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AUG/2018

日々、家にやってくる人たちをもてなして ――「島の新しい郷土料理」を発明した、75歳の料理研究家

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あなたを動かす「しごと」は、何ですか?
地域のライフワークに出会う旅

渋谷の会社勤めから一転、瀬戸内海の小さな島に移住して「自分のしごと」づくりに励む著者が、年齢もさまざまな地域暮らしの先輩たちに、ライフワークを訪ねてまわります。当たり前の日常を飛び出し、外の世界に目を向けてみると、本当に自分を豊かにする「暮らし」と「しごと」のヒントが見つかるかも

 男木島

男木島民/麦麹食品店準備中
石部香織
 
1988年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒。2013年より都内制作会社で、WEBサイト制作を中心としたプロジェクトの企画ディレクションを行う。2016年12月、香川県高松市の男木島へ、地域おこし協力隊として単身移住。島内で、麦麹食品店と大麦畑を準備中。料理を教わることと、写真が趣味。
Instagram:@ishibekaori
Twitter:@ishibekaori

前回から引き続き滞在している、香川県の自然豊かな島、豊島(てしま)。
この島で、島民たちになじみ深い郷土料理を、新しい名物に仕立てた方がいると聞いて、私は家浦地区のお家を訪ねました。

はじけるような笑顔で出迎えてくれた山口幸子さんは、豊島の新しい郷土料理「桜寿司」の生みの親。その「桜寿司」は、イベント等で出店しては、すぐに売り切れてしまう人気を誇ります。

山口さんが、料理を通して人々をもてなし続けるその愛情は、一体どこから来るのでしょう。


料理研究家

うちには、なぜか分からないけど、人が寄って来てくれるんです。「10分だけ」と言いながら、夕方までいたり。そういうときに、とりあえず「桜寿司」をしたりする。島では、材料がすぐには手に入らないから、おかずのいらない、ああいうご飯がちょうどいいんよ。

昨日は、福岡の人が偶然やって来た。「お昼どうするん?」て言うたら返事がなかったから、「なんにもないけど、うちで食べよう」って言って料理して。その人、「また行かしてもらいます」って、えらい喜んで帰って行きました。

日々、家にやってくる人たちをもてなして ――「島の新しい郷土料理」を発明した、75歳の料理研究家

「桜寿司」を初めて出したのは、島に美術館ができたとき。「山口さん、美術館のなおらい(落成式)のときに、郷土料理をしてくれる?」って、自治会長から私に降りかかってきたわけ。

「じゃあ、豊島の郷土料理の黒豆ご飯で、おにぎりをしようか」と言ったら、「山口さん、黒豆ご飯は不幸の時に食べるものだけど」と言うから、「でも、豊島の郷土料理って言ったら、そんなんしかないがぁ」って、困ってしまって。

それで考えたのが、「黒豆ご飯にお酢を合わせて、桜色にする」ということ。その日から、家で、どれだけ研究したか。お酢の配合を変えながら一合ずつご飯を炊いて、「あ、これはおいしくないなぁ」とか思いながら繰り返し作ったり、いろいろ勉強もした。「一合のご飯を炊いたらこれだけの量になって、パックに詰めたら何個になる」っていうのも、段々とわかってきた。

日々、家にやってくる人たちをもてなして ――「島の新しい郷土料理」を発明した、75歳の料理研究家

いよいよ、なおらいの日。自治会長や建設会社の人、地域の人たちが招待されてて。寒い寒い2月の時やから、あつあつの呉汁(お味噌仕立ての大豆の汁)と桜寿司を、200人分出した。

みんな、すごい喜んでくれてね。男の人が、作り方を聞きに来たりもしたんよ。「家に帰って、嫁にさすんや」言うてね。それは違うやろ、と思うたんやけど。(笑)

それと、「人は、目から食べる」って言うからな、南天の葉っぱでも、小さいものを添えたりする。秋になって緑の葉っぱがなくなったら、ちょっともみじを添えたら、ほんまに豪華になる。ちょっとした心遣いで、「わぁ、おいしそう」と思う見た目になるもんな。

日々、家にやってくる人たちをもてなして ――「島の新しい郷土料理」を発明した、75歳の料理研究家

私は岡山の街育ちで、結婚してから初めて、島というところに来た。帰って来たらもう電気は暗いし、夜道を歩くのに懐中電灯持たな歩けなかった。

不便さもあるし、苦労もいっぱいあったな。たとえば、今言うたことが、すぐ豊島じゅうに広がることとか。あることないこと、言われたりな。

人には言えない苦労やいろんなことが、長い月日にはあるわ。でも、お父さん(旦那さん)は働いて夜遅うに帰っても、愚痴ひとつ言わなかったし、私も、愚痴を言うてもお父さんを悲しませるだけだから、お互い言わずに、ここまで来た。

日々、家にやってくる人たちをもてなして ――「島の新しい郷土料理」を発明した、75歳の料理研究家

苦労するなら、若い時の方がいいと思って。実際、早くに島に来たおかげで、今では豊島全体のことがわかってきたし、島の人たちも、認めてくれるようになったんです。

52歳で大病をして半年間入院しとったときには、豊島の人たちが次々とお見舞いに来てくれて。豊島の人に助けられたから、今度は恩返ししたいなと思って、婦人会長や、食事づくりのボランティアをするようになりました。

日々、家にやってくる人たちをもてなして ――「島の新しい郷土料理」を発明した、75歳の料理研究家

「半分良かったら、半分悪い」。昔の人はよくそんな風に言うとったけど、今、人生を振り返って、「このことを言うんやな」と思うよ。いろんなことが人生の中にはあるけど、「若い時の苦労があって今があるんな、今はええな」って、この間もお父さんと言うてたんよ。今、私は好きなことをさせてもらってて、お父さんはほんまに分かった人やと思うし、お父さんに一番助けられてるのは、確かや。

日々、家にやってくる人たちをもてなして ――「島の新しい郷土料理」を発明した、75歳の料理研究家

今日焼いた抹茶のケーキ、良かったら持って帰って。
ケーキを毎日焼かなんだら、もの忘れするようになるんよ。(笑)
日々、やることがいっぱいあるのが良いんよね。

日々、家にやってくる人たちをもてなして ――「島の新しい郷土料理」を発明した、75歳の料理研究家

本連載著者の、男木島での暮らしはこちらからご覧いただけます。
Instagram:@ishibekaori
Twitter:@ishibekaori

連載『地域のライフワークに出会う旅』の過去記事一覧はこちら

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