「シフト制、早朝深夜勤務あり、立ち仕事」なのに女性から大人気?“長く働ける接客業”の新常識

「シフト制、早朝深夜勤務あり、立ち仕事」なのに女性から大人気?“長く働ける接客業”の新常識

シフト制、早朝深夜勤務あり、立ち仕事の接客業――。

そう聞くと、長く働き続けたい女性からは敬遠されそうだ。しかし、多くの接客業経験者から選ばれている職場がある。

それが、京阪電車のプレミアムカーで働く車内アテンダントだ。

京阪電車のプレミアムカーで働く車内アテンダントの様子

プレミアムカーに乗車しているお客さまに、チケットの確認や発売、グッズ販売などの接客を行うのが、車内アテンダントの主な仕事。

この職場では、10年近く働き続ける女性もいれば、まだ小さな子どもを育てながら働く女性もいる。そして多くの人が「仕事が楽しい」と口をそろえる。そんな姿が印象的だ。

なぜ同社は、接客業出身の女性たちから選ばれ続けているのか。なぜライフステージが変わっても、長く働き続けられるのか。

京阪電車プレミアムカーで車内アテンダントとして働く3人の女性に話を聞くと、「長く働ける接客業」の意外な特徴が見えてきた。

京阪電車プレミアムカーで車内アテンダントとして働く本橋良子さん(仮名)

本橋良子さん(仮名)

2018年2月入社。前職は客室乗務員。経験が活かせる接客業として、プレミアムカーの車内アテンダントに。現在は、アテンダントが在籍する部署で指導・教育を担うインチャージ(責任者)として活躍

京阪電車プレミアムカーで車内アテンダントとして働く工藤由香さん(仮名)

工藤由香さん(仮名)

2025年4月入社。前職はエステティシャン。「お客様と深く関わり、感謝される仕事」を軸に転職活動をする中で、プレミアムカーに乗車。その際のアテンダントの姿に感銘を受け、自らも志して入社を決意。現在に至る

京阪電車プレミアムカーで車内アテンダントとして働く金子里香さん(仮名)

金子里香さん(仮名)

2022年新卒入社。人と関わる仕事が好きで、お客さまとじっくりコミュニケーションを取れる仕事を軸に就職活動を行う。その中で京阪の車内アテンダント職と出会い、入社。現在に至る

やりたい仕事、身に付けたいスキルを求めて辿り着いた接客業

入社して一年になる工藤由香さんの前職はエステティシャン。車内アテンダントの姿勢の美しさに感銘を受け、入社を決めたという。

工藤さん

初めて車内アテンダントを見たとき、その立ち振る舞いがとても洗練されていて、きれいだったんです。

エステの仕事でもお辞儀の仕方を習うのですが、やっぱり違うなあと思って。「ここで接客のスキルアップをしたい」と思って、転職を決めました。

インタビューに答える京阪電車のプレミアムカー車内アテンダントの工藤由香さん

ちょうど、持病で前職を辞めたタイミングだった。

家族は立ち仕事に就くことを心配したが、医師は「歩くことはリハビリにもいい」と背中を押してくれたという。

2018年に入社した本橋良子さんは、以前航空会社でCAとして働いていた。

本橋さん

私はCAを経て仕事を探してたので、転職するならこれまでの知見を活かしたいという思いがありました。

前職での契約が終了し、仕事を探していたときに友人から、京阪で車内アテンダントを募集していると聞いたんです。「この仕事なら経験が活かせそう」と思い、応募してみることにしました。

インタビューに答える京阪電車のプレミアムカー車内アテンダントの本橋良子さん

3人のうちで最年少の金子里香さんは専門学校を卒業後、新卒で入社した。

金子さん

最初は空港のグランドスタッフを目指していたのですが、航空カウンター業務はどうしてもサービスのスピードが重視されがちです。

私はお客さまとじっくりコミュニケーションを取れる仕事がしたかったので、プレミアムカーの車内アテンダントだったらゆっくり会話ができそうだと感じました。

インタビューに答える京阪電車のプレミアムカー車内アテンダントの金子里香さん

やりたい仕事であること、身に付けたいスキルを軸に考えた結果、プレミアムカーの車内アテンダントに辿り着いた3人。だが、体力面やワークライフバランス面での不安はなかったのだろうか。

