“形だけのDEI”では意味がない。「キャリアも人生も諦めない」をかなえる組織とは?【freee】

“形だけのDEI”では意味がない。「キャリアも人生も諦めない」をかなえる組織とは?【freee】

自分の力を発揮しながら、長く働き続けられる場所を見つけたい——。そう考えたときに、女性管理職比率の向上や育休取得の推進など、女性活躍を掲げる企業は魅力的に映るだろう。

しかし、中には「女性優遇」で評価が左右されたり、逆に働きにくさを感じてしまったりするケースも。

では女性が単に「働きやすい」だけでなく、「働きがい」を実感できる会社を見極めるには、どんな視点を持てばいいのだろうか。

そこで話を聞いたのは、多様なバックグラウンド・価値観を持つ社員の才能を生かすインクルーシブな組織づくりに定評があるフリー株式会社(freee)

ダイバーシティー&インクルージョン(DEI)で高い成果を出した企業を表彰する『D&I AWARD』を複数年受賞するなど、国内有数のDEI企業だ。

同社は2018年からDEIに取り組んでおり、2024年1月にDEIの専門チームを立ち上げ、誰もが自分らしく活躍できる組織づくりを進めてきた。

今回はDEIチームを率いるCCO(Chief Culture Officer)の辻本祐佳さんと、現場で活躍する2名の女性メンバーに話を伺い、「誰もが働きがいを感じられる組織」のリアルに迫った。

多様性はミッション達成に不可欠な要素

辻本祐佳

フリー株式会社 Chief Culture Officer (CCO)
辻本祐佳さん

楽天株式会社での法務経験を経て2017年8月freeeに入社。18年7月から社内のカルチャー浸透・組織での体現に取り組み、20年より現職。22年10月よりDEI専任、24年1月にチーム発足。ミッションドリブンな組織文化の醸成と、インクルーシブな環境づくりを推進している。自身も同社で育休を取得し、現在は第二子出産を控えている

──そもそもなぜ、freeeがDEIを重視するようになったのでしょうか?

辻本:freeeがDEIに取り組んでいるのは、社会的な流れに合わせるためではありません。私たちの根幹にあるのは、「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションです。

freeeはクラウド型会計ソフトを皮切りに、人事労務や会社設立支援などスモールビジネスのバックオフィス業務を効率化するクラウドサービスを開発しています。

国内事業者の約99.7%を占めるスモールビジネスに関わる方々は、本当に多様。そんなさまざな人たちが活躍できる社会を目指すには、私たちが多様な視点と柔軟な発想でサービスを届ける必要があり、だからこそDEIが不可欠なのです。

──では、freeeが理想とするDEIのあり方とはどんなものでしょうか?

辻本:数値目標を掲げていますが、その達成が本質的なDEI実現とは異なることをきちんと認識することが重要と考えています。

実現したいのは、属性が多様なだけの「表面的なダイバーシティ」ではなく、見た目やバックグラウンドが違っていても、同じであっても、価値観を共有しながら働ける──そんな「認知の多様性」がある組織です。

その第一歩として、2030年までに社員および管理職の男女比率を45%にするという目標を掲げていますが、これはあくまで通過点だと考えています。

──理想とする「認知の多様性」を実現するために、社内で行ってきた工夫は?

辻本:まず大前提として、freeeでは「女性だから優遇する」といった考え方はありませんし、当社で働く女性たち自身もそれを望んではいないと思っています。

数年前までの私たちは、性別を問わず本当に活躍している人を“見つける目”がまだ十分ではありませんでした。そこで、評価基準そのものを変えるのではなく、評価のプロセスや経営層の価値観を見直すことに注力したのです。

例えば「この人はなぜ昇進したのか/しなかったのか」といった視点でしっかり問い直すことで、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)をできる限り排除しようと努めています。

──社員の多様性が広がる中で、キャリアや人生に対するサポートのあり方も一人一人異なってくるかと思います。freeeではその点をどのように捉えているのでしょうか。

辻本:freeeには、「ライフイベントを優先したらキャリアを諦めなければいけない」という考え方はありません。どちらも大切にしていいし、そうした選択ができるように組織全体で後押しするのが私たちのスタンスです。

社員が「キャリアも、人生も、どちらも諦めたくない」という想いを実現できるよう支えることこそが、私たちの考える「働きやすさ」のその先にある「働きがい」につながっていると信じています。

【Case1】2年の育休を経て見つけた「今の私」らしい働き方

宮城愛梨

Mid Market事業部
宮城愛梨さん

金融機関向けの営業を経験後、2018年にフリー株式会社へ入社し、セールスを担当。2度の育児休業を取得。現在は時短勤務で、子育てと仕事の両立に奮闘しながら、新たな働き方のバランスを模索している

──辻本さんのお話から、freeeがDEIを単なる制度ではなくカルチャーとして根付かせようとしていることが伝わってきました。宮城さんは2度の育休を取得されているとのことですが、育休復帰後は社内の変化をどのように感じていますか?

