02 OCT/2021

膣ケアを怠ると体調不良になる? 日本人があまりに知らない「ちつケア」と女性の健康の関係【医師監修】

日本ではいまだに「性」に関することが、「恥ずかしいこと」「隠しておくべきもの」になりがち。

そういった文化的背景もあってか、OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本人女性の婦人科検診受診率は米国に比べて約半数という低さだ。

欧米では乳がんと子宮頸がんの検診受診率が70~80%であるのに対し、日本は未だ40%と、半数以上の人が検診を受けていないという驚きの結果も出ている。

それに加え、女性にとって月経や妊娠、出産に関わる非常に大切な器官である「膣(ちつ)」をケアするという健康習慣が根付いていないこともさまざまな不調をきたす要因に。

産婦人科医の八田真理子さんは、「正しい知識を身につけて膣のケアをすることは、欧米では当たり前だと認識されている」と話す。

八田先生に、そもそもちつをケアするとはどういうことなのか、それによってどんなメリットが得られるのか、聞いてみた。

※この記事は2018年3月7日に公開し、2021年10月2日に更新しています

「ちつケア」って何?

膣 ちつトレ

八田 真理子(はった まりこ)さん
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田 院長。日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医。日本マタニティフィットネス協会認定インストラクター。1990年、聖マリアンナ医科大学卒業。順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科勤務を経て、1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。女性の幸せを願い、サポートするクリニックとして、思春期から更年期までの幅広い女性の診療を行っている。
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「『ちつケア』は、いわば膣の自己管理。膣についての正しい知識を持ち、自分の体のコントロールをすることだと認識してほしい」と八田先生。

適切な「ちつケア」で、膣の状態を健康的に保つことが出来ると、健康面、美容面でも良い効果が得られるそうだ。そもそも、良い状態の膣とは、どんな状態なのだろうか。

「膣が健康的に保たれているときは、膣内部の粘膜に棲みついている常在菌・デーデルライン桿菌が活発に活動しています。

デーデルライン桿菌は乳酸菌の一種で、乳酸を作り出す性質がある、いわゆる善玉菌。健康的な膣内にはそのデーデルライン桿菌がたくさん棲んでいて、酸性に保たれています。

そうすることで、雑菌が進入しても跳ね返し、自らの力で防ぐことができるのです。つまり自浄作用ですね」(八田先生)

しかし、生活の乱れやストレスなどによってホルモンバランスが崩れると、デーデルライン桿菌の活動が低下。すると、膣内が酸性に保たれなくなり、自浄作用も低下してしまう。

そうなると、雑菌が進入して炎症を起こしたり、感染症にかかりやすくなったりと、さまざまな不調が出やすくなるそうだ。

仕事が忙しい現代女性は常に強いストレスにさらされている。

疲れや風邪などでホルモンバランスが崩れてしまうことは、どうしても避けられない。そんなときこそ、膣のお手入れ「ちつケア」を実践すると、健康状態のキープに役立つという。

膣の健康チェックリスト

では、膣の健康状態はどのように確認すればいいのだろうか。八田先生は、次の項目を挙げる。


・外陰部にかゆみがある
・外陰部が赤くなったりただれたりしている
・外陰部に水ぶくれやぶつぶつができている
・外陰部がひりひりする、または灼熱感がある
・おりもののにおいが普段よりきつい
・おりものの色が普段と違う(黄色、茶色、緑色、灰色など)
・おりものが泡だったようになっている
・おりものが白くてカッテージチーズやヨーグルトのようになっている
・一日に何度もショーツを替えるほどおりものの量が多い


これらの一つでも当てはまる場合は、膣の健康状態に異常がある可能性がある。気になる症状がある場合はなるべくはやめに婦人科に行って診察してもらおう。

実践!ちつケア

では、普段から健康的な膣をキープするためにはどうすればよいのだろうか。八田先生がオススメするのは、とてもシンプルな二つのこと。「快食」と「快眠」だ。

「膣のことなのにどうして?と思われる方が多いかもしれませんね。でも、膣の健康とは、つまり、女性ホルモンのコントロールと密接に関わることなのです。この女性ホルモンのバランスは、自律神経のバランスやカラダ全体の健康状態とも関係します」

自律神経のバランスは、規則正しい食生活と、快眠、適度な運動によって良い状態に保たれる。そしてこれが、女性ホルモンの働き、膣の健康と連動するというわけだ。

その上で、カラダの中から膣を鍛えるために、膣周りの筋トレ「骨盤底筋トレーニング」をプラスしてみると良いそう。やり方は以下の通り。ペースは無理のない範囲で、できる時に実践すればOK。

<基礎編>

膣 ちつトレ

<応用編1>

膣 ちつトレ

<応用編2~4>

膣 ちつトレ

このトレーニングで膣周りの筋力が上がると、姿勢が良くなりカラダが引き締まる。ダイエット効果も得られ、まさに一石二鳥だ。

働く女性にとって健康な体は何より大切な資本。おろそかにしがちな健康ケアは、気づいたときにできることから実践してみよう。不調の解消だけでなく、キレイも、自信も、手に入るはずだ。

取材・文/栗原千明(編集部)