そんな疑問に対して、エステティシャン出身の工藤さんは首を横に振る。

工藤さん

前職は残業がとても多かったので、そこまで不安はありませんでした。車内アテンダントは残業が少ないので。

何よりも仕事内容と接客力を高められそうな環境が魅力的だったので迷いはありませんでした。 将来的な接客業としてのスキルアップを考えたら、仮に待遇が下がっていたとしても入社していたと思います。

早朝・深夜勤務があっても、育児と両立できる理由

働き方よりも「何ができるか」を重視していた彼女たち。とはいえ、ハードな働き方によりやりがいのある仕事を泣く泣く手放してしまう接客業経験者も少なくないのが現実だ。

そんな中で彼女たちが、接客の仕事を楽しみ続けられる秘密は、京阪電車独自の環境にあった。

京阪プレミアムカー車内アテンダントの仕事は、5:40から24:00の間で早番、中番、遅番のシフト勤務。

実は、一児の母でもある本橋さん。早朝や深夜の時間帯には会社負担でタクシー通勤もできるとはいえ、育児との両立は難しそうだ。しかし本橋さんは、「そんなに心配しなくても大丈夫」と笑顔を見せる。

本橋さん

小さいお子さんがいる方は一時的に固定勤務にするなど、会社に相談することもできます。

また、「スタンバイ」と呼ばれる予備人員も待機しており、子どもの発熱などで急にお休みしなければならないといった事態への備えもあります。

私が入社した時は子どもがもう中学生だったのですが、お子さんが小さい方でも働けない仕事ではないと思いますよ。

インタビューに答える京阪電車のプレミアムカー車内アテンダントの本橋良子さん

実際、職場には、幼い子どもを育てているスタッフもいる。誰かが急に休んでも、快くカバーし合えるほど、職場の人間関係は良好だという。

工藤さん

女性が多い職場なので、ライフステージによって働き方が変わるのは当たり前だと、みんなが理解しています

本橋さん

一人一人の事情や働き方を認め合っている安心感があるので、「迷惑を掛けてしまって気が引ける」「言いづらい」なんていうことも起こりづらくて。

とにかく人間関係がいいので、何でも相談しやすいのも長く働ける理由の一つだと思います。

そうは言っても、早番も遅番もあるシフト制だと、生活のリズムが崩れたり、体力的に厳しかったりと、長く続けるのは難しい仕事だと思うかもしれない。

しかし、実際に働いてみると「思ったよりつらくなかった」と3人は口をそろえる。

工藤さん

早番、中番、遅番のシフト制ですが、体の切り替えができるように、次の勤務まで必ず11時間以上空くようにシフトが組まれています。遅番の翌日に早番になる、ということは絶対に起こらない仕組みなんです。なので、体がつらいと感じることはありません。

また、4勤→2休→3勤→1休のサイクルになっているので、1カ月の休日数で見ると、月によっては土日祝日休みの会社員よりも休みが多い時もあるんですよ

金子さん

有給休暇の取得率も、とっても高いですよね。

工藤さん

そう、みんなが休みやすい環境なので、不公平感やしわ寄せ感が生まれないのかもしれないです。

インタビューに答える京阪電車のプレミアムカー車内アテンダントの工藤由香さん

女性が長く働き続けるためには、産休・育休制度や有給休暇を当たり前に取得できる社内体制が欠かせない。

同時に、それを「お互いさま」と受け入れ合える社員同士の関係性も重要だ。

女性が多い職場だからこそ、「次は自分の番かもしれない」と思う気持ちが、助け合いを当たり前の文化にしているのだろう。

アテンダントの“その先”のキャリアも見通せる

ワークライフバランスが取りやすくても、立ち仕事だと体力面も心配の種の一つだ。

京阪プレミアムカー車内アテンダントの業務内容は、京阪雑誌の配布やプレミアムカーグッズの販売、お客さまの着席確認、車内でのチケット販売などがメイン。CAのようにワゴンを引いた飲食サービスを行うことはない。

