【ぼる塾・酒寄希望】仕事量を増やさずに「THE W2年連続決勝進出」を果たすために、リーダーとして手放した5つのこと
「ゆるキャリ」も「バリキャリ」もしっくりこないーー。そんな女性に提案したいのが、人生を楽しむゆとりと仕事を思い切り頑張ることで得られる充実感の両方を大切にする「ゆるバリLady」な生き方。2025年は、「ゆるバリLady」を目指してみない? 大人気お笑いカルテット「ぼる塾」の酒寄希望さん。 リーダーとして、田辺さん、あんりさん、はるちゃんというキャラの濃い3人をまとめる一方、プライベートでは4歳の息子(通称・みたらし)の母でもある。 子育て中で時間の制限がある中、女芸人No.1決定戦「THE W」では2023年、2024年と2年連続決勝進出を果たした。 「グイグイ引っ張るリーダーとは真逆のタイプ」と自身を評する酒寄さん。 プライベートを犠牲にすることなく、ぼる塾というチームを着実に成長させられているのはなぜなのだろう。 2023年、2024年の2年連続「THE W」決勝進出、おめでとうございます! 優勝を目指していたので悔しいですけど、「前回よりぼる塾が面白くなっていることをテレビで発信する」というもう一つの目標はかなえられたかなと思います。 前回よりも面白い自分達を見せるために、2024年はチームでどんなことをしていったんですか? 前提として、4人でやる仕事の量を増やすのは現実的ではなくて。3人はテレビの仕事が忙しいから、負担が半端なくなってしまうんです。 そこで、2024年は早い段階で「THE W」用のネタを2本作り、「これでいく!」と決めて、時間をかけてその2本を仕上げていくことに集中したんです。 酒寄さんはぼる塾のリーダーでもありますよね。 あまり引っ張るっていう意識はなくて。 他に、話を聞いてほしいって言われた時に聞いたり、3人が出ているテレビや雑誌を見て「あそこが良かった」って伝えたり。 マネージャーさんとか、中間管理職みたいな立ち位置ですね。 そうかもしれないです。ただ、どんなに優しくていい人でも、「酒寄さんの言うこと聞いてて大丈夫かな」って不安にさせちゃうとダメだなと思っていて。 酒寄さんは「みんなを引っ張るリーダー」というよりは、「みんなを支えるリーダー」なんですね。 そうですね。そもそも私、ぼる塾の中で一番リーダーとは遠い人間だと思っていて。昔から皆の後ろにいるようなタイプだったんです。 知らぬ間に決定していたんですね(笑) 酒寄さんは「ぐいぐい引っ張る」リーダー像にとらわれなかったり、家族との時間を犠牲にしないことを宣言していたり、“これはやらない”と手放すことを決めることで、ほどよく肩の力が抜けている印象です。 まず一つ目は、仕事を抱えこまないことです。 なぜ余裕が大事だと思うようになったんですか? 育休から復帰するとき、あれもこれも全部やろうとしていた私に対して、私の性格をよく知っている田辺さんがこんな提案をしてくれて。 かつての酒寄さんのように、「リーダーなんだから誰より頑張らなきゃ」って何でも抱え込んで、余裕をなくしている人は多そうです。 すごく分かります。余裕を持つって不安ですよね。 リーダーが手を広げすぎずに、「これをやる」と決めた仕事に集中して取り組んで質を上げていく。 以前の私には、リーダーはチームで一番活躍しなきゃいけないイメージがありました。でも今は、チームで最も輝く人がリーダーじゃなくても別にいいなって思います。 たしかに「みんなが楽しく仕事できる場所をつくる人」という酒寄さんのリーダー像は、エースという感じではないですね。 「リーダーなのに、こんな感じで大丈夫なのかな……」って不安に感じたこともありましたけど、「3人の時はバラバラに個人プレーをしているけど、4人になるとチームに戻る気持ちになれる」ってあんりちゃんが言ってくれて。 酒寄さんは、個性が強いぼる塾のメンバーたちの拠り所なのかもしれないですね。 私は肩に力が入りすぎると変な方に行っちゃうんですよ。だから「リーダーとして」っていうのも意識しないようにしています。 失敗に対して恥ずかしい気持ちがあると、仕事で挑戦したり意見を言ったりするのが怖くなっちゃって、結果的に自分の幅を狭めてしまうんですよね。 リーダーが失敗したり負けたりすることを恥ずかしがっていたら、チームの皆にも恥ずかしいと思わせちゃうかもしれないですしね。 SNSで否定的なことを言われることはあるけれど、一緒に仕事した人たちの中には、全力で挑む私たちのことを恥ずかしいと思うような人は一人もいないんですよね。 