20 JAN/2022

生理がつらいのは当たり前? 思い込み&間違いだらけの「生理のこと」【産婦人科医・高橋怜奈】

PMS・生理のギモン

生理痛やイライラ、お腹の張り、肌荒れ……。こうした生理の不調を「仕方がないもの」だと思っていないだろうか。

「生理の不調は『我慢しなきゃ』と思いがちですが、治療ができます。そもそも日常生活に支障をきたすほどの不調は、正常な状態ではないんです」

こう話すのは、産婦人科医の高橋怜奈先生。

そこで高橋先生に、20〜30代の働く女性たちの生理の悩みを相談。意外と知らない「正しい生理」について学んでみよう。

産婦人科医 高橋怜奈

【Profile】高橋怜奈さん
東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科在籍。月経困難症(生理痛)外来担当医。女医+(じょいぷらす)所属。2016年6月にボクシングのプロテストに合格し、世界初の女医ボクサーとして活躍したのち2021年10月に引退。現在は医師と平行し、SNSを中心に女性の体や検診やワクチンの重要性などについて啓蒙活動を行う
◆Twitter:@renatkhshYouTube

悩み1:周期はバラバラだけど、生理はあるから大丈夫?

28歳/営業

仕事が忙しくなると、生理が1週間くらい遅れることも。周期はバラバラだけど、生理はきてるし、放っておいて大丈夫なものですよね?

 

「最低でも2年に一度、定期的な検診を受けている」という前提で、他に気になる症状や妊娠の可能性など思い当たることがなければ、様子を見ても問題はないでしょう。

ただし、次の場合は生理不順です。病院で診察を受けましょう。

 

・生理時期の変動が1週間以上ある
・24日以内に生理が来る、もしくは39日以上空いて生理が来る(月経周期の正常範囲は25日~38日)

 

もし生理周期に変動があったとしても、周期が25日~38日の範囲内に収まっていて、かつズレが1週間以内であれば、それほど神経質にならなくても大丈夫。

とはいえ少しでも不安があるようであれば、安心のためにも一度病院に行ってみてください。

生理前にお腹が張るのは普通?

29歳/人事

生理がくる1週間くらい前から、お腹が妊婦のように張って苦しくなります。それって普通でしょうか?

 

月経前症候群、いわゆるPMSだと思います。生理前に全身がむくんだりお腹が張ったりする人は多いですね。

排卵後から生理が始まるまでは黄体期といって、ホルモンの影響で腸の蠕動運動が悪くなって便秘がちになったり、むくみやすくなったります。

生理に向けてだんだんと子宮内膜が分厚くなっていくと生理痛のような痛みを感じる人もいますね。

腹痛

こちらも定期検診を受けていて、普段通りの生活を送れているのであれば、そこまで心配しなくて大丈夫でしょう。

でも、症状がつらくて仕事や生活のパフォーマンスが下がってしまうようであれば、ぜひ受診してもらいたいなと思います。

ピルの服用で楽になると思いますし、治療もできます。毎月のことですから、改善できることはしていきましょう。

生理前の肌荒れは治らない?

29歳/エンジニア

生理前に吹き出物が口の周りなど顔にいっぱいできて、毎回めちゃくちゃ肌荒れするんですけど、これは治らないんですよね?

 

排卵後のホルモン変動の影響なので、ホルモンを一定にする効果があるピルの服用で良くなりますよ。

生理前の肌荒れに悩んで皮膚科に通院していた人が、ピルを服用したことでスッと治ることも多いです。

「肌あれの症状で婦人科に行っていいのかな」と思う人は多いですが、全然大丈夫。気軽に婦人科に相談してくださいね。

生理中にふらふらするのは問題ない?

28歳/経理

生理中は貧血っぽい症状が出てふらふらするのですが、出血してるんだししょうがないなと思って無理して仕事に行っています。生理が終われば治るので、問題ない?

 

受診を推奨します。生理の量が多い過多月経で貧血になっている場合もありますし、生理中に血圧がうまく保てず、起立性低血圧になる人も。血液検査や診察で原因を調べると安心です。

その上で、ぜひ治療をしていただきたいです。いつか倒れてしまうかもしれないし、単純に毎月の生理でふらふらしてしまうのは大変ですからね。

生理前後のイライラは仕方がない?

33歳/編集職

生理前後でイライラしたり、気持ちが落ち込んだり、感情の波が激しくなりますがこれは仕方ないことですよね?

 

こちらも治療が可能ですので、ぜひ婦人科へ相談に行ってください。

生理前の感情の起伏が大きい事が原因で、家族関係や職場での人間関係が悪くなってしまう人もいます。

イライラ 人間関係

生理前の感情の波は人間関係に大きな影響を及ぼしますので、大きなトラブルになってしまう前に改善しましょう。ピルなどのホルモン治療で良くなっていくはずなので、ぜひ病院で相談してもらいたいです。

婦人科の選び方って?

30歳/広報

生理について相談したいけど、どこの婦人科に行けばいいのか分かりません。どうやって病院を選べばいいのでしょうか?

