【土屋アンナ×まんきつ】強い生き物は肉食だから「私は絶対、肉食うよ」ストレス社会を“嫌いじゃない自分”で生き抜く方法
改名を機に、ありのままの自分を受け止め、自分を愛する生き方を選んだ漫画家まんきつさん。でも、そう簡単に人は変われないんだよ……!ってことで、現在もセルフラブへの道でもがき中。 そこで、まんきつさんが(勝手に)選んだ「生き様が素敵」な人たちに人生相談していきます
記念すべき連載初回にまんきつさんが人生相談の相手に指名したのは、モデル・歌手の土屋アンナさん。

ファッション誌『CUTiE』で初めて土屋アンナさんを見て「あまりのかわいさにひっくり返った」というまんきつさん。
そんなアンナさんにまんきつさんが真っ先に聞いたのは「喧嘩」についてでした(なぜ)。
まんきつさん「すぐに知らない人と喧嘩しちゃうんです」
今日はよろしくお願いします。よかったらこれどうぞ。
(自身の漫画『アル中ワンダーランド』を差し出す)
うれしい〜! なに、アル中だったの?
そうなんです。ウイスキーがぶがぶ系でした。アンナさんは何のお酒が好きなんですか?
私はね、テキーラ!

「やっぱテキーラっしょ! 体にいいよ絶対」と笑うアンナさん。のっけからイメージ通りな回答に心をつかまれる
今日はアンナさんに相談したいことがあって。私、すぐに知らない人と喧嘩しちゃうんですよ。
うん。
去年の年末に電車を降りようとしたら、後ろからぐいぐい押されたんです。混んでもなかったし、普通に流れに沿って歩いていたのに。
あー、そっち系か。大嫌い。
私も黙っていればいいのに、振り返って「押さないで」って言ったんです。相手はイヤホンを付けた30代くらいの男の人で、私の目も見ずに無視したんですよ。
超ムカつくね。イヤホン外して話聞けよな。
ムカつきますよね!?

この後、怒りを思い出して立ち上がって力説したまんきつさん
ひとこと言ってやろうとダッシュして先回りしたんですよ。そいつを待ち伏せして、「さっき押したよね?」って言ったんです。
私の顔をチラっと見て、また無視して行こうとするから、肩を掴んで「謝ってよ」って言ったの。
そうしたら「わりぃわりぃ」って言いながら、私がつかんだところを手で払ったんですよ! まるで汚いもののように!!
「このヤロウ……女だからって甘くみやがって」と思ってさらに追いかけて、「あそこに鉄道警察あるから行こうよ」って言ったんですよ。
そうしたら、ちょっと離れたところにいた女の人が「やめてください!」って言ってきて。
女連れだったんだ。
「お前はこんな男でいいのかよ……」と思っちゃって。
優しさ生まれちゃったじゃん(笑)

怒りが収まらなくて、その後ちょっとだけ尾行しちゃったんです……。
でね、家に帰って息子に一連の話をしたら、すっごい心配されたんです。
「いつか刺されるよ、もう知らない人と喧嘩しないで」って。
やっぱり私が間違えてたのかな……って、年末年始はずっと考えていました。
こんなとき、アンナさんだったらどうしますか?
もうね、全く一緒。とっ捕まえて、絶対に注意するね。

え!?
そして「後ろから刺されるよ」っていうのもマネジャーから言われてます。息子からも「気をつけて」っていつも言われてる。
え!?!?
でも、着いて行くとこまでやるのは危ないし、やめた方がいいって思うけどね(笑)。ただ、その注意する行動ってさ、めちゃめちゃ正義感じゃん?
そうなんです。アンタはやり返してこないような人を選んでるだろうが、やり返されるんだぞ。二度とするなよ。という気持ちです。
悪いことをしたやつに教えてあげてるんだよね。なぜなら、こういうやつが増えたらすげえ嫌だから。
私はそう思うから、超賛成。これだけ顔が割れてる今でも、おかしいと思ったら注意しちゃうね。
なんと……!
私はね、飛行機が着陸してまだドアが開かないのに立ち上がって、通路をふさぐ人が嫌なの。
そのせいで荷物が取れないし、ドアが開いてみんながワーッと出口に向かうのをしばらく待たなきゃいけない。
そんな時におばあちゃんが席を立てずに困っているのを見ると「考えらんなくない!?」と思うから、「ねぇ待てば? もしくはおばあちゃんの荷物も取ってあげなよ」って通路を塞いでる人に言っちゃう。
ほぼ無視されるけどね。
アンナさんでも無視されるんだ……。
でもさ、世の中から私たちみたいな人がいなくなったらおしまいだよ。……まぁ、相談する相手を間違えてるとは思うけど(笑)

