【織田信成】フィギュアスケートの沼り方、憧れ&推しスケーターを紹介!“推し活”で仕事熱まで上がるかも?

【織田信成】フィギュアスケートの沼り方、憧れ&推しスケーターを紹介!“推し活”で仕事熱まで上がるかも?

2025年2月に『眠れなくなるほど面白いフィギュアスケート案内』(SBクリエイティブ)を上梓したフィギュアスケーターの織田信成さん。

数々のスター選手を輩出した人気スポーツでありながら、実はあまりルールが知られていないフィギュアスケート。その魅力はどこにあるのでしょうか。

趣味や推しが欲しい、プライベートで楽しめるものを見つけて仕事を頑張る活力にしたい……!

そんな“沼落ち”したい女性たちに向けてフィギュアスケートのススメと、織田さんの推しスケーターを教えてもらいました。

織田信成

織田信成(おだ・のぶなり)

1987年3月25日生まれ。大阪府出身。2010年、バンクーバーオリンピック7位入賞。2006年、四大陸選手権優勝。2008年、全日本選手権優勝。2005年、世界ジュニア選手権優勝。2009・2010年、グランプリファイナル2位。2006年、世界選手権4位など、日本を代表するスケーターの一人として活躍。2025年1月、2度目の現役引退を果たした。同年2月に『眠れなくなるほど面白いフィギュアスケート案内』を上梓。

聞き手:横川良明(@fudge_2002
エンタメ系ライター。2002年のソルトレイク五輪からのスケオタ。信成さんの推しプログラムは2013-2014シーズンのFS『ウィリアム・テル序曲』
【織田信成】“イヤイヤ”で始まったフィギュアスケート人生「自分の強みも天職も、全て周囲の人が教えてくれた」 https://woman-type.jp/wt/feature/40380/
【織田信成】“イヤイヤ”で始まったフィギュアスケート人生「自分の強みも天職も、全て周囲の人が教えてくれた」

選手の「人生の縮図」が氷上で描かれる。だから、フィギュアは感動する

―― 今年2月に『眠れなくなるほど面白いフィギュアスケート案内』を出版されています。織田さんの思うフィギュアスケートの魅力って何でしょうか。

織田さん

フィギュアって、個性のぶつかり合いなんですよ。

スケーターによって個性は十人十色。同じリンクの上で滑ってるのに、全然違うスケートをする。その違いに気づいてもらえたら、一気に面白くなると思うんですよね。

―― まず、どこに注目してみると分かりますか。

織田さん

分かりやすいのは、やっぱりジャンプですよね。ジャンプの種類もそうなんですけど、その見分けがつくのは“沼落ち”してから。

なので、もっとシンプルに高さと幅と着氷の流れ。この三つに注目してください。

例えば、上に高く跳ぶ選手もいれば、幅のあるジャンプを跳ぶ選手もいる。あるいは着氷後の流れがめちゃくちゃきれいな選手もいる。

自分がどのジャンプをいちばんきれいだなと思うかで、どういう選手が好きか、より解 像度が上がってくると思います。

―― フィギュアを見ていると、美しさって1種類じゃない。こんなにも人によって美し
さが違うんだなということに気付かされますよね。

織田さん

そうなんですよ。

バレエのように指先まで神経の行き届いた、どの瞬間を切り取っても絵になるスケートを美しいと思う人もいれば、パワフルでキレがあって感情がそのまま伝わってくるようなスケートを美しいと思う人もいる。

