部下に「妊娠しました」と告げられた管理職の本音は? 産休・育休から復帰するメンバーに伝えたいこと【管理職 覆面座談会】
出産後も働き続ける女性は増えたけれど、育休後のキャリアには何となく不安がつきまとうもの。「育休期間をどう過ごすべき?」「復職後もやりたい仕事を続けるにはどうしたら…?」 本特集ではそんな疑問に答えていきます。
産休・育休は法律で認められた、従業員の権利。「休んで当然」ではあるものの、産休前の仕事の引き継ぎや育休復帰後のキャリアを考えると、一緒に働く人への配慮も必要だろう。
そこで産休に気持ちよく入るためのポイントや、育休からのスムーズなカムバックの仕方を「上司の視点」 から探ってみた。

安藤さん(仮名)
Webサービス運営企業/上司歴9年/二児の母
これまで産休に送り出した人数:4人 育休から迎えた人数:1人
鈴木さん(仮名)
エステサロン勤務/上司歴4年
産休に送り出した人数:10人くらい 育休から迎えた人数:5~6人
菊池さん(仮名)
転職サービス運営企業/上司歴5年/一児の父
産休に送り出した人数:2〜3人 育休から迎えた人数:1人
妊娠中の部下への本音1:もしもの時のために、業務は共有してほしい
今日は「部下の産休・育休」をテーマに、上司の本音を伺いたいと思っています。まずは産休を取得する部下について、思うことはありますか?
大前提として、部下の妊娠は喜ばしいこと。もちろん業務調整など発生しますけど、マイナスに思ったことはありません。
ただ強いていうのであれば、「仕事を急遽休む可能性がある」ことを踏まえて仕事をしてもらえると助かるなと思います。
急にアポに行けなくなるのは仕方がないし、カバーするのは上司の役割なので全然いいんですけど、状況が分からないと対応しようがないんですよ。
メールにCCを入れてもらえるだけでも状況の確認はできますから、普段からクライアントとのやりとりなど共有してもらえるとスムーズだなと。
妊娠中の部下への本音2
頑張り過ぎないで!
私は「頑張り過ぎないでほしい」と思いますね。
私自身、産休・育休を2回取っているのですが、特に1人目の妊娠中は「できません」が言えなかったんですよ。
ただ、上司の立場になってみると、これって困るんですよね。
仕事を抱え込んで頑張りすぎてしまった結果、体に影響が出たらよくないですし、周りも「妊娠中なのにあんなに働いて大丈夫?」と不安になってしまう。
業務量が多い場合は早めに相談をしてほしいなと思います。

すごく分かります。
「自分も妊娠したらああいう風に働かなきゃいけないのか……」と周囲に思わせてしまうのは避けたいですよね。何より本人の体調も心配ですし。
「迷惑をかけないように頑張ろう」という人は多いと思いますが、上司としては、何も相談されないのは逆に困ってしまうわけですね。
妊娠中の部下への本音3
気を遣われすぎるのも困る……
これは難しいところで、周りへの影響は気にしてほしいんですけど、気にし過ぎるメンバーも僕は嫌なんですよ。
何かと謝る人がいるんですけど、妊娠中の部下のカバーをするのは上司の役割だし、妊娠はおめでたいことなので、申し訳なく思い過ぎるのも違う気がして。
「子どもができてごめんなさい」みたいに報告されるのは本当に嫌ですね。
そう思わせてしまっている空気があるのであれば本当に申し訳ないなと思います……。
申し訳なく思い過ぎたり、頑張り過ぎてしまうと後輩やこれから妊娠を考えている人が気後れしてしまう。
この辺りはバランスが難しいので、本人と相談しながら進められると助かりますね。
妊娠中の部下への本音4
決めつけず、抱え込みすぎず、まずは相談して!
やはりコミュニケーションが取れないと始まらないですよね。
上司も部下もお互いに自分の要望を言語化して、きちんと伝え合うのが基本でしょう。
実際に本人からの希望で、つわりが重いメンバーをサポート部門に配置転換したことがありました。
妊娠に限らず、本人の体調や事情に応じて働き方や配置を調整できる可能性はあるので、まずは相談してほしいです。
ただし、産休を取る前に時短勤務に切り替えるのは要注意。
会社によって異なりますが、基本的に産休・育休中の手当は休職前の給与額をベースに支給されるので、産休前に時短勤務して給与額が減ってしまうと、休職中の手当も減ってしまう可能性があります。
復帰する部下への本音1
「頑張りたい」気持ちがうれしい
続いて「部下の産休・育休からの復職」についてお聞きします。
みんな頑張ろうと思って復帰してくれているので、基本は気持ち良く迎えられていますね。
僕もそうですね。
どちらかというと自分自身への反省が大きくて、復帰したメンバーに「頑張らなければ」と気負わせ過ぎてしまったことがありました。
僕は仕事に厳しい上司で、仕事に関する後ろ向きな発言や甘えを言えなかったんだろうと思います。
もちろん子どもができて働き方が変わるのは当たり前で、出産前と同じように働けないことを甘えだとは思っていません。
でも、彼女が相談できなかったのも無理なかったなと。

