
エンジニアデビューするなら、AI時代がねらい目? 「文系出身」がハンデにならない理由【Ms.Engineer やまざきひとみ】
リモートワークがしやすく、年収も20~30代女性の平均年収から約300万円ほど高いと言われているエンジニア職。
ライフスタイルの変化に対応しやすく、長期的なキャリアアップがかなえられる仕事であることから、未経験の女性がエンジニアに転身する例が増えている。
しかし、文系出身だったり、そもそもパソコンに触れる機会もあまりなかったりすると、キャリアチェンジにハードルの高さを感じる人も多いだろう。
「AI時代に入った今、文系出身者をはじめ、これまでエンジニアに対して苦手意識を持っていた人でもチャレンジしやすくなってるんですよ」と話すのは、女性向けオンラインプログラミングブートキャンプ『Ms.Engineer』代表のやまざきひとみさんだ。
今、未経験者がエンジニアに転身するハードルが低くなっているのはなぜなのか。未経験エンジニアを取り巻く環境の変化について、やまざきさんに聞いた。

Ms.Engineer代表
やまざきひとみさん
1984年生まれ。2007年にサイバーエージェント入社。『アメーバピグ』立ち上げプロデューサー、大人女性向けキュレーションメディア『by.S』編集長などを担当し、15年に独立。16年にHINT inc(現在は株式会社アタラシイヒ)を設立し、代表取締役に就任。女性向けメディア『C CHANNEL』編集長を経て、21年4月よりMs.Engineer代表を務める ■X
AI時代にエンジニアになるために必要な三つのスキル
やまざきさんが2021年に『Ms.Engineer』を立ち上げてから約4年がたちました。女性エンジニアを取り巻く環境はどのように変化しましたか。
まず女性が未経験からキャリアチェンジし、長くスキルアップしていける仕事の一つとして、ITエンジニアが当たり前の選択肢になってきたのを感じます。
この4年で『Ms.Engineer』が輩出した女性エンジニアは数百人に上り、そのうち地方在住者は約7割。都心部だけでなく全国の地方在住女性もまた、新しい働き方を実現し始めているのを実感しています。

厚労省の制度を利用すれば受講料の最大8割が給付され、個人負担は15万円前後。地域によっては全額補助する自治体も
リモートワークがしやすいエンジニアならではですね。
加えて、この4年で社会もものすごく変わりました。
生成AIが目まぐるしく発展していく中、テクノロジーのスキルを身に付けることが重要だという認識は女性たちの間にも広まっています。
結果として、「エンジニアに限らずIT人材やAI人材になることがキャリアの可能性を広げる」と考える女性の数は、以前とは比べものにならないほど増えた印象です。
生成AIによって、エンジニアに求められるスキルはどう変わっていますか?
まず、コードを書くスキルへの相対的な価値は、ここ1年で急速に下がっています。
コーディングはAIが特に得意とする分野で、そのため「プログラマという職種は将来的に縮小するのでは」という見方もある一方、「何のために、どんなプログラムを、どういうコードで書くのか」を生成AIを使って実現できる人のニーズが高まっています。
「コードを書いて開発する」から「AIを使って開発する」に変わっているんですね。
そのために必要なスキルは、大きく三つあります。
一つ目はAIスキルです。そこには「AIリテラシー」「AIを使って開発できるスキル」「AIプロダクトを開発できるスキル」が含まれます。
二つ目はソフトウエア開発の基礎スキル。いくらAIを駆使しても、基礎が分からなければ何を作っているのか理解できません。AI以上のことはできず、やれることにも限界があります。
そして三つ目がビジネススキルです。
今後はただ開発ができるだけでなく、従来のポテンシャル採用で重視されていた「ジェネラリスト」としての力がより求められます。
具体的にはビジネス全体を見通した上で自分の役割を把握する力、コミュニケーション能力、主体性、技術の進化のスピードに対応できる力などです。
プログラミングスキルの高さよりもその三つが大切になるから、文系出身であることのハンデがなくなってきているんですね。
それらを身に付けることを前提に、AI時代に未経験からエンジニアデビューして活躍できる人の特徴を教えてください!
