「好きな仕事を何で手放さなきゃいけないの?」2人の管理職女性が語る出産後も仕事を続ける理由

創刊以来、Woman typeは「女性のキャリア」について考えてきました。
女性が長く働ける基盤を作ろうと、社会全体が動いているものの、女性が仕事を頑張り続けるのは、まだまだ簡単なことではありません。
そこで4周年記念特集では、「女性が働く理由」にとことん向き合うことにしました。女性が長く仕事を続けることが、まだ当たり前とは言いがたい日本。
だからこそ、「なぜ働くのか」を考えるチャンスとも言えます。一般論やキレイ事ではない“自分にとっての働く理由”は、これからの人生を導く指針となってくれるはず。一緒に見つけていきましょう。
9月27日(日)に行われた『長く働きたい女性のための転職イベント』で、『女の転職@type』とWoman typeのコラボセミナー『働く女性の本音トーク! ライフステージが変わっても仕事を続けるべき?』が開催された。

登壇者は、サッポロビール株式会社人事部シニアマネジャーの美野佳美さん(40)と、BBmedia Inc.でWebプランニングディレクターとして活躍する森田裕美さん(38)。

サッポロビール株式会社
人事部
シニアマネジャー
美野佳美さん
1997年、サッポロビール入社。情報システム部を経て、大阪で営業企画部に配属となり、主にワインのエリアマーケティングを担当。29歳で結婚し、翌年に出産。育休からの復帰と同時に総務部へ移り、人事・労務を担当。10年に東京本社の人事部に異動し、現在は組合との交渉や人事制度の設計、ダイバーシティなどを担当している

BBmedia Inc.
Webプランニングディレクター
森田裕美さん
美大卒業後、BBmedia inc.にWebデザイナーとして入社。その後プランナーに転身。大手食品、化粧品メーカーなど企業のブランディングを意識したWEBコミュニケーションの企画・制作を担当。2013年長男出産、半年の産育休を経て14年4月より時短で職場復帰。同社では産育休取得者の第1号。復帰後はグループの管理職に任命され一部在宅勤務、遠隔からのマネージメントなど働き方を試行錯誤、模索中
美野さんは育児休暇からの復帰を機に部署異動で東京にある本社へ単身赴任し、かつてから希望していた人事・労務業務を手掛けてきた。森田さんは出産後、育児と仕事のバランスを取るべく職種転換を決意。制作業務中心のデザイナーから企画業務中心のプランナーとなり、在宅勤務なども交えながら最適なワークスタイルを探してきた。二人とも、ライフステージが変わっていく中で、工夫を重ねながら仕事を続けてきたワーキングマザーだ。
結婚・出産というライフステージの変化を機に仕事を辞めてしまう女性も少なくない中、二人が今でも仕事を続けている理由とは?
柔軟なキャリアは、自らの働き掛けでつくられていく
――出産というライフステージの変化を経験されたことで、お二人の働くことへの想いはどのように変化しましたか?
美野さん(以下、美野):私の場合は育児休暇で1年間仕事から離れたことで、「私はやっぱり仕事が好きだ」という気持ちに気付くことができました。「子育てだけじゃ満足できない」、「社会とつながりを持って働き続けたい」、という意思がより明確になったのです。
森田さん(以下、森田):私が長男を出産したのは36歳の時。広告業界にロールモデルとなるような女性はまだまだ少なかったので、どのように仕事と育児を両立していけばいいのか分からず不安でした。でもそう思う一方で、「子どもを産んだからって、何でずっと続けてきた好きな仕事を手放さなきゃいけないんだろう」という想いは強くなりましたね。
――お二人とも、育児と仕事の両立を考えて、出産後に部署異動や、職種転換も経験されているそうですね。

