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JUL/2012

恐怖のほっこり大王・蒼井優に学ぶ「逆張り人生」の落とし穴 【連載:ビバ!ばら色人生から学ばせて Vol.11】

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ランチタイムのお慰みコラム
ビバ!ばら色人生から学ばせて

慢性化する経済不況、崩壊する社会規範……か弱き女にゃなんとも生きづらいこの21世紀。しかしながら親も学校も、ましてや会社の先輩や上司なんてなおさら、この世をサバイブする方法を教えてはくれません。そう、嗅覚を張りめぐらせながら学んでいくしかないのです。そこで、昨今話題のあんな方やこんな方の生き方をお手本に、麗しき労働女子がより良き人生を送るための方法論を探っていきましょう。罵声や非難をものともしない図々しくもたくましき女たちの“生き方探訪”。


西澤千央(にしざわちひろ)
フリーランスライター。雑誌『散歩の達人』(交通新聞社)、『クイックジャパン』(太田出版)などで酒場を巡ったり芸人さんにしつこくしたり。Web『サイゾーウーマン』にて女性誌レビューも担当。世間に疎まれながら執筆中。


「逆張り」。相場用語で「相場のトレンドと反対の売買行動を取ること」の意。みんなが「コレが買いよ~」と浮かれている時に、「フフ甘いわね」と売れ線ではない銘柄に手を出すという手法です。今回の主役・蒼井優さんを見ていると、「この人はマジで逆張り人生だなぁ」と感心させられます。

世間ではまだまだ「森ガール」のイメージでしょうか、蒼井さん。ウェストのないワンピースを身にまとい、常にすっぴん。黒髪に蔦のかんむりを乗せ、古木にかけられたブランコに揺られている……もちろん裸足で。森ガールのイメージってこんな感じ?樹海では出会いたくないタイプですね。もちろん実際の蒼井さんは裸足で樹海をさまよってはおらず、どちらかと言えば芸能界という荒海を大漁旗かかげた漁船で鳥羽一兄さん口ずさみながらドドドド~と突き進んでいるお方。蒼井さん一流の「逆張り」漁で。

蒼井優
私が蒼井船長の「逆張り」漁を最初に目撃したのは、蒼井さん20歳、ちょうど『フラガール』を撮影していた時に密着されていた『情熱大陸』でした。久しぶりの休日だというのに、行き先はレンタルDVD店。蒼井の手にはズラズラと作品名が列挙されたリストが。『ファーゴ』『アニーホール』『ぼくの伯父さん』etc。「ハリウッド作品には興味ないの?」という取材陣に、蒼井はこう言い切る。「もっといろんなものを排除した映画が好きなんです……」逆張りとは言うまでもなく、メジャーへのアンチテーゼなわけで、「そこいらのおなごとワケちゃうよ!」というのを誇示するのに、こんなにお手軽な方法はございません。しかしながらあまりに古典的というかベタというか、要するに小っ恥ずかしい。そんな風潮の中、ベタofベタ「ダイハードとか観ないんで」をカマす蒼井さんにハートを射抜かれたのは言うまでもありません。

しかもこの回はこんなシビれるやり取りが全編にわたって繰り広げられており、りんごを丸かじりしながら歩く蒼井、マフラーに顔を半分うずめながらしゃべる蒼井、裸の大将みたいなズタ袋リュックを背負って「(好きな食べ物は)干し芋」と笑う蒼井、突然「いじめられた経験があって、よかった」みたいなこと語っちゃう蒼井……船を旋回旋回させながら結局どっちに向かっているのかさっぱり分からないという、恐ろしき逆張りの業を見せつけられたのでした。

蒼井さんの場合、「あれは若気の至りだったの……」とはならず、あれから6年経った現在も、逆張り漁船はフルスロットルで発進中です。先日は某女性誌の対談連載にて、同世代実力派女優・満島ひかりに「俳優は才能じゃない。個性。だから同世代の俳優さんたちをライバルとは思わない」とほっこりメンチ切ってましたよ。

自身がファンと語るチャットモンチーには「表現を通して、人生や人間性まで全部見透かされてしまう仕事であるところはミュージシャンも近いのかな」とか、元祖自然体お化け・小泉今日子には「ふたりとも小説好きだから、「もしも、文豪と恋したら?」なんて妄想話もよくしますよね。あ、太宰は今日子さんのものですけど(笑)」とか、自分大好き故、いつのまにやら対談相手を事故に巻き込むこともしばしば。

周りの友達が「タイタニックのディカプリオ超カッコいい!」と盛り上がる中、ただ寂れた街をおっさんがさまようアジア映画を観に行く、J-POPとかシラネ、アゴの割れた外人バンドしか聴かない……etc。筆者の小っ恥ずかしい「自称:違いの分かる女」時代を思い起こさせる人、それが蒼井優なのです。出来ることなら当時の自分の耳の穴かっぽじってGLAYの「however」(マジ名曲)聴かせてやりたいわ!

蒼井優

過度な逆張りはモノゴトの本質を見失わせるものね……と気づいたときはアナタ、肌はすっかり水を弾かなくなっています(実証済み)。蒼井優的人生は、観てる分には次は何言い出すかとワクワク楽しいものですが、真似たら地獄の1丁目。自意識の海に溺れます。

好きな映画、音楽、男etcで自分自身を語らせるのは、かえって貴女を枠にハメ、生きづらくさせるもの。つーか本人が思ってるほど、周りは自分を見てはいませんからねえ。

頑な逆張り女が越えるべき壁。それは「海猿とか好き」と言えるかどうかです。「海猿とか好き」女は、やれカメラワークが大仰だとかセリフ回しにリアリティがないとか、面倒なことを言いません。それどころか様々な要素を「マジ泣ける」の一言で処理。この乱暴なまでのシンプルさ!蒼井優的面倒くさ女(あら言っちゃった)の、永遠の課題ですな。

イラスト/村野千草(有限会社中野商店)

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