特徴1. 主体的に「やりたい」を考えられる
まずは主体性がある人です。
今までは指示通りにコードを書ける人に価値がありましたが、今後は「何をどういう手段で作り、それによってどんな価値提供をするか」を考えられる人の価値が上がっていくと思います。
一方で「指示されたことを中心に取り組みたい」という方にとっては、ややチャレンジが大きいかもしれません。
「やりたいこと」を持っていることが大事なのですね。
技術はあくまで手段なので「技術をどう使いたいか」の解像度が高いほど、活躍できる可能性も高いと思います。
とはいえ、大それた話じゃなくていいんですよ。「今やっている仕事の非効率性を解消したい」といった身近なことで十分です。
特にIT化が進んでいない業界にいたり、パソコンを使わない仕事をしていたりする人ほど、イノベーションの種は見つけやすいと思います。
例えば、アパレルや飲食業の経験が役立つということですか?
役立つと思います。現場を知っているわけですから、リアリティーが違うはず。
それは超効率化した世界を生きている生粋のエンジニアには見えない部分ですから、自信を持ってほしいです。
あと、うちの受講生には「社会貢献をしたい」という人も多いです。
出産や子育て、ジェンダーギャップなど、女性にとって身近な社会課題が多い分、「やりたいこと」の種は見つけやすいかもしれないですね。
特徴2. 学び続けられる“技術ミーハー”
今後は特定の言語に精通しているより、新しい技術に柔軟に適応できる人の方が評価は高くなると思います。
AIトレンドは従来の技術トレンドの何十倍もの早さで形骸化されていきます。AIの進化に伴い、技術の外部環境の変化も早くなっています。
従来からエンジニアは最新技術を学び続ける必要がありましたが、そのスピードと重要性がさらに増しているわけですね。
一方、AIによって学習コスト自体は下がっています。
例えば、以前はコードにエラーが出たら自力で調べる必要があり、場合によっては何時間もかかりました。でも今は、AIに聞けば一発で分かります。
変化のスピードについていく大変さは増しているけれど、学ぶこと自体は楽になっていると。
革命的なことが起きている中に飛び込む大変さはありますが、だからこそ学習能力が高い人は向いていると思います。生徒さんを見ていても、学ぶこと自体が好きな人は強いです。
「AIに任せればいい」という姿勢だと、学びが深まりにくく、結果的にAIに依存してしまう印象があります。
AIに依存する?
AIを使いこなして何かを生み出すのではなく、AIに頼るしかなくなり、AIに溺れちゃうイメージです。
ただ、たとえ学習が好きだったとしても、これだけ変化のスピードが早いと全てを網羅するのは難しいような……。
技術に対するミーハー心があるといいと思います。「この技術はどうなっていくのかな」と気になってしまう状況を作るのがポイント。
キャッチアップを楽しめて、変化に対応しながら新しいことに挑戦し続けられる人にとって、とても良い成長環境があると思います。
特徴3. ジェネラリストタイプ
あとは、チームワークがうまくできる人の価値も上がっていくと思います。
というのも、AIによって開発自体はスモールチーム化され、かつ短期化の傾向が強まると予想されています。
短いサイクルのプロジェクトに入り、その都度チーム内でどのロールを担い、どう立ち回るのかを見極める。それができる人は活躍しやすいと思います。
エンジニアはスペシャリストというイメージが強かったですが、ジェネラリストに近い感じがしますね。
まさに今後のエンジニアはジェネラリストに寄っていくと言われています。
企業としても先々の技術トレンドを見通せない中で採用を行うので、いろいろやってみたい人の方がありがたいという意見も。その意味では、未経験でもポテンシャルや意欲に可能性を感じてもらいやすいと思います。
AIの登場によって開発のやり方が変わりつつありますが、未経験者だからこそ新しい手法に抵抗がなく、適応しやすいという強みもあります。
そもそも企業側のエンジニア不足は深刻ですもんね。2030年には40~80万人ものIT人材が不足するという試算もありますし。
「優秀な人材がいればとにかく採用したい」と考える企業は確実に増えているように感じます。
そこに加えてダイバーシティーや人的資本経営への意識の高まりから、自社の女性比率が少ないことへの課題意識も高まっている。
「性別関係なく優秀な人を採用したいけど、女性であればさらに大歓迎」という雰囲気を感じます。
AIを検索で使う人、AIリテラシーが低いかも……?