美野:私は全国転勤が前提の総合職として採用されているので、出産前は大阪で働いていました。ですが、育休復帰後は以前から希望していた東京の本社にある総務部に異動になりました。
もともと、エリアの業務だけでは経験できない本社の仕事がしたいという想いがありましたし、育休を経て「キャリアを諦めたくない」という気持ちが明確になっていたところだったので、会社にその意思を正直に伝え、転勤を決めました。
――美野さんに関しては単身赴任で働くという選択もされていらっしゃいます。
美野:そうなんです。いざ単身赴任が現実的になったときは夫も受け入れがたかったようで、最初は聞く耳を持ってくれませんでした。
でも、めげずに「私は東京の本社で働きたいんだ」という想いを伝え続けたら、最後には「自分でこうと決めたことは曲げないでしょ」と諦めてくれました(笑)。
そして、小学校1年生になる娘には、誰と一緒に暮らすのかを本人に選んでもらい、結局は私と一緒に東京に移り住むことになったんです。
――森田さんはWebデザイナーから、企画を中心に行うプランナー職に職種を変更されたそうですね。
森田:はい。より時間に融通の利く働き方を実現しようと思い、自分から会社に掛け合って、新しい職種をつくってもらいました。
私が当社初の育休取得者ということもあって、会社側も当時は手探り状態だったので、働き方についてはどんどん自分の希望を伝えましたね(笑)。
例えば、育休復帰後すぐに週5日出社することに不安があったため、週3日出勤して残り2日は在宅ワークの形式を取るという勤務スタイルも提案し、今現在も実践しています。
どういう働き方が自分と会社にとってベストなのか、試行錯誤して、模索しているところです。
裁量のある仕事をすることで、理想の働き方に近づける
――出産後、日々の仕事の仕方についてはどのように変わりましたか?
森田:私は広告制作の世界でデザイナーとして仕事をしていたため、長時間働くのが当たり前という生活を送っていました。でも、子どもを持ってそれができなくなり、自分の仕事量と仕事の質をどうキープするかを考えざるを得なくなりました。
美野:私もタイムマネジメントについては独身時代と比べてがらっと変わりましたね。
子どもが小さいうちは、急に子どもが発熱することもよくありますし、家族のために急遽仕事をお休みしないといけない日がどうしても出てきます。
前もって予測できない事態にも対応できるように、必ずバッファを見て締め切りを設定するなど、効率よく仕事を進めるにはどうすればいいのか常々意識するようになりました。
――そして、お二人とも今現在は管理職でいらっしゃいますよね。管理職になるということにあまり積極的でない女性たちも多い現状がありますが、管理職だからこそ感じられるメリットはありますか?
森田:それはかなりあると思いますね。
やっぱり、管理職は裁量がありますから、社内のことなら自分でスケジュールを決められますし、誰かに任せていたら間に合わないと思うことも、自分の権限で進めてしまうことだって可能です。
出産前に時間管理がより自由に行える立場になっておくことは、両立生活をする上で非常に有効だと思います。
美野:そうですね。後は、家族も会社も大切なことってチームワークなんですよね。管理職としてチームを運営するスキルを仕事で身に付けておくと、子育てにも役立つ瞬間があるように感じます。逆もまた然りです。
自分の軸を定めること。そうすれば、自ずと道は開ける
――それでは、これからのライフステージの変化に対して不安を感じている20代~30代の女性たちに、改めてお二人からアドバイスをお願いします。
美野:皆さんに大切にしていただきたいのは、「私はこうしたいんだ」という意志を持つこと。それさえあれば、そのための手段を探すことができますから。
私がしてきたような生き方、働き方がたった1つの答えというわけではありません。それぞれのライフステージで、どのような生き方を選択するのかは人それぞれでいいのです。

森田:私も、自分なりの軸をしっかり持っておくことが大切だと思いますね。自分のことを振り返ってみても、「子どもを産みたい」という気持ちと、「好きな仕事を続けたい」という想いは明確だったので、行動を起こすことができました。
30代半ばに差し掛かったとき、自分からパートナーに結婚の話を持ち出して、どうしても子どもが産みたいということを伝えたのです。
その時の彼が今の夫なのですが、彼は料理がすごく上手で、今も平日の食事は率先して作ってくれています。
これがなかったら、生活のバランスが取れないんじゃないかと思えるくらい夫に支えられていて、すごく感謝していますね。結婚後も仕事を続けたいなら、パートナー選びも大切ですよ!
――お二人とも自分がかなえたいことを明確にした上で、ご自身の道を切り開いていらっしゃる姿がとても素敵です。
美野:ありがとうございます。娘を東京に連れてきたばかりのころは、私の帰りが遅くなると悲しそうにする娘の姿を見て、心が痛むこともなかったわけではありません。
でも、それから5年が経った今では娘も大きくなり、私に「お母さん、いつも頑張ってるよね」と声を掛けてくれるようになりました。
仕事を面白がる私の姿を見て、仕事に対する責任だったり、誇りだったり、何かを感じ取ってくれているんだろうなあと思います。それは仕事を続けることを選択した私にとってはすごくうれしいことです。
森田:育児と仕事の両立はすごく大変なイメージばかりが先行しがちですが、やってみて気付いたのは、仕事を続けていた方がいろいろな意味で自由だということですね。
結婚したからといって、この先何があるかは分かりません。自立した人生を歩んでいる女性はカッコイイと思いますし、自分がカッコイイと思える自分であるために、これからも仕事は続けていきたいと思います。