2年にわたる不妊治療…だけど転職したい! 妊活中に転職活動を始めるべきか悩む女性にキャリアコンサルタントが回答【妊活&仕事の両立Q&A】

2年にわたる不妊治療…だけど転職したい! 妊活中に転職活動を始めるべきか悩む女性にキャリアコンサルタントが回答【妊活&仕事の両立Q&A】
妊活・仕事の両立Q&A

妊活・不妊治療当事者のキャリア形成を支援する『妊活キャリア』代表・国家資格キャリアコンサルタントの田所ゆかりさんが、「妊活&仕事」の両立に悩む働く女性から寄せられたお悩みに回答していきます。妊活中の転職、キャリアアップ……どう考えたらいいの!?

今回のご相談は、不妊治療中の転職活動についてです。

転職したい気持ちと、転職してからすぐ妊娠したらどうしようという不安……。そのはざまで身動きがとれずに長くモヤモヤを抱える女性は多いものです。

妊活と転職(キャリア)をどんな優先順位で考えていくべきか、一緒に考えてみたいと思います。

田所ゆかりさん

【Profile】
ルポンコンサルティング代表/国家資格キャリアコンサルタント
田所ゆかり

日産自動車にて電気自動車の開発やベンチャー事業の立ち上げ等に従事した後、デロイト トーマツ コンサルティングに転職。その後、キャリアコンサルティング事業、企業の新規事業化支援などを手掛けるルポンコンサルティングを起業。会社員時代に不妊治療を経験して誰にも相談できず悩んだ経験から、キャリア形成支援の必要性を痛感し「妊活キャリア」事業を立ち上げる。不妊治療中に転職、起業を実現した経験から、不妊治療を言い訳にしない攻めのキャリア構築を得意としている

悩み:不妊治療中でも転職していいの?

Cさん/34歳/マーケティング職

「不妊治療が長引き、転職したいと思いながら2年がたちました。うまくいけば来月妊娠するかもしれないのに(それを願っているのに)転職するというわけにもいかず、身動きがとれない状況にかなり焦っています。

このまま子どももできない、転職もできないまま何年も過ぎていくかと思うとこわいです。転職と不妊治療の優先順位をどのように考えればいいのでしょうか……。

<回答>
キャリアと妊活、それぞれの目標を「分けて」考えてみよう

不妊治療中は、終わりの見えない治療に仕事の予定が立てられず頭の中がモヤモヤしがちです。Cさんのような気持ちを抱えている方はきっと多いですよね。

そこで一度、妊活の目標とキャリアの目標を切り離して考えてみることをおすすめします。

「妊活がなかったら実現したいキャリアの目標」、「キャリアのことを考えなかったら実現したい妊活の目標」を書き出します。

それぞれの目標が明らかになると、自分にとって何が大切か、何を優先したいかが見えてきます。

治療を進めながらもキャリアの目標を第一に置くこともあれば、今は治療を優先しつつキャリアの準備を進めるという優先順位もあり得ます。

目標およびその優先順位が明らかになって初めて、その目標を実現するための具体的ステップを立てることができるのです。

不妊治療中でも転職することはできる

不妊治療中の転職

そして、もし転職することを最優先に考えたいと思ったなら実行に移してみましょう。

私自身もそうでしたが、不妊治療中でも転職活動はできますし、転職すること自体は可能です。むしろ、今いる会社よりもよりいっそう不妊治療と仕事を両立しやすい職場が見つかる可能性もあります。

ぜひ、転職活動をする際には転職後に不妊治療と両立しやすい働き方ができる職場を探してみてください。

Cさんはマーケティング職の経験があるので、その経験を生かしてより自由度が高い働き方(フレックスタイム、リモートワークなど)ができる企業や、マーケティング職以外でもご自身の「やりがい」につながる仕事内容を見つけることができるはず。

治療との両立を図りながらキャリアも諦めない道が見つかるかもしれません。

例えば、マーケティングの経験を他の業界で生かす、もしくは今いる業界の経験を他の職種で生かす……。「軸ずらし転職」を念頭に置くと、より選択肢を広げることができます。

大切なのは現在の職場以外の選択肢もあるんだということに気づき、一度考えてみることです。

不妊治療中の転職

また、転職活動中にいま自分が不妊治療中であることを伝えるべきか悩むという方もいらっしゃいます。

ただ、不妊治療はプライベートでのことなので、面接中にあえて伝える必要はありません。大切なのは、「自分のスキルや経験を企業でどう生かしていけるか」をしっかり伝えることです。

内定が決まり、いざ働き始めてから、職場のサポートを受ける必要があると判断した場合に申し出れば良いと思います。

もし不安がある場合は、柔軟な働き方ができる制度が公表されている企業を選んだり、転職エージェントを通じて間接的に確認する方法も有効です。

「不確かな未来」ではなく「今」に目を向けて行動してみる

未来の不確実性にとらわれ、身動きが取れない状況は、心理的に大きな負担です。不妊治療が長引いている女性にとっては、とても不安なことだと思います。

ただ、「どうなるか分からない未来」のことを考えすぎて苦しくなってしまったときは、いったん「今、自分はどうしたいか」という目の前のことに焦点をあててみてほしいのです。

不妊治療中の転職

Cさんのように「転職したい」という気持ちがあったり、キャリアを前進させるために何か一歩を踏み出したいという気持ちがあるなら、それは大切なご自身の声です。

転職活動の準備でも、情報収集でも、自己分析でも、できることから小さな一歩を踏み出すことが、停滞している状況を打開し、自己効力感を高めることにつながります。

不妊治療を機に立ち止まる経験は、人生やキャリアを深く見つめ直す貴重な機会とも言えます。

この時期だからこそ、周囲の価値観に流されず、ご自身が本当にどう生きたいか、どう働きたいのかを見つめ直し、望む未来へ向けて主体的に行動していくことが大切ですね。

妊活キャリア

情報提供:『妊活キャリア』

妊活キャリアは、妊活・不妊治療当事者のキャリア形成を支援します。国家資格キャリアコンサルタントによるキャリア相談、e-learning講座、法人向けサービスなどを提供中
公式サイト

書籍紹介

不妊治療でキャリア迷子
『不妊治療でキャリア迷子』(田所ゆかり著)
本書は、不妊治療と仕事に悩む女性が新しい自分を見つけるまでの物語を、キャリアコンサルタントとの対話形式で描いた一冊。サキ子と佐々木の軽快な掛け合いを通じて、キャリア形成の基礎や仕事とライフイベントのバランスの取り方、自分らしい人生を築くための考え方を、物語の一員になった感覚で学ぶことができる。
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