自分の体のこと・妊娠のこと・正しく知っていますか? 【女性のための、ヘルスリテラシーの高め方】
長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『Mentor For』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
皆さんこんにちは!『Mentor For』公式メンター・株式会社ライフサカス代表の西部沙緒里です。
連載最終回の今回は、アラサー・アラフォー女性が未来の逆境や想定外に備えるための「ライフプラン」や「ヘルス・リテラシー」の重要性、高め方についてです。
3回の連載を通じ、逆境、ネガティブな出来事からの「転機」の導き方について扱ってきましたが、今回のテーマは、そうしたことにこれから直面する全ての女性たちが、マストで知っておくべき基礎知識です。
ヘルス・リテラシーを高めよう
前回も書いた通り、私たちが順風満帆な未来を望んでも、現実には、ライフステージの変化や女性ホルモンの影響などによる、心身不調・メンタルダウン・不妊……といった出来事に翻弄されます。個人差はあれ、避けて通れないことなのです。
また、未来の想定外は完全には予知できません。しかしながら、自分の体を知り最低限の知識を得ておけば、衝撃を最小に抑えられますし、納得して人生を選び取れる可能性が高くなります。
この知識が、「ヘルス・リテラシー」=「自分の体を正しく知り、時々に必要な健康情報を手に入れ、活用できる能力」です。女性にとっては最大の自己防衛であり、ライフデザインをする上で欠かせないスキルの一つ、と言えます。
しかし、日本人のヘルス・リテラシーは、決して高いとは言えない状況です。先進国の男女に「妊娠」の知識を聞いた国際比較研究で、日本人女性の正答率は、最下位クラスでした。女性の平均初婚年齢が30歳近い日本で、年齢とともに妊孕力(妊娠力)が低下することが、まだ十分に知られていない可能性があります。
これは妊娠・不妊に限ったことではなく、婦人科検診やクリニック自体の日常的な受診率も、他の先進国と比べ、日本女性は驚くほど低い現状があります。
では、ヘルス・リテラシーを、私たちはどうすれば高めることができるのでしょうか?
ここで、3つのポイントをお伝えしていきます。
1、「エビデンス」と「ナラティブ」で“目利き”
エビデンスとナラティブ、両者は現代医学において、臨床に大切な両輪と言われます。前者は医学的根拠、数値的データのこと。後者は体験や闘病記など、多様かつ個別な声のことを指します。私たち一般人においても、心身や健康に関わる情報は片方に極端に偏らず、この両面から精査・活用することで、目利きの力が磨かれていくはずです。
2、身近な専門家(かかりつけ医等)を味方に
日常から「医療的対話」に慣れることで、将来当事者になる日に皆さんを助けることになる質問力や、意思決定力の土台を鍛えることにつながります。例えば、信頼できる「婦人科のかかりつけ医」を持っておくというのも、すぐに実践できる一歩かもしれません。
3、健康づくりを個人だけに閉じない
最後に、家族・友人・コミュニティ単位など、健康づくりに他者を巻き込む、一緒に考えるということです。 二人以上でプロセスを共有し、健康習慣のアクションをすることが単独より効果的であることは、調査研究でも実証されています。
ぜひ皆さん、できる範囲で実践してみてくださいね。
人生の“仮プラン”を描いてみよう
最後にもう一つ、「ライフプラン」のことを書きたいと思います。
「何歳までにこうなりたい」という未来予想図からの逆算で、どんな仕事をし、どこに住み、貯金はいくらで、いつパートナーを持ち、子どもはいる/いない、作るなら何人……という、キャリアプランも含めた人生設計のことです。
働く女性が“仮プラン”を描いてみることは、とても大切だと思います。なぜなら、将来を計画することで、キャリア構築の中で産みどきをどうするか、という視点も含め、人生に自覚的になるきっかけをつくれるからです。
ただし、この際にお伝えしたいことがあります。
一度理想として描いた未来を、万一の状況に応じて「変えていい」というご自身への寛容さを、大切にしていてほしいと思うのです。もちろん、運よくプラン通りに進むこともあるでしょう。しかしほとんどの場合、現実は想定外の連続です。
かつそこに女性特有の心身の問題が加わると、私が連載初回から書いてきた自身の乳がん・不妊治療・高齢妊娠・高齢出産……という一連の経験の通り、いよいよ翻弄され、ままならないことの極みになります。
5.5組に1組のカップルが「不妊」に直面していると言われる現代、WEBメディア『UMU』で紹介してきた不妊、産む、産まないにまつわる葛藤を経験した幾多の女性たちのように、生殖(妊活)の問題も、その一つと言えます。
生殖心理学の専門用語で、「生殖物語」というワードがあります。「~歳までに子どもが2人いて、上が女の子で下が男の子で……」というように、もともと人には「自分がつくる家族ってこういうもの」というイメージが備わっている、という考え方です。
この物語は、おままごとでお母さん役をしていたくらいの幼少期から無意識下に形成されるものと言われ、本来、現実の人生とは違いますし、あなた自身の価値とは何ら関係がありません。しかしながら、その通りにいかない状況が訪れると、突如として価値観や行動ごと支配し、当人を苦悩の淵に陥れてしまうことさえあるのです。
それほどのパワフルな力を持つ存在が、自分の中に眠っていることを知り、その上で、当初の理想と違う道を歩むことになっても「私はどう生き、どう働きたいか」を持ち続け、かつ、柔軟にそれを“変え続けて”ください。
その時々の状況でご自身が最善と思える選択をしたなら、あとは胸を張って、進んでいただければと思います。なぜなら、現実の、今を生きるあなたの人生が一番大切。この事実は何があろうと、決して揺らぐことはありません。
最後までお読みくださりありがとうございました!
『後輩たちへ』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/work/junior/をクリック