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JUN/2016

脳を騙して心の健康を守る! 脳科学者・中野信子先生流うつを寄せ付けない思考法とは【後編】

前編では、脳科学者の中野信子先生に、脳科学の視点からうつ病のメカニズムを解説し、うつ予防に効果的な1日の過ごし方、行動パターンをレクチャーしてもらった。

後編では、仕事中によくあるシチュエーション別に、心の負担を軽減するのに役立つ「思考法」をお教えしよう。

中野信子
脳科学者、医学博士
中野 信子(なかの・のぶこ)

脳科学者。東日本国際大学教授。1975年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業。同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から2010年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』(幻冬舎新書)『脳はどこまでコントロールできるか?』(ベスト新書)『サイコパス』(文春新書)『科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)ほか。脳や心理学をテーマに研究や執筆活動を精力的に行っている。

仕事をしていればストレスは誰にとってもついてまわるが、自分自身の考え方を変えるだけで負荷はぐっと軽くなる。

例えば……

【situation1】仕事で失敗をしてしまったとき
→仕事の失敗は1人の責任ではない。自分を責める前に、ミスが生まれた原因を考える

最も落ち込みやすいのが、仕事でのミス。禁物なのは、「無理に失敗を成長の糧だと思いこむこと」だと中野先生は言う。自分を誤魔化すことは、心への負担を増やすだけ。それよりも必要なのは、失敗の原因と向き合うことだ。

「真面目な女性は“私のせいだ……”と必要以上に落ち込みやるい傾向があるのですが、仕事上のミスである以上、誰か1人が100%悪いなんてことはありえない。自分の責任、上司の責任、組織の責任。その割合を冷静的確に分析することができれば、自分だけを過剰に責めずにすみます。そもそも失敗をフォローするために上司や先輩がいるんだし、自分のミスが取り返しのつかない大失敗にまで至ったとしたら、それは組織上に大きな欠陥があると思った方いい。それくらいの気持ちでいた方が、心の安定を守る上では大事なんですよ」

【situation2】身近に苦手な上司・同僚がいるとき
→「嫌い」は脳の自然な反応。無理に好きになろうと努力しない

一番の難題は、人間関係。働く女性が感じる職場におけるストレスは、波長の合わない相手とのコミュニケーションに起因していることが大半だ。中野先生は、「苦手な上司や同僚なんて、よく喋る鐘だと思っていればいいんです」と一刀両断する。

「“仲良きことは美しきかな”なんて完全な誤り。国家レベルの洗脳です。人を嫌いになるのは、とても自然なこと。だから無理せず嫌いなままでいいんです」

そもそも脳は自分の快適な環境を選ぶためにあるという説もある。事実、移動をしない植物に脳はない。海のパイナップルと呼ばれるホヤも、幼生期は脳を有しているが、生殖に適した環境に定着すると、脳を不要と見なし、自ら消化してしまうそうだ。

「無理をして自分に合わない環境にい続けるのは、脳を持つ動物として不自然な行為。もしどうしても今の会社の環境が合わないなら、自分に合った別の環境を探せばいいし、仕事を変えればいいんです」

【situation3】将来が何となく不安なとき
→いくら準備しても不安は消えない。不安を感じるのは自然な状態だと認識する

結婚、出産、育児、介護、転職、出世、老後の暮らし。ライフステージの変化に影響を受けやすい女性にとって、将来は不安なことでいっぱいだ。

「それは同じ女性として私もよくわかります。そんな私から伝えられるのは、不安は楽しむしかないということ。不安なんていくら準備しても消えないし、時が過ぎ去って振り返ってみればジタバタしていた自分が懐かしく思えるもの。むしろもっとあがくことを楽しんでおけば良かったと思うくらいです。だから、見えない不安をどうか存分に味わってほしい。不安を味わうことをメタ認知と呼ぶのですが、脳科学的にも前頭前皮質を鍛える良いトレーニングになります。しっかりトレーニングをしておけば、次第に不安感情の取り扱いにも慣れてきますよ」

中野信子

いつだって悩みや不安は尽きないし、心の特効薬なんてどこにも売ってはいない。ここに書かれたことも「実践できないからって決して自分を責めないでほしい」と、中野先生は思いやりの言葉を忘れない。

「心が弱っているときは、“何かやりなさい”って命令が棘になるし、“こうすればいいよ”ってアドバイスさえもナイフになってしまうんですよね。だから無理はしなくていい。時には仕事だって投げ出していいんです。自分のために仕事をしているのに、仕事のために自分を犠牲にするなんて本末転倒ですよ」

脳科学者・中野信子先生からの処方箋! 働く女性の“プチうつ”予防&改善に効く行動パターン【前編】
・脳を騙して心の健康を守る! 脳科学者・中野信子先生流うつを寄せ付けない思考法とは【後編】

取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太

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