転職後のミスマッチを防ぐには? キャリアのプロが説く「自己分析」ですべき10のこと/梅田幸子×曽和利光

ミスマッチを防ぐ自己分析の秘訣10の秘訣

初めての転職活動には、「会社選びに失敗したらどうしよう」という不安がつきもの。

求人票を読み込んだり、会社HPや社員の口コミをチェックしたり、情報収集に精を出している女性も多いかもしれない。

だが、転職後のミスマッチを防ぐには「企業情報を見る前に、自分自身のことをよく理解することが大切」だと語るのは、自己分析や就活に関する著書を多数持つ天職コンサルタントの梅田幸子さんと、人事コンサルティングを手掛ける人材研究所の代表・曽和利光さんだ。

そこで、転職後の「早期離職」を防ぐために有効な自己分析の仕方を二人のプロフェッショナルに聞いた。

※本記事は2024年11月に発売予定の雑誌『type就活』の内容を一部編集して先行公開しています。

天職コンサルタント 梅田幸子さん

天職コンサルタント
梅田幸子さん

日本女子大学卒業後、東証一部上場企業・ベンチャー企業・店頭上場企業の3社にて、採用・研修を中心に、評価制度設計、従業員のキャリアコンサルティングなど人事全般を経験。面接した人数は、4000名以上、カウンセリングは10000件以上にのぼる。2005年に独立。企業向けには、採用・研修・育成を支援する人財コンサルティングを、個人向けには、就職や進学、入社後のキャリア形成に関する講演・セミナー・個別相談を行なっている。雇用主と働く側双方の現状をふまえたフィードバックに定評がある。また、「身体の未発達」による困りごとを解消することで、生きづらさを解消し、より自分らしく働くプログラムもおこなっている
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人材研究所 代表 曽和利光さん

人材研究所 代表
曽和利光さん

株式会社 人材研究所代表取締役社長。1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て90年に京都大学教育学部に入学、95年に同学部教育心理学科を卒業。株式会社リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーとして活動したのち、株式会社オープンハウス、ライフネット生命保険株式会社など多種の業界で人事を担当。「組織」や「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法が特徴とされる。2011年に株式会社 人材研究所を設立、代表取締役社長に就任
HPX

  

梅田さん

最近の就活・転職において自己分析が甘くなってしまうのは、コンプライアンス の意識が高まり「残業=悪」という気持ちが強くなっていたり、「こんな社風が良い」といった外から与えられる“あるべき論”にとらわれてしまっていたりすることが大きいと思います。

梅田さん

自分が何に対して喜びを感じるのか、何が嫌でつらいのかが分からないまま、「表面的な会社理解」で就職先を決めてしまうケースが増えているのです。

自己分析が甘いだけでなく、会社についても数字ばかり見て、働くイメージが持てていないため、入社後に「思っていたのと違った」と感じてしまうのでしょう。

曽和利光さんが挙げる、自己分析のポイント

また、事前に確認していたはずの条件面への不満が入社後に湧いてしまうことの背景には「カルチャーのミスマッチ」があると曽和さんは指摘する。

曽和さん

例えば、気が合う仲間と楽しく働いていれば労働時間が多少長くても退職理由にはならないでしょう。

風土が合っていないために、条件面の不満が目に付いてしまう可能性はあると思います。

カルチャーのミスマッチを防ぐ上で大切になってくるのもまた、自己分析であると曽和氏は続ける。自分の価値観を正しく把握することは、風土とのマッチングにも欠かせない。

では、どのように自己分析を行えばミスマッチを防げるのだろうか。梅田さん、曽和さんに「10の秘訣」を挙げてもらった。

ミスマッチを防ぐ自己分析10の秘訣

曽和利光さんが挙げる、自己分析のポイント
梅田幸子さんが挙げる、自己分析のポイント

2人の専門家が示した10の秘訣を見ると、自己分析をする際は「理屈」で考えるよりも、素直な「感情」を分析することが大切だということが分かる。

梅田さん

好き・嫌いで終わらせず、「自分はどうしてこれに喜びを感じるのか、何が嫌なのか」に目を向けることで、自分のやる気の元となる喜びの源泉が見えてきます。

さらに、曽和さんは「自分の素直な感情を知るためには、第三者の力を借りると良い」と話す。

曽和さん

1人で自己分析をしていると、自分では素直な感情だと思っていても、無意識に面接用に捏造された意思や、内定を得るための打算が生まれてしまいがち。

第三者による客観的な意見は、本当の自分を知るために有効です。

これらのポイントを抑えた自己分析法で自分の本質を理解できたら、会社選びでも「ここで働いてみたい、面白そう」と直感的に思える会社を選ぶと良いと梅田さんはアドバイスする。

梅田さん

相性の良い会社で情熱が湧けば、本気で仕事に取り組めます。

目の前の仕事に熱中すれば自然と仕事力が付き、自分の価値も上がるでしょう。現職に不満を持ったとしても、理想をかなえるキャリアチェンジができる自分になっているはずです。

もしどの会社に心が躍るか分からなくなったときには、興味がある会社と興味がない会社を直感で分別してみるといいと話すのは曽和さん。

曽和さん

例えば、人気企業ランキングを見て、良いなと思う10社とそうでもない10社を直感で分けてみてください。

後から、それぞれに共通するものは何なのかを理屈で考えてみると自分が大事にしている事が分かるはずですよ。

インタビューに答える曽和利光さん
これに同意するのは、梅田さんだ。「先に自己分析をしてから業界・会社を絞るのは危険」と続ける。

梅田さん

中途半端に自己分析をしてから業界・会社を絞ろうとすると、自分の特性や喜びの源泉が分からないまま絞られてしまうので、本当にマッチした企業・仕事を見落としてしまう可能性があります。

梅田さん

例えば求人を見ていて「建設会社の設計が面白そう」と直感的に思ったのであれば、仕事のプロセスや必要な思考回路が似ているITシステムの設計も面白いと感じる可能性があります。

どこに惹かれたのかを分析しながら業界や会社を見ていくと、自分の「喜びの源泉」が分かり、基準が明確になっていき、自然と軸が絞られていくものなんです。

つい、チャートや参考書をもとにしたシステマチックな自己分析をしてしまう人は多いかもしれないが、頭で難しく考えず、まずは自分の素直な心と向き合った自己分析を行うことが、ミスマッチのない転職を実現する第一歩になるだろう。

取材・文・編集/光谷麻里(編集部) 梅田幸子さん撮影/赤松洋太 イラスト/ナカオテッペイ