30代自称“シゴト中毒女子”が明かす「それでも私たちが仕事にハマる本当のワケ」

毎日終電まで残業、週末も仕事ばっかり、仕事が大好き過ぎて彼氏なんかいなくてもいいくらい ――。プライベートも忘れて、仕事に生きがいを感じる、“シゴト中毒女子”。
女性の活躍が目立つ昨今、プライベートそっちのけで仕事に熱中する女子も少なくない。そこで、仕事漬けの日々を送る3名の覆面座談会により、彼女たちの仕事とプライベートの実態に迫る。
仕事は頑張りたいけど、「こうはなりたくない!」 というシゴト中毒女子あるあるから、目の前の仕事を懸命にやっているからこそ描ける未来まで…自称“シゴト中毒女子”たちの本音を聞いた。

【座談会参加者】
Aさん(30歳)
Web制作会社の営業。転職経験はあるものの、新卒からずっと営業一筋で8年目

Bさん(32歳)
広告会社の営業。人材関連会社の営業などを経て、昨年今の会社に転職したばかり

Cさん(30歳)
IT関連企業勤務。新卒から4年間配属された営業での激務から抜け出し、現在はバックオフィス系へ異動。参加者の中で唯一の既婚者

夜中の3時でもクライアントからの電話は出る
休日は疲労困憊でベッドから起き上がれない

――皆さんの現在の忙しさはどれくらいなんですか?

Aさん:昨年はこれまでの人生で忙しさがMAXだったので、週に2回は会社で徹夜してましたね。深夜2時くらいまでに仕事が終わればタクシーで帰ることも考えるけど、朝5時を過ぎると「もういいや」と思って、そのまま次の日の仕事に突入しちゃう。

Bさん:私も以前は徹夜しましたけど、30歳過ぎたら体力も気力ももたなくなって。意地でも終電に乗って帰ります。でも、終わらなかった仕事を持って帰るので、結局また家で仕事するんですけど(笑)。

仕事中毒

Cさん:今は部署が変わって少し仕事のペースが落ち着いたけど、私も営業にいたころは深夜残業の連続。家に帰り着いたら、服を着たままベッドに倒れ込んで、5秒後には爆睡という毎日でしたよ。一度、冬にコートを着たまま寝ちゃったら、裾がヒーターに触れていたらしく、朝起きたらコートが焦げてたこともあったなあ。あれは危なかった。

Aさん:私は広告業界がクライアントなので、朝も夜も関係ないんですよ。お客さんも夜中の3時や4時に平気で携帯に連絡してくる。でも、そこで気付かないふりをして放置して、朝になったら取り返しのつかない状況になっていたらどうしよう……と思うと、やっぱり出ちゃう。だから私、常に眠りが浅いんです。

Cさん:土日も関係なく携帯にかかってきますよね。携帯の画面を常に気にしている状態。映画館に入っても、結局その2時間は「連絡入ってないかな」とドキドキして全然作品に集中できないし。

Bさん:それどころか私、土日なんて疲労困憊でベッドから起き上がれないですよ……。

Aさん:分かる! 寝ても寝ても寝足りない感じ。

Bさん:それでも昼過ぎくらいに起き出すと、「仕事の勉強しようかな」って思っちゃうんですよね。せっかく休日にカフェにいるのに、ビジネス書や専門書を読んじゃうの。それで今まで分からなかったことが理解できて、「へー、なるほど」って納得できると、それがストレス発散になるんですよ。我ながらシゴト中毒だなあとは思っているんですけど(笑)。

忙しすぎて自分の誕生日を毎年忘れる
「彼氏より仕事」が当たり前に

――じゃあ、プライベートはほとんどないんですか?

Aさん:プライベートがないというか、約束が守れないんですよ。友達から平日の夜に飲みに行こうと誘われても、「20時スタートね」なんて言われたら、ほぼ無理ですから。

Cさん:金曜の夜って、飲んでいて終電を逃した人たちが多いのでタクシーがなかなかつかまらないんですけど、そういう時は正直イラッとしますね。「こっちは遊んでるんじゃない、残業して疲れてるんだから譲ってよ!」って。

Aさん:休日出勤の帰りに、電車の中でディズニーランド帰りの人たちがグッズを持ってキャッキャしているのを見ると、疲労が倍増します……。

Bさん:自分の誕生日さえ忘れますからね。仕事が終わって、「そういえば、母親からメールが来てたな」と思ってチェックしたら「誕生日おめでとう」と書いてあって、そこで初めて気付く。コンビニで一人用のケーキを買って帰ったら、余計に寂しくなりましたけど。ちなみにクリスマスも、ほぼ同じことが繰り返されます(笑)。

