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JUL/2018

「世界一優秀で、世界一自分に自信がない」日本人女性の不思議――私が渡米して気付いた“大和撫子”の本質【橋本智恵さん】

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男女格差の度合いを示す『グローバル・ジェンダー・ギャップ指数』で、日本は世界144カ国中114位(2017年)と、過去最低の順位を記録した。女性活躍が叫ばれるようになって数年が経つのに、男女格差はちっとも改善されていない。

教育テクノロジー業界で働く女性のリーダーシップ支援をミッションとする『EdTechWomen Tokyo』の設立者であり、アメリカのミネルヴァ大学大学院に在籍している橋本智恵さんは、そんな日本の現状に危機感を抱く一人だ。

橋本さんは、日本の女性たちに「自分の意見を発信して」と呼びかける。誰もが生きやすい社会をつくるために、そして、変化の激しい世の中を私たち一人一人が強く生き抜くために――。

<strong>橋本智恵さん</strong>  2007年津田塾大学卒業後、ソニーに入社。15年夫の海外赴任で渡米。現地でソニーの新規事業である教育系スタートアップで米国市場進出、主にシリコンバレーの教育テクノロジー事情の調査に従事。現在ミネルヴァ大学大学院でApplied Analyses and Decision Making修士課程取得中。EdTechWomen Tokyoファウンダー。米国STEM分野の女性支援メンタリング組織であるMillion Women MentorsにもEvaluation担当として参画中
橋本智恵さん
2007年津田塾大学卒業後、ソニーに入社。15年夫の海外赴任で渡米。現地でソニーの新規事業である教育系スタートアップで米国市場進出、主にシリコンバレーの教育テクノロジー事情の調査に従事。現在ミネルヴァ大学大学院でApplied Analyses and Decision Making修士課程取得中。EdTechWomen Tokyoファウンダー。米国STEM分野の女性支援メンタリング組織であるMillion Women MentorsにもEvaluation担当として参画中

世界トップクラスの学力を持つ日本人女性。でも、「自信のなさ」も世界一

私は日本で生まれ育ち、日本で約8年働いてきました。アメリカに住み始めて3年になりますが、日本には「完璧主義」が蔓延していると、つくづく思い知らされます。今の20~30代って、「正解は一つ」という学校教育を受けてきた世代。私も日本で仕事をしていた時は、「何もかもちゃんと説明できるようにしなきゃ」「答えがなければダメだ」と思っていました。

でも、これだけ目まぐるしく世の中が変わっていく中で、全ての事象を説明することなんて不可能。答えを求められても分からなくて当たり前です。分かったようなスタンスを取る必要すらないと思います。ミネルヴァ大学での学びを通して、世の中の「曖昧さ」や、人間の「曖昧さ」をある程度受け入れることの重要性に気がつきました。

「日本の女性は世界で一番自己肯定感が低い」というデータがあります。その一方で、日本の女性の学力は、PISAなどの結果を見ても世界トップクラス。高い能力を持ちながら、自信が全くないのが日本人女性なのです。それって何だか変ですよね。その理由を考えてみると、かつての私がそうだったように、“完璧主義”が日本の女性の自己肯定感を低くしているのではないかと感じます。

自信の無さは、女性たちからチャレンジする気持ちを奪ってしまう。そして、自分の才能を自ら潰し、ポテンシャルを下げてしまう。それはすごくもったいないことですよね。

意思決定の場に女性がいない。それが“当たり前”でいいわけがない。

また、「イノベーションにはダイバーシティーが必要条件である」ということも、アメリカ社会で暮らす中で痛感しています。しかし、日本ではそれがあまり理解されていません。アイデアを考える場や、重要な意思決定の場に、女性がほとんどいない。それが当たり前になってしまっているからです。

そして、女性自身がその状態を「普通」だと思ってしまっていることに、私は大きな危機感を抱いています。このままでは女性の立場は低いまま、ずっと変わりません。それどころか、ますますその地位は貶められていく可能性もあります。

私がなぜそう思うのか、シリコンバレーで起きている例をご紹介しますね。今、AIやブロックチェーンといった、社会に大きなインパクトを与えるテクノロジーの研究が進んでいます。でも、そういった研究を中心となって担っているのは白人男性です。すると、彼らが作るAIの顔認証システムでは、アジア人や黒人女性の顔が誤って白人男性に認識されてしまう、なんてことが既に起きてしまっています。世界の人口構成を研究チームの人員に反映しなければ、このような偏りが生じてしまったり、システムの設計が研究者など設計者側の多数決で決まった仕様となってしまうのです。これからテクノロジーが進化して世の中は便利になっていくというのに、女性の地位は今のままか、ますます低くなってしまうことがあり得るのです。

