30
OCT/2020

コロナ自粛明けの不調に悩まされる人が増加傾向。働く女性が心身の健康を保つには?【医師監修】

今年3月から突然始まったコロナ禍の自粛生活。働き方や生活様式が変わったことをきっかけに、疲れやすくなったり、落ち込みやすくなったり、頭痛や腰痛がひどくなったり「何となく体調が悪い」日々を送っている人もいるのでは?

実際、産業医としてさまざまな企業の従業員をサポートしてきた矢島新子先生は、「自粛期間が明けて3カ月が経った今、心身の不調を訴える人が増えています」と話します。

不調を訴える人が増えているのはなぜ? 今注意すべきコロナ禍ならではの心身の不調とは? 詳しくお話を聞いてみました。

睡眠リズムが崩れてメンタルダウン

編集部

緊急事態宣言が解除され3カ月が過ぎました。今、どのような不調を訴える人が多いのでしょうか?

矢島先生

実は、緊急事態宣言中よりも、自粛期間が明けてしばらく経った今の方が、心身の不調を訴える人が増えています

特に、4~5月に在宅勤務をしていた人たちからの相談が多いです。例えば、20~30代の方だと、元気が出ない、疲れやすい、集中できない、頭痛や腰痛がひどい、眠れない、寝過ぎてしまうなどの症状を訴える方がほとんど。

編集部

なぜそうした症状を訴える方が増えているのでしょう?

矢島先生

主な原因は、「睡眠覚醒リズム障害」です。

在宅勤務や外出自粛で外に出なくなり、朝日を浴びない暮らしを送っていた人が多くいます。本来、人間の脳の覚醒リズムは25時間なんですが、朝日を浴びることによって、そのリズムを24時間に補正しているのをご存知でしょうか?

矢島先生

決まった時間に朝日を浴び、脳が「朝」を認識し、その12時間後に眠くなる…これが基本のリズム。逆に、朝日を浴びない暮らしをしばらく送っていると、脳の覚醒リズムが社会生活とどんどんずれていく。そしてこれが、うつ病などへとつながっていきます。

「コロナ自粛」明けの不調に悩まされる人が増加傾向
編集部

睡眠のリズムがずれることにより、メンタルダウンしやすくなると。

矢島先生

そうです。加えて、日の光を浴びなくなると脳内の神経伝達物質であるセロトニンや、睡眠・覚醒を調節するホルモンであるメラトニンが産生されなくなっていきますから、やはりうつを招きやすくなります。

編集部

お話の冒頭で、自粛期間中より、今の方が不調を訴える人が多いというお話がありました。それはなぜなのでしょうか?

矢島先生

人間の体はすごく賢くて、ピンチの時ってアドレナリンや「ストレスホルモン」と呼ばれるコルチゾールを分泌して、ハイテンションで乗り切っちゃうんですよ。

つまり、精神的に張り詰めている時は、ストレスに強くなるようにできているんです。本当はストレスを感じているんですが、脳が体を騙して何とかやれてしまう。

矢島先生

でも、気持ちが緩むとどばっと疲れが来たりストレスに敏感になるようになったりして、体調が悪くなるんです。

編集部

大きな仕事をやり終えた後に風邪をひく、みたいなことってよくありますよね。

矢島先生

まさにそれです。緊張の糸が切れた時の方が、体にガタが来るんですよ。それが今だと思います。

そして先ほど申し上げたように、睡眠リズムの乱れ、生活習慣の乱れが重なり、どうにもこうにも疲れが取れない、気持ちが晴れない、仕事に集中できない……といったうつ症状が起きるわけです。

“半病人”状態に気づくための3つの軸

編集部

ちょっとした不調が深刻な病気に変わる前に、自分で異変に気づくことが大事だと思うのですが、若い世代だと「ちょっと眠れないくらいいいか」「そのうち治るか」と放置してしまう気がします。

矢島先生

その通りです。20代の方はもちろん、30代以上の方でもバリバリ働いてきてタフな人はたくさんいらっしゃると思います。

でも、不調を感じている“半病人状態”の自分を放置し続けてはダメ。短期的には何とか大丈夫だったとしても、後で一気にガタがきます。

今は誰にでも不調が起きやすい時期だと思って、皆さん心と体の変化に敏感になってください。

「コロナ自粛」明けの不調に悩まされる人が増加傾向
編集部

例えば、不調を放置しがちな人が、自分の心・体の異変に早く気づくためにはどうすれば?

矢島先生

私がお勧めしたいのは、「フィジカル」「メンタル」「行動」の3つの軸で、自分の変化を記録することです。

例えば、「フィジカル」な変化であれば、腹痛の頻度が増えた、頭痛の回数が増えた、腰の痛みが増した、女性であれば生理不順が起きている、などが挙げられます。

矢島先生

「メンタル」の変化では、以前の自分と比較して、イライラしやすい、やる気が出ない、物事を悲観的に考えるようになった、好きだったことも楽しいと思えなくなった…など。

矢島先生

「行動」の変化は、過食や拒食をするようになった、1日に吸うタバコの本数が増えた、お酒を飲む量が増えた、買い物をする頻度や浪費額が極端に増えた…など。

ストレスが強くなると、こうした変化が出てくることが多いです。

編集部

何かが極端に増える・減るなど、以前の自分と変わったと感じる項目が複数あるなら要注意ということですね。

矢島先生

ええ。その場合はすぐに休養を取りましょう。また、日常生活に支障が出ているなら、すぐに医師に相談しましょう。専門家の助けを借りて、病気の悪化を防ぐことも大事です。


【プロフィール】

矢島新子(Yajima, Shinko) さん
山野美容芸術短期大学客員教授、医学博士、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表 東京医科歯科大学医学部卒業後、公衆衛生学専攻。ロータリー財団奨学生として留学、パリ第一大学医療経済学修士修了。WHOプロジェクトにてラオスでコンサルタントの経験あり。保健所勤務を経て、東京女子医科大学旧女性生涯健康センターにて10年にわたり総合外来を担当し、現在に至る。産業医としては外資系金融機関を含む、さまざまな業種の企業20社以上にて実績あり。著書『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社)はアマゾン女性・人文学分野1位獲得。新聞、雑誌にてテレワークや女性特有のメンタルヘルス問題について記事の掲載多数

取材・文/栗原千明

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