派遣社員とは?正社員との違いやメリット・デメリット、向いている人をまるっと解説

総務省の労働力調査によると、派遣社員における女性の割合は6割強。派遣社員として働く人にとっては「女性が多い世界」である一方、派遣社員として働いた経験がない人にとっては実態がよく分からないと感じている人が多いのではないでしょうか?

そこで今回は「派遣社員」について徹底解説。派遣社員だからこそできる働き方や向いている人についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

派遣社員とは?雇用形態でみる働き方の違い

派遣社員とは、簡単にいうと雇用契約を結んでいる会社とは別の会社で働く人のことです。雇用契約を結んでいる会社を派遣会社や派遣元と呼び、実際に働く会社のことを派遣先企業と呼びます。

例えばAさんが派遣社員として働くとしたら、派遣会社のB社に雇用されながら派遣先企業のC社で働くことになります。給与や福利厚生、就業中のサポートなどはB社から提供されますが、業務指示はC社から受けます。

この時、B社とC社は派遣契約を結んでおり、B社はC社にAさんという労働力を提供する代わりに派遣料金を受け取っています。

派遣社員とは?

派遣社員とアルバイト・パートの違い

派遣社員とアルバイト・パートの主な違いは、雇用形態です。派遣社員は派遣会社と雇用契約を結び派遣先企業で働く「間接雇用」ですが、アルバイト・パートは勤務先の企業と雇用契約を結ぶ「直接雇用」です。

またアルバイト・パートは同一事業所内の正社員よりも所定労働時間が短い場合が多く、専門性や経験が無くても応募できるケースが多いのも特徴です。

派遣社員と契約社員の違い

派遣社員と契約社員はどちらも有期雇用にはなりますが雇用形態が異なります。契約社員もアルバイト・パートと同じく「直接雇用」です。

派遣社員は派遣会社の就業規定に依存するのに対し、契約社員は勤務先企業の就業規定に準じます。正社員とほぼ同様の休暇制度や福利厚生のもとで働けるのが契約社員の特徴です。

派遣と正社員の違い

派遣社員と正社員の主な違いは雇用期間と雇用形態です。正社員は「直接雇用」であり、無期雇用となります。正社員には雇用期間が定められていないため、基本的には定年まで働くことが可能です。

派遣社員や契約社員と比較すると、正社員は賞与や退職金など福利厚生が充実しているケースが多いのが一般的です。

派遣の種類

一口に「派遣」と言っても、契約内容によって大きく3つの種類に分かれます。それぞれの内容を詳しく説明します。

派遣の種類

一般派遣(登録型)

「派遣」と聞いてもっともイメージされやすいのが、一般派遣です。

派遣会社に登録後、条件に合う仕事があれば派遣会社と契約し、勤務を開始します。雇用期間が満了したら雇用契約は終了となり、次の仕事が決まるまでは待機状態となります。継続して同じ就業先で働く場合も、改めて労働条件などを定めて契約する必要があります。

向いている人
一般派遣は数カ月~3年まで、さまざまな雇用期間の案件があります。スポット的な案件も多く、趣味や家庭の状況に合わせて働きやすいのが特徴です。

またさまざまな派遣先を経験できるため、スキルや経験を効率的に積みたい人におすすめです。派遣会社に登録後は即日から働き始められるケースも多いため、すぐに仕事をしたい人や副業したい人にも向いています。

紹介予定派遣

紹介予定派遣は、一定期間働いた後は就業先企業と直接雇用を結ぶことを前提とした働き方です。つまり、派遣期間中は試用期間のような位置づけとなり、派遣期間終了後は派遣先企業で契約社員もしくは正社員として働けます

一般的には3~4カ月程度の案件が多く、最長6カ月となります。

向いている人
紹介予定派遣は、派遣社員から派遣先の社員になるまでのプロセスを派遣会社がフォローしてくれます。お互いがマッチするかどうかを吟味したうえで入社を決められるため、いきなり正社員として入社するのは不安な場合や、出産後などでブランクがある場合などにおすすめです。

無期雇用派遣(常用派遣)

