目先の働きやすさで会社を選ぶのは逆効果? 長く働ける会社を見極めた女性たちが転職活動でやらなかったこと
ライフステージが変化しても働き続けるため、20代のうちに「長く働けそうな会社」へ転職しておきたいと考える女性は多い。
しかし、多くの女性が思い描く“長く働けそうな会社の条件”は、かえって長期的なキャリア形成を妨げてしまう危険性があると指摘するのは、『女の転職type』編集長の小林佳代子だ。
そこで、210万人の転職者データをもとに女性が長く働くためのポイントをまとめた『働くわたしの仕事地図』(ダイヤモンド社)の著者でもある小林に、「本当に長く働ける会社」を見極める上で転職活動中に避けるべきNG行動を聞いた。
あわせて、横河電機発のコンサルティングファーム・横河デジタル株式会社の社員たちにもインタビューを実施。製造業のフィールドでDXコンサルティングを手掛ける同社は、一見女性にはハードな印象を与えるが、実際は業界トップクラスの女性定着率を誇る。
彼女たちが転職時に重視していたポイントをひも解くと、女性が長く働ける会社を見極める上で持っておくべき視点が見えてきた。
女の転職type 編集長 小林 佳代子
東京女子大学卒業後、新卒で(株)キャリアデザインセンターに入社。転職情報誌及び転職サイト「type」、「女の転職type」の求人広告制作に携わる制作部に配属され、1,000社以上の企業の求人広告制作に携わる。その後、新卒採用担当、働く女性のためのWebマガジン「Woman type」編集長を経て、2018年「女の転職type」編集長に就任。20年にわたり、多くの働く女性の、迷いや悩みを広い視点で捉えつつ、常に深く寄り添い続けてきた
長く働きたいなら「居心地の良さそうな会社」は危険
まず小林が指摘するのは、「長く働ける会社=負荷がかからない居心地のいい会社」という軸で会社選びをすることの危険性だ。
長く働きたいと考える女性は、つい目先の働きやすさ、言い換えるとゆるさにとらわれて転職先を絞り込んでしまいがちです。
労働環境が良くても昇給・昇進がしづらかったり、成長機会がなかったりする“ゆるブラック”企業や、自分でも今すぐにできそうな難易度の高くない仕事を選んでしまう。これは転職活動において最も避けるべきNG行動の一つです。
女の転職typeのアンケートでは、半数の女性が「ゆるブラック企業で働いたことがある」と回答。うち8割の方が、退職や転職など何かしら環境を変える行動をしています。
終身雇用が崩れた今、ライフステージの変化がキャリアに影響を与えやすい女性の身を守るのは、「再現性のあるスキル」です。
会社に依存しなくても市場から求められる「将来性のあるスキル」を身に付けられそうかどうかを重視して、会社選びをするといいと思います。
同時に、福利厚生や入社時の条件で長く働ける環境があるかどうかを判断するのも危険だと、小林は続ける。
福利厚生などの制度が整っている大手企業や、入社時の条件がいい企業に魅力を感じる女性も多いですが、それだけで判断するのも危険です。
実際にどのような人が制度を利用しているのか、制度を利用した人がどのようなキャリアを築いているのか、入社時の条件が良くても入社後はどう変化していくのかまでチェックできるといいですね。
例えば、女性の転職理由の一位は「給与」ですが、入社時の給与額のみで判断してしまっている人は少なくありません。
評価制度の仕組みや実際に女性が昇給・昇格しているのか、女性管理職比率、男女での給与差……といった実態にも目を向けてみると、「女性が長く働くこと」に対する企業の本気度が見えてきます。
「女性が長く働ける企業」にたどり着いた女性たちの共通点
ここで、コンサル業界でトップクラスの「女性の定着率の高さ」を誇る横河デジタル株式会社で働く女性たちの声をお届けしよう。
女性の定着率に課題を抱えるコンサルティング業界の中でも、より男性社会のイメージが強い「製造業」に特化した事業を展開する同社は、一見女性に不向きな印象を与える。
しかし同社の女性たちは、産休・育休を経て育児と両立しながら管理職として働いていたり、海外出張などやりたい仕事を諦めなかったりと、ライフステージに左右されずに自身の納得のいくキャリアを築いている姿が印象的だ。
「長く働くために横河デジタルを選んだ」と話す北 紗良さんと田中 菜々子さん、その上長である三橋伸章さんに話を聞くと、転職活動で長く働ける会社を見極められる女性たちの共通点が浮かび上がってきた。
コンサルティング事業本部 DXコンサルティング部 コンサルタント 北 紗良さん
前職は、紙パルプ製造業にてマーケティングプランナーとして、食品の商品企画およびパッケージデザインの企画に従事。2025年6月に横河デジタルに入社
コンサルティング事業本部 DXコンサルティング部 コンサルタント 田中 菜々子さん
前職は、製造業を営む親会社のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を担う企業にて営業を担当。現場の業務改善に対する提案活動に従事した後、2025年6月に横河デジタルに入社
コンサルティング事業本部 副事業本部長 兼 DXコンサルティング部部長 パートナー 三橋伸章さん
早稲田大学卒業後、外資系大手ITベンダーに入社。社内新規事業立ち上げ、事業売却PJ、セキュリティやソフトウェア企業のPMIなど、各プロジェクト推進に従事。2014年より環境コンサル事業の国内事業責任者、16年より企業のデジタルトランスフォーメーションに関するコンサルティングや新規事業及び新拠点の立ち上げ等、第二創業期の拡大に貢献。21年からはPMO専業コンサルティングにてPM、PMOの知見を活かしエネルギー・通信業界での大手クライアントのPJ実行支援に従事。23年3月に横河デジタルに入社
北さんも田中さんも、前職でも製造業に携わっていたとのことですが、製造業というと体力仕事だったり、男性社会だったり……と女性には働きづらいイメージを持つ人も多いと思います。
お二人は、前職で現場を見てきてどうでしたか?