宮城:約3週間前、2年間の育休を経て職場復帰したのですが、私が産休・育休に入った頃と比較しても、だいぶ社内の環境が変わったように感じます。

例えば、以前はビジネスサイドの責任者に女性がいなかったのですが、現在はCFOも子育て中の女性。外国籍のメンバーも営業の第一線で活躍する人が増えていて、2年前とは違った景色が広がっています。

──そんな変化の中で、宮城さん自身の働き方や気持ちにも変化はありましたか?

宮城:仕事への愛情のかけ方、そして優先順位が大きく変わりました。独身で子どもがいなかった頃は、それこそ「何時まででも働くぞ!」という情熱でお客さまのために邁進していたタイプだったんです。

でも、結婚して子どもが生まれると、100%仕事に情熱を注ぐことが物理的にも精神的にも難しくなってきて……。特に2人目の育休から復帰する直前は、「仕事へのモチベーションはあるけれど、今は子どもを第一に考えたい」という気持ちが強くなり、その自分の中の変化に正直、すごく悩みました。

──その気持ちの揺らぎに、どう向き合っていったのでしょうか?

宮城:復帰後すぐに、思い切っていろんな人に1on1をお願いしました。事業部を超えて、30人以上の社員と話をしたんです。

そこで「今の宮城さんらしいバランスで働いたらいいんじゃない?」「私生活を大事にしたいっていう気持ちも、すごく尊重するよ」といった言葉をたくさんいただいて。

その一つ一つが、自分の思考を整理するきっかけになりました。

「キャリアも人生も、いつも100点を目指さなくてもいいんだ」「状況や価値観が変わっても、freeeはそれを受け入れてくれる」。そう思えるようになったことで、心がとても軽くなった気がします。

宮城愛梨

──自分の気持ちに正直になれる環境や対話の機会が、大きな支えになったんですね。これからの働き方については、どんな思いを持っていますか?

宮城:いま一番大切にしたいのは、やっぱり家族の笑顔。そこが安定してこそ、仕事にも前向きになれると感じています。

とはいえ、freeeのミッションにも深く共感しているので、今の自分にできるペースで、しっかりと組織に貢献していきたい。

freeeには本当にいろいろな働き方をしている人がいるので、私のような選択も「こんな形もあるんだ」と思ってもらえたらうれしいですね。

【Case2】思考と対話で乗り越えたキャリアアップの壁

宮里莉彩

飲食支援事業部  飲食マーケティングチーム マネージャー
宮里莉彩さん

2014年に新卒で法人営業を経験した後、16年にフリー株式会社へインサイドセールスとして入社。その後、自ら希望してマーケティングチームへ異動。セールスマネージャーも経験するなど、多様なキャリアを歩み、現在は3名のチームを率いるマーケティングマネージャーを務める

──続いて、宮里さんにもお話を伺います。2016年の入社当時と比べて、freeeのDEIの変化をどう感じていますか?

宮里:私が入社した当初は、会議で女性が私一人ということもめずらしくありませんでした。でも今では、私のチームは全員女性ですし、女性比率が半数近い事業部も出てきています。

こうした変化は、単に「女性を増やそう」としたのではなく、性別や国籍に関係なく、実力が公正に評価される仕組みが整ってきた結果だと感じています。

──キャリアの選択肢が広がる中で、宮里さん自身もいろいろな挑戦をされてきたと思います。これまでのキャリアで、特に苦労した経験はありますか?

宮里:もともと私は「気合と根性!」で突き進むタイプだったのですが、セールスから希望してマーケティングに異動したとき、そのやり方では通用しなくて……。

論理的な思考力や、複雑な状況を整理して戦術を立てる力が必要とされるポジションで、自分の考えをどう形にしていいか分からず、本当に悩みました。

頭では分かっているのに、実践できない時期が長く続いて、かなり苦しかったです。

──その長い壁を、どのように乗り越えたのでしょう?

宮里:当時は、上司から言われていることも理解できない時もあったんです。

でもそこで諦めずに、書籍を読んで学んだり、自分の考えを言語化する練習をしたり、周囲にも助けてもらいながらとにかくトライ&エラーを重ねました

──ご自身の努力に加えて、freeeのカルチャーや仕組みが支えになった部分もありましたか?

