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JUN/2018

【夏生さえりさんインタビュー】入社1年目に会社を辞めたさえりさんの第二新卒転職が成功した理由

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日本ではまだ、入社してすぐに会社を辞める若者への風当たりが強い。第二新卒採用も活発化しているが、「とりあえず3年は同じ会社で働け」そんな意見も各所で聞こえてくる。しかし、働き方や生き方の多様化が進む昨今、“自分らしいキャリア”のために転職・退職をすることに、勤続年数なんて関係ないはず。

ライター・エッセイストとして活躍する夏生さえりさんも、実は新卒で入社した出版社を1年ほどで辞めた過去を持つ。当時の決断の背景にはどんな考えがあったのか、何を実践し、いまの“自分らしい働き方”にたどりついたのか、聞いてみた。

夏生さえりさん
夏生さえりさん
フリーライター。出版社勤務・Web編集者を経て2016年に独立。Twitterの恋愛妄想ツイートが話題となり、フォロワー数は合計18万人を突破(月間閲覧数1500万回以上)。女性向けコンテンツの原作を多く手掛ける。
著書『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『口説き文句は決めている』(クラーケン)、『やわらかい明日をつくるノート』(大和書房)他。
■Twitter:@N908Sa@saeligood
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会社の役に立ちたいのに、立てない。歯がゆさを抱えて過ごした入社1年目

新卒で入ったのは、主に学習参考書を制作している出版社。大学時代に書いていたブログをきっかけに「新しくWebマガジンを作るから、ライターとして手伝ってくれない?」と声をかけていただいて、大学4年の時にインターンを始めたのがその会社との出会いでした。その事業は途中でなくなってしまったけれど、一般書をつくる部門の立ち上げに関わらせてもらえることになってそのまま入社。人数が15名程度と少ない職場で、自由に企画を出せる環境だと聞いてわくわくしていました。

夏生さえりさん

ところが入社後は、会社の方針で「30~40代男性向けのビジネス本」を制作することに。新卒で入ったばかりの私に、男性のビジネスにまつわる知識は皆無(笑)。それどころか正直、「面白そう」とも思えなかったんですよね。必死に企画をひねり出すものの、それが通るはずもありません。何年か働けば好きな企画を一人でできるようになるのだろうか、とも考えましたが、上司を見ていても自分がイキイキ働いている未来がどうもイメージできませんでした。小さな出版社だったので、一人一人の仕事がすごく大事なのに、全く戦力になれないことも、会社が出版する本を面白そうだと思えないことも、すごく歯がゆかったですね。

社内での部署異動も考えたけれど、それも面白そうだと思えない。というのも、比較的古い体制の会社だったので「波風を立てないことが何より大事」という空気が全体にあったんです。だから、面白そうだと思う企画があっても、発言をぐっと我慢してしまうことも少なくありませんでした。

もちろん新入社員がいきなり会社の力になれないことも、いきなり好きな企画をやらせてもらえないことも、当然分かっていました。だけど、そうやって自分を殺している間に、のびのびした発想や自分の良いところが消えてしまうかもしれないとも感じていたんです。当時は仕事をする上での「自分の良さ」がはっきり分かっていたわけじゃなかったけれど、きっとどこかに、もっとのびのびと働ける場所があるんじゃないかとは思っていました。

人は身を置く環境が変わるだけで、いきいきしたり、元気がなくなったりするもの。特に私は周囲の環境に影響されるタイプ。それは学生時代のアルバイト経験や、人間関係からよく分かっていましたから。

夏生さえりさん

退職という選択肢が頭をよぎるようになったのは、入社して半年くらい経った頃だったかな。ここにいても、自分にとっても会社にとっても良い方向に転ばないのではないかと感じ始めました。最終的に退職の決め手になったのは、キャリアに悩んでいることを上司に思い切って打ち明けたときに投げかけられた言葉でした。