Cさん:私は営業にいたころに、今のダンナからプロポーズされたんですが、そのころはあまりの激務でとても結婚を考えられる状態じゃなかった。だから異動が決まってすぐに入籍しました。「待たせてごめんね」って感じでしたが、今思えば、彼も同じ業界で私の仕事に理解があったから何とか交際を続けられたのかも。

仕事中毒

Bさん:そう言えば、以前つき合っていた彼氏に「俺と仕事のどっちが大事なの?」って聞かれたことあるな~。「あなたと仕事は別々のフォルダに入っていて、どっちも大事なんだよ」と説明しましたけどね。彼の方は私ほど残業が多くなかったし、土日もちゃんと休める人だったから、私がどうしてこんなに働くのか理解できなかったのかも。結局別れちゃいましたけど。

Cさん:あー、何か分かる。自分より暇な男はイヤかも。これってまさにシゴト中毒女子ならではかもしれないけど。

Aさん:男性を見る目は厳しくなりますよね。仕事では男性と対等だし、営業だと彼らは数字を競い合う相手でもあるので、プライベートでもその感覚が抜けないのかも。私も彼氏に「あなたの考え方は組織の一員としてどうかと思う」みたいなことを言ったら、デート中なのに相手が怒って帰っちゃったことありますよ。こちらは対等なつもりでも、男性からすると上から目線で物を言われたように感じたんだろうなあ……。ちょっと反省。

深夜2時過ぎのストレス解消法は
カップラーメンにお菓子にFacebook!

――そんなハードな日々で溜まったストレスはどうやって解消するんですか?

Aさん:そうだなあ、タバコとか? 今の会社に入って吸い始めたんです。企画書を書き上げた時とか、達成感を噛み締めたいじゃないですか。でも会社だとビールを飲むわけにいかないから、タバコに手を出したというか。

Cさん:私はお菓子ですね。営業職のころは、ひたすらお菓子を食べまくってました。スナック菓子を一日に4袋とか平気で食べちゃう。今思うと異常だけど、何かを口にしていないと、イライラして落ち着かない。

Bさん:私は深夜2時になったら、自分へのご褒美として、カップラーメンを食べていいことにしてる。

Aさん:夜中の2時過ぎはFacebookタイムだな。今の悲痛な心の叫びを吐き出すの。誰かに胸の内を聞いてもらわないとやってられない!だからFacebookアカウントもプライベート用と仕事用に分けている。

Cさん:私は深夜2時になると、勝手に涙があふれてきて……。

Bさん:それ、すごく危険な状態だから(笑)。普段はそれほど自覚がないけど、私たち、やっぱり知らないうちに結構なストレスを溜めてるのかもね。

「30歳になる前に、一度死ぬほど働いてみよう」
そう思ったのに、30代になってもシゴト中毒から抜け出せない

――「シゴト中毒」になったのはいつからですか?

Aさん:私は新卒の時から。周囲がものすごく働く人ばかりだったんですよ。だから私も、朝7時半に会社へ行って、深夜1時半にタクシーで帰るという生活を毎日続けました。最初の職場だったから、そういうのが当たり前なんだと思っちゃって。

仕事中毒

Bさん:私はもともと実力勝負の仕事がしたくて営業職に就いたんですが、20代後半になって「今のままの自分でいいのかな」と迷い始めた時に、「よし、30代になる前に、一度死ぬほど働いてみよう」って考えたんです。そうすれば、自分に生きる力みたいなものが身に付くかもしれないって。それで忙しい会社に転職してシゴト中毒になったわけですが、今となってはこの生活から抜け出す術が分からなくなってしまった(笑)。

Cさん:でも、お2人は自発的だからエラいですよ。私の場合は、営業に配属になったから、仕方なくハードに働いていたというだけ。配属になってすぐ、「こんな大変な仕事はもうイヤだ」と思って、半年目くらいからずっと異動願いを会社に出し続けて。でもなかなか希望が通らなくて、最後は「もう辞めます!」と言って会社を休むという強硬手段に出た。半分は本気で辞めるつもりだったんですが、人事から「異動させてあげるから退職は考え直してほしい」と連絡をもらって、何とか同じ会社で仕事を続けることができてます。

「ありがとう」は嬉しいけれど
それだけでは頑張れない年齢になってきた

――正直なところ、“シゴト中毒”である自分のことを、どう思っているんですか?

