個人の成果よりチームのパフォーマンスを重視する、来店型保険ショップならではの働き方とは?保険業界のプロ人事に聞く

女性の働きやすさの実態は?
変わる、保険営業職のシゴト

新型コロナショックの影響で、生命保険のニーズが高騰。コロナ禍の影響を受け、保険営業職の働き方も大きくアップデートされている。そこでこの特集では、識者・人事・営業職として活躍する女性たちへの取材を通じ、保険業界の女性活躍の実態、仕事の醍醐味を探っていく――

生命保険の営業といえば、個人宅や企業を訪問して営業活動をするイメージが強いかもしれない。しかし、最近では複数の保険会社の商品を店舗窓口で取り扱う来店型保険ショップが増えてきている。

今回お話を伺ったのは、来店型保険ショップ「ほけん百花」を運営するいずみライフデザイナーズ株式会社の山中美佐子さん。

新卒で大手保険会社に入社して以来、訪問型の個人向け保険営業や、「ほけん百花」店舗の店長業務を経験し、現在はスタッフの育成や採用を行う人事として活躍する保険業界のスペシャリストだ。

いずみライフデザイナーズ

いずみライフデザイナーズ株式会社
販売総括本部人材開発部長
山中 美佐子さん

1996年、新卒で三井生命(現 大樹生命保険株式会社)に入社。結婚を機に退社し、専業主婦を経て、保険デザイナーズ(株)入社。し、来店型保険ショップ「ほけん百花」立ち上げや、オープニングスタッフを務める。その後保険デザイナーズ(株)は住友生命の100%出資子会社となり、いずみライフデザイナーズ(株)へ社名変更。複数の店舗で店長業務を経験し、現在は同社の販売総括本部人材開発部長として、販売スタッフの採用・育成を担当している

保険業界一本でキャリアを築いてきた山中さんは、保険に携わる仕事の魅力をどうとらえているのだろうか。昨今の働き方の変化や、来店型保険ショップのスタッフとして働くメリットなどについて教えてもらった。

お客さまにぴったり合う保険をフラットに提案

――最近、街に来店型保険ショップを見かけることが増えました。保険営業の形もここ数年で変化してきているのでしょうか?

そう思います。特に都心部では、個人宅を訪問して保険を販売するのは年々厳しくなってきているように感じますね。

なぜなら、共働き世帯が増えて日中は留守にしているお客さまが多いですし、コロナ禍のような環境ではお客さまの会社に伺うことも難しいですから。

また、お客さまもご自身で保険のことをいろいろと調べられる時代です。

選択肢も豊富にあるので、どこかの保険会社に絞って商品を見るというよりは、さまざまな会社の商品をうまく組み合わせて利用したいという方も多い。ですので、来店型ショップの需要はますます高まってきていますね。

――山中さんは、前職で一社専属の営業職を経験し、その後、現在の会社で「ほけん百花」の店長をされていますよね。それぞれ、保険販売のスタンスはどう違うのでしょうか?

いずみライフデザイナーズ

基本的には、お客さまに対するホスピタリティー精神が重要な仕事という意味ではどちらも変わりません。

「ほけん百花」のような来店型ショップであっても、お客さまが保険に加入したら終わりというものではなく、保険が必要になるいざという時にお役に立てるように、長くお客さまとお付き合いしていくことを大切にしています。

一方、一社専属の場合は自社の商品のみを販売するのに対して、来店型ショップではあらゆる保険会社の商品を取り扱います。そのため、お客さまに最も合う保険商品を、複数社の商品から組み合わせて販売することができるんです。

また、一社専属で働く場合は、「会社が今一番売りたい主力商品」があって、基本的にはそれを販売する方針でお客さまに提案をすることが多いと思います。

そのため、お客さまのニーズに合わせた商品提案というよりは、商品にお客さまを当てはめていくような、そういう営業活動になりがちです。

たくさんの商品の中からお客さまにとってぴったりのものを選び、誠実なご提案ができるところは、「ほけん百花」ならではかなと思いますね。

――商品の選択肢が多いことは、お客さまにとってもメリットですよね。

ええ。しかも「ほけん百花」の場合は、今はこの会社のこの商品を特におすすめして……といった指導も全くないんですよ。

弊社は住友生命の子会社なので、「住友生命の保険を売らなきゃいけないんじゃないか」と思われがちなのですが、そういったことは一切ありませんし、インセンティブ等もありません。

――それは意外です! 店舗スタッフの一人一人が、フラットな目で商品を選んでご提案できるわけですね。

はい、「ほけん百花」では、お客さまに保険を販売した際に保険会社から支払われる手数料を収入源としているのですが、その手数料が店舗スタッフには全く開示されていないんです。

ですから、どの商品を販売したら会社が特に儲かるのかというのは、私自身も知りません。とても公平に販売を行っていると思います。

正社員登用率は95%、女性の長期キャリア形成を支援

――山中さんは、「ほけん百花」の店舗で働くスタッフの採用・育成を担当していらっしゃいますよね。スタッフのほとんどが女性とのことですが、どんな点を意識して人事制度を設計していますか?

