01 OCT/2021

避妊目的や生理トラブルがなくてもピルを飲んだ方が良い3つの理由【産婦人科医監修】

避妊目的や生理トラブルがなくてもピルを飲んだ方が良い3つの理由

週末の予定を楽しみに仕事を頑張ったのに生理が来てガッカリ、パジャマやシーツに経血が付いてしまって忙しい朝にバタバタ、生理前は食欲が止まらず肌荒れもひどくてイライラ……。

こんな経験を持つ女性は多いはず。生理トラブルにとられる時間や感じるストレスは、仕事やプライベートを地味に、しかし確実に圧迫する。

この女性を悩ます生理、ピル(低容量経口避妊薬:通称OC)を飲めば生理予定日をコントロールしたり、症状を軽くしたりできるものの、まだまだ活用が広がっていない面も。

「ピル=避妊または婦人科系の病気を治療するためのもの」というイメージもあるが、パートナーがいなくても、生理トラブルが深刻でなくても、飲んで大丈夫なのだろうか。

よしの女性診療所の吉野一枝先生にお話を伺ったところ、「ピルには働く女性にとってたくさんのメリットがある」と教えてくれた。

吉野一枝先生

お話を伺った方
産婦人科医・臨床心理士
吉野 一枝(現姓 田中)さん

1993年帝京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院産婦人科に研修医として勤務。95年、東京大学医学部産科婦人科学教室に入局。 母子愛育会愛育病院、長野赤十字病院、藤枝市立総合病院などの産婦人科に派遣勤務この間、東京警察病院にて麻酔科研修。2001年臨床心理士資格取得。03年によしの女性診療所を開院。日本産科婦人科学会認定医、日本臨床心理士資格認定協会会員、日本ソフロロジー法研究会会員、NPO法人女性医療ネットワーク副理事長、「性と健康を考える女性専門家の会」運営委員

※この記事は2014年4月11日に公開し、2021年10月1日に内容を更新しております

フランス人女性の60%はピルユーザー。なぜピルは日本で普及しないのか

多くの日本人女性にとってあまり馴染みがないピルだが、「フランスでは約60%の女性がピルを服用している」と、吉野先生。

「フランスでは、幅広い年代の女性がピルを愛用しています。1990年にフランスで行われた調査によれば、過去20年間で女性の人生に最も貢献したものの第1位にピルが挙げられるほど身近な存在です」

一方、日本のピル普及率は1~3%と言われており、先進国の中でも飛び抜けて遅れているという。これは北朝鮮よりも低い数値なのだとか。

なぜ、日本でピルは普及しないのだろうか?

「認可が下りるのに時間が掛かったこともありますが、『よく知らないから怖い』という拒絶反応や、『妊娠しにくくなる』、『ピルを飲むのは不自然』という誤った認識が根強いのが主な原因だと思います。

特に、『健康な状態であれば毎月起こるはずの排卵をストップさせるのは不自然』と考える方は多いですね。でも生物学的には、25歳を過ぎても妊娠せずに、毎月排卵があることの方が不自然なんですよ」

吉野先生によれば、健康な女性がピルを飲むメリットは大きく三つあるという。

メリット1:自由自在に生理予定日のコントロールが可能

ピルを服用すると、生理が規則的に来るようになるだけでなく、一時的に予定日をずらしたり、生理自体をなくしてしまうこともできる。

「平日に生理が来るようにして週末を楽しんだり、逆に週末に生理が来るようにして体を休めたりと、自分のリズムに合わせて毎月の生理予定日を調整できます。

旅行や試験、失敗できない大事な仕事の時など、イベントの前後に生理をずらすことも。さらには、ピルは通常であれば21日間服用し、その後7日間の休薬期間を設けますが、休薬せずに飲み続けることで、その月の生理をスキップすることもできます」

メリット2:婦人科系疾患の予防になる

経口避妊薬の服用期間と卵巣がんの発症リスク

※グラフは編集部にて作成(参照元

出産回数が減り、排卵数が増えたことによる影響で、女性が婦人科系の疾患を発症する確率は高くなっている。排卵を抑制する作用があるピルは、こういった病気の予防にも活用したい。

「子宮内膜症や卵巣がん、子宮体がんなどのリスクが高まっていますが、ピルを飲むとそういった病気の予防にもつながります。ピルを5年間継続して服用していると、そうでなかった場合より卵巣がんの発症が3割抑制できることも分かっているんですよ」

メリット3:35歳過ぎてからの妊娠しやすさ

現代では30歳くらいまでは思い切り仕事に打ち込み、それから子どもを持つことを考える、という女性も少なくない。

「ピルを飲むと妊娠しにくくなる」というイメージを持っている人も多いが、実はハードに仕事をしながらでも産める体を保つために、ピルは効果を発揮してくれる。

「ピルの服用をやめると1~3カ月で体が妊娠可能な状態に戻ります。ピルを20代から服用していれば、30代後半でも比較的スムーズに妊娠することができます。卵巣を休ませホルモンバランスを整えていたことが、妊娠しやすい体づくりにつながったのではないでしょうか」

吉野先生は「女性の健康に関しては、日本は世界の中でも後進国。特に、日本女性は体に関して人任せな部分が多く、意識が低いことが問題」と警鐘を鳴らす。

「受け身ではなく主体的に自分の体と付き合うことが大切です。私はもちろん、私の周りの婦人科医師はピルやホルモン剤を服用している人がほとんど。避妊目的や生理トラブルがない女性にも、ぜひ上手く活用してほしいですね」

長く働き続けるためにも、自分の体はなるべく自分の意志でコントロールしたいもの。きちんと検討して取り入れれば、ピルは長く仕事を続けたい女性の強い味方になり得るかもしれない。

取材・文/仲間麻美