私の部署は女性も多く働きやすかったのですが、女性比率が少ない部署で働く同期からは、女性特有の体調面に対する理解や配慮が十分とは言えず、働きづらさを感じるという話を聞くこともしばしばありました。
私も、結婚や出産を機に時短勤務や急な欠勤に対応しやすい部署に異動する女性を多く見てきました。
本人の希望もあったかもしれませんが、「家庭を持つと最前線で働くことは難しいのかな……」という印象は多少ありましたね。
なるほど。お二人がそれでも、製造業のコンサルタントにチャレンジしようと思ったのはなぜでしょうか?
私は「20代のうちはしっかり働きたい」という気持ちが強かったので、ワークライフバランスよりも、もっと知識を深めて、製造業をより良くしていきたい気持ちの方が勝っていたんです。
私も同じです! 20代は仕事に集中してキャリアの「貯金」を作っておきたいと思っていたのでワークライフバランスはそこまで気にしていませんでした。
なぜ「20代は思い切り働きたい」と思っていたのでしょうか?
結婚、出産などでブランクが生じた後でも役に立つようなスキルを身に付けておきたかったんですよね。
前職では製造業を営む親会社の業務改善を担っていたんですが、親会社に限らずさまざまな製造業のプロジェクトに携わって、知識や経験の幅を広げたくて。
分かります。私も今後結婚、出産をするかもしれないと考えると、20代のうちにスキルを身に付けて、自分にとってベストなタイミングで産休・育休が取れるようにしたいなと思っていて。だからできるだけ早く自分の力を高めておきたいと考えていました。
田中さんは先ほど「結婚、出産を機に異動する女性たちをたくさん見てきた」と仰っていましたが、製造業の分野でスキルを磨いても、ライフステージが変わったら最前線では働けなくなる不安はありませんでしたか?
ちゃんとスキルを身に付けておけば、それを武器に最前線に戻ってこられるはずだと信じていたので、そこまで不安視はしていませんでした。
それよりも、しっかり製造業の分野で専門性を磨きたいという気持ちが強かったですね。
条件や環境がよくても、転職活動の軸から外れる企業は選ばなかった
長く働き続けられる企業に転職するために、転職活動において「やらないようにしていたこと」はありますか?
私は「やりたいことができること」と「成長できること」を軸にしていたので、どんなに条件や環境が良くても、この二つの軸から外れる環境は選ばないようにしていました。
私も同じですね。「製造業のコンサルティングを究める」と決めて転職活動に踏み切ったので、そこだけはブレないようにしていました。
多くの女性たちと面接をしてきた三橋さんの目から見て、結果的に長くキャリアを築ける女性たちの共通点はありますか?
まさに北さんと田中さんのように、制度面や働き方よりも「何ができるのか」「どんなスキルが身に付くのか」を気にする人の方が圧倒的に多いです。
制度面って外的要因で変わり得るものですよね。コロナ禍でリモートワークを導入したけれど、今は出社回帰している企業も多いですし。
変わり得るものに軸を置くと、会社が変化したらその人自身も揺らいでしまうことにつながりかねません。
なるほど。北さんと田中さんは、なぜ横河デジタルなら「やりたいことをやりながら成長できそう」だと感じたのでしょうか?
