02
OCT/2018

はあちゅうが叩かれるのは“女を使わない”から? はあちゅう&鈴木涼美が語る「女」の呪縛

タグ:

「女なのに家事もできないのか」
「30歳を過ぎても結婚できない女は売れ残りだ」

あからさまに言われることはなくても、日常のふとした瞬間に、周りの言動から「女はこうあるべき」という考えが透けて見える。そんなモヤモヤした経験はないだろうか。

「女性差別だ」なんて大げさに聞こえるから、声高には言いにくい。でも、仕方ないと諦めて、怒りをなかったことにすることで、自分以外の誰かが傷つく未来につながってしまうかもしれない。

現代において女性が直面している差別やそれが起こる背景、そこで感じた「怒り」にどのように向き合っていくべきか。プライベートでも親交があるという、ブロガー・作家のはあちゅうさんと、作家・社会学者の鈴木涼美さんに伺った。

はあちゅう 鈴木涼美
はあちゅうさん(写真右)
ブロガー・作家。1986年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、カリスマ女子大生ブロガーとして活躍。電通、トレンダーズを経てフリーに。著書に『半径5メートルの野望』、『通りすがりのあなた』など。近著『「自分」を仕事にするためにまず始めること』『1泊2日で憧れを叶える! サク旅 ~国内編~』。
Twitter:@ha_chu ブログ:http://lineblog.me/ha_chu/

鈴木涼美さん(写真左)
作家、社会学者。1983年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学在学中にAVデビュー。東京大学大学院修士課程修了後、日本経済新聞社に5年半勤務した。著書に『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』など。近著『おじさんメモリアル』、『オンナの値段』。
Twitter:@suzumixxx

「自炊しないんですか?」「家事もできないの?」古い価値観は至るところにある

――お二人は、最近何か怒りを感じたことはありましたか?

はあちゅうさん(以下、はあちゅう):「怒り」まではいきませんでしたが、事実婚をしたときに彼が「あぁ、これで自分の姓は途絶えるんだ」と言ったんです。事実婚で子どもを産むと、母親の姓になるので。その時は少し違和感を感じました。

彼はそのあとすぐに「あ、でもお前が俺の戸籍に入ったら、伊藤姓が途絶えるのか」と気づいてくれたんですが、女性が男性の苗字になるのが当たり前のこと過ぎて、気づかない男性も多いとは思います。

鈴木さん(以下、鈴木):昔は男性が女性の家に入るのも珍しい話ではなかったんですけど、現代だと目立ちますよね。知り合いにも婿に入って苗字を変えた男性がいて、「何か事情があったのか」と話題になっていて。

はあちゅう:あとは、家事についても突っ込まれることは多いですね。私は『食べあるキング』という、食の楽しさを伝えるインフルエンサー集団に入っているんですが、外食の様子をアップすると、「自炊はしないんですか?」というコメントがよくきます。でも、男性のインフルエンサーのところには、そういうコメントはこないんですよ。

はあちゅう 鈴木涼美

鈴木:家事は女がやるものだ、という考えは強いかもしれないね。この間テレビで男性の芸人さんが家事代行サービスを頼んでいる話をしていたんですが、女性がもし同じことを言ったら「家事もできないのか」なんて言われるし。

はあちゅう:結婚に関しても、30歳を過ぎた独身女性は行き遅れ、売れ残り……なんて言われますが、男性の場合は「独身貴族」と言われる。事実婚を公表したかったのは、隠さないで堂々としていたい、という気持ちももちろんありました。でも、「アラサーの嫁き遅れ」と言われるのに疲れてしまった、というのもあるかもしれません。女性はこうあるべき、という古い価値観は、いたるところにまだあるんだと日々感じます。

女性差別に怒るのは、男性や社会への期待値が高いあらわれ

――たしかに、古い価値観をもとにツッコミを入れてくるような人は、現実世界にもネットにも、いまだにいますよね。

鈴木:昔は、口うるさい意見を言ってくるのって、姑とか祖母とか、身内でしたよね。その声は老害として無視して、同世代の中では好き勝手していてもよかった。でも、ネット上のよくわからない声が登場したことによって、前近代的な価値観が再燃している気がします。

女だから仕方ないと諦めてしまう人、古い価値観を押し付けられていることに気づかなかったりする女性も多い中で、はあちゅうは繊細に気付くよね。

はあちゅう 鈴木涼美

はあちゅう:男社会にいるからかな。電通は男性優位の社会だったし、Twitterのフォロワーも男性が6~7割くらい。

鈴木:私が6年弱勤めていた日経新聞社も男社会ではあったけど、女性の権利を主張して行動を起こしていたのは、40代半ばくらいの女性が多かったな。私の世代よりも下の人たちは、どうせわかってもらえないだろう、という諦めみたいなものがあったように思う。

はあちゅうは男の人とか社会に対して、「話せばわかる」っていう期待があるんだと思う。私は男性に対する期待値がすごく低いのね。どうせわかり合えないって気持ちがあるから、あまり本腰で話さないし、男友達もいない。だから、女性差別的な発言や扱いに対して、鈍感なところはある気がするな。

はあちゅう 鈴木涼美

はあちゅう:私はたぶん、男性たちとも対等でいたい、仲間に入りたい、わかり合いたい……っていう気持ちが強いんだろうね。この間、男友達のIT起業家たちと話しているときに、すごく楽しい場だったんだけど、切なくて泣きそうになったことがあって。それは、「私は女の子枠でここにいられるだけなんだ」って感じたから。

みんな結果を出して、社会に対して大きな価値を生み出している。同じ成果を出していない私がこの場にいられるのは女の子だからで、本当の意味でこの人たちの中にはいないなと思ったら、すごくつらくなってしまって。