本橋さん

一日に大阪・淀屋橋から京都・出町柳間を2、3往復乗務します。1回の乗務は2時間程度。次の乗務までの間には休憩もありますし、お昼休みもちゃんと確保されています。

工藤さん

立ち仕事なので体力はいりますが、乗務員室には椅子もありますし、「乗務中は絶対に休めない」なんてことはありません。慣れれば体力的にも全然つらくないです。

工藤さんは持病があるが、この仕事を始めたことで筋肉がつき、「リハビリでお医者さんから褒められた!」と笑顔だ。

基本的にアテンダントは一人で乗務するという。何かあったときを思うと、不安はないのだろうか。

金子さん

最初は緊張していましたが、慣れれば自分なりのおもてなしを提供できるので、むしろやりやすいと私は思います。

それにいざとなったら車掌もいますし、困ったことがあればいつでも事務所に連絡して対応方法を相談することもできるんです。

インタビューに答える京阪電車のプレミアムカー車内アテンダントの金子里香さん

事務所には的確な対応方法を指示するために「インチャージ」という責任者が待機。車内で問題が発生した際には、事務所に電話して指示を仰ぐことができる。

入社8年目になる本橋さんは、アテンダントからキャリアアップし、現在はインチャージとして勤務管理や指導・教育に携わっているという。

本橋さん

お客さまと直接お話する楽しさもありますが、インチャージの仕事にもやりがいを感じています。

責任は重いですが、これまでの接客で培ってきた経験が活きる仕事だと思います。

車内アテンダントとして経験を積んだ後は、まずアテンダントの教育係であるインストラクター職に昇格する。さらに経験を重ねることで、インチャージへとステップアップしていく。

現場の接客を究めるだけでなく、自分が望めばキャリアアップしていけることも、この仕事の魅力だ。

好きな仕事で高みを目指せなかったら、結局は長く働けない

接客の仕事が好きでも、ライフステージが変わった後も働き続けることを考えて、土日休みのオフィスワークにキャリアチェンジする女性は少なくない。

しかし3人は、こう話す。どんなにワークライフバランスが整っていても、待遇が良くても、やりがいを感じられなかったり、「この仕事を究めたい」と思えなかったりすれば、結局は長く働き続けられないのだと。

談笑する京阪電車のプレミアムカー車内アテンダントの女性たち
金子さん

入社した当時は、「もし単調な仕事だったら、2年くらいで辞めるんだろうな」と漠然と考えていました。でも実際に働いてみたら、自分次第で評価されることもあるし、経験を積んでスキルアップする道もあって。だから続けられているんだと思います。

何か目標をもって働きたい人には向いている仕事だと思います。私もインストラクターを目指して頑張っていたら、いつの間にか3年が経過していました。

入社当初、「表情が硬い」と指摘を受けていた金子さん。それを改善しようと努力を重ねた結果、あるとき乗客からこんな声を掛けられた。

「あいさつと表情がすごくいいね、また京阪に乗りたいと思った」

その言葉は、今でも忘れられないという。

自分で工夫しながら接客力が高まっていく。その実感こそが、彼女のモチベーションになっている。

工藤さん

この仕事って、自分でやりがいや目的を見つけられないと、単調な仕事になってしまうんです。

何もしないで、ただ言われたことだけをやるだけでも成立してしまう。でも、そういう人は長く続きません。

お客さまによって求めていることは違います。それを自分で見つけて行動すれば、やることはいくらでもありますし、成長もできる。やりがいのある仕事だと私は思います。

常にお客さまの目線を読んで、その方のしてほしいことを先回りするようにしているという工藤さん。

たとえば、乗客がブラインドを下げたいと思っていても、勝手に下げていいのか迷っていることがある。そんなときは、その意図を汲み取って、率先して声掛けをする。このように、工藤さんは一歩進んだ接客を常に心掛けている。

自分で課題を見つけ、高みを目指し続ける彼女は、「まだできることがある」という感覚が尽きないからこそ、辞められないのだと笑顔を見せる。

本橋さん

私はインチャージを担うようになって、視野が広がったように思います。

さまざまな部署と連携しながら全体を見るようになると、仕事の奥行きが見えてきて、さらに仕事が楽しくなりました。

やっぱり、好きな仕事でスキルアップができたりキャリアアップができたりすることが、長く働き続けるための一番の秘訣なんだと思います。

京阪電車プレミアムカーの車内アテンダントたちが長く働き続けられるのは、「好きな仕事で一つ上を目指し続けられる」環境であることが大きいのだろう。

どんなライフスタイルであっても、好きな仕事を究め続けられるよう社員同士が支え合い、高め合っている。

同じ制服を着た3人だが、スカーフの巻き方はそれぞれ違う。規律を守りながらもお互いの個性・生き方を尊重する社風が、鮮やかなオレンジ色のスカーフから垣間見えた。

カメラに向かってほほ笑む京阪電車のプレミアムカー車内アテンダントの女性たち

取材・文/宮﨑まきこ 撮影/笹井タカマサ 編集/光谷麻里(編集部)

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