宮里:それはすごく大きかったですね。例えばfreeeにはマネージャーに対して匿名でフィードバックを送れる仕組みがあって、メンバーから直接率直な意見をもらえます。

時には耳が痛いこともありますが、それを内省するきっかけとして受け止めて変わっていくことで、確実に成長につながっている実感があります。

また、経営層とのメンタリングプログラムでは、普段とは違う視点に多角的に触れる機会があったので、自分の視野を広げるきっかけになりました。

宮里莉彩

──現在はマネージャーとしてチームをまとめる立場にいらっしゃいますが、リーダーとして意識していることはありますか?

宮里:メンバー一人一人の個性や強みをどう活かすかを常に考えています。「この人にはどう伝えたら響くか」、「どこにやりがいを感じているか」など、伝え方や関わり方を日々工夫しています。正解はないですし、今も試行錯誤の連続です。

──多様な経験を積まれてきた今、これからのキャリアで目指したいことはありますか?

宮里:もともと私は、お客さまの考えや行動が変わる瞬間に立ち会えることに仕事のやりがいを感じていたので、これからはチームメンバーの成長を支えるのはもちろん、事業開発にもチャレンジしてみたいです。

freeeのプロダクトだけでは解決できない課題もまだまだあります。だからこそ、社内外のパートナーと連携しながら、お客さまにとって本当に意味のある価値を届けていきたいですね。

「働きやすさ」の先にある「働きがい」を見つける

──宮城さん、宮里さんのお話からは、ライフステージの変化やキャリアの壁に向き合いながらも、自分らしい働き方を模索する姿が印象的でした。こうした挑戦を支えているfreeeのカルチャーについて、改めて伺いたいです。

辻本:宮城が復職後に新たなバランスを模索していることも、宮里が試行錯誤しながらキャリアチェンジを重ねてきたことも、freeeならではだなとうれしく思いますね。

組織全体に「心理的安全性」が根付き、人としての思いやりや多様性に配慮しながらも、仕事では遠慮せず本音で向き合う。その姿勢が、健全な対話や挑戦を後押ししていると感じます。

DEIの取り組みに「これで完成」という形はありません。だからこそ、こういったfreeeの良いカルチャーを維持できるように、社員の声に耳を傾け続け、柔軟に進化していくことが重要だと考えています。

辻本祐佳

──お二人のように、自分らしい働き方をしたいと考える女性にとって、「本当に力を発揮できる会社」を選ぶには、どんな視点が必要だと思いますか?

辻本:制度や数字の実績だけを見て、「女性が働きやすい会社かどうか」だけで判断してしまうのは、少しもったいないと思います。

もちろん女性がライフステージの変化を重ねても働き続けていくための制度が整っていることは大切ですが、さらに注目してほしいのは「なぜその会社がDEIに取り組んでいるのか」という理由の部分です。

例えば先ほどお話ししたように、freeeがDEIを推進するのは、ミッションである「スモールビジネスを、世界の主役に。」を本気で達成したいから。

このように、企業の根幹にあるミッションや理念とDEIがどう繋がっているのか、経営層がどれだけ本気でコミットしているのかを見極めることが、企業選びの非常に重要な軸になると思います。

──たしかに、「制度がある」ことと「活かせる環境がある」ことは別物ですよね。

辻本:ええ。そしてもう一つは、「働きやすさ」の先にある「働きがい」を感じられるかどうか、という点です。

ベースとしての働きやすさが整っていることは大前提ですが、その上で、自分がやったことに対してフェアに評価されるのか、成長の機会が与えられるのか。そして何より、その会社のミッションに心から共感し、自分の時間や力を注ぎたいと思えるか。

そういった視点で企業を見ていくと、本当に自分らしく能力を発揮できる場所が見つかるのではないでしょうか。

辻本祐佳

──freeeでは、そうした「働きがい」を育む環境づくりを進めている最中とのことですが、今このタイミングで入社する魅力はどこにあると思いますか?

辻本:今のfreeeは、社員が安心して挑戦できるための土台が少しずつ整ってきたフェーズ。だからこそ、これから入社される方には、自分のキャリアを築くだけでなく、より先のチャレンジにも思いきり手を伸ばしてもらえる環境があると感じています。

挑戦できる会社って、やっぱり働いていて面白いですし、エネルギーにもなりますよね。freeeのミッションに共感してくれる人にとっては、大きなやりがいのある場所だと思います。

──「働きやすさ」のその先にある「働きがい」。それを見つけるヒントが、今日のお話にはたくさん詰まっていました。ありがとうございました!

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取材・文/大室倫子 撮影/赤松洋太