皆さんそれぞれが思う美しさに応える選手が絶対にいるので、そんなお気に入りの選手を見つけてもらえたら、フィギュアスケート鑑賞が100倍楽しくなると思います。

――フィギュアって、プログラムに選手のストーリーが乗っかってるんですよね。

織田さん

その選手が歩んできた人生の縮図が氷の上で描かれる。それこそがフィギュアスケートの魅力だと思います。

フィギュアは、幼い頃からやっている選手が多いのも特徴。早い人なら3歳とか4歳から氷の上に乗っている。シングルの場合、FS(フリースケーティング)の時間は約4分。

その4分に、選手の10数年分の道のりがつむぎ出されるところに僕は感動するんですよね。

あと、他のスポーツとの違いは、フィギュアスケートは伝えるスポーツであるということ。

音楽に乗せて、スケーターは自分の想いを伝えます。だから、選曲の時点から表現は始まっているんです。

明るいナンバーも選ぶ人もいれば、重厚でクラシカルな曲を選ぶ人もいる。そこに、その選手のバックグラウンドがあります。

それを本番では広いリンクの上でたった一人で表現しなくちゃいけない。プレッシャーはものすごいです。

でもその重圧に打ち勝って、自分の伝えたい想いを観客の皆さんに届けられたとき、フィギュアスケートでしか味わえないドラマが感じられるんだと思います。

―― 試合の時の緊張感はたまらないですよね。

織田さん

はい。フィギュアって、曲が鳴る直前はスーッと静まり返るじゃないですか。

あの静寂が、滑ってる側も見ている側も癖になるとうか。僕はもう毎回胸がギューッとなるんですよね。

あのギューッを多くの人に味わってほしい!

―― 会場にいると、絶対に物音一つ立てちゃいけないという気持ちになります。

織田さん

何なら最初のポーズにつくまでの鼻をすする音とか聞こえてきますからね。

あの今からやるぞという静寂と緊張感は、なかなか他のスポーツにはないんじゃないでしょうか。

―― 会場だと、スタートポジションにつくまでのエッジ(※)の音まで聞こえますよね。あのエッジ音にゾクゾクします。

織田さん

あれを楽しめるようになったら、もうだいぶマニアです(笑)。ぜひ皆さんにもそ うなってほしいです。

(※)スケート靴のブレード(刃)が氷に接する部分のこと

――そのためには、まず何から始めるといいですか。

織田さん

もちろんテレビで見ていただくのもいいんですけど、やっぱり会場で観戦していただ くのが一番だと思います。

有名な大会も国内でやっていますが、それだけじゃなくて、ローカルの大会も結構やってるんですよ。そういうのは大抵無料なので、ふらっと行くにはちょうどいいんじゃないかと思います。

ローカルの大会はまだ小さかったり、それほど注目を浴びていない選手が多いですが、それがまたいいんですよ。

こ〜んな小さい子がシングルアクセルを跳んでいるのを見ると、僕はもう孫を見るような目線になります(笑)

――勝手に親戚が増えていく感じはありますよね(笑)

織田さん

そうやって応援していった子が大きくなって、学生の場合、多くが大学卒業のタイミ ングで引退になるんですけど、引退試合はもう涙が止まらなくなりますよ!

推し活という意味でも、フィギュアスケートはぴったりだと思います。

織田信成が「一生辿り着けない」と思う憧れのスケーターは?

―― フィギュアスケートをまだあまり知らない人のために、この人の演技を見ればフィギュアスケートの魅力が分かるという織田さんの推し選手をご紹介いただけますか。

織田さん

まずは僕がいちばん尊敬しているスケーターである、カナダのジェフリー・バトルさ んをオススメしたいです。

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――トリノ五輪の銅メダリストであり、2008年の世界チャンピオン。日本では、『パリの散歩道』など羽生結弦さんの振付師としても有名な方ですよね。

織田さん

バトルとは同じコーチに師事していたときがあって、ずっと一緒に練習していたんですけど、なんでこんなに綺麗に滑れるんやろうって見とれるくらいスケートがきれい。

多分、僕が一生練習しても、あそこにはたどり着けない。

バトルが滑っているのを見ると、「どうやったらこんな美しい物体になれるんやろう ……」ってため息が出ますね。

――スケートの美しさってなかなかビギナーには伝わりづらいところなんですけど、織田さんの言葉で解説するとしたら、どういうところにスケートの美しさを感じるのでしょうか。

織田さん

これはね、めちゃくちゃ専門的な話になっちゃうんですよ〜(笑)。

スケートの滑った跡のことをトレースと言うんですけど、バトルのトレースはめっち ゃきれいなんです。

スケート靴のブレードの氷に接している部分をエッジと言って、基本的にフィギュアはエッジの内側(イン)と外側(アウト)を乗り分けながら滑るんですね。

バトルはこのエッジの使い分けが正確。だから、トレースが1本の線のようにきれいなんです。

荒川静香さんのイナバウアーを知っている方は多いと思うんですけど、こうしたイナ バウアーだったりイーグルだったり、氷上ならではの動きが本当に美しい。

フィギュアはどうしてもジャンプやスピンに注目がいきがちなんですが、本来のフィギュアスケートの美しさはこれなんだよというのを教えてくれるのがバトルのスケートだと思います。

―― 織田さんの熱いスケオタ魂が伝わってきますね。

織田さん

僕はバトルのスケートをおつまみにして、ワイン3本は空けられます(笑)

ジャンプとかいらないから、ずっとバトルが滑っているのを見ながらお酒を飲む会とか開きたい!