鈴木:私は逆に、女の子枠は得だな、と思うタイプだった。ホステスの時は、有名な企業の社長の隣に、男の人と同じだけ頑張らなくても座ることができたから。でも、35歳になると、女の子枠では呼んでもらえなくなるんだよね。社会からつまはじきにされているような疎外感はすごくある。

ブランドが男の嫉妬心をあおる?「元セクシー女優」が男性の敵にならない理由

――はあちゅうさんは、ネット上でいわゆる「アンチ」の人たちから”怒り”を向けられることもありますよね。そんなにおかしなことを言っているわけではないのになぜ……と思うこともあるのですが。

はあちゅう 鈴木涼美

はあちゅう:アンチコメントをしてくるのは、男性の方が多いですね。根底には、「男社会に入ってくるな」「女が何を生意気なことを言っているんだ」という意識があるのを感じます。

例えば、『タイムバンク』という自分の時間を売ることができるサービスがあって、私の時間を買うと、チャットでキャリアや恋愛などの相談が受けられるようにしていたんです。それに対して「高級チャットレディ」「こんな高い金額をはあちゅうに使うなら、風俗に使った方がいい」というようなコメントがたくさんきました。

でもそのあとZOZOの田端さんもタイムバンクを始めていて、対面やチャットでのアドバイスが同じくらいの値段だったことに対しては、何の批判もなくて。私を批判してきた人たちも、男性には何も言わないんだなと思ったら、女性だから攻撃されてしまった、という部分もあるのかなと思いました。

鈴木:女性は女性に叩かれることが多いけど、はあちゅうはレアなケースだよね。男の人の嫉妬心をあおりやすいのかもしれない。「慶応」「電通」とか、わかりやすいブランドを持っているし。

あとは女を使ってないから、男の人からすると、自分たちと同じ土俵で戦っている敵だと感じるんじゃないかな。私の「元セクシー女優」という肩書きは、男の人にとっては性の対象だとみなされるから敵だとは思われない。男の人に対する発言だけ切り取ったら、私の方がはあちゅうよりよっぽどひどいこと言ってるんだけどね(笑)

ロリコン・素人好き・処女信仰の日本。キャリアや収入が上がるほど男ウケは悪くなる

――差別的な発言をしたり、女性を敵だとみなして攻撃したりする男性というのは、どういう心理なんでしょうね。

はあちゅう 鈴木涼美
鈴木:夜の世界を見てきて思うのは、日本は世界でも類をみないロリコン・素人好き・処女信仰のある国だな、ということ。日本の性風俗産業は、キャリアを積めば積むほど値段が下がる職業なんです。風俗であれば、初出勤の子の一本目の値段が一番高くて、AV女優も基本的にはデビュー作が一番ギャラが高い。海外の人に言うと、驚かれます。

性風俗産業に限らず、今の日本社会は学歴やキャリア、収入が高くなればなるほど、男ウケが悪くなる、という構図になっている。この状況を見ていると、男性は「自分が上に立てる」と思える女性じゃないと安心できないのかな、と思います。本来は、相手に弱さや未熟さを求めるのではなくて、自分が実力をつける方向にいくべきだとは思いますけどね。

はあちゅう:少し前に、駅でわざとぶつかりながら歩く男性の動画がTwitterで話題になって、ニュースにも取り上げられましたよね。あれは、自分よりも弱そうな女性だけを狙ってやっているみたいなんです。

私も実際にぶつかられたことがあって、なんでぶつかってくるんだろう、おかしな人がいるなと思っていたんです。でもそのニュースを見て、こんなところにも女性を下に見る思想があるんだ、と唖然として……。あまりにも根が深い。これはどうしたらなくなるんだろう、もう手のつけようもないのでは……と感じてしまいました。


はあちゅうさんと鈴木さん、それぞれの経験の中から、世の中に根深く存在する女性差別がうかがえた。後編では、こんな世の中に対して女性はどんな行動を取っていくべきなのか、お二人とともに考えていきたい。

■後編も読む
>>【はあちゅう×鈴木涼美】「怒るのに疲れた」でも諦めたら“絶望した女と勘違いしたままの男”の構図は変わらない

取材・文/中村英里 撮影/赤松洋太 編集・構成/天野夏海

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Woman typeの最新情報をお届けします

あなたにオススメの記事

「あなたの我慢は、誰も幸せにしない」北欧女子オーサが語るスウ...
なぜ、スウェーデン人々は「幸せ」を実感しながら生きられるのだろう。エッセイ漫画『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』著...

【はあちゅう×村上萌対談:前編】「自分らしく働く」って何だ!...
「ずっと背伸びをしていた」と、20代を振り返るはあちゅうさんと村上さん。30代を前にようやく踵を下ろし、地面に足をつけて...

【はあちゅう×村上萌対談:後編】「私らしい恋愛・結婚」につい...
「ずっと背伸びをしていた」と、20代を振り返るはあちゅうさんと村上さん。30代を前にようやく踵を下ろし、地面に足をつけて...

【はあちゅう×鈴木涼美】「怒るのに疲れた」でも諦めたら“絶望...
現代において女性が直面している差別やそれが起こる背景、そこで感じた「怒り」にどのように向き合っていくべきか。プライベート...

あなたにオススメの企業

オススメ求人特集

育児と両立可能な会社

憧れの上司と働く!女性管理職がいる会社

インセンティブ充実!プチリッチな生活を手に入れる

プライベートも充実!年間休日120日以上の求人

未経験でも安心!ノルマが厳しくない営業求人