歳を重ねるにつれて、失敗を恥ずかしいと感じる気持ちって増していくので、20代のうちに「失敗=恥ずかしい」って気持ちは取っ払っちゃった方がいい。 いいチームをつくるために普段から意識していることの一つとして、3人から話を聞く時は、「本人から聞いた、本人の言葉だけを信じる」というのもあります。 混乱の元ですね……。 憶測で動いちゃうと、よかれと思ってしたことも余計なお世話になっちゃうことが多い気がして。 酒寄さんが相談してもらえる関係性を築けているのはなぜでしょうか? 相手が嫌がることをしないっていうのが大きいかもしれないですね。3人のことが大好きだからこそ、嫌なことは分かるので。 エッセーやインタビューを見ていても、ぼる塾のメンバーは酒寄さんのことが大好きなんだろうなと感じます。 「3人のことがめちゃくちゃ好き」っていうのが私からあふれてるからじゃないかなと思います。 私がやらないようにしていることの五つ目は、メンバーにあれこれ求めすぎないことです。 とはいっても、「もっとこうしてくれたらいいのに」と求めたくなることはないですか? あまりないですね。 ぼる塾が目標に向かってモチベーションを保ち続けられる秘訣は、酒寄さんが「みんなが自分らしくいられる」環境をつくっているのも大きそうです。 そう言ってもらえると嬉しいです。 プライベートを大切にしつつ、リーダーとしてちゃんと仕事もする。酒寄さんの働き方に憧れる人は多そうです。 恐れ多いです……! 以前の私は「売れる」とか「勝つ」とか、そういうことばかり意識していて。今思えば、自分で自分を大変にしていたんだなって思います。 余裕がないと、田辺さんはじめメンバーの面白い発言も面白がれなくなっちゃいそうですもんね。 まさにそう。生活も周りにいる人たちも変わっていないのに、「勝つ」ことよりも「楽しく」を意識するようになったら余裕が生まれて、3人の面白さにより気付けるようになり、賞レースで結果が出始めるようになりました。 人生は本当に長くて、30年、40年と続いていくんですよね。つい「この1年頑張れば」みたいな感じで動いちゃうけど、短期決戦じゃない。 そもそもプライベートを大切にしながら仕事も頑張るって、ものすごく難しいと思うんです。プライベートを充実させるのも、働くのも大変。両方やろうと思っている自分はすごいって、まずは思った方がいいですよ。 ぼる塾を見ていてほのぼのした気持ちになれるのは、4人に余裕があるからなのかもしれないですね。 「THE W」優勝です! あとは、リーダーに付いていくんじゃなくて、全員が「THE W」について意見を持つことも大切だなと思います。 チームの目標が明確……! ぼる塾、良いチームですね。 2023年に「THE W」に出て以来、今まで以上に「4人のぼる塾でもっと上を目指したい」っていう気持ちが芽生えた気がします。 取材・文/天野夏海 撮影/赤松洋太 編集/光谷麻里(編集部) 酒寄さんのぼる塾晴天!(ヨシモトブックス)リーダーは「みんなが楽しく働ける場所をつくる人」
優勝には届きませんでしたが、今回の結果をどう受け止めていますか?
とはいえプライベートを犠牲にしたり、テレビの仕事を減らしたりしてまで頑張るのは違うなっていう思いがありました。
いろんな劇場で2本のネタをやって、「THE W」前日まで中身を磨いて、進化させていきました。最終的に、最初のネタとは全然違うものになりましたね。
どうやってチームを引っ張っていったんですか?
最初は「リーダーはみんなをぐいぐい引っ張る人」っていう勝手なイメージがあったけど、今は「みんなが楽しく、気持ちよく仕事できる場所をつくる人」として、とにかく3人の負担を減らすことを意識しています。
例えば構成作家さんとの打ち合わせやライブの企画など、芸人がするべき裏方の仕事のほとんどを私が担っています。
そうやって会話をする中で普段から3人がやりたいことを聞いていれば、私から作家さんやスタッフさんに伝えることもできます。パイプ役みたいな感じですね。
だから自分の仕事もしっかりやって、3人から信頼してもらえる存在でいることを意識しています。
リーダとして「やらないようにしている」五つのこと
それなのに育休中にテレビを見ていたら、「酒寄さんがぼる塾のリーダーです」ってあんりちゃんが言っていて。そこで「私ってリーダーだったんだ」って初めて知りました(笑)
私はあんりちゃんがリーダーだろうと思っていたのに……。
酒寄さんが「自分らしいリーダー像」を大切にしながら、ぼる塾というチームを成長させるために、「これはやらない」と決めていることが、他にもあったら教えてください!