 

婦人科を選ぶのは難しいですよね。

これは私自身にも葛藤があって。「気軽に受診してください」とお伝えしていますが、クリニックによってスタンスは異なるのが現状です。残念ながら「生理痛で病院に来るなんて」と怒られたという話を耳にすることもあります。

そこで、自分に合ったクリニックを選ぶ際に試していただきたいのが、「ホームページを見る」「検診に行ってみる」の二つです。

生理痛

特に重要なのは後者。具合が悪いときにクリニックの良し悪しを冷静に見極めるのは、難しいと思うんですよ。

一方、検診であれば普段のコンディションで判断ができます。検診の精度は差が出にくいですし、実際に先生と話せば雰囲気も分かる。

それで問題がなければ、かかりつけのお医者さんにする流れが一番良いと思います。探すのにエネルギーが必要だからこそ、検診で病院を試してみてください。

その上で、ちょっとでも違和感を持ったら、フットワーク軽く病院を変えてみましょう。

前田敦子さんが「私のことは嫌いになっても、AKB48のことは嫌いにならないでください」と言っていましたが、私も同じ気持ちです。

「いろいろな医師がいる」という前提を患者さんに求めるのは大変申し訳ないのですが、一つのクリニックの先生が嫌だったからといって、産婦人科の受診を諦めないでほしいと切に願っています。

生涯の生理回数は約10倍! 現代女性の「生理がつらい」が当たり前な理由

婦人科を探す

生理前の不調を当たり前だと思っている人は多いですが、体の症状や精神面の不調の大半は、産婦人科で治療ができます。生理は「我慢しなきゃ」という発想になりがちですが、「治療できる」ことを忘れないでください。

そもそも「生理ではない時と同じように生活ができない」状態は、月経困難症です。

「痛み止めを飲めば生理痛は治まる」という人もいますが、「痛み止めを飲まないと、日常生活が送れない」ことが問題なんです。「薬を飲まないと治らない生理痛がある」のは、正常な状態ではありません。

ぜひノーマルな状態と生理前、生理中を比べて、「生活が変わっているか」に注目してみてください。本来は「普段とパフォーマンスが変わらない」ことが正常です。

「そうなると、大半の人が月経困難症なのでは?」と疑問を持つ人もいると思いますが、現代の女性の多くが生理に苦しんでいるのは、ある意味では当然なんです。

なぜならば、生涯の生理の回数が激増しているから。

昔の人は、20歳前後で第一子を産み、その後も複数人の子どもを産むのが一般的でした。妊娠中から産後にかけては生理が止まるため、生涯の生理の回数は50回程度だったと言われています。

婦人科

一方で現代は妊娠の回数が減り、妊娠しない人も増えました。生活が豊かになり、栄養状態が良くなったことで、初潮を迎えるタイミングは早期化。生理がある年数も長くなっている。

その結果、生涯の生理の回数は10倍ほど増えているんです。28歳女性の場合、12歳で初潮を迎えたとして、単純計算でそれまでの生理の回数は28歳時点ですでに192回にもなります。

実は生理の回数が増えると子宮内膜症の発症リスクが上がるため、現代女性は子宮内膜症を発症している人が昔に比べて圧倒的に多いのです。

そうやって考えると、働く女性たちが何かしら生理の問題を抱えているのは不思議なことではないんです。

婦人科系の病気のリスクも増加。婦人科の定期検診をぜひ受けて

PMS

だからこそ、婦人科で定期検診を受けてください。「一度も産婦人科に行ったことがない」という30歳前後の女性がものすごく多いことに、私は危機感を持っています。

排卵の回数が増えると、卵巣がんの発症リスクは高まることが分かっています。

また先にも述べましたが生理の回数が多ければ子宮内膜症の発症リスクが高まるため、生理の回数が多い現代の女性は、婦人科系の病気のリスクにさらされています。

また、妊娠した時の妊婦健診では、子宮頸がん検診を必ず行います。

その時に初めて子宮頸がん検診を受ける人は非常に多いのですが、その時点で子宮頸がんが見つかった場合、妊娠したまま子宮を摘出し、赤ちゃんを諦めざるを得ないこともあるんです。

妊娠

「子どもはいらないから、私には関係ない」という人もいますが、子宮頸がんは進行すると子宮を失うだけでなく、死に至る病気。初期症状は全くない病気なので、妊娠希望に関わらず、命を守るためにも、定期検診を受けてください。

検診の費用については、住んでいる市区町村の無料検診や助成金を利用しましょう。

20歳以上の方には助成があるのでお住まいの自治体のホームページなどを確認しましょう。もし検診を受けずに進行したがんで見つかった場合には、莫大な費用と精神的苦痛が生じますから、早めに見つけるのが最善です。

内診や検診への恐怖や不安感は分かりますが、厚生労働省で推奨されている子宮頸がん検診は2年に一度のこと。本当につらい思いをする前に、とにかく検診を受けてほしい。それが婦人科医としての、私の心からの願いです。

そして日本産科婦人科学会では26歳以下の方であれば子宮頸がんを予防するHPVワクチンの接種が推奨されています。27歳以上45歳以下の方も希望をすれば接種できるので、気になる方は産婦人科で相談してみてください。

取材・文・構成/天野夏海 編集/栗原千明(編集部)

書籍紹介

生理のはなし

『おとなも子どもも知っておきたい新常識 生理のはなし』(主婦と生活社)
産婦人科医YouTuber・高橋怜奈先生と一緒に、どうして生理が来るのか、生理が起こる仕組み、生理期間中のトラブル解決方法、生理の貧困問題、生理が原因で起こる病気のことなどをマンガで学べます。子どもも大人も「そうだったのか!」と思える内容が満載です!