「ストレス発散」だけではNG。コロナ禍の不調を遠ざける正しい休養法【医師監修】
コロナ禍、生活習慣や睡眠リズムの変化などが影響し、心・体の不調を訴える人が増えています。
そんな現状を受けて、「休養をしっかり取りましょう」と呼び掛けるのが産業医の矢島新子先生。実は、働き盛り世代には「休養をうまく取れていない人も多い」と指摘します。
では、健康維持のために意識すべき「正しい休み方」とは? 前回に引き続き、矢島先生に聞きました。
リフレッシュとリラックスは全く違う
前回の記事で、不調を少しでも感じたらすぐに休養をとることが大事だと伺いました。
はい。まずはしっかり頭と体を休めましょう。不調を感じている方も、健康を維持したい方も、正しく休養をとることはとても大事ですよ。
正しく休む、というのは?
正しく休むというのは、リラックスする、ということですね。若い男性に特に多いのですが、リラックスすることを、ストレス発散やリフレッシュと混同している人は結構います。
リフレッシュしたくて水泳に行った、ジョギングをした、フットサルをした、カラオケで思い切り歌った……って仰る方がいますが、それでは全然体はリラックスできていないし、休めていないんですよ。
例えそれが楽しいことで、自分にとってはストレスではないと思っていても、身体的には休養にはなっていません。
なるほど、気持ちは晴れても体力は消耗していますもんね。
それが趣味や遊びだったとしても、何かに夢中になっている時って、交感神経が優位になってアドレナリンが出るんです。
それは例えるなら、サバンナでライオンに見つかったシマウマが全速力で走っているような感じ。瞳孔がカッと開いて、血圧は上昇します。仕事をしている時ならいいんですけどね。
一方で、脳と体をしっかり休ませたいなら、副交感神経を優位にすることが欠かせません。
副交感神経を優位にするには、どうすれば?
すぐできるのは深呼吸。深くゆっくりとした呼吸を繰り返してみてください。あとは、負担のない範囲でストレッチしたり、温かい飲み物を飲んだり、熱すぎないお風呂にゆっくり浸かるのもいい。
全身の筋肉が緩み、血液が全身をゆっくり巡り、気持ちは穏やかになる…そんなイメージです。休養する日には、こういう時間を半日は持つよう心がけてください。
また、寝る前に副交感神経を優位にすることで睡眠の質も向上します。眠りの質を上げることも、正しく脳と体を休ませ、次の日からよく働くために非常に大切なことですよ。
就寝前の習慣を見直し、睡眠の質アップ
睡眠の質を高めるために、心掛けた方がいいことはありますか?
特に皆さんに伝えたいのは、寝る直前までPCやスマホを見続けるのは絶対にやめてということです。
やってます、毎日やってしまっています……(汗)
そう、やってしまいますよね、分かります。でも、ダメです(笑)
寝る直前までブルーライトを浴び続けると、脳は覚醒状態になります。すると、体は寝ているのに脳は寝ておらず、結果的に朝起きても疲れが全く取れていないということが続きます。
無論、脳と体が休めていないわけですから、仕事中の集中力も段々なくなり、生産性も下がりますね。そして、睡眠不足、疲労の蓄積はうつにもつながっていきます。
なるほど、寝ても翌朝に疲れが取れていないこと、よくあります。そういうことだったのか…。
睡眠前の習慣を変えるだけで、だいぶ変わると思いますよ。
できれば、就寝時間の2時間前にはスマホとPCを閉じてください。どうしても無理と言うなら1時間前までには…!
あと、紙の本で読書をするのは大丈夫ですよ。あくまでブルーライトを避けてほしいので。その際は、白熱球のようにオレンジ色の灯りを使いましょう。蛍光灯はNGです。
脳をしっかり休めるために必要な睡眠時間の目安はありますか?
20代〜30代の方であれば、最低でも6時間、できれば7〜8時間は寝てほしい。40代、50代の方なら、5〜6時間でもいい。脳の疲れを回復するには、それぞれの世代にあった十分な睡眠時間を確保することが重要です。
仕事が忙しくて、寝るギリギリまで仕事のことを考えたり、メールチェックをしてしまったり、といった人も、もしかしたらいらっしゃるのかもしれない。
でも、仕事でいいパフォーマンスを出すためにも、夜はしっかり脳と体を休めてください。そして、朝気持ちよく起きて仕事に集中しましょう。眠りの質が変わると、みるみる体が変わるのを感じられると思いますよ!
【プロフィール】
矢島新子(Yajima, Shinko) さん
山野美容芸術短期大学客員教授、医学博士、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表 東京医科歯科大学医学部卒業後、公衆衛生学専攻。ロータリー財団奨学生として留学、パリ第一大学医療経済学修士修了。WHOプロジェクトにてラオスでコンサルタントの経験あり。保健所勤務を経て、東京女子医科大学旧女性生涯健康センターにて10年にわたり総合外来を担当し、現在に至る。産業医としては外資系金融機関を含む、様々な業種の企業20社以上にて実績あり。著書「ハイスペック女子の憂鬱」はアマゾン女性・人文学分野1位獲得。新聞、雑誌にてテレワークや女性特有のメンタルヘルス問題について記事の掲載多数
取材・文/栗原千明