Aさん:うーん……、そこは複雑なんですよね。なんだかんだ言って今の仕事は向いていると思うし、好きだから続けているんだけど、他人に「仕事、楽しいでしょ?」と聞かれて、素直に「イエス!」って言い切れる年齢でもなくなってきていて。

Bさん:ちょっと分かる。お客さんに「ありがとう」と言ってもらったりすると、この仕事をしていて良かったとは思うけど……。

Aさん:確かにお客さまの「ありがとう」は嬉しいけど、30代になって経験もスキルも上がってくると、それが段々と当たり前になってくるんですよね。だからこのまま35歳や40歳になった時に、「ありがとう」のためだけに自分が頑張れるのかが分からなくて。最近ちょっと悩んでいるというのが正直なところ。

Bさん:DeNA創業者の南場智子さんが講演で言っていたんですが、女性にとって30代は悩む時期らしいですよ。仕事だけでなく、結婚や出産といった選択肢も出て来るし、ここからどんなキャリアを積むべきか誰でも悩むと。でも、悩んだ末に突き抜けた人は、また走り出すことができると言ってました。

Aさん:そうか、じゃあ私もブレイクスルーする時が来るのかな……。最近は営業だけじゃなくて、自分から会社に志願して商品開発の仕事もやらせてもらってるんです。そこでの経験を今後のキャリアに生かせるんじゃないかと思って。お客さまの「ありがとう」以外のものを見つけるなら、こうして新しい知識やスキルを身に付けることも、仕事を頑張る理由になるんじゃないかと模索してる最中です。

Cさん:別の職種に移った今だから言えるのかもしれないけれど、あの地獄のような営業時代を経験しておいて良かったと思うことは多いですよ。私はお2人と違って営業の仕事が嫌いで仕方なかったけれど、根性だけはあったので、何とか4年間はやり切ることができた。今の仕事も残業は多いし、世間一般の人たちに比べれば十分忙しいけれど、「あの4年間を乗り越えたんだから」と思えば何でもない。もがき苦しんだ経験は、決して無駄にならないんだと感じています。

最終的にどんな人生を選んでも
「自分で何とかできる」と思える自分でありたい

――では、今後はシゴト中毒を卒業して、別の生き方や働き方を選ぶこともあり得ますか?

Bさん:私はいつか結婚したいので、仕事をペースダウンして、家庭の優先度を上げる可能性はあると思います。ただ、現時点では「仕事をすることは呼吸をすること」と言えるくらい働くのが自然なことになっているので、完全に仕事を辞めるという選択肢はないかも。

Aさん:私は仕事のペースを落とした時に、年収もダウンするのが正直怖い。今の生活水準を落とすことに自分が順応できるのかなという不安はあるな。

Cさん:不安といえば、もし専業主婦になったり、定時で帰れる仕事に転職した時、「こんなに時間があって、何をしたらいいんだろう?」という怖さはあります。

Bさん:分かる! 世の中の人たちは何してるんだろう? 私は家に帰ってから寝るまでの平均時間が1時間未満なので、全く想像がつかない(笑)。

Cさん:テレビを見たりとか? 専業主婦になった友人たちと集まると、昼ドラの話で盛り上がったりするんですよ。私は既婚者ですが、あの世界に入りたいかというと、ちょっと違うかな~。

仕事中毒

Aさん:私は専業主婦になる選択肢もアリだと思う。ただ、そうなった時も、もしダンナがリストラされた時にパートしかできない自分じゃなくて、「私が稼いで食べさせてあげる」と言えるようにしておきたい。今がむしゃらに働いているのは、将来どんな人生を選んでも、最終的には自分で何とかできるだけの覚悟を持つためなんじゃないかなって最近思うようになりました。

Cさん:私が尊敬している女性の先輩社員が、こんなことを言ってましたよ。「女性はいつか家庭と仕事を両立しなくてはいけない時がくるから、家庭がないうちに仕事のキャパシティを広げておきなさい。そうでないと、絶対に両立なんて無理だから」って。

Aさん:うんうん、すごく共感できる!

Cさん:その先輩は、こんなことも言ってたんです。私が「この忙しさは普通じゃない」って愚痴をこぼしたら、「でも、普通のことをしていたら、普通で終わっちゃうよ」って。

Aさん:なるほど~、カッコいいなあ。今こうして死ぬほど働いた経験が、後々の人生を支えるんだと思って頑張るか。

Bさん:でもまあ、本当に死なない程度にしないとね(笑)

自らを“シゴト中毒女子”というほど、目の前の仕事に熱中できる時間は人生の中でそう長くはない。仕事を好きになり、全力で向き合ったからこそ、次の選択肢が見えてくる。

ただ何となく働いていても、常に「これでいいのかな」と不安感ばかりが募るもの。一度思いっきり仕事にのめり込み、自分の働き方や仕事の価値観を追求する道のりこそがキャリアステップになるのではないだろうか。

取材・文/塚田有香 イラスト/村野千草(有限会社中野商店)