【小巻亜矢】資格も経験もない専業主婦だった彼女が、サンリオピューロランドを立て直せたワケ

【小巻亜矢】資格も経験もない専業主婦だった彼女が、サンリオピューロランドを立て直せたワケ

コロナ禍を乗り越えて、サンリオピューロランドを過去最高来場者数及び最高益に導いた経営者として一躍有名になった小巻亜矢さん。

敏腕経営者として知られる彼女が、20代半ばから30代後半までの10年あまりの間、専業主婦だったことはご存知だろうか。

今よりも女性が働き続けるハードルが高かった時代。武器となる資格や経験もなかった彼女が、一度キャリアを中断しながらも今「納得できる仕事人生」を送ることができているのはなぜなのだろうか。

※本記事は2025年11月に発売予定の雑誌『type就活』から先行公開をしています。

小巻亜矢さん

株式会社サンリオエンターテイメント 代表取締役社長
サンリオピューロランド館長
小巻亜矢(こまき・あや)さん

1983年に株式会社サンリオ入社。結婚退社、出産などを経てサンリオ関連会社にて仕事復帰。2014年サンリオエンターテイメント顧問就任、15年サンリオエンターテイメント取締役就任。16年サンリオピューロランド館長就任、19年6月より現職。その他、松竹株式会社 社外取締役、子宮頸がん予防啓発活動「ハロースマイル(Hellosmile)」委員長、NPO法人ハロードリーム実行委員会代表理事、一般社団法人SDGsプラットフォーム代表理事。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了 ■X

10年以上の専業主婦を経て、サンリオピューロランドの館長へ

私は今でこそ、サンリオピューロランドの館長として充実した毎日を送ることができていますが、実はバリバリ働いてキャリアを築いてきたわけではありません。

私が就職した頃は、「お嫁さんになって仕事を辞める」のが幸せな女性のロールモデルだと思われていた時代。

私も例外ではなく、新卒で大好きだったサンリオに入社したものの、「子どもが生まれるまでは頑張ろうかな」くらいの気持ちで働いていました。

結局、25歳で結婚を機に退職。その後は、10年以上専業主婦として、家事・育児に専念する日々を送っていました。

小巻亜矢さん

30代後半で仕事に復帰した時は、子どもを2人抱えた女性ができる仕事は少なく、やっと就職できたのは、たまたま声を掛けていただいた化粧品販売の仕事。

全くの未経験だったので、苦労も多かったですが、販売の仕事ができる自分がうれしくて、一生懸命やっていたのをよく覚えています。

化粧品販売の仕事を経て、またサンリオの関連会社に転職した私はある時、一般客としてサンリオピューロランドを訪れました。

そこでさまざまな課題を感じ、サンリオの創業者である辻信太郎社長(当時・現名誉会長)に課題点をつづった手紙を送ったのです。これがきっかけで、サンリオピューロランドの館長として立て直しに取り組んでいくことになりました。

小巻亜矢さん

30代後半まで専業主婦だった私がなぜ今、やりがいを持って責任ある仕事に取り組めているのか。振り返れば、自分のことをメタ認知(客観視)できていたからだと思います。

仕事復帰したばかりの頃はつらいことも多かったですが、仕事ができることのありがたみや社会と関わることで世界が広がる面白さを実感でき、そんな自分を客観視できたからこそ頑張れました。

また、無知な自分も客観的に受け止めることができていたため、分からないことは人に聞くことができたし、できないことはできないと言えた。そして、知識がないからこそ、学びへの意欲も強かった。そんなことも、今につながっているように思います。

悪い方向に流されたり、つまらないことでつまずいたりしないためにも、自分をメタ認知する力は必要です。特に女性は出産や子育てなどのライフイベントに振り回されやすいからこそ、自分と対話し、自己理解を深めながら進んでいくことが幸せに生きる上で大切だと感じています。

「パーパス」と「耐性」があれば理想の場所にたどり着ける

小巻亜矢さん

自分が納得できる働き方をし続けたいと考える女性たちには、ぜひなるべく早い段階で、自分が生きていく目的や働く意味である「パーパス」を見つけてほしいなと思います。

まだ探している最中という人も多いかもしれませんが、まずは自分の人生で何を得たいか、深い部分での納得感に向き合ってみてください。

パーパスは周りの環境や自分の考え方の変化に合わせて変化するのが自然ですから、今の時点ではぼんやりしていても大丈夫。自分をメタ認知して自分への理解を深めることができるようになったら、きっとパーパスも見つかるはずです。

さらにパーパスを見つける上で重要なのが、「耐性」です。これはただ我慢しましょうということではなく、一見無意味に思えることでも必ず何かの役に立つと信じ、そこに意味を見出し、自分の糧にするために必要な力です。

小巻亜矢さん

よく修行の段階は「守破離」という言葉で表されますが、社会人の初めはまさに「守」。一つ一つの業務を学びながら、やり方を覚えていく時期です。

そうして基本を学んだら、次は他者のやり方に目を向け、自分のスキルを磨き、引き出しを増やしていく「破」。その後ようやく自分のやりたいことを実現する道を見つける「離」に到達できます。

「守」のプロセスでは、目の前の仕事が将来どう役立つかイメージできないこともあると思います。ただ私の経験上、役に立たないことはほとんどありません。どんな仕事も無駄ではないと踏ん張ることが、次のステップにつながっていくでしょう。

せっかく自分で選んで入った会社に、「やりたいことじゃない」「イメージと違った」と早々に見切りをつけるのではなく、信じて頑張ってきた人だけがたどり着ける道があるのです。

長い人生、時には自分の心の声を聞く余裕がなくなってしまうこともあると思いますが、そんな時の支えとなるものこそがパーパスです。

パーパスを持ち、信じて経験を積んでいけば、途中で寄り道をしたりキャリアを中断したりすることがあっても、いつかは自分が理想とする場所にたどり着けるはず。

だからこそ、まずは自分のことをよく理解し、自分の「好き」「やりたい」をわがままに、精一杯広げられる人になってほしいなと思います。

小巻亜矢さん

編集/光谷麻里(編集部) 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) 

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