【岩田剛典】「恵まれてるとは言われたくない」夢を実現できる人は“自己開示”と“努力”を怠らない
今をときめく彼・彼女たちの仕事は、 なぜこんなにも私たちの胸を打つんだろう――。この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります
「常に自己ベストを更新していきたい」
仕事のポリシーは何ですか、という質問に対して返ってきた言葉が、この一言だった。

それまでの子犬のような“がんちゃんスマイル”が、ストイックで真面目な、表現者・岩田剛典の顔に切り替わる。
「こういう業界で仕事をしているから余計にそう思うのかもしれないけど、現状維持で満足しない、というのは常に意識していること。今回のチームは、『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』のときとほぼ同じスタッフ。だからこそ、あのときよりも成長した自分を見せられたらという思いがありましたね」
まっすぐに夢を追い続ける。車椅子の建築士を演じることで感じた“ブレない強さ”

岩田 剛典(いわた・たかのり)
1989年3月6日生まれ。2010年、三代目 J Soul Brothersのパフォーマーとしてデビューし、14年、EXILEに新パフォーマーとして加入。グループでの活動以外にも、俳優として数々の作品に出演。16年6月公開の映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』で映画初主演を務め、第41回報知映画賞新人賞、第40回日本アカデミー賞」新人賞・話題賞、第26回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞。近作に、ドラマ『崖っぷちホテル!』、映画『Vision』『去年の冬、きみと別れ』などがある Instagram:@takanori_iwata_official
Twitter: @T_IWATA_EX_3JSB
EXILE、三代目 J Soul Brothersのメンバーとしてアメイジングなパフォーマンスでわかせる一方、俳優としても進境著しい岩田剛典さん。
最新主演映画『パーフェクトワールド 君といる奇跡』では、大学3年生のときに事故で脊髄を損傷し、車椅子生活を送る建築士の主人公・鮎川樹を演じている。こうした身体的なハンデキャップを持った役を演じるのは、岩田さんにとって初めて。樹のモチーフとなった車椅子の建築士・阿部一雄さんや、監修を務める川崎車椅子スポーツクラブの本多正敏さんなど、周囲の力を借りながら役づくりに没頭した。

映画『パーフェクトワールド 君といる奇跡』撮影中の岩田剛典さん
「脊髄損傷にも段階があって、樹は胸から下が動かないという設定です。つまり腹筋が使えないので、挨拶一つするのも、体を支えないとできない。そういう細かい動きにはかなり気を付けました。車椅子に乗っていてもできる動きできない動きがあるなんて、健常者の人は分からないかもしれないですけど、障がいのある方が見たときに、『ああ、樹はこういう状態なんだな』と説明しなくても気付いてもらえる重要な部分。樹を演じる上では、そういったリアリティーを大事にしたいなと思ったんです」
突然歩けなくなるという悲しみに一時は心砕けそうになった樹。しかし、それでも一級建築士への夢を諦めることなく努力を重ね、試験に合格。現在は設計事務所で建築の仕事に邁進している。
「樹の中には、“譲れない順番”というのがあるんですよね。何にも光を見出せない中で、唯一実現したい夢が仕事だった。そのブレない強さというのは共感できるし、同じ男として見習いたいくらいまっすぐな青年だなと思いました」
「やりたいこと」があるなら絶対に口にして。内に秘めているだけでは何も始まらない
人生において“譲れない順番”は、誰にでもある。岩田さんにとって、今その第1位に来るものは「仕事」だそう。

俳優として、パフォーマーとして、変幻自在に印象を変えながら、どんどんやりたい仕事を実現しているように見える岩田さん。その原動力となるのは、冒頭の「現状維持で満足しない」という想いだ。
「仕事の内容や自分の経験値が変わってくることで、やりたいことも年々変わって、毎年同じビジョンでやっているかというと違うんですけど。そんな中でも変わらないのは、“常に楽しんでいたい”という気持ち。たぶん楽しんでないとダメになっちゃう人間なんです(笑)。だからこそ、“自分が楽しめる環境を自分でつくる”っていうことは意識してやっていますね」
自分が楽しめる環境を自分でつくる。岩田さんのスタンスに置き換えて意訳するなら、自分がやりたいことをやれる環境をどう自分でつくるか、ということだ。言うは易く行うは難し。岩田さんはどうやって“やりたいことをやれる環境”をつくっているのだろうか。