アンナさんは、つい最近もスーパーマーケットの『ライフ』で喧嘩したらしい
アンナさんが「言わなきゃよかった」と後悔しない理由
それから3日くらい、イライラして何も手につかなくなっちゃって……。読みかけの本も仕事も全部ストップ。
「あの時に押さないでって言わなかったら3日もイライラすることはなかったのに」と思ったら、「怒りに怒りで返してはいけません(※)」っていう仏教の説法を思い出しました。
そんな教えがあるんだ。
※悪口を言う若者に対してお釈迦様が説いたと言われる。「怒りに怒りをもって報いるは、げに愚かもののしわざなり」
でもさ、それは怒ってる相手を怒りで押さえつけることに対する話だと思うんだよ。
今回の場合、相手は怒ってないわけじゃん?
悪いことをしてるって気付いてない人に、怒りでちゃんと教えてあげてるからいいんですよ。
ありがとうございます(涙)
私は「言わなきゃよかった」って年末年始にすっごい悩んだんですけど、アンナさんはそうやって自分が言ってしまったこととかやってしまったことに後悔することってないですか?
間違ったことをしてる人に注意してるわけだから、後悔はないかな。
なんだかんだで喧嘩した後、後悔しちゃうんですよね。またやりすぎちゃったな、これだから私は……って。

しつこくついてったりしたら「ストーカーだ!」みたいに言われる可能性もあるし、自分が不利にならないギリギリを責めた方がいいとは思うけどね。
相手の肩をつかんだことで「暴力だ!」とか言われちゃうと、こっちが負けちゃうじゃん?
だから最近、私も相手をつかむのはやめた。喧嘩はやっぱり勝たないとさ。
アンナさんは自分の行動をちゃんと肯定できているのがかっこいいです。なかなかその域にいけないですよ。
今はさ、知らないふりをする人が多すぎるよね。
いじめとか、誰かが倒れてるとか、電車で押されてるとか、全部見て見ぬふりじゃん?
誰かが声を出して、誰かが動いてから、周りもようやく動く。それは汚いよ。
分かります……!

私、そういうの大嫌いなの。そこでもしも私が一緒に知らないふりをしちゃったら、それこそ絶対に自分を許せない。
今日は「セルフラブ」がテーマだけど、みんながイメージする「自分が好き」ってさ、「モテる」「明るい」みたいなキラキラしたものだと思うんだよ。
でも、私はもっと芯の部分で「嫌な人間ではない自分」になりたいと思う。
年齢を重ねて良くも悪くもいろんなものが身に付くけど、嫌なやつにはなりたくないじゃん?
その芯だけは絶対に守ろうとしているから、少なくとも自分を嫌わずにいられてるのかもしれないね。
セルフラブを知ったまんきつさんの変化「自分に甘くなりました」
私はここ1~2年で、自分のことがだいぶ好きになれたんですよ。
すごい! なんでなんで?
スキーマ療法っていう心理療法の本を読んだんですよ。
心理療法の本はいくつも読みました。マインドフルネスみたいな感じですかね。
それを朝日を浴びながら、今も毎朝やっているんです。
「呼吸をしながら嫌なことを忘れていきましょう~」みたいな?
そうそう!
毎朝緑茶と梅干し食べて、朝日を浴びながら呼吸して、あとはサウナに行って、毎晩家でエプソムソルトを入れたお風呂にゆっくり浸かる。
それを2年間くらい続けてるんです。
特に朝日浴びるって大事だよね。
本当にそうなんです!
植物も太陽に当たらない葉は弱々しいですし。朝8時くらいの太陽が一番優しくていいです。

嫌なことを考えなくなって、ネガティブじゃないことが普通になって、結果として自分を嫌わなくなったってこと?
ネガティブなことを考えなくなったのかな? それは分からないけど、散歩中もマスクの下でニッて笑っちゃうんです。
そうすると、不思議とすれ違う人が微笑み返してくれるんですよ。マスクで口元は見えないのに。
へー! 外国人スタイルだ。
それこそアル中だった頃は本当にひどかったんです。だからちゃんと生きられていることがすっごい楽しくて。
アル中の頃の感じも私は好きだったと思うけどな。「面白いな~」と思って見てたと思う。
うれしいです(笑)。今も時々「このヤロウ、分からせてやろうか?」って思うときはあるけど、良くなってきてるなって思います。
アンナさん「気持ち良い時にマイナスなことは考えないよ」
ストレス社会にいると、考えることも美しくないものも多すぎるよね。
自分のメンタルが落ちるからイライラしちゃって、いろんなことを否定しちゃうんだと思う。

私は海が好きなんだけど、海にいる時は自分のことを好きとか嫌いとか、考えないぐらい楽しいの。
朝起きて海に入って、ボーッと綺麗なものだけを見て、海から上がったら程よく疲れてて、ご飯食べてビールでもピッて飲んで、眠くなって寝る。
そんなサイクルが私の理想。
そういう「自分にとって気持ち良い時間」が必要なんだと思うな。インスタ見ててもさ、そういう人ってキラキラしてるじゃん?
都心で暮らしてると毎日海に行くわけにいかないけど、日常でできるルーティンをつくるのはいいんだろうね。
面倒くさがらずに、例えばちょっと朝早く起きてお風呂に浸かるとかさ。朝のお風呂って気持ち良いし。
そうやって自分を無心にさせる時間を作ってあげると、自然と自分のことが嫌いな時間も減るんじゃないかな。
気持ち良いことをしてる時にマイナスなことは考えないもん。
アンナさんが毎日やってるルーティンは何ですか?

