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APR/2017

「敬老原則をやめなければ日本はもう続かない」ライフネット生命・出口治明さん登壇イベントレポート

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2017年3月23日(木)東京・浅草橋にて、株式会社Money&Youが主催するイベント『未来の自分のために知っておきたい!女性の働き方、お金や保険との付き合い方』が開催された。

同イベントにゲスト登壇したのは、株式会社Money&You取締役の高山一恵さんと、ライフネット生命保険株式会社会長の出口治明さん。生命保険業界で最も名を知られた経営者の一人である出口さんは、今年6月に同社会長職を退任すると発表したばかりだ。

「未来の働き方やお金について考えるには、まずは今の社会・経済の状況を知ることから」と、出口さんの講演が始まった。講演内容の一部をご紹介しよう。

「皆で等しく貧しくなる」か「GDPを上げて今の暮らしをキープする」か
日本ができる選択は2つしかない

出口さん
出口治明さん
ライフネット生命保険 代表取締役会長。1948年三重県生まれ。京都大学を卒業。1972年に日本生命に入社、2006年にネットライフ企画株式会社設立。2008年に生命保険業免許を取得、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更

日本は世界で一番高齢化が進んでいる国です。何もしなくても予算ベースで年間5,000億円、介護や医療費にお金が出ていきます。少子化も進行する中で、日本が国を存続させていくためにできる選択は2つ。上野千鶴子さん流に「皆で等しく貧しくなろう」か、「少子高齢化が進む分、今の生活をキープするためGDPを上げるか」です。

「GDP」とは、「人口×生産性」のこと。人口はそう簡単には増やせませんから、生産性を上げるしかありませんよね。そこで今、世の中では「働き方改革」が声高に叫ばれているわけです。

皆さんがもしも、出版社の社長だとしたら、次の2人の編集者のうち、どちらにたくさん給与を払いたいと思いますか?

・朝8時に出社して、夜22時までずっとパソコンの前で仕事をしているけれど、発想が陳腐で全く売れる本が作れないAさん。
・10時過ぎに出社したかと思ったらすぐにスタバに行って誰かと会っておしゃべり。13時過ぎに会社にようやく戻ってきたかと思ったら、18時早々に退勤。しかし、人脈や教養を活かしてベストセラー本を連発して生み出すBさん。

きっと、Bさんに「高い給与を支払いたい」という人が多いのではないでしょうか。

そう。戦後の高度成長を支えた「工場モデル」と、「サービス産業モデル」はまるで違うのです。工場モデルなら、ベルトコンベアが動いたら動いただけ商品ができますから、長く働けばその分だけ儲かります。そのような社会では、体力のある男をこき使えばいい。そして、男たちの長時間労働を支えるために、女性は男性の「飯・風呂・寝る」の面倒を見る。そういう社会の方がうまく回ると考えた当時の政治家たちは、配偶者控除の制度をつくったり、「三歳児神話」という真っ赤なウソを世の中に広めたりして、社会の成長をうながそうとしたのです。

この四半世紀、日本の正社員の労働時間はほとんど変わっていない

一方で、「サービス産業」を中心とする社会においては、アイデアこそがカギです。労働者が長時間労働をしていたら、知恵は出ません。長時間労働モデルはまったく現代の働き方に見合っていないのです。

それなのに、この四半世紀、日本の正社員の労働時間はほとんど変わっていません。年間2000時間をキープしています。女性に関して言えば、男性の「飯・風呂・寝る」の面倒を見ることからも解放されていない。年間2000時間働いた上に、男性の面倒を見るというのですから、男女雇用機会均等法以降、ますます正社員が減るのは当然です。

日本に先んじて高齢化の壁にぶつかったヨーロッパには、議員や会社役員などの女性の割合を、あらかじめ一定数に定めて積極的に起用する「クオーター制」を導入している国があります。役員に女性がいない場合は、上場を取り消されるケースもあるようです。こうなると、企業も女性採用を積極的に進めます。

フランスは女性の就業率が非常に高いだけでなく、少子化問題にいち早く取り組み、成功を収めている国です。1.6%だった出生率はこの10年で2.0%にまで伸びています。当時、シラク元大統領が行ったのは、非常にシンプルな政策でした。働く女性でも、学生でも、“産む性”である女性自身が「産みたいときに産める」環境をつくったのです。例えば、お金がなくて子どもが産めない女性には、政府から十分な補助金が出るようにしました。少子化で空いた小学校などのスペースを活用し、保育園を増やして待機児童問題を解決しました。そして、「育児経験は職場復帰後も役立つ」ということをアピールしたのです。もちろん、産休・育休明けの社員が、出産前と同じ待遇で会社に戻れることは、法律でも保証されています。

少子高齢化が深刻ないま、日本も「年齢フリー原則」を取りいれよ

マネーイベント

人生100年時代とも言われています。老人たちの年金や介護、医療費が国の負担だからといって、「平均寿命を短くしろ」というのは無理です。だったら、健康寿命を延ばすしかありません。

僕はこの4月で古希になるのですが、医者にどうしたら健康でいられるかと聞いたら、「働いていたらいい」と言われました。メリハリのある生活が大事なのです。それならば、日本も定年を無くしたらいい。ヨーロッパでは、履歴書で年齢を書かせる欄はありません。「働きたいかどうか」意欲で採用します。グローバルスタンダードがそうであれば、日本も世界に合わせるべきではないでしょうか? 国民が健康になって、財政が安定して、働いている人の年齢が分からないから“悪しき年功序列”の制度が消える。一石三鳥です。

皆さんは大好きなおじいさん、おばあさんを大事にしたいと思っているとは思います。でも、「15年間彼らを肩車しなさい」と言われたら、いやでしょう? 社会が敬老原則でいては、もうもたないのです。

そこで高齢化が進んだヨーロッパでは、「年齢フリー原則」に世の中が変わりました。どういうことかというと、「自分で歩けるおじいさん、おばあさんは自分で歩いてね」、「歳をとっていても、お金があるなら払ってね」としたのです。そして、“本当に困っている人”に社会保障が集中するようにしました。この時、税制は「所得税」から「消費税」メインへと移行します。高齢者に納税してもらうためには、消費税しかないからです。日本でも、マイナンバーがあれば個人の所得や財産状況が分かりますから、ヨーロッパのようなモデルに移行することは可能です。

アメリカばかり見ていても意味がありません。アメリカは先進国で唯一、少子高齢化と無縁の国です。僕が高校生だった時に1.8億人ほどだった人口は、いまや約3億人。やがて5億人になるとも言われています。こんな国はなんの参考にもなりません。20年くらいかけてヨーロッパがやったことを、日本はもっと勉強すべきですね。

持続可能な社会をつくる代表者は政治家です。適任者を選び、自分たちにとって豊かな未来をつくっていくためにも、働く女性たち一人一人がこうした状況を知っておく必要があると思いますよ。

取材・文/栗原千明(編集部) 写真提供/Money&You

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