「このまま続けられる…?」営業女子の悩みを解消するキャリア・リメイク4パターン
結婚・出産後も独身時代と同じペースで働ける?――目標数字を抱えて走り続けられるイメージが湧かず、将来のキャリアに不安を抱く営業職女性は少なくない。
そこで今回は今まで培った経験を活かしながら、より満足度高くキャリアを積んでいくための営業スタイルの変え方や他職種へのキャリアチェンジの選択肢を提示。
現職に悩んでいるのなら、一歩踏み込んでこれからの働き方をリメイクしてみてはいかが?
営業手法は多種多様。同じ営業でもより自分に合った働き方を見つけられる
「女性の営業職が増えたとはいえ、業界によってはまだまだ営業は男性中心という会社も多いです。同じ職場に女性のロールモデルがいない場合は、5年後、10年後の自分の姿が想像できず、キャリアチェンジを考える人もいます」
そう話すのは、主に20代の営業職女性への転職サポートを手掛けるキャリアアドバイザーの大西文恵さん。その根底には、現在の働き方や仕事内容への不安が潜んでいることが多いという。
「現場の第一線で活躍するのが営業の仕事。責任ややりがいがあり、それが醍醐味な半面、目標数字に関する悩みを持っている方もいます。
中には、『この先も現場の最前線でバリバリ働き続けられるのだろうか』といったご相談もあります。1日に何件も客先を回るような、足で稼ぐスタイルの営業をしている人は、30代を目前にすると体力面を気にして、転職を考える人もいます。
『会社からは新規開拓や目標達成などを求められるが、本当は1人のお客様とじっくり向き合い、時間をかけて関係を深めたい』といった、営業スタイルに関する悩みを持つ人も目立ちます」
また中には、「自分が扱っている商品では、顧客の真のニーズには応えきれないのではないだろうか」という疑問を抱えている人もいる。
このように営業の場合は、自分が扱っている商品やサービスに自信が持てないことが理由で、営業を続けることに迷いが生まれるケースが少なくない。
こうした女性たちが、「営業以外の仕事に転職したい」と大西さんのもとに相談に訪れる。
だが、「実は同じ営業職でも、扱う商品やターゲットとする顧客層を変えるだけで、その悩みは解決できたり、現職のままでも視点を変えれば、本人の希望に適していることに気付くこともあります」と大西さんは話す。
「ひと口に『営業職』と言っても、その仕事内容や働き方は非常に多岐に渡ります。個人相手の営業もあれば、法人相手の営業もあるし、新規開拓中心の営業もあれば、既存の顧客のフォローがメインのルート営業もある。
ターゲットとする顧客層や扱う商品が変われば、当然営業の手法や働き方も変わります。また、どういった営業スタイルがその方に合っているのか、向き・不向きもあるでしょう。
今自分がやっている営業がすべてだと思っている人は多いのですが、業界や会社が変われば、営業職のままでも自分が求める働き方を実現できる可能性は高いのです」
では、営業のキャリアを継続する、または今までの営業経験を活かす形で、現在抱える悩みを解消し、より自分らしいキャリアを築くためには、どのような選択肢が考えられるのだろうか。大西さんにアドバイスをしてもらった。
営業キャリアの壁を打破する
リメイク転職パターン
スタイルを変えて営業職を継続する転職パターン
現在は営業手法も多様化し、ひと昔前のように体力や根性だけで勝負するのではなく、提案力や企画力などのスキルを活かせる場面が増えている。
同じ営業でも「売る商品」「売る相手」「売り方」を変えることで、仕事内容や働き方がどのように変化するのかを見てみよう。
【売る商品】を変える
「今扱っている商品では、顧客の真のニーズに応えられない」というジレンマを抱える人は、自分の工夫次第で付加価値を生み出せるような商品を扱う会社への転職が一つの解決策となる。
例えばITシステムや広告・出版、コンサルティング業界のように、形のない“無形商材”を扱う営業なら、自分の提案力や企画力によって商品の内容をカスタマイズできるので、顧客の要望にもきめ細やかに対応しやすい。
また、有形の商材であっても、他社との差別化が明確な商品を扱う会社であれば、営業が提案力を発揮して、その商品の良さや強みを伝える機会も多くなる。