製造業において本社機能から工場の現場まで支援できる幅広さと、社員の皆さんの知識の深さを見て、ここならプロフェッショナルになれそうだなと感じました。
マネジャー層の方たちが自身の知識を率先して部下、後輩たちに与えている様子も伝わってきましたし。
あとは横河デジタルは部署異動の選択肢もあり、横河グループとしての社内公募制度も充実してると聞き、やりたいことや興味が移り変わったとしても、それを実現しやすそうだなとも思いました。
私はロールモデルになる女性の先輩がいたことが大きいです。
出産、育児をしながら第一線でバリバリ働いている女性管理職がいるんですが、彼女の姿を見ていると、横河デジタルが実践する家庭との両立の支援は、「出産した女性の仕事の負荷を軽減して家庭と両立できるようにサポートする」のとは少し違うなと感じて。
「育児中であろうと、自分のやりたい仕事ができるように皆でサポートする」という感じなんだろうなと思ったんです。
弊社の女性たちは育児と両立している方もバリバリ働いているけれど、決して無理をしながら働いているわけではないんですよね。それも長く働ける理由の一つだと思います。
それはすごく感じます! 普段はリモートワークなどをうまく活用しているけれど、海外出張は積極的に行ったりと、メリハリをつけながら自分のやりたいことは諦めずにやっている人が多いです。
三橋さんのように家庭を大切にしながら働く男性マネジャーも多いので、育児中の女性だけが特別視されないのもいいですよね。
うちは双子を含めて子どもが3人いて、カオスだからね(笑)
私以外にも育児や介護と両立している男性社員もいるし、性別問わずにプライベートありきで成長できる環境づくりは大切にしています。
また、私はプロジェクトをアサインする立場なのですが、本人のやりたいことや希望する働き方と照らし合わせながら「どのプロジェクトだったら成長に繋がるか」「本人の思い描くキャリアに近づけるか」には、一番頭を悩ませています。
どんな風に本人の希望するキャリアと照らし合わせているのでしょうか?
1年後、3年後、5年後のキャリアプランを描いてもらって、半年ごとに面談ですり合わせながらアップデートしています。
やはり成長に伴って目標は少しずつ変わっていくものですし、新しい興味が湧くのも自然なことですし。そういったものを踏まえながら、成長に繋がる仕事を続けて欲しいですね。
ライフステージが変わっても、やりたいことを諦めずに成長し続けることを、皆が大切にしているからこそ、横河デジタルの女性たちは長期的な視点でキャリアを築けているんですね。
製造業はこれからさらにニーズが広がるフィールド
スキルアップし続けられる環境があったとしても、磨けるスキルが市場価値の高いものであることも重要ですよね。「製造業のDXコンサル」の将来性については、どのように捉えていますか?
このフィールドで、これから私たちができることはたくさんあるなという実感はあります。
というのも、前職で親会社の業務改善を担っていた際、「もっとやれることがあるんじゃないか」と思いながらもノウハウが足りていないことにもどかしさを感じていて。
横河デジタルで知見を深めてからは、課題解決の幅が広がっているのを実感しています。
私も前職で、社内のDX改革をしようというプロジェクトチームに参加していたことがあったのですが、まず何からやったらいいのか、誰の力を借りたらいいのか、どう解決していったらいいのかが分からず、手探りでやっていて。
今横河デジタルに飛び込んでみて、「あの時、こういう解決策があったのか」という気付きが日々あります。
製造業の現場にいるだけでは、改善の手段や選択肢を十分に把握できないので、大手メーカーから中小企業まで幅広い企業のDX推進を担っている横河デジタルのコンサルティングサービスを必要とする企業は多いと思います。
日本の製造業のDXは海外と比較して10年遅れていると言われていて、まだまだ伸びしろの大きいフィールドなんですよね。
また、先ほど北さんが「何をしたらいいのか分からなかった」と話していましたが、分かっていても取り組めない企業も多いんです。
それはなぜでしょうか?
製造業は「モノをきちんと作る」ことが使命なので、変化への心理的ハードルが高くなりやすいからです。そのため、質を担保しながら業務改善していくノウハウを持つ弊社を求めてもらえるフィールドは広がっていると思います。
製造業を営む多くの企業が横河グループの製品やサービスを利用しています。弊社は横河電機の製品を通じて得られる一次データを活用できるため、他社にはマネできない唯一無二の提案ができる点でも選んでいただいています。
なるほど。
システム化に取り組んでいても、ITコンサルタントは製造業の業務知識が浅いケースが多いので、うまくいっていないケースも散見されます。
そう考えると、製造業の業務知識とシステムの知識を持ち合わせたコンサルタントの価値は高いと思いますよ。
ライフステージが変わっても求め続けられる「専門スキル」を身に付けておきたいと考える女性にはぜひおすすめしたい分野なので、興味がある方はぜひ気軽に飛び込んできて欲しいですね。
取材・文/光谷麻里(編集部) 撮影/笹井タカマサ


