ボーナス前に退職の意思を伝えても、ボーナス(賞与)はちゃんと支給される? 査定への影響や注意点を解説
「今の会社を退職したい。でも、次のボーナスはもらってから辞めたい……」
転職を考え始めると、多くの人が悩むのが「退職を伝えるタイミング」と「ボーナス」の問題です。
「ボーナス支給の直前に退職を伝えたら、減額されたり、もらえなくなったりしない?」
「満額もらうには、いつまで在籍していればいいの?」
そんな疑問や不安から、なかなか一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、転職時のボーナス(賞与)に関する法的なルール、支給条件のチェックポイント、そして「査定」への影響について、キャリアアドバイザーの知見を交えて詳しく解説します。
【回答・監修】
type女性の転職エージェント 伊藤 泰子
エキスパートキャリアアドバイザーとして、18年以上にわたり8,000名を超える転職希望者のキャリアサポートを行ってきた。転職活動を「客観的に自分を見つめるチャンス」と定義し、現在ではIT領域の転職希望者に対して「納得感のある転職成功」の実現に向けたキャリアプランを提案し続けている。
そもそも、ボーナス前に「退職」を伝えても支給される?
まず、ボーナスが支給されるかどうかについて、エキスパートの回答を見てみましょう。
ボーナスは賃金の一部とみなされ、「退職する」という理由だけで支給しないのは法によって禁じられているため、支給に関してはまず安心していいでしょう。
「退職する」と伝えたからといって、一方的に「ボーナス不支給」とすることは、原則として認められていない、ということです。
ただし、安心してボーナスをもらうためには、クリアすべき「条件」があります。
ボーナス支給の重要チェックポイント「支給対象期間」と「支給日」
ボーナス支給の条件として、ほとんどの企業が「就業規則」や「給与規定」で以下の2点を定めています。
ボーナスの支給に関して注意すべきは、以下の2点です。
(1)支給対象期間
ボーナスの支給対象期間は企業ごとに決められているので要注意。多くの企業で、夏のボーナスは10月~3月、冬のボーナスは4月~9月の業績に対して支払われるケースがほとんど。そのため対象期間に在籍していることが支給の条件となります。企業によっては、その期間のすべてを満たさなくても支給対象となる場合がありますから、規定を確認してみてください。
(2)支給日
一般に、ボーナス支給日に会社に在籍していなければ支給しない、とする企業が多い傾向があります。給与規定や就業規則は十分に確認しておきましょう。
すべては会社の「就業規則(または給与規定)」次第ではありますが、「就業規則」は以下のポイントでチェックできるといいでしょう。
確認すべき項目:「賞与の支給」「支給対象期間」「支給日在籍要件」といった見出しを探しましょう。
どこで確認できる?:社内ポータルサイト、共有フォルダ、人事部から配布された冊子などを確認してみてください。
見つからない場合は?:人事部や総務部に「(退職の意図は伏せて)給与規定を確認したいのですが、どこで見られますか?」と尋ねてみましょう。「働き方のルールを再確認したくて」といった理由であれば自然です。
最大のリスク。「退職」を伝えるとボーナス(賞与)の「査定」が下がるって本当?
「支給はされる」としても、次に不安になるのは「金額(査定)」です。
「どうせ辞める人だから」と、査定を不当に下げられてしまわないでしょうか。
問題は、退職の意思を伝える時期。
ボーナスの支給については法律がありますが、その査定については特に決まりがないため、退職の意思を伝えたことで査定が低くなり、結果支給額が減ってしまうということも、実際にあり得る話です。
残念ながら、ボーナスは過去の業績への対価であると同時に、「今後の活躍への期待値」も含まれていることが多いため、「査定が下がる」可能性はあります。
「退職する」と伝えた時点で、この「期待値」部分がゼロになり、査定に影響するケースは少なくありません。
一番のリスクは、「ボーナス支給日」より「査定期間」が後に設定されているパターンです。
例えば、支給日が12月10日でも、査定の確定が12月15日といった場合、12月10日直後に退職を伝えると、最後の査定で減額される(支給後に、差額を調整される)リスクが残ります。
就業規則で「査定期間」や「査定確定日」まで明記されていることは稀ですが、こうしたリスクがあることは覚えておきましょう。
結論:現職のボーナス? 次の会社? どちらを優先するか決めよう
結局のところ、転職活動においては「すべてを完璧に(=満額もらって円満に)進める」のは難しい場合があります。
いずれにせよ、転職の際には、転職前後のどちらかのボーナスは満額もらえない可能性があるということを忘れないでください。
現職のボーナスを満額もらうために、退職の意思を伝えるのを遅らせて入社時期をずらすか。それとも、新しい会社に1日でも早く入って次のボーナスの満額をもらうために、早めに退職の意思を伝えるか。どちらを優先するかはあなた次第です。じっくり考えて決断してくださいね。
エキスパートのアドバイス通り、どちらかを満額もらえない可能性を理解した上で、「自分は何を優先するか」を決めることが重要です。
その上で、現職のボーナスへの影響を最小限にしたい場合、最も一般的なのは「ボーナス支給日(の数日後)」に退職の意思を伝えることです。
支給が確定し、口座への入金も確認できるため、「支給日」と「査定」の両方のリスクをクリアできる可能性が最も高いです。
しかし、民法上は退職の意思表示から2週間で退職可能ですが、円満退職のためには、就業規則で定められた期間(1カ月前など)や、引継ぎに必要な期間(1〜2カ月)を考慮して退職日を設定するのがマナーです。
ボーナス支給直後に伝えると、引継ぎ期間を含めると退職が翌年になることも。転職先企業が「すぐにでも入社してほしい」場合、入社時期の調整が必要になります。
現職のボーナスを優先するか、転職先への入社時期を優先するか。
キャリアプランと、転職先の状況を天秤にかけ、ベストなタイミングを見極めてくださいね。