無期雇用派遣は、派遣会社に正社員として雇用される働き方です。就業中のみ雇用契約を結ぶ一般派遣と異なり、無期雇用派遣の場合は就業先が決まっていなくても給与が発生します。無期雇用派遣として働くためには、採用選考を通過する必要があるため、派遣の中で一番ハードルが高いのが特徴です。

向いている人
無期雇用派遣は就業期間でなくても給与が発生するため、派遣会社はなるべくブランクを空けることなく派遣先を紹介してくれます。そのため、短期間でさまざまなスキルや経験を積みたい人や安定的に収入を得たい人におすすめの働き方です。

派遣社員の特徴

「派遣社員」と聞くと、なんとなく企業に派遣されて働く人ということはわかっていても、それ以外のことについてはあまりよくわからないという人が多いかもしれません。ここで改めて派遣社員の特徴についておさらいしておきましょう。

雇用主と就業先の会社が異なる

派遣社員の大きな特徴は、雇用主と就業先の会社が異なる点です。働く時間や給与、休日休暇といった待遇面は雇用主である派遣会社と契約を交わしますが、就業先の企業と派遣社員は「指揮命令関係」にあり、仕事の指示や指導を受けます。

就業先企業と派遣社員の間に派遣会社が入ることになり、派遣社員は派遣会社のフォローのもと働けるのが特徴です。

契約期間に定めがある

派遣社員の派遣期間は就業前に契約により取り決め、契約で取り決めた期間が終了するとその派遣先での勤務は終了します。継続して同じ企業での勤務を続ける場合は、新たに契約を結ぶことで引き続き就業することが可能です。

派遣の「3年ルール」とは?
一般派遣の場合、同じ派遣先で3年を超えて働くことはできません。例外もありますが、3年以上の労働を希望する場合は、派遣先企業で直接雇用してもらうか派遣会社で無期雇用に切り替えてもらう必要があります。この「3年ルール」は派遣社員の雇用の安定やキャリアアップを目的に2015年の労働者派遣法改正により新設されました。

3年ルールにより、派遣社員の使い捨て防止や待遇改善などにつながり、派遣社員はより安定した働き方を選択できるようになりました。

待遇・条件は派遣先の正社員と同等

派遣社員の給与や福利厚生は派遣会社の規定に準じるため、派遣先の社員と同じ仕事をしているにも関わらず給与が低かったり、有給休暇が取れなかったりと待遇に格差が生じてしまう点が社会問題となっていました。そこで2020年に施行されることになったのが「同一労働同一賃金」です。

これにより、同じ企業内で同一の仕事をしていればアルバイト・パートや派遣社員などの有期雇用者も社員と同じ待遇を受けられるようになりました

まだすべての企業で遵守されているとは言いがたいですが、例えば休憩室の利用や食堂の割引、資格手当などの福利厚生を受けられる企業も少しずつ増えつつあります。

派遣社員に多い業界や職種

派遣の仕事にはさまざまな業界や業種があるため、適性や希望に合わせて働くことが可能です。一般社団法人 日本人材派遣協会の「派遣社員WEBアンケート調査(2023年度)」によると、派遣先の事業で最も多いのは「情報通信業」17.9%で、「製造業」17.4%、「卸売・小売業」9.2%と続きます。

派遣先で行う業務としては「OA事務」32.2%が最も多く、2位「庶務事務」9.3%、3位「その他オフィス業務」9.1%と事務系の業務が上位を占めています。

また派遣先の会社規模は、従業員数1,000人以上の「大規模」が4割強を占めていました。「事務職」や「大手企業」は転職市場において非常に人気の高い条件ですので、派遣社員という形で叶えている人が多いのかもしれません。

派遣社員の待遇は?社会保険や有給休暇はある?