差別化がしづらく、価格競争に陥りがちな商品を扱うよりも、やりがいを感じられる場面は増えるのではないだろうか。
【売る商品】を変える転職パターン実例
・求人サービス ⇒ ITサービス
人材紹介会社で企業からニーズをヒアリングして求人案件を獲得する営業から、商社で法人へITシステムサービスの提案を手掛ける営業職への転身
・食品 ⇒ 広告
デパートやスーパーを顧客に持つ食品卸メーカーの営業からフリーペーパーの広告枠を売る営業へ
【売る相手】を変える
「常に目標数字に追われている」という精神的な負担を抱えている人は、既存顧客への継続的な提案やフォローを行うルート営業やコンサルティング営業への転職がおすすめ。
もちろん、営業である以上、既存顧客への営業であっても目標がある場合も多いが、既存顧客であれば関係が構築しやすく、新しい提案もしやすいだろう。普段の仕事も、顧客と関係各所の間をつなぐディレクション業務が中心となるため、顧客と長期的なお
付き合いをする中で、調整能力や提案力など、スキル面の向上にも期待ができる。
また、経験が長くなればその分ノウハウが蓄積されるため、長期的に働き続けやすい一面も。個人営業から法人営業、法人営業から個人営業へ転職するなど、顧客を変えるのも一つ。同じ営業でも業務の進め方が異なるため、営業のイメージが大きく変わる可能性が高い。
【売る相手】を変える転職パターン実例
・個人 ⇒ 法人
証券会社でのカウンターセールスから、企業向け研修の営業。個人向け保険商品のセールスから、法人向けASPサービス販売への転身など
・法人 ⇒ 個人
アパレルメーカーの販売店開拓から、保険商品のカウンターセールスへの転身など
【売り方】を変える
「自分の会社の商品を本当に必要としているのか分からない相手に、売り込みをすることに疑問がある」という人は多いが、実は確実にニーズのある相手だけをターゲットとする営業手法を採用している企業はたくさんある。
HPや広告を見て問い合わせをしてきた人や、展示会に訪れた人へ営業をかける反響営業はその一つ。旅行代理店や金融機関のように、店舗を訪れた人に対応するカウンター営業も同様だ。
また、大手企業の場合、見込み顧客にアポイントを取るのは専門部署に任せたり、社外に外注するケースも多く、営業はアポイントが取れたところだけを訪問すればよい場合も。最初からニーズがあることは分かっているので、お客様に提案しやすいという声もある。
【売り方】を変える転職パターン実例
・カウンターセールス ⇒ 訪問営業
証券会社の個人向け商品のカウンターセールスから、担当企業へ訪問してその企業の社員に保険商品を販売する営業職へ
・反響営業 ⇒ 新規開拓営業
広告を見て訪れたお客様に対してチームでマンション販売を行う営業から、企業への広告提案営業へ
営業職からほかの職種への転職パターン
営業時代にプラスαのスキルや知識を身に付けてきた人なら、他職種へ転職することで、さらに成長できる場合もある。
例えば、ただ商品を売るだけでなく、販促の手法まで提案したり、市場や競合のデータ分析をしてきた人なら、その企画力や提案力を活かして、企画職やマーケティング職に挑戦するのも一つ。
お金の流れを理解するために会計の勉強をした人であれば、会計系コンサルタントなどへの道も開ける。いずれにしても、「営業が嫌になったから」という後ろ向きな理由ではなく、「営業時代に培った経験を活かして新しいキャリアに挑戦したい」という前向きな動機でなければ、転職先で活躍できる可能性は低いことを肝に銘じておこう。
【同じ業界】で職種を変える転職パターン実例
IT系企業の法人向け提案営業から、IT系企業顧客を持つ企業のテクニカルサポート担当。医薬品メーカーのMR担当から、医薬品メーカーのマーケティング担当へ転身など
【違う業界】で職種も変える転職パターン実例
求人広告の法人向け提案営業から、IT系企業の人事担当者へ
※転職パターン実例は株式会社キャリアデザインセンター『typeの人材紹介』の20代30代女性の実際の転職実例の一部を紹介したものです。
取材・文/塚田有香 イラスト/村野千草(有限会社中野商店)