これからの世の中では、あらゆる属性の人が共存する組織の中で自分の意見をはっきりと伝える力がますます重要となります。また、そうした未来を見据え、初等・中等教育の場では「正解のための答え探し」をやめ、「説明のつかない複雑な事象に対し、自分はどう考えるのか」を議論する方向に学習内容をシフトしてきているのです。

つまり、「多様であること」「自分の意見を言うこと」が当たり前という世代の人たちと、近い未来一緒に働く日がやってくるということ。その時、皆さんは彼・彼女たちをマネジメントできますか? 今から意識して自分の意見を言うこと、他者の意見を聞き、尊重し、複雑な課題に向かっていく訓練をしなければ、ビジネスの場に居場所がなくなってしまうかもしれません。

協調・同調が美徳だと私たちの脳には刻み込まれている。
でも、一度それを疑ってみて。

日本の女性たちは、自分の意見をはっきり相手に伝えるのが苦手な傾向があります。それも当然。協調、同調が大事だと教育の中で教えこまれてきたのですから。でも、それではもう立ち行かないところまで私たちは来ています。

私自身、周囲の空気を読み過ぎて言いたいことが言えず、中学生の時に不登校状態になってしまったことがありました。声をあげずに我慢していたら、いつの間にか自分だけがすごく不利な立場になってしまっていたんです。それと同じことが、起こり得ると思います。

やりたいことや好きなことを思い切ってやる。自分なりの考えを話してみる――。
今の20〜30代の人はそういう教育を受けていないから、最初はうまくできないかもしれません。でも、場数を踏んで練習することで、必ず上達していくはずです。その時に大切なのが、「正解を言わなきゃ」と思わないこと。意見に正解も間違いもないですから、自分なりの考えを言ってみることが重要です。

そのためにおすすめなのが、旅に出て、できるだけ多様性の中に自分の身を置くことです。少し突拍子もなく聞こえるかもしれません。でもこれ、すごく効果がありますよ。

日本にいると、「日本人の常識に沿って話そう」という意識はなかなか抜けません。その中で本来の自分らしさを出すのは難しいけれど、旅先の全く違う環境にいる人たちと話せば、余計なことを気にせず、個人としての発言が自由にできます。旅に行かなくたって、年齢が多様な場や職業が多様な場など、とにかく参加者がミックスした場にいくと良いと思います。国籍×年齢×職業ミックスなど多様なところに行けば行くほど、自分自身の個人の見解が問われる場が多くなるんです。

私は20歳の時に半年間、世界中から集まった学生とインドで家を一軒借りて10人くらいでルームシェアをしたことがあるのですが、突拍子もないことを言う人がいても、みんな普通に耳を傾けています。「その考えは違う!」なんて言われることはまずありません。ダイバーシティーに触れていれば、みんな違う意見を持っているのが自然だということが理解できる。「私の考えを言ってもいいんだ」って、徐々に自信を持てるようになると思うんです。

それが分かれば人の意見に流されないし、自分の考えを発信した分だけ、人の意見も尊重できるようになる。人の意見を見下す人も時にはいますが、それは自分の意見を持っていない証拠だと私は思っています。

大和撫子は、ただの“おとなしい人”じゃない。

「私にはやりたいことがない」
「自分が好きなことが分からない」

そんな悩みを持っている人も、多いかもしれませんね。でも、誰でも自分なりの好みや考えを持っているものです。では、どうすれば自分の意見が見えてくるのか。その方法は簡単。自分自身に“Why”を5回、ぶつけてみてください。プリファレンス(好み)を突き詰めていけば、自分の考えが見えてきます。

例えば、「将来が不安だから、何か資格でも取った方がいいのかな……」と思った時。「そもそも、何で資格が必要だと思ったんだろう? 長く働きたいから?」、「なんで自分は、長く働きたいんだろう?」といった具合に、質問をさらに重ねていく。すると、自分の心の奥に潜んでいる考えがクリアになっていきます。

自分の意見をはっきりさせ、声を大にして発信すると、もしかしたら他者から批判されることもあるかもしれません。でも、そんなの気にしなくていい。女性が自分の意見を発信し、力をつけていけば、世の中はきっとさらに進歩する。女性にとっても男性にとっても生きやすい未来がつくられていくはずです。

最後に、明治、大正時代の女性たちのことを少しお話させてください。当時の近代国家であるアメリカやイギリスと同じ時期に、日本の婦人運動は起きているのをご存知でしょうか。津田梅子や平塚らいてうといった女性が広く知られていますが、自分たちの権利を獲得するために立ち上がった大和撫子たちは、ただの“おとなしい人”じゃありませんでした。時代の変化を見据え、自分たちのあるべき姿を考え、批判を恐れず声を上げたのです。その結果、世の中は大きく変わった。

今の日本人女性だって、彼女たちのように、もっとワイルドになっていい。私はそう思います。

サンフランシスコ
サンフランシスコで開催された、LGBTを祝う『PRIDE PARADE』にて。女性たちにも祝福を!

取材・文/天野夏海

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