先ほど述べたように、「同一労働同一賃金」の制度があるため、基本的には派遣社員の待遇が著しく悪いケースはほとんどありません。また社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称)にも、雇用契約期間や就業日数、労働時間などの条件を満たせば加入できます。

その他福利厚生に関しては派遣会社の規定に準ずることになりますが、労働基準法で定められている内容は派遣社員にももちろん適用されます。

例えば有給休暇に関しては「雇入日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した派遣スタッフに対して、法定の年次有給休暇を与えなければならない」と定められているため、フルタイム勤務の派遣社員であれば最低10日間の年次有給休暇が付与されることとなります。

派遣社員のメリット

以前は正社員との格差が大きかったり、雇用が安定しなかったりとマイナスイメージがあった派遣社員ですが、さまざまな法改正により、多くのメリットを享受できる働き方となりました。具体的にどのようなメリットがあるかを確認していきましょう。

派遣のメリット

自分の適性・希望に合った仕事を選べる

派遣社員は、事前に担当者と希望条件をすり合わせたうえで契約を結びます。適性や希望に合った仕事だけができる点は、派遣社員の大きなメリットといえます。

一般社団法人 日本人材派遣協会の「派遣社員WEBアンケート調査(2023年度)」でも、30代未満の「派遣で働く理由」は「やりたい職種や業務内容を選べるため」が1位でした。

社員として入社すると、予期せぬ異動などにより希望していない仕事を任されるケースは珍しくありません。派遣社員であれば、確実に自分が希望する職種や仕事に就ける点にメリットを感じている人が多いようです。

さまざまなスキル・経験が積める

中途採用では募集をしていないポジションを派遣社員が担っているケースはよくあります。また派遣会社のフォローがあるため、業務内容のスキル・経験が浅くても契約にいたることも珍しくありません。

派遣社員という働き方であれば、社員としてでは入社できなかった企業やポジションで実務経験を積めるため、キャリアアップにも役立ちます。

給与が高い傾向がある

仕事内容やスキルなどにもよりますが、派遣社員はアルバイト・パートよりも時給が高めに設定されていることが多くあります。

理由には諸説ありますが、派遣社員は契約期間が決まっているため、雇用が不安定になりやすいデメリットを補うために時給が高く設定されているようです。働ける期間が限られている場合は、アルバイト・パートなどよりも派遣社員のほうが効率良く報酬を得られる点は大きなメリットといえます。

担当者のサポートがある

派遣先を決める際は、派遣会社の担当者と相談しながら決められます。担当者は派遣社員と派遣先企業の窓口となってくれるため、直接は聞きづらいことや不安をクリアにしたうえで仕事を開始できる点は大きなメリットといえます。

もちろん業務開始後もフォローがあるため、「契約時の内容と業務が異なる」「派遣先の社員からハラスメントを受けた」などの相談にものってもらえます。

派遣社員のデメリット

メリットが多い派遣社員ですが、もちろんデメリットも存在します。メリット・デメリットをふまえたうえで検討できるよう、しっかり確認しておきましょう。

派遣のデメリット

スキルや経験が給与に直結する

未経験の分野にチャレンジしやすい点は派遣社員の大きなメリットですが、給与はスキルや経験に応じて設定されるため、注意が必要です。

さまざまな経験が積めるがゆえに計画性なくさまざまな仕事にチャレンジした結果、「何もスキルも定着しなかった」という事態が起きないよう注意しましょう。キャリアのために相応のスキルや経験を身につけるという意識も大切です。

雇用が安定していない

派遣社員は、繁忙期や社員の産育休などで一時的に人手が足りない場合に需要が生まれやすい特性があります。いくらスキルが高くても、外的な要因で派遣期間が終わってしまう可能性があり、一つの職場で長く働きたいと考えている人には向かない働き方です。

就業先ごとに人間関係を構築する必要がある

派遣社員は派遣先が変わるごとに新たな人間関係を構築する必要があります。せっかく職場に慣れても、派遣期間が終わればまたイチから人間関係を構築したり、職場ごとのルールを覚えたりする必要があるため、負担が大きいと感じる人もいるでしょう。逆に職場に苦手な人がいても、派遣期間が終われば関係が無くなる点はメリットともいえます。

派遣の働き方に向いている人の特徴

先述したように、派遣社員にはメリット・デメリットがあり、向いている人がいれば向いていない人もいます。どのような人が派遣社員に向いているのかを見ていきましょう。

派遣に向いている人の特徴

プライベートを重視したい人

派遣社員は、事前に勤務時間や休日を決めたうえで働くため、想定外の勤務が発生しづらいという特徴があります。

このことから終業後や休日の予定が立てやすく、プライベートを大切にしたい人に向いている働き方といえるでしょう。

効率的にスキルや経験が積みたい人

「派遣社員のメリット」でも述べたように、派遣社員は希望や条件に合った仕事が選べます。このことから目指すキャリアから逆算して仕事を選ぶようにすれば、効率的にスキルや経験を積むことが可能です。

