「時短勤務中だけど転職できる?」キャリアのプロが教える、時短で働くママの転職成功・失敗の分かれ道
これまでのカウンセリング件数は2万件以上! 女性に大人気のキャリアカウンセラー水野順子さんへの連載取材で、長く働き続けたい女性に役立つ転職・キャリアの情報を発信していきます。初めての転職活動に役立つノウハウも盛りだくさん! 長期的な視点で今後のシゴト人生を考える上でも参考にしてくださいね。
子育てが始まると、これまでとは違った軸で自分が働く環境を見直したくなるもの。ライフステージの変化を理由に、転職したいと考える女性も多いだろう。
だが、「子育て中の転職活動は大変そう」というイメージがあるのではないだろうか。事実、キャリアカウンセラーの水野さんも「ワーキングマザーの転職活動では、避けて通れない『壁』がある」と指摘する。
具体的には、どんな壁があるのだろうか。
入社時点から「時短勤務可能」な求人はレア

「時短勤務の社員がいる企業は多いものの、中途採用では特に即戦力であることが求められるもの。時短勤務のまま転職しとうと思っても、実際に応募できる企業が少ないという壁にまずはぶつかるでしょう。ただ、時短勤務中だからといって転職できないというわけではありません。新しい仕事に対する意欲や、限られた時間の中で生産性高く成果を出せる人を歓迎してくれる企業もありますよ」(水野さん)
時短勤務中でも、転職をすることはできる。しかしながら、採用枠はかなり少ないことを前もって理解した上で転職活動を始めた方がいいという。
さらに、「子育てが始まると、転職活動の軸が曖昧になってしまう女性が多い」と水野さん。仕事について、“自分の本心が見えなくなってしまう”こと自体も「壁」の一つだ。
「子育て突発的なことが起こるので、子どもと離れるくらいなら仕事を辞めてしまったほうがいいのでは? と考えてしまったり、とにかく仕事のやりがいはどうでもいいから早く帰れる仕事がいいと思ってしまったり、自分が本来持っていた価値基準が揺らいでしまいがちです」(水野さん)
自分が働く意味とは?
仕事の「やりがい」とは?
給与はどれくらいほしい?
どのように評価されたい?
どんな仕事内容なら満足できる?
……etc
“今がとにかく嫌だから”と一時的な感情で転職すると、後々になって後悔してしまうこともある。自分の価値基準を再度見直し、転職するかどうかも含めて冷静に判断するようにしよう。
時短勤務で希望の転職を叶えた女性2人の事例
これまで水野さんがキャリア相談に応じてきた女性たちの中にも、時短勤務中で転職を実現した人たちは複数いる。その一例と、転職成功のポイントを水野さんに教えてもらった。
【Aさんの事例】
営業事務からフルコミッションの営業職へ! 成果重視の働き方で年収アップ
「営業事務で働いていたAさんには3歳のお子さんがいました。これまではサポート職で時短勤務だったので、どんなに効率良く働いてもお給料は変わらずモチベーションは下がる一方。そこで『頑張った分だけ年収が上がる仕事がしたい』とフルコミッション(完全歩合制)の営業職へと転職し、労働時間に関係なく成果次第で給料をあげられる仕事に就くことができました。常に数字を追いかける苦労はありますが、結果的に高い営業成績をあげて年収アップできただけでなく、働き方も非常にフレキシブルになり、子育ての時間もしっかり取れているそうです」
・「成果で働く仕事をする」という明確な転職先選びの軸があったこと
・さまざまな会社説明会や転職イベント等に参加し、自分が働きやすい環境を事前に確認していたこと
【Bさんの事例】
これまでのスキルを活かし、家庭と仕事のバランスが取れる職場に転職!
「小学1年生と1歳の2人のお子さんがいるSE職のBさん。仕事内容は好きでしたが、前職がかなり激務だったため子育てとの両立は難しいと感じ、『ワークライフバランスをもっと充実させたい』という理由で転職活動をしていました。結果的に、時短勤務のままで家庭生活も重視できる職場に転職。年収は下がったものの、これまでの経験を活かし、即戦力として働いています」
・育児と仕事を無理なく両立できる“環境面”を重視するという優先順位が明確だったこと
・これまでの経験・スキルをそのまま活かせる仕事で、時短勤務でも裁量を持って働ける会社を選んだところ
上記の2人に共通することは、「転職で何を叶えたいか」が明確なことだろう。トレードオフしなければいけない条件が出てくるケースもあるが、「最も大事にしたいこと」が叶えられれば納得感を持つことができる。
また、転職前には「家族への相談も忘れずに」と水野さんはアドバイスする。
「転職をしてすぐは環境が変わって慣れないことが増えますから、サポート体制をしっかり整えておくと安心できますよ」
今の会社、実はいい場所かも?
「転職しない」選択肢も検討してみよう
また、「転職することだけが状況改善のための手段ではないということも心得ておいてほしい」と水野さん。時短勤務中でなくとも、今の会社の中で仕事内容や環境改善を検討する方が、結果的に満足できることもあるという。
「例えば、『時短勤務だからサポート職で働くしかない』、と思っているのは自分で、会社としては『時短勤務でも幅広い仕事にチャレンジしてほしい。もっとキャリアアップしてほしい』と考えている可能性もあります。お互いがなぜか遠慮してしまい、コミュニケーション不足から理想の環境がつくられていないことはよくあることなんです」
これからどんな働き方がしたいのか、どんなキャリアを築きたいのか。一度本音で上司に相談してみると、何か変わる可能性もある。
転職したことを後悔しないで済むように、事前に社内でできることはないかを確認することから始めよう。
取材・文/栗原千明

【お話を伺った方】
キャリアカウンセラー
水野順子さん
株式会社キャリアコレクション代表取締役、All About女性の転職ガイド。公務員・外資系大手人材サービス会社を経て独立。キャリアカウンセリングや研修・講演を通じ、メンタルケアや人間関係の築き方などを含めた女性のキャリア支援を行っている。過去に20,000人以上へのキャリアカウンセリングと、60,000人以上への講演・研修によるキャリア支援実績がある
■ホームページhttp://www.mizunojunko.com
取材・文/栗原千明(編集部)
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