ドイツの「女性活躍」事情とは? 子育てや介護をしながら女性が管理職になれる仕組みをつくる

ドイツ人女性に学ぶ「豊かさ」のヒント
池原真佐子の日独ワークライフ通信

仕事と子育てを両立しながら日本とドイツの二拠点で生活を送る著者が、ドイツ人女性の働き方や生き方を見て感じたこと、学んだことをお届けしていきます。豊かな人生をつくるワークライフのヒントが見つかるかも!

池原真佐子

Woman type読者の皆さん、こんにちは。株式会社MANABICIA代表の池原真佐子です。私は現在、ドイツと東京を行き来しながら、仕事と育児の両立をしています。

連載7回目となる今回は、ドイツの「女性活躍」についてお話ししたいと思います。

ドイツでも、実業界での女性の地位向上は道半ば

私は『Mentor For』という、女性のキャリア支援に特化したメンター育成と派遣事業を行なっていますが、その中で「もはや多くの女性は働いているし、育児中も仕事を継続している人も多いが、管理職は少ない」という課題を感じています。部長クラスともなると、女性は5%程度しかいないのが実情です。

一方、私が住んでいるドイツではどうなのでしょうか。

各国のジェンダー不平等状況を分析した「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2018」によると、ドイツは14位(日本110位)です。しかし、ドイツ国内ではまだ管理職における女性の割合は低いということが指摘されています。

そこで、女性管理職を増やすために『女性クオータ法』(Frauenquote law)という法律が2015年に制定されました。これは、「会社の監査役会の30%を女性にしなければならない」という法律です(ドイツでは、監査役が取締役を選解任する重要な権利を持っています)。

実はドイツでは、2001年に22%だった管理職の女性割合は、2010年に30%へと増えており、30%は達成しているように見えます。しかし、よく見てみるとその多くは管理職の中でも「中間管理職」に留まり、経営に関わる役員レベルの女性は非常に少ないのです。

ドイツでも女性の多くは育児や介護、家事を引き受けていますし、「家庭の仕事は女性のもの」という意識が欧州の中では強い方だと聞きます。そのため、仕事と家庭の両立は、女性のキャリアを考える上で重要な論点となっているのです。

実際、家事育児、介護に多くの時間を取られる35~54歳層で、女性の管理職比率が下がっていました。首相が女性であるように、政治家に女性が多いドイツでさえも、実業界においてはまだまだ女性の地位向上は道半ばです。残念ながら、日本もドイツも女性が家事育児などによってビジネスの意思決定ルートから外れてしまっていることは変わりありません。

しかし、ドイツが素晴らしいのは「子育て・介護をしながらでも女性が管理職になれる仕組み」を模索している点です。2012年のデータによると、未成年の子どもを持つ母親の69%が時短勤務(右の円の赤色が時短勤務を示す数字)をしています。

そして、私の息子が通う幼稚園のママたちも、午後4時までの勤務が多い印象です。そのような状況でも管理職になれる方策を企業ごとに導入し始め、テレワークやワークシェアリングなどを導入して働き方改革を進めているのだそう。さらに、女性同士のネットワーキングの促進、社内外での研修機会を増やすなど、「意識改革」も並行して行われているそうです。

ドイツでは「子どもの声は環境騒音から除外」

前述したドイツの女性クオータ法で最初に対象となった企業100社は、ほぼ全社が目標をクリア。監査役に女性が複数入ることで、無意識のジェンダーバイアスを変化させるなど、良い効果も出ているとのこと。法律面から土壌を整え、着実に前進しつつあります

一方で日本は、働き方改革とともに、意識の改革はまだまだ伸び代が多分にあります。特に「意識」の面でいうと、私の肌感覚では、日本の方がドイツと比べてジェンダー規範が強いように感じます。例えば、「母親はいつも家事を完璧にすべき」、「父親なら仕事をちゃんとすべき」といった考え方がそうです。

また、家事の完璧さを求めるレベルが、日本は圧倒的に高いとも思います(ドイツ人の普段の食事は驚くほど簡素です)。そして、「とにかく周りに迷惑を掛けない」ことを気にしてしまい、お父さんもお母さんも必要以上に緊張しているように見えます。

ドイツではベビーカーで電車やトラムに乗っている人も多く、周囲の人が手助けをしてくれることも普通です(余談ですが、音に敏感なドイツ人は、日本でも問題になっているような「保育園や幼稚園がうるさいから建設しないでほしい、移転してほしい」などの訴訟が起きたこともありますが、現在では子どもの声は環境騒音から除外するという「連邦イミシオン防止法を改正案」が2011年にでき、子どもが発する声や音については守られています)。ということで、子どもが周囲の人に「迷惑をかけている」という意識は皆無に近いと思います。

家事にしても育児にしても、「こうすべき」という考え方に縛られてしまうと、キャリアとの両立が難しくなってしまうものです。働き方改革とともに、もう少し自分たちを「緩める」方向に意識改革していくことが必要なのではないでしょうか?


【この連載の寄稿者】
(株)MANABICIA 代表 
池原 真佐子(いけはら まさこ)さん

池原真佐子

福岡県出身、早稲田大学・大学院で成人教育を専攻。PR会社、NPOを経てコンサル会社で勤務。在職中にINSEADのパートタイムのコーチングと組織開発の修士(Executive Master in Consulting and Coaching for Change : 現EMC)を取得。同時に、エグゼクティブコーチング等の人材育成を手がける(株)MANABICIAを創業。その後妊娠するも、臨月でパートナーが欧州に転勤、東京でワンオペ育児開始。産後1年半が経ったころ、女性のキャリアに特化したメンターを養成するスクール運営、企業の働く女性へのメンターをマッチング事業を行う『Mentor For(「育キャリカレッジ」から名称変更 )』を新規事業として立ち上げる。2年半のワンオペ育児を経て現在はドイツと二拠点生活。2017年に英ユニリーバDOVEでNourishing SecretのCMに、日本を代表する新しい女性として出演。ワーママオブザイヤー2018受賞。「第5回女性起業チャレンジ制度」グランプリ(2019)。その他、日テレNews等のメディア出演も多数。著書『自信と望むキャリアを手に入れる 魅力の正体』(大和書房:日本と韓国で発売)

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