「僕の場合は周りに言います。僕はやりたいことをめちゃくちゃ発信するタイプ。常に周りの人に『こういうことがやりたいんですけど、どうですか』って提案していますし、それはすごく意識しているところでもあります」
勇気がなかったり、自信がなかったり。自分のやりたいことを口にできない人は多い。岩田さんはそうした人たちの気持ちを受け止めた上で、こうきっぱりと言い切った。
「発信は絶対した方がいいと思います。僕がいろいろやりたいことができているのも、自分が発信したことがきっかけで実現に至ったケースがほとんど。内に秘めていたって誰も気付いてなんかくれない。無謀でも何でも、とにかくまずは口に出さないと」
と言うものの、「言わぬが花」が日本の美徳。そんな価値観で育った人たちが、自分から積極的に発信していくのは難しい。まずは何から変えていけばいいだろうか。
「一番は、まずコミュニケーションだと思います。赤の他人から何か提案されても聞く耳持たないのは当たり前。自分の話を聞いてもらうためには、まずは自分がどういう人間か知ってもらうことから始めないと。面倒臭がられることを恐れちゃダメ。空振りしてもいいから、日頃から周囲に自分の人間性や考えを伝える努力をすることが大切だと思います」
自分に合った努力の方法は、自分で見つける。それが自信につながっていく
そしてもう一つが「自信を持つこと」だ。
「やりたいことを仕事にするために何が必要かと言うと、一言で言えば努力しかないです」
努力――そのシンプルなフレーズに、“がんちゃん”の愛称の奥底にある、ストイックな人柄が浮かび上がる。

「何をするにしたって不安や困難はつきものだし、葛藤もすると思うんですけど、最終的にそうした目の前の壁を乗り越えるには、自分に自信をつけるしかない。そのためには、やっぱり努力あるのみですよね」
EXILE、三代目 J Soul Brothersという国民的グループに所属しながら、グループの枠を飛び出し、ソロとしての活躍も目覚ましい岩田さん。これだけ自分の足場を拡大できているのも、決して単に「恵まれている」からではない。文字通り「努力の人」だからだ。
「努力の方法は人それぞれでいいと思うんです。シンプルに仕事を突きつめるでもいいですし、何か拠り所となる場所を別につくるでもいい。自分にはどういうやり方が合うのか。それを見つけるだけでも、立派な努力だと思います」
そうひと呼吸置いた後、岩田さんの眼差しに、本当に伝えたいことを見つけたような光がともった。

「自信をつける過程は人それぞれ。だからこそ、それをちゃんと自分で見つけることが大事。自分で行動した上で手に入れたものなら、それが何であれ自信につながると思います」
映画の中で、樹は病床に伏してもなおコンペに向けて意欲を燃やし続ける。普段の爽やかさと対照的な、樹のハングリーなまでのストイックさが、岩田さんと重なった気がしたのは、岩田さん自身が樹に負けないくらい努力を積み重ねて、今この場所に辿り着いたからだ。
発信することと、自信を持つこと。岩田さんが常に自己ベストを更新し、やりたいことを形にできるのには、そんな“発信”と“自信”のスパイラルがあった。
取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太
ヘアメイク/下川真矢 スタイリスト/jumbo(speedwheels)

■作品情報
映画『パーフェクトワールド 君といる奇跡』2018年10月5日(金)より全国公開
キャスト:岩田剛典、杉咲花、須賀健太、芦名星、マギー、大政絢、伊藤かずえ、小市慢太郎/財前直見
監督:柴山健次 配給:松竹 LDH PICTURES
制作プロダクション:ホリプロ
©2018「パーフェクトワールド」製作委員会
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