「総合商社で女性は長く働けない」はウソ? “激変する商社のイマ”をワーキングマザー3人が明かす【三井物産:女性社員座談会】

商社パーソンといえば、世界中をエネルギッシュに飛び回る一方で、
女性の活躍は……?
子育てとの両立は……?

総合商社の世界で働くイメージが持てないという女性も少なくないかもしれない。

しかし、そんなかつての常識を覆す取り組みを数々行っているのが三井物産だ。働き方改革や社内の制度改善を急ピッチで進め、女性採用を活発化させている

そこで今回は、進化を続ける総合商社で働く女性たちのリアルな姿を前後編にわたってお届けしたい。前編では、子育てをしながら働く女性たち3人に、彼女たちの目に映る職場環境や、仕事と家庭の両立生活について教えてもらった。

時差出勤にテレワーク……
使える制度は思う存分活用する

三井物産

左から
・人事総務部 中野紗希さん(モデレーター)
・IT推進部 情報通信基盤室 河合典子さん
・金属資源本部 岡野知美さん
・人事総務部 ダイバーシティ経営推進室 中山あやこさん

――まずは、皆さんのご経歴を教えてください。

中山:入社してからは事業投資の案件を主に扱っていました。シンガポール駐在時は川下領域での新規事業開発を担当していました。現在は人事総務部でダイバーシティの経営推進を行っています。

岡野:私は2002年入社で、最初は運輸部に配属されました。その後、金属資源本部でアルミや銅のトレーディングを経験し、夫がインド駐在になったタイミングで当社を辞めています。でも、再雇用制度を利用して再入社。銅地金の輸出と3国間のトレーディングを担当しています。

河合:2015年にキャリア入社しました。前職では外資系のIT企業でインフラのシステムエンジニアをしていました。現在は三井物産内のエンドユーザーデバイス(PC・iPadなど)の導入や企画、運用を担当しています。

――商社というと、男性が24時間働いて海外にもバンバン出張に行って……というイメージが未だあるかと思います。皆さんから見て、社内環境はいかがでしょうか?

岡野:職場の雰囲気は活気があって楽しく、前向きという感じ。英語や他国の言語が飛び交うのは商社ならではです。忙しい時期に必要な残業や出張をすることはあるものの、深夜残業を奨励したり強制したりするような雰囲気はないですね。

私の場合は4歳と1歳の子供がいるので、急に「来週1週間出張に行ってください」と言われても難しい。そういうときは、後輩や上司に「東京でしかできない仕事を私がやるので、代わりに行ってください」とお願いします。周りもそれを理解してくれて、受け入れてくれる環境があると思いますね。

――いろいろな事情を抱えている方が、しっかりと働ける環境があるということですね。

三井物産

中山:私の場合は、事業をつくり出す仕事を担当することが多かったので、マイルストーンが自分で組みやすかったです。また、以前シンガポールに駐在していたのですが、その国のカルチャーもあって、仕事と家庭の両立には困りませんでしたね。海外駐在を躊躇する方もいると思いますが、逆に、海外に行った方が仕事がしやすいというケースもあるので最初から否定しない方がいいのではないかなと感じます。

――河合さんは、今年育休から復職していますよね。

河合:はい、5月に復職しました。子どもがまだ1歳なので、急な体調不良が隔週くらいの頻度でありましたが、職場の皆がフォローしてくれて、休むときも嫌な顔をせず受け入れてくれて助かりました。一方で、チャンスを与えてくれるのも有難い。「小さい子供がいる人には責任ある仕事は任せられない」と括ってしまうのではなく、個別の事情や意向を加味しながら、仕事をどんどん任せてくれます。実際、私は復帰してすぐの6月には海外出張にも行きました。

――皆さんお子さんがいらっしゃるので、仕事と育児を両立するワークライフマネジメントが重要ですよね。会社の制度は活用できていますか?

