女性エンジニアの求人数はコロナ前の約2倍に! 2023年の狙い目業界・職種を『女の転職type』編集長が解説
時間と場所にとらわれない働き方が現実的になり、転職もオンライン化する中、転職のやり方や企業から求められるスキルやマインドはどう変わったのだろう。コロナ禍も3年目となり、ようやく見えてきた「新しい転職のかたち」を紹介する
コロナ不況の影響を受け、航空、旅行、小売り、飲食業界などを中心に、新卒・中途採用をストップしたり制限したりする企業が増えた。
そんな中、「今はまだ転職するべきではないかも……」とタイミングを見計らっていた人も多いのでは?
コロナショック発生から約3年がたとうとしている今、中途採用の市況感はどのように変化しているのだろうか。
『女の転職type』編集長の小林佳代子が、現在~2023年にかけての中途採用市場の動向や、今後女性採用が活発化する“狙い目”の業界・職種などを紹介する。
『女の転職type』掲載の求人職種数はコロナ前の1.4倍に!
コロナショック直後の2020年、企業の採用中止などのニュースを多く目にしました。
2021年から現在にかけて、『女の転職type』に掲載されている求人数には、どのような変化がありましたか?
まず全体感をお伝えすると、2020年で一気に6割近くまで求人数が落ち込んでしまったのですが、2021年から少しずつ求人数は増えています。
そして2022年末時点での『女の転職type』掲載の求人職種数はコロナ前の1.4倍に。過去最高の求人数となっていて、今後も右肩上がりで伸び続ける見通しです。
一方で転職希望者の数は落ち着いているので、現在は求職者に対して求人数が多い「売り手市場」と言えますね。
ポテンシャル重視の未経験者を採用する企業も少しずつ増えており、転職の選択肢が増えているので今がチャンスです。
採用面接など、選考方法にはどんな変化がありましたか?
やはり、オンラインで面接が浸透したのが一番大きいですね。
2022年6月時点でオンライン面接を導入している企業は約8割。そのうち約2割は全ての面接をオンラインで実施しています。
「最終面接のみ対面で実施」など、オンラインとオフラインをうまく使い分けている企業も多いようです。
コロナ禍でリモート勤務が普及しましたが、転職の際もオンライン環境への適応が必要ですね。
転職に限らず、コロナショック以降はITリテラシーがより問われるようになりました。
面接時にオンラインWeb会議のツールが問題なく使えるかどうかだけでなく、特にリモート勤務中心の企業の場合、一人でPCのセットアップができるくらいのリテラシーがある方が望ましいです。
コロナ禍の3年間で採用ニーズが高まった業界・職種は?
2021年の取材では、アパレル、化粧品・ヘアケア関連、飲食業界の求人数がコロナショックで大きく落ち込んだとありました。現在の動向はいかがでしょう?
全体的に、どの業界も採用を再開し始めています。
特に勢いがあるのが、美容・エステ系ですね。求人数が落ち込んでしまったコロナショック直後の2020年春と比較すると、現在は3倍以上の求人数になっています。
マスクでの外出が当たり前になった今、「もし副反応があってもマスクで隠れて見えないから」という理由で美容医療にチャレンジする女性が増えたと聞きます。
クリニックに通う人が増え、結果として採用の活発化につながったのでしょう。
その他、求人数に変化のあった業界や職種はありますか?
営業職の求人数も、コロナ前より増えています。他の職種と比べて年収が高い傾向にあるので、年収アップしたい人を中心に変わらず人気ですね。
以前は顧客を直接訪問するスタイルの営業職が目立ったのに対し、現在はオンライン商談へ移行した企業も多いことから、見込み客に対して主にオンライン上で営業活動を行なうインサイドセールスの求人数が増えている印象です。
営業職にコミュニケーション能力が求められること自体は変わりませんが、特にオンライン上でのコミュニケーション能力のニーズが高まっています。
対面でのアポイントを取りづらくなったからこそ、リモート環境でうまく営業活動を行なう必要が出てきたんですね。
そうですね。そうした変化に伴い、最近では、SNSで強い発信力を持つ営業職の人も見掛けるようになってきました。
SNS上で顧客とコミュニケーションを取ることで、案件獲得につなげている人も少なくないようです。
また、同じような傾向はアパレル販売職にも見られます。
コロナ禍以降、実店舗ではなくECサイトで洋服を買う人が増えましたよね。
そのとき「アパレル販売員のリアルな着こなしを参考にしたい」と、ブランドの公式SNSアカウントや有名アパレル販売員の投稿をチェックしてから商品を購入する人が多いんです。
つまり販売員が「インフルエンサー」としての役割を担いつつあるということ。
今は「個の時代」と言われますが、SNSマーケティングのスキルや発信力は、仕事でも強みの一つになると思います。
2021年の取材では、「女性に人気の職種・事務職は求人数が減少」と言っていましたが、現在はどうでしょうか?