いずみライフデザイナーズ

やはり、せっかく弊社に入社してくれたからには、長く働き続けてほしいという思いが強くあります。

そのため、弊社では固定給を保障しています。完全歩合制の場合、稼ごうと思えばたくさん稼げますが、その分、精神をすり減らしながら働く方も多く、長期的にモチベーションを保つことがすごく大変です。

一方、固定給がしっかりある場合は、急激に収入が増えることはないかもしれないけれど、安定的に収入があるので安心して仕事を続けることができますよね。

さらに、固定給の額は下がることはなく、チームの頑張り次第でインセンティブが支給されます。「ほけん百花」の場合、インセンティブは全て、個人単位ではなく店舗単位で付く仕組みです。

――店舗の目標を達成したら、スタッフ全員が同じ金額をインセンティブとして受け取れるんですか?

そうなんです。個人の成績はバラバラだったとしても、店舗のスタッフ全員がチームとして協力し、支えあってこそ店舗の集客・売り上げ目標を達成できるので、インセンティブは平等です。

店舗のスタッフ同士は全員で目標を共有する仲間。ライバル関係にならない環境をつくっているので、スタッフのモチベーションが自然と上がっていきます。

――確かに、それだとスタッフの目線が「自分がどう成績を出すか」から「チームでどう実績を出すか」に変わりますね。

はい。他にも、スタッフの皆さんが長く仕事を続けられるよう、正社員登用を積極的に行っています。

弊社の窓口スタッフは、基本的には皆さん契約社員として勤務をスタートさせますが、正社員登用率は95%を誇っているんです。

基本的に、本人の意思があれば全員に正社員になってもらうスタンスです。

また、すぐには正社員にはなれなくても、査定期間は何度もありますので、希望さえあれば正社員になるためのチャンスは豊富です。

――そこまで正社員雇用の門戸を広げているのは、どうしてですか?

もちろんスタッフに長く働き続けてほしいというのはありますが、それと同時に、お客さまのことを大切にしているからです。

やはり、営業をする側に不安や焦りがあると、お客さまへ悪影響が出てしまう。しっかりお客さま本位の仕事が出来るように個人の営業成績に重きを置き過ぎず、正社員登用ができるように、と考えています。

スタッフの8割が未経験スタート。約1年にわたる研修で手厚くサポートする

――御社のスタッフは、8割が業界未経験でキャリアをスタートさせているとのこと。保険について何も知らない状態から、各社の保険商品を覚え、販売するのは難易度が高いように思うのですがいかがですか?

いずみライフデザイナーズ

まさしく、入社された皆さんが一番戸惑うところです。ただ、たくさん商品があるように見えても、ざっくりカテゴライズすることができるので、効率的な覚え方さえ知ることができれば、大丈夫ですよ。

例えば、お菓子でも、チョコレート、キャンディ、ガム……いくつかの種類に分けられますよね。さらにチョコレートという種類の中で、準チョコレートやカカオ濃度高めのものなど、細分化されていく。

保険も同じで、死亡保障、医療保険、がん保険などのカテゴリーがあり、その上で細かく商品が存在している、というだけなんです。その仕組みさえ分かってしまえば、そこまで大変なことではありませんよ。

――なるほど。そういった覚え方は、研修などで教えてもらえるのでしょうか?

はい。弊社では、新人研修にはかなり力を入れていて、合計1年間の研修期間を設けています。3カ月間の初期研修は座学、その後1カ月間の店舗研修を経て本配属となりますが、配属後も9カ月間は月に1回の本社研修があります。

本社研修では、慣れない店舗で心細い思いをしていないかどうかメンタルケアを重点的にケア。スキル面だけでなく、多面的にサポートしていきます。

――それはかなり手厚いですね。

そう思います。それと同時に、店舗メンバー同士で教え合う文化も醸成されているところも弊社の特徴ですね。

店舗の立地によって、いらっしゃるお客さまの層が全く異なるので、同じ店舗内でのノウハウ共有が重要になってくるんです。その点、チーム一丸となって店舗を運営しているという一体感があると思います。

コロナ禍、オンライン面談の実施を強化

――最近は、新型コロナウイルスの影響で対面での営業活動が難しくなっていると思います。店舗スタッフの働き方には、どんな変化がありましたか?

いずみライフデザイナーズ

まず、店舗での感染対策は徹底しましたね。それでも対面でお話することに抵抗があるお客さまもいらっしゃいますから、オンライン面談もこの機に積極的に取り入れるようにしました。

また、既契約のお客さまへのアフターコールも重点的に行っています。コロナの影響で収入が減ってしまった方への保険料払込猶予期間を設けるなど、保険会社はどこも特別対応をとっているのですが、残念ながら、そういったことをご存知ない方も多いんです。

保険を売って終わりではなく、その後もずっと寄り添っていくのが私たちの役目だと思っています。

――今後、ご自身が人事としてトライしていきたいことは何ですか?

先ほどの話とも重なりますが、やはり、縁あって入社してくれたスタッフの皆さんがこの会社でより幸せに、長く働けるような環境をつくっていきたいですね。

私個人の話をすると、この会社に入って本当に良かったと、心底思っているんですよ。

最初はパートから始まって、正社員になることもできて、店長もやらせていただいて、今では営業現場を離れて本社で人材開発の仕事をしている。その時々でやりたいことを実現しながら、安心してキャリアを築いてこられました。

頑張ってきたことをちゃんと評価してもらえる会社であるということを、身をもって実感しているので、これから入社される皆さんにもその思いをしっかり伝えていきたいですね。

取材・文/太田 冴 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)

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