06 MAR/2017

「貯金があれば安心」は間違い!? 女の人生100年時代、20代のうちに身に付けたいお金の知恵【FP監修】

各分野の専門家たちに聞きました!
「女の人生100年時代」未来を豊かに生きるためには?

2050年には先進国に生きる人の半数以上が90歳以上まで生きると予測されている。また、平均寿命が「110-120歳まで上昇する」という見方まであるらしい――。定年をむかえても、余生は30年以上。これまでの生き方の「常識」が劇的に変わる中、女性たちが豊かな人生を送るために必要なこととは――? お金、結婚、キャリア、健康……各界の識者に問いをぶつけてみた!

本特集第一弾でお話を伺ったのは、お金のプロ、ファイナンシャルプランナーの高山一恵さん。今、「老後のお金の不安」を抱える20代~30代の女性からのマネー相談が急増していると語る。

ファイナンシャルプランナー 高山一恵さん

【論客プロフィール】 ファイナンシャルプランナー(CFP®認定者・1級FP技能士) 高山 一恵(たかやま・かずえ)さん

1974年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、株式会社エフピーウーマンの設立に参画し、10年間取締役を務め、退任。その後、2015年に株式会社Money&Youの取締役へ就任。女性FPと女性をつなぐマッチングサイト「FP Cafe」の事業に注力。また、全国で講演活動・執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。明るく、親しみやすい性格を活かした解説や講演には定評がある。著書に『やっみたらこんなにおトク!税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数

いまの20~30代女性は90歳まで生きることがほぼ確実!?
年金・医療制度も変わり「70歳まで働き続けるのが当然」の時代に

厚生労働省(2015)の調べによれば、現在の女性の平均寿命は87歳、男性は80歳となっている。日本人は年々“長寿化”しており、高山さんは「今の20~30代の女性たちは、90歳まで生きることがほぼ確実だと思った方がいい」と言う。

「90歳まで生きるということは、定年退職を迎えてから約30年もの余生を送るということ。現在、老後を生きるために必要な貯蓄額は、シングルであれば2000万~3000万円、夫婦なら3000万~5000万円と言われています。ですが、今の20~30代の人たちが老後『年金』をもらえる保証はどこにもありません。既存のさまざまな制度が変わってしまえば、この目安金額は当てはまらなくなります

お金

実際、2016年には「年金カット法案」が強行採決されている。年金がもらえたとしても、現在の受給額の7~8割程度に減ってしまう見通しがあるのだ。また、加速する少子高齢化の状況から、受給開始の年齢も70歳まで引き上げられる可能性も。

医療制度においても、2017年度から公的医療保険制度の見直しが行われる予定で、「70歳以上の医療費自己負担上限が引き上がる可能性が高いです」と高山さん。

「国の制度改革によって、女性も『70歳まで働くのは当たり前』という時代はもうそこまで来ています。貯蓄ができず、年金受給額も少ない低所得者であれば、85歳まで働き続けなくてはならないケースも出てきます」(高山さん)

国民全体の給与水準が下がっていく中で、「貯蓄だけで老後資金をどうにかするのは、今後ますます難しくなる」と高山さんは予想する。

20~30代の働く女性がお金について意識すべきポイント4つ

こうした社会の変化を知ると、ますます将来に不安を感じてしまうかもしれない。

一方、高山さんは「老後が不安だからと言って、ひたすら節約をしたり、貯金のことばかり考えたりする必要はない」と語る。その上で、20~30代の働く女性たちが「人生100年時代のお金」について特に意識すべきことを4つのポイントで紹介してくれた。

【Point1】
「こんなもの買わなければよかった……」失敗する経験が実は大切!
マネーセンスを磨くために、「お金を使う」経験を積もう

お金

「繰り返しにはなりますが、貯金がいくらあっても『安心』という時代ではありません。『備えあれば憂いなし』は事実ですが、それよりもまず、長い人生を豊かに生きるために“自分を幸せにするお金の使い方”を知っておく必要があります」(高山さん)

先行きが不確かな時代。お金を貯めることよりももっと大切なのは、自分なりの「お金に対する価値観」を磨くことだという。守りのみでは「学び」は得られない。

「何にお金を掛けるか、どこで節約するかといった選択は人それぞれ違うもの。自分にとって価値あるものにお金を使うセンスは、経験からしか磨かれていきません。例えば、物やサービスを購入して『買ってよかったな』と思うもの『買わなければよかったな』と思うもの、両方あると思います。普段何となくお金を使っていると思いますが、どんなお金の使い方ができたとき、自分が幸せを感じられるのかを振り返って考えてみるといいですよ」(高山さん)

若いうちであれば、お金の使い道を間違ってしまっても、働くことでいくらでもリカバリーが可能だ。さまざまな物やサービスに対してお金を使う経験を積むことは、自分の人生にとって何が大切なのかを見極めるヒントにもなり得る。

【Point2】
得する人・損する人の明暗を分けるのは「知っているかどうか」
お金の知識をつけよう

前述のとおり、お金にまつわる「制度」は時代ごとに変わっていく。だからこそ、各種税制の優遇など、新しく誕生する制度にいかに敏感でいられるかが“お金に困らず生きていく”ためのポイントの1つ

「今後は日本社会全体が、ますます国民に『自助努力』を求めるようになっていきます。若いうちからお金にまつわる知識を付けて、情報収集するクセ付けをしておくといいですよ。

例えば、皆さんは2017年1月からスタートした『セルフメディケーション』をご存知でしょうか? この制度は、健康のための自助努力をしている人を優遇する所得控除の制度。つまり、『なるべく病院にかからずに自分で病気を治そうね』ということを国が補助金を出す代わりに進めているわけです。こうした制度を知っているかいないかで、お金で得する人と損する人がきっぱり別れます」(高山さん)

(※)『セルフメディケーション』では、対象となるOTC医薬品の年間購入額が1万2,000円を超えた場合、所定の手続きを踏むと所得控除が受けられる

ニュースサイト等で税制等の変更についての情報をキャッチアップしたり、書店に行った時にお金について書かれている本を手に取るよう意識したい。

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