毎朝めちゃめちゃ水を飲むね。
マヌカハニーを入れたお湯を飲んで、紅茶を飲んで、水を体に入れてから一日をスタートさせる。
たとえ子どもが起きてても、相手をするのは全部飲んでから。
あとは今、海に行けていないから、無心の時間をつくるためにクラシックバレエをやってる。筋肉を使うことに集中して、普段の嫌なことは何も考えない。
バレエの時間をつくるために仕事をズラすこともあるくらい、大切な時間なの。
インスタで見ました。アンナさんの背筋、かっこよかったです。
本当は毎朝海に入りたいけどね。毎朝10分でも海に入れれば、多分性格も変わるよ。いろんなことを気にしなくなると思う。
やっぱりきれいなものを見るのって大事だと思うな。 だからさ、満員電車に乗ってる人が暗くなっちゃうのは仕方ないよ。綺麗なものなんて何もないじゃん。
せめてみんなが着てるスーツがアロハシャツだったら、それだけでピースだと思うんだけどさ。
たしかに(笑)
アンナさんが目指すもの。それは「サバンナの野生動物」

でもさ、瞑想は大事だよね。
セルフラブでいうと、呼吸をしながら自分の内臓がちゃんと存在してる意識を持つのは「自分が生きている」ことを知るために必要だと思う。
「なんか胃の調子が悪いな」とか「心臓が動いてるから生きてるんだな」とかね。
素晴らしい……アンナさんは何だか、サバンナの野生動物みたいな方ですね。
すごい言葉出てきた(笑)。でも、私はそれを目指してるの。サバンナも野生動物も大好き。私たちも生き物だしね。
話変わるけどゴリラってさ、何でフルーツばっかり食べるのにあんなに強いんだと思う? すげえ気になるんだよね。

ちなみに、ゴリラは雑食。食性は植物食傾向の強い雑食で、果実、植物の葉、アリやシロアリなどの昆虫を食べる
(笑)
私は自分が食べるものも動物を見て考えるの。フルーツってどんだけすごいんだろうって思うから、私も食べる。
それに、ライオンとか虎とかさ、強い動物はみんな肉食だから、最近はビーガンが流行ってるけど私は絶対に肉を食べ続けるね。

「まぁ象とかさ、強い草食動物もいるけど」とアンナさん
なんていうか、私は人間と上手に付き合えないんだよ。
人はめっちゃ好きなんだけど、私はたぶん考え方が人と違うし、人間は何考えてるか分かんないじゃん。
うちは猫6匹いるけど、猫と喋ってる方が楽。
それはありますよね……。うちも犬が2匹いるので分かります。
だから「サバンナ女」ってまさにその通りだと思う(笑)。いや〜楽しかった。今日は出会えてよかったです。また会いましょう!
私もすごい楽しかったです。なんだか、アンナさんと話して自分まで強くなった気分。ありがとうございました!

すっかり打ち解けた二人。「では、私はサバンナに帰ります」とアンナさんは取材場所を去っていった
モデル・歌手・女優
土屋アンナさん
1998年、モデルとしてデビュー。2002年、『Spin Aqua』のボーカルとして歌手デビュー。04年、映画『下妻物語』に出演し、日本アカデミー賞新人賞・助演女優賞をはじめとする8個の賞を受賞。2005年、歌手としてソロデビューし、世界各地でライブを実施。07年、映画『さくらん』で主演を務め、国際映画祭で評価される。その後も、モデル、歌手、女優として多岐にわたる活動を展開。特技はバレエ、フリーダイビング。子育て中の女性たちを応援するチャリティー活動などにも積極的に取り組む YouTube/Instagram/Twitter
漫画家 まんきつさん
埼玉県出身、漫画家。2012年に始めたブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目され、2015年には自身初となる単行本『アル中ワンダーランド』(扶桑社)を刊行。その他著書に『ハルモヤさん』(新潮社)『まんしゅう家の憂鬱』(集英社文庫)などがある Twitter
取材・文・構成/天野夏海 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)企画・編集/栗原千明(編集部)
『漫画家まんきつの「あの人に聞きたい」セルフラブ』の過去記事一覧はこちら
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