「10年、20年経ってみたら、分かることもあるんじゃない?」

そう言われたんです。

とても優しく言ってくださったし、確かに時間が経ってから分かることもたくさんあると思う。きっとそんなに焦るなと伝えたかったのだと思います。けれど、10年、20年、ここで働き続けるイメージが、全く湧かないことに気づいたんです。ここにいたら、化石みたいになっちゃう! 早く辞めなくちゃ! と思うくらい、私にとってはインパクトのある言葉でした。

今の仕事を辞めるためだけに、妥協して次の仕事を決めないで

銀行員として働いていた父に会社を辞めたいと告げると、「辞めるなら、次を決めてからにしなさい」と言われました。それはもっともな意見だし、私を心配してのことです。それで、転職サイトを見て、Webの編集ができる会社の選考をいくつか受けたけれど、どうもピンとこない。とはいえ、どうしてもNGな理由も見つからないから、面接がうまくいった会社にもう入社してしまおうか、とも考えました。

だけど、それって、今の会社を辞めたいから決めようとしているだけだったんですよね。そんなふうに転職先を決めても、また同じことの繰り返しになるかもしれない。だから、思いきって転職活動を辞めました。

つらいことから逃げるためにいったん妥協するんじゃなくて、「逃げ」と言われたっていいから今の環境を一度離れて、落ち着いてから次の職場を丁寧に見つけたいと思ったんです。

夏生さえりさん
改めて会社の人に退職の意思を伝えたときは、「1年で辞めるような人は、どこに行ったってだめだ」「社会人としての我慢が足りない」と言われました。「そんなことはない」って思っていても、説得力のある言葉を持っていません。結果としてその言葉は呪いみたいに心に残って、もしかして本当にそうなのかも。社会人として、私はだめなのかもしれない、と何度も何度も考えました。

でも、「もうここにいるのは違う」という気持ちが大きくなってしまい、思い切って退職したんです。

もちろん、次を決めずに会社を辞めるのは勇気が要りました。貯金も全然なかったから、一時は残高がマイナスになったくらい(笑)。でも、リスクを考え始めたら「動かない理由」ばかり浮かんでくるから、勢いで決めてしまったのが逆に良かったと今となっては感じますね。よく「(先を決めないなんて)怖くないですか?」と聞かれますが、もちろん怖いですよ。でも、怖がっていても、現実が迫ってくればやるしかなくなるので(笑)。意外となんとかなるものだと私は思いますよ。

SNSの“退職しました”投稿が、未来を切り拓いてくれた

辞めたらすぐに、SNSやメッセで、周りに退職したことを伝えました。「次が決まっていません!」とも書いたんじゃないかな。そうしたら、同時に2人の方から株式会社LIGを薦められたんです。二人とも良い人だったから、素直に信じて遊びに行って、面接を受け、すんなり転職が決まりました。

その時、前の会社を辞めて、まだ2日しか経っていなかったんですよ。なのに、私を迎えてくれる会社があって、しかもそこがすごく楽しそう。

夏生さえりさん

「1年で辞めるような人は、どこに行ったってだめだ」

そんなのやっぱり嘘じゃん!って(笑)、すぐに呪いが解けました。

振り返れば、ネットに書いて自分の状況を発信したのが、すごく良かったと思います。「皆に言ってみたら、何か良いアドバイスがもらえるかも」とか「誰かが励ましてくれるかも」って、軽いノリで書いただけだったんですけどね。でも、誰にも言わずにいたら、もっと気持ちが苦しかったかもしれないし、LIGに誘われることはありませんでした。「私はだめな人間だ」ってひっそりと、自分の可能性に蓋をして生きていたかもしれません。

自分が仕事に何を求めているのかを知って、フィットする場所を選ぶ。

LIGは、本当に面白い会社でしたね。若いメンバーがたくさんいて、オフィスもおしゃれ。皆がおしゃべりしながら楽しそうに働いている姿を見て、私が知っている「会社」とは全然違う! と感じたのを覚えています。

LIGに入るまでは、会社って、しーんと静かで、みんな淡々と働いているのが“普通”だと思っていたんです。前職がそうだったから。でも、そんなの本当に小さな世界の、小さな事例の一つに過ぎないんだと分かりました。

