27 JUN/2024

「ジェンダー公正の達成まであと134年」男女間の賃金格差を埋める“イマドキ管理職”のススメ

女性は年齢を重ねても年収が上がらない?

2024年6月世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2024」において、日本は146カ国中118位という結果になりました。

この指数は、経済、教育、政治、健康の4つの分野における男女格差を総合的に示す指標で、日本は前年の125位から多少は順位が上がりましたが、依然として先進国の中では極めて低い順位にとどまっています(下図)。

田中さん

(内閣府男女共同参画局ホームページより) 

WEFは「完全なジェンダー公正を達成するにはあと134年かかる。これは5世代分に相当する」と発表

少しずつ前進してはいるものの、まだまだ格差社会を完全に解消するのは難しい中で、女性たちがより豊かに生きていくためにはどうしたら良いのか。一緒に考えてみましょう。

ジェンダー公正のネックになっているのが「賃金格差」

日本の順位が低い要因としては、政治分野における女性政治家の少なさや、経済分野における男女間の賃金格差などが挙げられます。

特に私たち働く女性たちと関連が深いのは男女間の賃金格差です。日本における男女間賃金格差は長期的に見ると縮小傾向ですが、他の先進国と比較するとまだ大きい状況です。

こうした男女間の賃金格差を縮小していくため2022年に女性活躍推進法に関する制度改正がされ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を追加するとともに常時雇用する労働者が301人以上の一般事業主に対して、この項目の公表が義務づけられました。

読者のみなさんの勤務先では公表されていますか?公表されている場合はぜひチェックしてみましょう。

女性活躍推進に「本気度」が高い企業では、数字を公開しているだけではなく、こうした賃金の格差をどうやって解消していくのかーーさらに深い分析をおこない、対策や取り組み状況を公開しています。

「管理職に興味がない」…女性たちが昇進意欲を持ちづらい現状

田中美和さん連載「ニューノーマル時代のLive Your Life」

厚生労働省のホームページに載っている男女の賃金格差を公表している企業の事例を見てみると、男女の賃金格差を生む要因として育児休業や短時間勤務の取得の有無、職務内容の差、従業員の年齢構成など各社それぞれの要因があることがわかります。

なかでも注目したいのが、男女の昇進意欲やキャリア意識を要因として考えている会社が複数あること

私が共同代表を務める会社で今年公表した管理職経験のある女性たちの調査でも「初めて管理職を打診されたとき、管理職になりたいと感じたか」という設問で「管理職になりたくない」と回答した女性たちに理由をたずねると以下のような結果となりました(下図)。

「管理職に興味がなかったから」と答えた人が半数近くで最も多くなり、昇進意欲を持ちづらい現状が浮かび上がってきています。

田中さん

(Waris「女性管理職に関する調査」より)

約8割の管理職が「求められる管理職像が変化した」

女性たちが管理職を敬遠するのには、「管理職に対する固定観念もあるのでは?」と私は考えています。

実際、一昔前と管理職に求められているものは変わってきており、それを表す調査結果もあります。

約5000人のビジネスパーソンに対する調査によれば、約8割の管理職が「10年前と比べて、求められる管理職像が変化した」と答えています(下図)。

田中さん

(ラーニングエージェンシー「求められる管理職像の変化に関する調査」より)

同じ調査で「10年前と現在の求められる管理職像の違い」についてたずねてみると、「現在求められている管理職像として「コンプライアンスやモラルを重視する」「時間内で効率的に終わらせる」「個人としてのスキルアップを志向する」「対話を重んじる」といった項目が上位を占めています。

さらに同じ調査で10年前と現在の求められる管理職像で、最も減少した項目は「トップダウンで物事を進める」「部下に自分の模倣を求める」、「前例を踏襲する」でした。

社会構造や市場環境が大きく変化する中で、トップダウンによる進め方ではなく、対話を重視し、ボトムアップ型でメンバーの意見を引き出しながら正解を一緒に考え動くことが新たな時代の管理職像として強く求められていることが感じられます。

男女間の格差を解消していくための方法として、女性たちが新しい時代の管理職像を目指していくのもひとつの手です。

こういったリーダーであれば、「自分は管理職向きではない」とこれまで思っていた女性にとっても、チャレンジのハードルが下がるのではないでしょうか。

では、こうした対話型・ボトムアップ型の管理職になっていくにはどうしたらいいのでしょう?

傾聴力を身につける

田中美和さん連載「ニューノーマル時代のLive Your Life」

傾聴力とは、相手の話に真剣に耳を傾け、理解しようとする能力です。言葉だけでなく、表情や声のトーン、間の取り方など、非言語情報も含めて相手を受け止めることが重要です。

傾聴力は、コミュニケーションスキルの一環であり、信頼関係を築くためや問題解決において重要な役割を果たします。これは本や記事を読んだり、セミナーや研修に参加したりすることで身につけることができます。

また、傾聴力を身につけるためにキャリアカウンセリングを学ぶ人もいます。私も学んだことがあるのですが実践的なロールプレイングを通じて傾聴力について学ぶことができるのでとてもおすすめです。

コーチング力を磨く

田中美和さん連載「ニューノーマル時代のLive Your Life」

コーチング力とは、相手が自発的に目標を達成できるよう導くための能力です。

具体的には、「傾聴力」に加えて的確な質問をする力や相手の気持ちに寄り添う共感力、相手と一緒に適切な目標を設定する力、相手の行動や成果に対して適したフィードバックを与える力などから構成されます。

これも書籍やセミナー、研修などで学ぶことができるので、興味がある方はぜひ挑戦してみてくださいね。

より専門的にコーチングを学びたい場合は、コーチングの資格を取得する方法もあり、民間団体がさまざまなコーチング資格を提供しています。

リーダーの役割を積極的に担う

田中美和さん連載「ニューノーマル時代のLive Your Life」

「対話型・ボトムアップ型の管理職ならやってみたい」「私も挑戦したい」ーーそんなふうに思えるのなら、管理職の手前でプロジェクトリーダーやチームリーダーなどの役割を積極的に担当してみましょう!

こうした役割を経験することで、タスク管理はもちろんのこと、メンバーの話をしっかりと聞き共感を示すことで信頼を得ることができ、メンバーと密接に連携しながら仕事を進めるスキルを高めていくことができます。

もちろんうまくいかないこともあるかもしれませんが、そんなときこそ自分の強みや弱みを客観的に理解できるチャンスです。

例えば、「私はメンバーのモチベーションを維持するのが得意だ」とか、「プレゼンテーションが苦手だ」といったことを知ることができます。

自分の強みや弱みを理解することで、周囲と連携しながらより自分らしいリーダーシップのあり方へとつながっていきます。

田中美和さん連載「ニューノーマル時代のLive Your Life」

日本におけるジェンダー・ギャップは依然として大きい状況ではありますが、10年前、20年前と比較とすると、働き方や市場環境の多様化といった変化は確実に起きています。

今回ご紹介した「ボトムアップの管理職」も時代に適応して生まれた新しい管理職像です。

先入観で「私は管理職には興味ない」と選択肢から外さず、視野を広げてキャリアを考えることが、まだまだ続く格差社会で豊かに生きるための一歩になるはずです。

書籍情報

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田中美和

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和

大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事