1. 「あれもこれも」と仕事を抱え込まない
どんなタイプのリーダーでも、本人に余裕がなければ、その船は沈んじゃうと思っていて。だから、自分に余裕がなくなる働き方はしないようにしています。
例えば、私がテレビに出ないのも、今テレビの仕事を引き受けたら絶対に心の余裕がなくなるって分かっているからなんです。
「酒寄さんが一番やりたいのは4人の舞台で、文章の仕事も頑張りたいんでしょ? さらに苦手分野のテレビまで出たら潰れちゃうよ。まず本当にやりたいところで頑張って、テレビは自信を付けてからにした方がいい」
実際、復帰して間もない頃に舞台でスベった時、余裕のなさから「この世の終わり」みたいな気持ちになっちゃって……。
でも、「余裕を持つ=手を抜く」ではないんですよ。
余裕を持った分、手持ちの仕事にめちゃくちゃ集中できるようになるし。私の場合は「THE W」のネタづくりがそうでした。
そんな姿を見せるのは、チームにとってもプラスになるかなと、今は思えるようになりましたね。
2. リーダーがエースになろうとしない
エースが別にいるなら、リーダーは違うことをやればいいのかなって。
私がリーダーとしてやってきたことは合っていたのかもって今は思えています。
「リーダーだから」って、肩の力を入れすぎてないからこそ、みんなの拠り所になれるのかなと感じました。
3. 負けても、失敗しても、恥ずかしがらない
だから「THE W」で負けちゃったことも、もちろん悔しいけど、恥ずかしいとは思っていません。
そう思ったら、恥ずかしがらなくていいやって。
そうすれば、この先無敵になれると思います。
4. メンバーのことを憶測でジャッジしない
本人の気持ちは本人にしか分からないじゃないですか。それなのに、本人がいないところで「はるちゃんは多分こう思ってると思う」って私が憶測で話すのは絶対やっちゃいけないと思っていて。
一方、メンバーの気持ちを代弁するところまではいかずとも、「メンバーはきっとこう思っているから」という憶測で動いてしまうリーダーは多いように思います。
だからこそ、「酒寄さん、こんなことに困っているから助けて」って相手にちゃんと言ってもらえるような関係性を持っていた方がいいなと思っています。
どうやったらそんなに愛されるリーダーになれるんですか……?
「この仕事手応えあった」って聞いたら必ずチェックして感想を伝えるとか、服装がかわいかったら褒めるとか、そういうかたちで愛情表現をしているかもしれないですね。
私、めちゃくちゃ3人のことを見ているんだと思います。今でも毎日のように田辺さんとLINEしていますし。
5. メンバーに求めすぎない
「田辺さん、真面目な話をしている時はもうちょっとちゃんと聞いてほしいな」とか……。
不器用っていうのもあるんですけど、私たち全員、つくらない時が一番強いと思っていて。だから、みんなが自然な状態でいられるのが一番いいなと思っています。
仕事を楽しんだ先に、THE W優勝があるのかも
ただ、私の場合、余裕を持てるようになったら仕事は途端に楽しくなりました。
「一生の終わりだ……」って思っていたことも、「こうすればクリアできるじゃん」って思える。いっぱいいっぱいだった時の私、ほぼ頭が動いてなかったんじゃないか?っていうぐらい(笑)
だから、未来の自分が働きやすいようにすることを考えるのも大切なんじゃないかなと思います。
そんなぼる塾の2025年の目標は何ですか?
2024年の敗因は技術力。ぼる塾は4人もいるから、テクニック次第でいろんなことができると思うんです。
例えば、はるちゃんをツッコミにしてみたり、新しいパターンの立ち位置を試してみてもいいと思っています。
それぞれ個人がレベルアップをして、それをチームに還元できれば、きっと2024年よりも良い結果につながるはず。
自分たちの課題ははっきりしていて、それを自分たちで認められているので、後は頑張るだけ!
「THE W」に出始めたことで、ぼる塾はチームとして機能し始めたのかもしれないですね。
自分たちの限界を決めずに、何かにぶつかったら「私たちはまだ途中」と思って、2025年こそ優勝したいです!
書籍情報
いきなり4人で『女芸人No.1決定戦 THE W』の決勝を目指すと拳を上げ、3人も「うぉぉぉぉ!」と一致団結!
したはいいものの、4人には大きな壁が立ちはだかっていた…。
でもその壁の向こうに、かけがえのないものがあるなんて思いもしなかった(泣)。
賞レースに挑戦する“ガチぼる塾”の約1年の軌跡が本書で初めて明かされます!
もちろんいつもの愉快な4人のエピソードもたくさん収録。noteの人気連載にプラスして今作は今までにないボリュームで書き下ろしました。もうほぼほぼ書き下ろし!
そして、一作目から連載のファンがひそかに楽しみにしている酒寄さん原作の漫画『転生したら田辺さんだった』はついに完結!
さらに本のイラストを手がけた漫画家・つづ井さんと田辺さんの3人トーク企画も実現しました!
おまけにカラーページを増量して、ぼる塾写真集や酒寄さんプロデュースの間違い探しなど楽しいコーナーも!
頑張る女子なら一度は読んでほしい!泣いて笑って癒される女同士の友情エッセイです!
『「ゆるバリLady」を目指してみない?』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/rolemodel/yurubarilady/をクリック