社員であれば未経験でチャレンジするのが難しい業界でも、派遣社員であれば可能なことも珍しくないため、まずは派遣社員としてスキルや経験を積む方法も有効です。

大手企業で働きたい人

一般社団法人 日本人材派遣協会の「派遣社員WEBアンケート調査(2023年度)」によると、派遣先の会社規模で最も多いのは「大規模」46.2%であり、「中規模」34.1%と続きます。中途採用を行っていない企業であっても派遣社員であれば募集しているケースは珍しくないため、入社を諦めていた大手企業や人気企業で働くチャンスがあるかもしれません。

自分の適性を見極めたい人

派遣社員は、数カ月~3年程度の派遣期間が終われば別の仕事をすることができます

さまざまな仕事を通じて多彩な経験が積めるため、「やりたいことが見つからない」「得意なことがわからない」という人が自分の適性を見極めるのにも役立ちます。派遣社員としてさまざまな職場を経験することで、幅広い視点を養うことも可能です。

将来的に正社員として働きたい人

今は難しくとも、派遣社員として実務経験を積むことで将来的に正社員として働くための足がかりになることもあります。

また、紹介予定派遣は社員として直接雇用されることが前提です。希望の仕事が見つかったら応募してみるのも良いでしょう。一般派遣であっても「3年ルール」が適用されれば、派遣先もしくは派遣会社で社員登用される可能性も。正社員への一歩として、まず派遣社員を選ぶのも一つの方法です。

働ける時間が限られている人

派遣社員であれば、働く場所・時間・期間など希望に応じて仕事を選べます。「本業はあるけど収入を増やしたい」「趣味の合間にお金を貯めたい」など、限られた時間・期間のみ働きたいと感じている人にもおすすめです。

良い派遣会社の選び方

「派遣社員」と一言で言っても、所属する派遣会社や担当者によって働きやすさは大きく異なります。安心して働ける派遣会社の特徴を紹介します。

良い派遣会社の選び方

働きたい職種の求人が充実している

派遣会社によっては、特定の職種や業界に強い派遣会社があります。希望の職種や業界が決まっている人は、特化型の派遣会社をおすすめします。特化型の派遣会社であれば、担当者もその業界や職種に精通していることが多く、キャリアにおいてアドバイスしてもらったり相談にのってもらえたりすることもあります。

優良派遣事業者認定を受けている

優良派遣事業者とは、法令遵守はもちろん派遣社員のキャリア支援やトラブル予防など、81項目に及ぶ要件・基準をクリアしていると厚生労働省が認めた派遣会社のことです。優良派遣事業者の審査・認定は3年ごとに更新されるため、継続的に要件・基準をクリアしていなければ認定を受けることができません。派遣社員として安心して働くためにも、優良派遣事業者認定を受けている派遣会社を選ぶようにしましょう。

キャリアアップ制度やサポート制度がある

2015年の法改正により、派遣会社もしくは派遣先企業は派遣社員に対してキャリア形成支援を実施する旨が義務づけられました。社員研修やOJT、e-ラーニングなどが一般的ですが、独自の教育体制を設けている会社もあるため、自分に合ったキャリアアップ支援を行っている派遣会社を選ぶことが大切です。

また担当者との相性や対応力は働きやすさにも直結しますので、「合わない」と感じた場合は勇気を持って変更をお願いしたり、派遣会社を変えてみたりすることをおすすめします。

まとめ|「派遣」をうまく活用してキャリア形成に役立てよう

一昔前は「派遣」という働き方は「安定しない」「給与が低い」といったマイナスイメージがありましたが、さまざまな法改正やライフスタイルの多様化により、派遣社員を選ぶことによるメリットも多くなりました。

特に自分の得意分野を把握できたり、社員への足がかりとなったりする点は、さまざまな仕事を経験できる派遣社員ならではではないでしょうか。もし今キャリアに行き詰まっていると感じるのなら、今後のキャリアを充実させるための一つの方法として「派遣社員」を検討してみてもいいかもしれません。