09 JUL/2015

女性は男性の3倍「夏季うつ」にかかりやすい! その見極め方と予防法とは【医師監修】

夏うつ

「冬季うつ病」「冬うつ」といった言葉を耳にしたことがある人は多いかもしれない。どんよりと暗い日が多く日照時間も短い冬は、確かに気分も暗くなりがち。だが実は、「季節性のうつ病には、夏に発症する『夏季うつ』も存在する」と精神科医のゆうきゆうさん。

「夏季うつは夏バテと症状が似ているため、気付かれないことも多い。でも、正しい治療をせずに悪化させてしまうのは非常に危険です」と、警鐘を鳴らしている。では、実際に夏季うつとはどんな病気なのだろうか。症状の特徴や、夏バテとの違い、予防のために意識しておくべきことをうかがった。

ゆうクリニック(皮膚科.精神科)総院長 ゆうきゆうさん

ゆうクリニック(皮膚科.精神科)総院長 ゆうきゆうさん

「こころ」について何より興味があり、その探究を続けている。『相手の心を絶対に離さない心理術』『マンガで分かる心療内科』など、心理学に関する書籍を70冊ほど出版し、心理研究者、漫画原作者としても活躍している。現在、月刊ヤングキングにて、『大人の1ページ心理学』を連載中
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夏バテと勘違いしやすい夏季うつ
症状の特徴とは……?

「季節性のうつ病には、冬季うつと夏季うつの二つがあり、これらは『季節性感情障害』の俗称。うつ病には何かしら発症の引き金となる原因があるものですが、特に思い当たるストレスの原因が無く、決まった季節にだけ症状が表れるものが季節性感情障害に当たります。そして、その期間が夏の場合は『夏季うつ』とされるんです。近年ではメディアに取り上げられることも増えつつあるせいか、夏季うつを理由に来院される方が増えているように感じます」

では、夏季うつになると具体的にどのような症状が見られるのだろうか。

「主な症状は食欲低下や不眠などの不調です。発症する時期も5~9月で夏バテと似た症状が多いのですが、気分の落ち込みや不安感などの精神的不調を伴うことが特徴です」

明確なストレスや理由がないにも関わらず気分が優れない状態が長引いているかどうかが、夏バテや一般的なうつ病との違いを見分ける上でのポイントになるそうだ。

さらに、こうした季節性のうつは、男性に比べて女性の方がかかりやすいと言われている。

「季節性のうつは男女比にかなり差があり、女性の方が男性に比べて3倍ほど多いと言われています。この男女比の違いは女性ホルモンの変動に加え、太陽光や温度・湿度といった外側から受ける影響に、女性の体の方が敏感なことが原因として挙げられているようです」

夏季うつ予防のために注意すべきこと5つ

お盆やシルバーウィークなど、長期休暇の機会も多い夏の時期。仕事に遊びに、今から予定をぎっしり入れている人も少なくないだろう。そんな楽しい夏に「夏季うつなんかにかかってはいられない!」というのが本音だ。そこでゆうきさんは、夏季うつ予防のために次の5つを特に注意してほしいと呼び掛ける。

[1]日光の浴び過ぎ
「外出などで疲労感が蓄積すると、夏季うつになりやすくなります。夏だから海! BBQ! と外で1日中はしゃぎたくなる気持ちも分かりますが、外出はほどほどにしてください。加えて、日光によって疲労感が増す可能性もあります。日の浴び過ぎにはくれぐれも注意しましょう」

[2]室温の設定
「冷えやすさや節電などを理由に冷房をあまり利用しない女性も多くいますよね。でも、夏季うつは気温や湿度などの外的要因が体に与える影響から発症するものなので、無理に暑さを我慢するようなことがないようにしてほしいと思います。自分の体感や体調に合わせ、過ごしやすいと感じる温度に調整してください」

[3]栄養の偏り
「夏はどうしても冷たくて口当たりのいいもの、のど越しのいいものを選びがち。でも、栄養が偏ってしまうと体内でセロトニン不足を招くことに。セロトニンとは、精神の安定を促す神経伝達物質。このセロトニンがうまく分泌されなくなってしまうと、精神状態に不調が出やすくなってしまいます。冷たい麺類など炭水化物だけに食事が偏ることがないように、肉・卵・チーズなどのたんぱく質も積極的に摂取していきましょう」

[4]寝る前のスマホ&PC利用
「寝る前にスマホやPCの画面を見ていると、脳が刺激され、本来は脳を休めるべき時間に興奮状態になってしまいます。そうすると、自律神経のバランスが乱れ、うつ症状を招きやすくなります。季節に限ったことではありませんが、夏季うつも招きやすくなるので注意が必要です。就寝時間も毎日同じくらいにして、生活リズムを整えるのも効果的ですよ」

[5]何かと我慢し過ぎること
「一般的にうつにかかる人が『真面目で我慢をしてしまう人』だと言われるのは、自分の不調に気付いても『他の人に迷惑を掛けてはいけないから』『このくらいは我慢しなくては』といった思考習慣から見過ごしてしまいやすいからです。我慢強いことが良いとされ、他人への配慮を最大限行うことを求められる日本ですが、自己犠牲はほどほどに。ちょっとでも不調を感じたら、きちんと休んで体調を整える。自分の変化と上手に付き合うようにすることが、何より大切だと感じます」

季節の変化による体への影響を完璧に防ぐことは難しい。だが、自分の体の変化を意識しつつ、過ごしやすい環境を自分で調整していくことはできるはず。夏季うつで短い夏を不健康で終わらせてしまわないように、日々の生活の中でできる対策から始めてみてはいかがだろうか。

取材・文/栗原 千明(編集部)