女子カーストをつくっているのは自分かも? オフィスでしがちな格付け行動3
女子社員に厳しいお局様に逆らえない、育休中のママの仕事を分担して残業が増えた――。勤続年数や上司の好き嫌い、子どもがいるかどうかなど、仕事の能力以外のものさしで計られるオフィス内の「格付け」に、モヤモヤした経験はないだろうか。女性同士が暗黙のうちにお互いを格付けしあう現象、これをインドの身分制度にたとえた言葉「女子カースト」が、メディアなどで話題になっている。
「本来、会社に必要なのは、社員同士の格付けではなく、仕事が正当に評価される『業務遂行能力』での順位付け。日本の企業はその仕組みがあいまいなので、カーストが入り込みオフィスの空気を支配しやすい」と話すのは、『格付けしあう女たち「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)の著者、白河桃子さん。
実は多様性のある社会では、人間関係においてカーストが存在することで都合が良い側面もある。階層格差を互いに認識することでその場のリーダーが決まり、そのリーダーが人間関係を引っ張っていく体制に自然となるからだ。
しかし、日本では平均を好む文化が育ってきたため、多様性の中でそれぞれの役割を見つけることが苦手。カーストがただの息苦しさになってしまっているという。
なぜ私たちは互いを格付けしてしまうのだろう。「日本人、特に若い女性は、自分に自信がなく、自己肯定感が低い傾向がある」と白河さんは指摘する。子どもの頃に母親が失敗をさせないように先回りしてしまっていたり、失敗を恐れて挑戦を避ける学生生活を送ったりした結果、成功体験を積むことができず、自分に自信が持てないまま大人になってしまうのだ。
そういった背景がなくても、立場や境遇の違いがある女性たちが集まるオフィスで自然と生まれてしまうのが女子カースト。あなたは知らない間に、「格付けする女」になっていないだろうか。無意識にやってしまいがちな格付け行動を、白河さんに挙げてもらった。
無意識にしがちな格付け行動1
「気の合う人とだけ一緒にいる」
仲の良い人と一緒に過ごす時間は気楽で楽しいもの。グループで行動する女性は多いが、その行動がカーストを生み出してしまうこともあるのだとか。
例えば白河さんが取材したある女性は、お局様から嫌われて悩んでいた。お局様はお気に入りの女性社員を集めて、女子校のような仲良しグループを作っていたという。グループに所属する社員が休暇を取得するかどうかも、お局様に聞かなければならない状態で、業務に支障をきたしていた。
お局様はもちろん、彼女と共に行動していた女性たちも、集団を作ってほかの女性を排除することで、いつの間にか格付けする側になってしまう。
【回避するには?】
「会社の人事を変えることは難しいですが、いつかは異動があると割り切ることも必要」と白河さん。また、趣味の仲間を見つけるなど、オフィス以外の「居場所」を作ることで、そのカーストがすべて、という思い込みから開放されやすくなる。
無意識にしがちな格付け行動2
「Facebookを見て落ち込む」
働く女性同士の格付けは、オフィスの中だけにとどまらない。FacebookやmixiなどのSNSで、同僚や友人の子どもの写真を目にして落ち込むことも。
「他人の幸せそうな家族写真を見せられるのは、以前ならば年に一度の年賀状の時期だけだったもの。ところが最近ではSNSが広まって、自分と他人の生活を比べてしまう機会が増えました。ストレスを感じるなら、思い切ってタイムラインに表示しないようにするなどの工夫をしましょう」
【回避するには?】
タイムラインの非表示設定はもちろんのこと、育児中の専業主婦は、バリバリ働いてバケーションを楽しむ独身女性のFacebookを見て、うらやましいと感じているかも…と相手の立場を想像してみることも有効だ。隣の芝生も青いばかりではない。たまには直接電話して、疎遠になっている友人と話をしてみよう。
無意識にしがちな格付け行動3
「『早く帰れていいね』ワーママを特別視する何気ない一言」
今、社内の女性同士の問題で注目されているのは、ワーキングマザーの存在。出産しても仕事を続ける女性が増え、「時短」という働き方も一般的に。しかし、受け入れる企業の体制が十分に整っていないため、フォローする周りの社員にとっては、「仕事の負担が増える」「自分たちばかり残業が多い」と不満がたまることになりかねない。「早く帰れていいね」など、思わず口にした一言が時短で働くママと自分を隔てるカーストに。
【回避するには?】
「ストレスを抱えないためには、腹を割って本音で話し合うことが大切です」と白河さん。たとえば、「今どういう状況ですか」「私にできることはありますか」と声をかけることで、コミュニケーションが始まる。実は時短ママは肩身の狭い思いをしている人が多い。女子会やランチなど、独身女性とワーキングマザーが対話する場を設けるのもひとつの手。
「ワーキングマザーの一日のスケジュールを聞くだけでも、新たな発見があるもの。出産するかどうかにかかわらず、思うように働けない時期は誰にでもありえることですから、ワーキングマザーの知恵を聞いておいて損はないはずです」
ささいなことで人と自分を比べ、格付けし合ってしまう心の奥には、「否定されたくない」という不安や自信のなさが隠れている。
「日本の働く女性たちはみんなまじめ。本当によくがんばっています。まずは、自分で自分をほめてあげてください。次に、周りの人をほめるよう心がける。すると、相手も自分を認めてくれるようになり、いい循環ができます。仕事ができる女性はほめ上手ですよ」
ダメなところを探すのではなく、いいところを伸ばしていくことで自己肯定感を高められるという。
正社員、契約社員、パート、派遣。働き方が多様化し、さまざまな立場の女性がひとつのオフィスで働く時代。「まとまればパワーを持てる女性たちが、小さな違いにこだわって対立するのはもったいない」と白河さんは強調する。隣の芝生は青いけれど、隣人もきっと悩みながら働いている。ほんの少しの想像力とコミュニケーションが、誰もが働きやすい社会をつくる大きな力になるかもしれない。
取材・文/高橋三保子