復帰後、どんな仕事であっても真面目に取り組んでもらえるのはありがたいですよね。
以前、本人が希望していた部署とは違う部署への復帰になってしまった時に、「頑張ります」と前向きに受け入れてくれた人がいて。
会社の状況によってはどうしても希望を叶えられないこともあって、こちらも心苦しかったのでありがたかったです。
ただし、あまりにも単調な業務しか与えられないなど、マミートラックのような人事は話が別です。
悩みや困りごと、不満があったらすぐに上司や人事に相談してほしいなと思います。
復帰する部下への本音2
辞められるのが一番困ります……
反対に、気持ち良く迎えられなかった人の事例についてはいかがでしょう?
育休中に転職活動をしていた人がいて、復帰して1週間で辞めてしまったことがありました。
受け入れの準備もしていましたし、休職中に復帰する前提で人員計画を立てているので非常に困ります。
復帰時の条件に不満があったのなら、言ってほしかったですね。何も言わずに転職するというのはフェアじゃないと思ってしまいました。
自分の気持ちの変化を受け入れられない人でしょうか。
仕事が好きで「復帰してもバリバリ働きます」と言って休みに入ったものの、子どもが産まれたら仕事をセーブしたくなる人も中にはいるんですよね。
「こんなはずじゃなかったのに……」と塞ぎこんでしまって、中には「申し訳ないから」と辞めてしまう人もいました。
「申し訳ないと思うなら辞めないでよ!」っていうのは本当に思いますね。辞められてしまうのが一番困ります。
罪悪感から退職を選んでしまうのですね。
復帰する部下への本音3
100%できなくて当たり前!
育児と仕事の両立が思うようにできない自分を受け入れられない人も多いですが、復職時はぜひ肩の力を抜いてほしいなと思います。
100%でやれない自分が嫌なんだと思うんですけど、仕事も育児も家事も全部を100%でやるのは無理なんですよ。
だって合わせたら300%ですよ? 完全にキャパオーバーですよね。
100%でできない自分を許せないのは本人だけだったりするんですよね。
職場の上司や同僚は100%で仕事ができないのは当然だと思っているし、パートナーも完璧な育児や家事を求めていないことの方が多いと思います。
リセットボタンを押す前に、ゆるりと仕事をしてみてほしいなと思います。
復帰していきなり100%なんて、こちらも求めていませんから。
メディアに出てくるスーパーウーマンをやろうとするのは無理です。
産休の話と同じで、100%でやるのが当たり前になってしまうと次の人が復帰しにくくなってしまう。
周りの人のためにも、頑張り過ぎないでほしいですね。
育休・産休取得の一番のポイントは「普段から仕事を頑張る」こと
産休・育休に関する上司の本音を聞いてきましたが、皆さんのように理解のある上司ばかりではないとも思います。
上司や会社の理解がない場合はどうしたらいいでしょう?
今は女性が働きやすい環境をつくろうと、企業も社会も変わりつつあります。
今はまだ働きにくい会社だって、基本的には女性が長く働けるような環境を用意したいと思っているはず。
だからこそ、要望があるならまずは言ってほしいですね。
単純に知らないだけっていうケースもあると思うんですよ。
僕も自分が子育てをするまで、妊娠中や子育て中のメンバーがどのくらい働けるのか、全くイメージできませんでしたし。
私も同感です。自分の意思を伝えた上で、それでも上司や会社が変わる気がなさそうなら、それはもうどうしようもないと思います。
妊娠・出産を迎える前に転職を考えた方が賢明かもしれませんね。
今日のお話全体に通じることですが、「まずは要望を伝える」が基本なんですね。
最後に、将来気持ち良く産休・育休を取るために、妊娠以前からできることがあればお聞きしたいです。
やはり「普段から仕事を頑張る」のが一番だと思います。
妊娠中の体調や子どもの発熱などで休みがちになってしまうときに、「助けよう」と思ってもらえるか、「あの人全然仕事してない」と思われてしまうかは、妊娠以前の働き方や周りの人との信頼関係の部分が大きいですから。
日々の仕事を頑張って結果を残すなり、仕事の姿勢を評価してもらうなりしなければ、いざという時に助けてもらえない。これは妊娠・出産に限らない話ですよね。
とはいえそんな高度なことは求めていなくて、真面目に仕事に取り組んでもらえれば十分だと思います。
あとは、設定した時間内で仕事を終えることを意識するといいと思います。
ダラダラ残業して仕事をする若い人も結構見ますけど、普段から時間を意識した働き方ができると子どもができてもスムーズですよ。
いざという時に「助けよう」と思ってもらえる人になるために、普段の仕事に真面目に向き合う。当たり前のようですが、改めて心掛けるのが大切ですね。
本日はありがとうございました!
取材・文・構成/天野夏海
『特集:「私らしい育休」って何だろう?』の過去記事一覧はこちら
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