生成AIの登場によって世の中は大きく変わろうとしていて、この先の社会や働き方がどうなるかは誰にも予想ができません。
プログラマーという職種はなくなっていくという話もありますが、そんな今「エンジニアになる」という選択肢の可能性について、改めてどう思いますか?
技術を使って何かを生み出したり、社会構造を進化させたりする仕事は、加速度的に増えていくと思います。
その前提に立てば、AIに負けないスキルを身に付けて、AIを動かす側にいけば仕事はむしろ増えていくはず。
そして、AIに負けない人材になれるかどうかは、まさに今が変わり目だと感じています。
Ms.Engineer では「AI or Die」を2025年のスローガンにしていますが、今年AIに向き合うことがこの先のキャリアや人生の在り方を変えると思っています。
エンジニアのみならず、これから生きる上でAI活用は必須になりそうです。
AIに対して「なんとなく怖い」と感じている人もいますが、女性たちには「生成AIによって技術との距離が近くなった」ことをもっと多くの女性に知ってほしいと考えています。
エンジニアは男性の職種というバイアスがあったように、最新技術は男性のものというジェンダーバイアスがAIに関してもあると言われています。
でも、本当はAIこそ女性の働き方に改革を起こせる可能性があります。
日本の働く女性は世界的に見ても、自由に使える個人の時間が少ないですが、AIで時間を短縮できれば人生そのものを充実させられる。
女性の生き方自体が歴史的な転換点にある中、AIこそ今後の女性の働き方の鍵を握ります。
だからこそ最新技術というよりは「働き方を変えるツール」という認識を持って、AIフレンドリーになってほしい。
特にAIリテラシーは働く女性全員に持ってほしいと強く思い、全3回のAIレッスン『AI HOLIC』をリリースしました。
ChatGPTを普通に使っているだけでは足りないのでしょうか……?
例えば、AIを検索エンジンのように使うのは、AIリテラシーが低い人の活用方法。一度覚えた便利なプロンプトを使い続けるのも、AIに負けちゃう使い方です。
ギクッ……。
詳しい理由については長くなるので、ぜひ『AI HOLIC』で学んでいただければと思いますが、AIの仕組みや得意領域を構造的に知り、「AIとは何か」を理解することが重要です。
エンジニアへのキャリアチェンジを検討したい人の第一歩としてもよさそうですね。
エンジニアはもちろん、IT人材やAI人材になれば、女性の人生を大きく変えます。
実際に『Ms.Engineer』では半年ほどの勉強で一生もののスキルが得られ、卒業生の転職後の平均月収は45万円と、20〜30代女性の平均月収より10万円以上高くなっています。
その後も継続的な給料アップを実現でき、生涯年収は数千万円レベルで変わりますから、長く働きたい女性の皆さんには、ぜひ今後のキャリアの選択肢として考えていただけたらうれしいです。
取材・文/天野夏海 編集/光谷麻里(編集部)
『Ms.Engineer』プログラムにご興味のある方はこちらから
未経験でも平均8カ月で最新のAI/ITスキルを身に付け、年収アップと柔軟な働き方を得られる独自のオンラインブートキャンプを提供しています。
【POINT】
・受験生の92%は未経験者。他業界から転身、女性だけでも安心してトライできる環境
・卒業率95% / 転職内定率90%
・卒業後年収484万円(平均)※日本女性平均+170万円
・経産省&厚労省認定講座 ※最大80%受講料給付
【プログラムの流れ】
▼初心者から学べるプログラミング基礎学習
自分のペースで学べるオンライン学習で進行します。1カ月~6カ月の期間学べます。
学べる内容:JavaScript/HTML/CSS/学習のためのスキルなど
▼エンジニアを目指すためのコーディングブートキャンプ
クラス形式の授業+チーム開発演習を行います(3カ月または6カ月)。
エンジニア転職を支援するキャリアサポートプログラムも実施します。
学べる内容:コンピューターサイエンス/サーバーサイド/クライアントサイド/インフラ・データベース/開発環境/チーム開発/多言語開発/LLM/エンジニアとしてのソフトスキルなど