ユネスコの文化遺産に指定して後世に残したいくらい美しいスケーターが、バトルで す。あと、顔がめっちゃイケメンです!!

――そんなバトルの推しプログラムを一つ挙げるなら?

織田さん

『Both Sides Now』ですね。ぜひバトルの滑りの美しさを堪能してください!

来年はいよいよ五輪! 日本で注目のスケーターは?

―― 現役の日本人選手だと誰を特に推したいですか。

織田さん

鍵山優真選手ですね。優真くんも足さばきが本当に上手。スケートがよく伸びるし、無駄がないんです。

織田さん

ほんのひと蹴りで「こんなにリンクを大きく使っちゃうの?」とびっくりするくらい進んでいく。すごく滑りがなめらかなんですよね。

ジャンプも跳び上がりは力強いのに、着氷はふわっと柔らかい。あのジャンプは才能だと思います。

――来年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪での活躍が期待される日本のエースですね。

織田さん

2023-24シーズンから滑りが美しいことで知られるイタリアのカロリーナ・コストナーさんがコーチに加わり、さらにスケーティングが洗練されました。

まだ22歳なんですけど、熟練の匠のようなスケートをする選手。彼が滑っているのをずっと見ていたいなと思う、めっちゃ好きなスケーターの一人です。

――では、鍵山選手の推しプログラムもお願いします。

織田さん

『Believer』ですね。振付のシェイ=リーン・ボーンは特徴的なカッコいい振りを得意とする方なんですけど、そんなシェイ=リーン・ボーンの動きによって優真くんの新しい一面が開けた。

もともとの持ち味であるスケートの美しさに加えて、力強さやカッコよさを堪能できるプログラムだと思います。

――ではもう一人。女子選手からもお願いできますか。

織田さん

女子だと日本の樋口新葉ちゃん!

織田さん

フィギュアを知らない方に「1回でいいから新葉ちゃんのステップを見て!」と言いたいです。ステップに関しては現役女子ではダントツじゃないですか。

何がうまいって、体重移動なんですよね。さっきお話しした通り、フィギュアはエッジのインアウトを使い分けなきゃいけない。

かつ前向きに滑ったり、後ろ向きに滑ったりします。だから、体重移動がすごく重要になってくるんですけど、新葉ちゃんはどの位置に乗っていても体がブレない。

足元がしっかりしていて、上半身の動きは力強くてキレキレ。だから、見ていて胸が騒ぐんですよね。

僕は新葉ちゃんがステップに入る前になったら、「待ってました! ここから新葉の時間ですよ〜!」ってなる。そういう千両役者感があるのが新葉ちゃんのすごいところだと思います。

―― 樋口選手のステップを見ると、フィギュアの魅力はステップなんだと思わされます。

織田さん

今あれだけステップでワクワクさせてくれる人って女子ではあまりいないんじゃないかな。

僕は新葉ちゃんのステップだけ見たりします。いや、演技全部見ろよって話ですけど(笑)

織田さん

『デューン 砂の惑星 PART2』とかいいですよね。今季、この曲を使う選手が多かった ですけど、シングルでは新葉ちゃんがいちばんどハマりしていたんじゃないかな。

―― じゃあ、そんな樋口選手の推しプログラムを選ぶとしたら?

織田さん

やっぱり『スカイフォール』ですね。今までボンドガールを演じてきた女子スケータ ーはたくさんいますけど、あんな強そうなボンドガールはいない!

また音のとり方が上手なんですよ。メインの音だけじゃなく、裏の裏の音まで拾っている。音楽に詳しい方なら、そういうところも注目してもらえると面白いと思います。

ぜひ今回ご紹介した見どころや推し選手をきっかけに、フィギュアスケートを実際に見にきてもらえるとうれしいです。

非日常が味わえるので、忙しく働いている女性であれば、仕事の息抜きにもピッタリだと思いますよ!

織田信成

『眠れなくなるほど面白い フィギュアスケート案内』(織田信成/SBクリエイティブ)
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【織田信成】“イヤイヤ”で始まったフィギュアスケート人生「自分の強みも天職も、全て周囲の人が教えてくれた」 https://woman-type.jp/wt/feature/40380/
【織田信成】“イヤイヤ”で始まったフィギュアスケート人生「自分の強みも天職も、全て周囲の人が教えてくれた」

取材・文/横川良明 企画・編集/栗原千明(編集部)