夏生さえりさん

仕事はすごく大変になったけれど、それでも楽しかったです。前職は定時で帰れるし、お給料もたくさんいただけて、アフター5がとても充実できる環境でした。反対に、当時のLIGでは毎日夜遅くまで働いて、お給料も減ったけれど、それが全く苦じゃなかった。私が求めているのは、福利厚生の充実とか、雇用条件の良さじゃなくて仕事の面白さだったと、この時はっきり分かりました。

でも、自分が仕事に何を求めるかは人それぞれです。安定した環境や、変化の少ない職場で働くことが自分の幸せ、という人だってもちろんいていい。でも「条件がいいのだから辞めるな」という周囲の意見を鵜呑みにするのは違いますよね。だからこそ、一人一人が自分が楽しいと思えることや、ストレスだと感じることをよく知っておくのが大事だなって思います。

自分には「まだ頑張れる?」じゃなくて「のびのびできてる?」って聞いてみて。

若者が短い期間で会社を辞めようとすると、「逃げだ」「根性がない」と叩いてくる人はまだたくさんいますね。でも、辞めた方がより良い自分になれたり、自分を好きになれると思うなら、その場を離れることは“逃げ”ではないと私は思います。

でも、もちろん「すぐに辞めよう」を推奨しているわけではありません。じっくり同じ場所にいるからこそできることは増えていくだろうし、いきなり戦力になることだけが会社の役に立つわけではありません。それに、「辞めたい」という気持ちは多かれ少なかれ誰しも時には抱くものだと思うんです。でも、逃げた後にそれが“負い目”になったり後悔すると感じるなら、もう少しそこにいた方がいい。もっと頑張れたのに、頑張らなかったという経験は、後から悔いになるんですよね。我慢できた経験が自信に変わっていくことも、あると思っています。

夏生さえりさん

ただ辛い時に「どこまで頑張れるか?」という考え方では「まだやれる」とか「他の人も頑張っているから」などと思って、自分を追い詰めてしまう。だから、「まだ頑張れる?」より、「私、のびのび働けてる?」って、自分に尋ねてみるといいですよ。

バイトでもサークルでもいいから、自分がイキイキしていた瞬間を思い出してみてください。その時と同じくらい、今の自分がのびのびと楽しめているかを考える。もちろん悩む時期も怒られて凹む時期もあると思いますが、そういう短期間のことではなく、長い目で見た時に「のびのびできているか?」です。そういう状態で仕事ができれば、きっと結果もついてくるから、自分も会社もハッピーだと思います。

仕事は人の役にたつためにするもの。“好きなことをする”だけじゃダメ

仕事の向き不向きとか、自分の好きなことなんて、すぐには分かりません。心に決めたものがある人はまっすぐ進んでいけばいいけれど、私はそうじゃなかった。文章は好きだったけれど、編集がやりたいかと聞かれれば、よく分からなかったんです。でも、知らないなりに「楽しそうだな」と思う方に進んで、一生懸命やってきたから、道が拓けてきました。今では編集ではなく、もっと憧れていた“文章を書く”がメインの仕事になっていますが、それすらもはじめから目指していたわけではなく、「いつのまにかたどりついていた」という感じです。

夏生さえりさん
自分の道を探していくときのポイントは、「やりたくない」を尊重すること。やりたいことを決めるより、やらないことを決める方がずっと簡単です。そういう小さな基準だけ持って、あとは信頼できる人から薦められるままに、いろいろなことにチャレンジしてみる。そうすれば、予想外の素敵な出会いがあるかもしれません。

私は「好きなことで働く」という文脈でメディアに取り上げていただくことが多いけれど、好きなことをやることだけが大切だとは思っていません。だって、仕事って誰かの役に立つためにするものだから。その対価として、お金をいただいているんです。役に立つかどうかはさておき“好きなことをするだけ”なら、趣味でもいいですからね。

それに、人に貢献できたときって、嬉しいじゃないですか。自分が役に立てることの中から好きなことが見つかれば、“自分らしい働き方”が実現できるんじゃないかなと思います。

取材・文/菅原さくら 撮影/栗原千明(編集部)

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