事務職の求人数は増えているのですが、他の職種がそれ以上に伸びているため、全体を占める割合は小さくなりましたね。
また、『女の転職type』内の事務職に関する検索キーワードにも変化がありました。
コロナ前に検索ワード上位だった「受付」「事務」というキーワードが下位になり、代わりに「リモート勤務」などが上位を占めるようになりました。
事務職以上に伸びている、「他の職種」は何ですか?
目立ったところで言うと、エンジニア職です。
コロナ禍でオンライン化が加速したことで、エンジニアの需要は急速に高まりました。IT業界は深刻な人材不足で、2030年までにIT人材は80万人不足すると言われるほどです。
それを反映するように、『女の転職type』に掲載されているエンジニアの求人数も、コロナ前の約2倍ほどに増えました。
また、現在ではエンジニアをサポートするIT事務やITサポートといった、IT業界未経験でもチャレンジしやすいIT寄りの事務職の求人が増えているのも特長です。
2023年以降の転職市場は、どうなる?
コロナショックから現在までの転職動向を聞いてきましたが、2023年以降はどうなると予想しますか?
営業や事務、販売・サービス、エンジニアの求人数は引き続き伸びると思いますし、売り手市場は続くのではないでしょうか。その中でも、特に顕著なのはエンジニアです。
先ほど『女の転職type』に掲載されているエンジニアの求人数が増えていると言いましたが、経験者のみならず、未経験者を歓迎する企業も目立ちます。入社後の研修を手厚く行うなど、チャレンジがしやすくなっていますね。
また、個人向けのプログラミングスクールもよく目にするようになりましたが、中には女性向けのスクールも出てきています。
そうした世の中の変化もあり、最近では「エンジニア=男性の仕事」というイメージは徐々に弱まりつつあり、事務職を志望していた女性がエンジニアに転身するなど、別職種からキャリアチェンジをするケースも増えているのです。
なぜ女性転職者のエンジニア人気が高まっているのでしょうか?
エンジニアはリモート勤務OKな場合が多く、柔軟な働き方がかないやすいのが理由の一つです。
特に女性は、出産や育児などライフステージの変化の影響を受けやすく、将来を見越して働き方を変えたいと考える人が一定数います。
前述の通り採用ニーズも高まっている職種なので、求人数も多くチャレンジしやすくなっているというのも、人気の理由だと思います。
柔軟な働き方を望んでいる女性が多いのですね。
エンジニアに限らずリモート勤務ができる企業は2023年以降もさらに増えていくとおもいますよ。
ただ、これから転職活動を始める人に私が伝えたいのは、それを絶対的な条件にして企業選びをしない方がいいということ。
リモート勤務が可能な企業が増えていくのは事実ではありますが、それが可能な業界や職種は限られますし、求人数も絞られてしまいます。
選択肢が狭まると転職活動がスムーズに進まなくなってしまうこともありますし、働き方だけに固執した結果「やりたい仕事」を諦めてしまうことにもつながりかねません。
理想とする働き方と仕事内容を両方かなえる転職活動をするためには、どうしたら良いでしょうか?
自分の中でうまく折り合い付けて、妥協点を見つけておくといいと思います。
例えば、「フルリモートでなくても、週〇日出社するくらいならOK」などですね。
また、どうしてもやりたい仕事があるなら副業としてチャレンジするのも一つの手です。
コロナショック以降、フリーランスやパラレルワーカーに業務委託として仕事を依頼する動きが昔よりも活発に行われるようになりましたから。
取材・文/安心院 彩 編集/柴田捺美(編集部)
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