震え、焦り、頭真っ白…人前で話すのが苦手な人向け「緊張撃退の裏技」を演技指導のプロが解説
朝礼や会議で発言をしなければならない時、ドキドキして声が震えてしまう。転職活動の面接で、焦り過ぎてうまく言葉が出てこない……。
人の前で話すときに緊張してしまうのは、「体質だから仕方ない」と諦めている女性も多いはずだ。

そんな緊張体質の人にお勧めしたいのが、「伊藤式・緊張撃退メソッド」だ。
「このメソッドを活用して、これまで3万人もの俳優や、俳優志望者の緊張を取ることに成功してきました」
そう語るのは、演技トレーナーの伊藤丈恭さん。彼はこれまで20年以上にわたり、俳優や声優の演技指導と共に、彼らの職業病とも言える“本番前の緊張”を和らげるための方法を指導してきたという。
そこで今回は伊藤さんに、俳優・声優たちが本番前に密かに実践しているという「緊張撃退法」について、具体的な方法を教えてもらった。

伊藤丈恭(いとう・たけやす)
演技トレーナー。1967年生まれ。大阪出身。 19歳より、故吉沢京夫より演劇のスタニスラフスキー:システムやメソッド演技を学ぶ。吉本興業沖縄ラフ&ピース専門学校講師。メンサ会員。現在、アイゼ演技ワークショップを東京近郊で開講中。 俳優や声優が、緊張せずハイパフォーマンスを発揮するための方法を指導している
※この記事は2021年11月17日に更新しています
人はなぜ緊張する?緊張のメカニズム
「緊張」とは、医学的に、脳内ホルモンの一種であるノルアドレナリンが過剰に分泌され、自律神経のバランスが崩れてしまった状態のことをいう。
その結果、心拍数が上がる、ドキドキする、手足や声が震える、冷や汗が出る、顔が赤くなるなどのさまざまな症状を引き起こすのだ。
「心を落ち着かせようとして、自力でメンタルを操作しようとしても、絶対にうまくいきません。緊張を和らげるには、何も考えずに体を動かし、“別の自分”になってしまえばいいのです」(伊藤さん)
例えば、「気分が落ち込んで下を向いているときに、鼻歌まじりに上を向いて歩いてみたら、なんとなく気持ちが軽くなった」というような経験はないだろうか?
「考えるよりも先に行動をすることで、心が勝手にその動きや言葉の示す状態に誘導されるのです。伊藤式・緊張撃退メソッドは、この原理を活用して緊張をほぐします」(伊藤さん)

伊藤式・緊張撃退メソッドを、「緊張イベント」に向かう当日の朝と直前に行うことで、“緊張していない自分”に気持ちを切り替えることができるというのだ。では、具体的な方法を見ていこう。
緊張イベント当日、家を出る前に!自宅で行う緊張撃退メソッド
【1】笑い方7変化(2分)
今までにやったことがないような笑い方をしよう。体と心がほぐれ、楽しくなり、緊張がとれていく。
鏡の前で顔をゆがめたり、音質やトーン、スピード等を変えながら、「ふぇっふぇっふぇっふげぇっ」「フォッフォッフォッフォッ!」などと大声で笑う。
じっとせず、その笑い方にあわせて体を動かしたり、手を叩いたりすること。
【2】ジブリッシュダンス(2分)
ジブリッシュとは、めちゃくちゃ言葉のこと。ジブリッシュで無理やりにでも楽しい状態を作りだし、緊張しやすい自分を壊そう。
意味も設定も感情も何も考えずに、「シュビドゥバ ドゥバラ~ララルラレ」など、なんちゃって外国語のようなめちゃくちゃ言葉でしゃべってみよう。
踊るようなふりを交えて行うと、さらに効果的。
【3】悪役レスラー登場(1分)
悪役レスラーになりきって花道を歩くふりをし、思いっきり毒を履いて悪態をつくことで、役に入り込み緊張をとろう。
猛獣が人間になったような動きをしたり、チカラこぶをつくったり、肩で大げさに風を切ったり、周囲をにらみつけるようにしてのっしのっしとゆっくり入場するふりをする。
普段の声ではなく、ダミ声で。
緊張イベント直前に!現場・現場近くで行う緊張撃退メソッド
【1】その場ダッシュ(20秒)
現場でのシメとして、その場で駆け足をしているつもりでモモ上げダッシュをしよう。身体的疲労で、心が緊張に向かわないように。
近くの公園でも、人通りの少ない階段や廊下でも、その場で自由に駆け回っているふりをする。疲れて息が上がるくらいに行うこと。
【2】本番直前の4つのお守り(緊急用)
現場に着いたとたんに頭に血が上ってわけがわからなくなった時のための緊急時の対処法。いずれも体に意識を持っていくことで、心に興奮がいかないようにするのが狙いだ。
「手あげさげ」
ヒジを曲げて両腕を体の前に出し、両腕に意識を持っていく。ゆっくり呼吸しながら、両腕をゆっくり上下させる。両腕を上下に動かすスピードは1秒に1センチくらい。1分行えば心が落ち着いてくる。
「グッ・パー」
全身(顔や手足の指も)にグッと思いっきり力を入れて、パッと抜く。5回行う。
「肩ストン」
肩を思いっきり上げて、ストンと落とす。5回行う。
「強い呼吸」
鼻から強く息を吸って(2秒)、2秒止め、口から一気に吐く。吐くときは地響きのような音を立てるイメージ。呼吸に集中することで緊張から意識をそらすことができる。本番前まで続けよう。
本番前の緊張のせいでいつもうまくいかない…と悩むあなたは、さっそくこの「伊藤式・緊張撃退メソッド」を試してみてはいかがだろうか。
慣れるまでは少し恥ずかしく感じてしまうかもしれないが、“別の自分”に切り替えるコツを掴めば、人前での発表や面接のシーンでもきっとうまくいくはずだ。

【書籍情報】
人前で変に緊張しなくなる すごい方法
なぜ俳優は舞台でテンパらないのか。演技理論に基づいて一般向けに考案した、たった5分でできる緊張撃退法を紹介する