【不妊専門医監修】タイミング法で妊娠しない、半年妊活しても授からないときは「早めに検査を受けてみて」

近年、晩婚化などの影響から、不妊に悩む夫婦が増えている。いざ妊活を始めてみたけれど、なかなか授からない。そんなときはどうすればいいのだろうか。
生殖医療、不妊治療を専門とする医師の齊藤英和さんに話を聞いた。
※この記事は2012年1月20日に公開し、2020年6月に内容を更新しています

国立成育医療研究センター
周産期・母性診療センター 副センター長
齊藤英和さん
山形大学医学部付属病院講師、山形大学医学部助教授を経て2002年より現職。専門は生殖医療、不妊治療。白河桃子さんとの共著に『妊活バイブル』(講談社+α新書)、『後悔しない「産む」×「働く」』(ポプラ社)など
不妊の定義とは
避妊をせずに夫婦生活を続けると、1年後には80%、2年後には90%のカップルで妊娠が成立すると言われている。
残る10%のカップルはその後も妊娠しにくく、2年経っても妊娠に至らないカップルを“不妊症”と定義していると齊藤先生は言う。
しかし、夫婦の年齢が高くなればなるほど、妊娠が成立する確率は下がってしまう。
「35歳以上の夫婦であれば、妊活を始めて3カ月~半年のタイミングで一度、不妊検査を受けてみることをオススメします」(齊藤先生)
20代の夫婦であっても、不妊検査は先延ばしにせず、妊活を半年程度続けても授からなければ「ぜひ検査を受けて」と齊藤先生は呼びかける。
不妊の三大原因は排卵、卵管、男性によるもの

不妊の原因は、大きく分けると三つある。
一つ目は「排卵にまつわるもの」で、二つ目は「卵管にまつわるもの」。そして三つ目が、「男性にまつわるもの」だ。これらは“不妊の三大因子”と呼ばれている。
しかし、原因が複数にわたる場合もあり、不妊検査を受けても原因が分からないカップルも2~3割いるという。

上記の表にまとめた不妊の要因(1)~(4)について、齊藤先生は次のように解説する。
(1)排卵因子
「卵子の成熟や排卵、黄体形成などがうまくいかないものをいいます。ホルモンバランスが悪いと月経の異常が起こりますが、ストレスや過度のダイエット、肥満などが原因になっています」(齊藤先生)
また脳下垂体から分泌されるプロラクチンという物質が多い場合、無月経になってしまうことも。
(2)卵管因子
「卵管は、精子と卵子が出会う通り道なので、左右の卵管が両方とも詰まっていると妊娠することができません。また卵管の周りに癒着がある場合も妨げになります」(齊藤先生)
原因としては、クラミジアなどの性感染症や子宮内膜症などが挙げられるという。
(3)子宮因子
「卵管で受精した受精卵は、子宮内膜に達し着床します。子宮筋腫があると、子宮の内側が変形したり、血流が奪われるので、受精卵の着床が妨げられ、不妊の原因になる場合があります」(齊藤先生)
また、子宮の奇形も、不妊や不育の原因になることがある。
(4)男性因子
「膣内に射精された精子は、受精の場所である卵管まで到達しなければなりません。妊娠するためには、十分な数の、活発に運動している精子が必要です」(齊藤先生)
精子の形成や成熟が阻害されていたり、射精が正常にできないと不妊の原因になってしまう。
スクリーニング検査を受け、異常があれば精密検査へ
病院で受ける不妊検査には、大きく分けて二つの検査がある。
不妊相談に訪れた全員が受けることになるのが、スクリーニング検査だ。そして、そこで何か異常が見つかった場合には、精密検査へと進むことになる。
スクリーニング検査の種類は、下記の表2の通りだ。

検査の内容や順番は医療機関によって異なるため、詳しくは病院で担当の医師に確認しよう。
疾患などの異常があれば治療へ。子どもを望む場合は、1日でも早い通院を

では、検査を受けて不妊が発覚した場合、何をするのだろうか。下記が、不妊症への主な治療・対処法だ。

「検査によって不妊症が認められた場合、子どもを望む人には治療を施していきます。治療法は、表にまとめたようなものがあり、不妊の原因によってさまざまです」
また、女性の年齢により妊娠率は大きく左右される。
たとえ妊娠したとしても、34歳頃を境に年齢があがるにつれて流産する割合が高くなり、40歳を超えると4割以上の確率で出産には至らないというデータもある。
「子どもを望む場合は、1日でも早く検査をして、早く治療を開始する必要があります」(齊藤先生)
下記の表が示すのは、不妊治療の段階と、その内容だ。

タイミング療法と人工授精が一般不妊治療で、体外受精と顕微授精は、ARTと呼ばれる生殖補助技術。右の欄に行くほど医療の介入度が高くなる。
「どの段階から治療を始めるかは、不妊の原因やご夫婦の価値観、女性の年齢などによるので一概には言えませんが、医療の介入度が高くなるほど、身体的・精神的、そして費用的にも負担が大きくなっていきます」(齊藤先生)
どの段階まで治療を進めていくか、まずは夫婦でよく話し合いを。医師に相談し、自分たちのライフプランに合わせた決断をしていこう。