんだと思えますよね。

意識してテレビや雑誌、広告などを見ていると、引っかかってくることが何かしらあるはずです。
その心の反応をムシせず、たとえば、一緒にテレビを見ている彼氏や友だちに「このCM、なーんか不快なんだよね。だって、こうでこうでこうじゃん?」と、感じたことを伝えるだけでも、「あ、言われてみれば確かにそうかも」と、気づいてくれる人が増えていくかもしれません。

とっても小さなことですが、そうやって一人ひとりが少しずつでもメディアリテラシーを高めていくことが、まわりまわって、自分自身の生きにくさや働きにくさを解消する手だての一部分になるのかなぁ、などと思う2013年の年頭なのでした。

みなさんは、このメディアにまつわるジェンダー問題、どう思います?
気になる番組やCM、広告や記事があればぜひ教えてくださいね。

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