岡野:制度自体は友人や知人に聞いてみても、充分過ぎるほどに整っていると感じますね。また、制度があるだけでなく、それを使いやすい雰囲気もある。逆に言うと、その制度をどこまで自分が使いたいのか、使うべきなのかというところの葛藤は常に抱えています。周りは「どんどん使って」という感じですが、自分にとってベストな活用の仕方はその都度考えなくちゃいけないな、と。

中山:私は葛藤とか全然なかった(笑)

河合:私も、あまり悩まず使っていました。例えば、「時差出勤」にしたりとか、トライアルでやっていた「テレワーク」も実践してみたりしていました。

中山:時短勤務も時差出勤も使いました。全然躊躇する必要はなかったです。

岡野:子どもが熱を出してしまったりしたときは、病児保育のベビーシッターさんと契約をしているので、その人に頼むこともできます。でも、子どものことを考えると「私が付き添ってあげたい」という気持ちもあり、その2つの選択肢で悩むという感じ。

中山:それは確かにありますね。

岡野:職場については、「子どもが熱を出しちゃって早退します、すみません」と言ったとき、「謝ることないから早く行きなさい」「家族より大事な仕事はない」とびしっと言ってくれる上司がいることに救われますね。上司やチームの皆に支えてもらっていると実感できるからこそ、頑張って仕事をして恩返ししたいなという気持ちになります。

河合:良い関係性ですね。

――今度は皆さんにこれまでのキャリアについて伺いたいのですが、仕事をしていて難しさを感じたことや、最も苦労したことについて教えてください。

三井物産

河合:私は三井物産に中途入社しているので、最初にぶつかったのは「カルチャーの壁」ですかね。一つのプロジェクトを進めるのに、いろいろな部署の人たちに説明をして、理解してもらって、一緒に進めていかなければならないというところに途中から入っていくため、仕事の進め方やコミュニケーションの取り方が分からず苦労しました。ただ、それは最初のうちだけですね。いろいろな人の手を借りながら、一つ一つ分からないことを潰し、前に進んでいくしかないと思います。

中山:何かを成し遂げようと強く思えば思うほど、ハードルは出てくるものですよね。それを超えていくのは、正直なところ苦しかった。社内調整で苦しむこともあれば、パートナーとの交渉の中でうまくいかないこともある。ただ、会社の中でサポート・共感してくれる仲間は必ずいるので、そういうチームワークの中で案件を実現できるっていうのは楽しさでもありますね。

――トライアンドエラーを繰り返しながら皆を巻き込んで仕事をしていくというわけですね。

中山:自分が「やりたいこと」「実現したいこと」を発信していけば、共感してくれる人や力を貸してくれる魅力的な人は多いんじゃないかな。

――パッション、情熱を持っている人が多い印象はありますね。岡野さんはいかがでしょうか?

岡野:小さな失敗は週に1回以上しているような感じです……(笑)。私の失敗のベースになっているのは、拙速というキーワード。スピード重視なあまり粗いところがある。ただ、それを短所ととらえる人だけじゃなくて、「スピード重視なのはいいことだけど」と受け入れたうえで「巧緻・クオリティーのところをもっと重視するように」という指導をしてくれる上司もいます。スピード感とクオリティーのバランスをどうとるかが私の課題ですね。

――プロとして、ずっと成長し続けなければいけない仕事ですね。

岡野:そうですね。大変だけど、そうじゃないとつまらないと思います。成功続きで波風がない環境よりは、時には荒波もあって、そういうものを乗り越えていく方が面白いんじゃないかな。

中山:仕事をやればやるほど自分のできることの幅が広がっていく。そして、自分の中で蓄積されていくものがあるというのは総合商社ならではですね。その中でどんな機会を自らつかみ取っていくかが大事。

自分や家族の「海外転勤」との向き合い方

――商社というと、海外出張や転勤がありますよね。岡野さんは一度退職した後に「再雇用制度」を利用したそうですが、その意思決定ってどのようにされましたか?

岡野:ベースとしては、「定年まで三井物産で働き続けたい」と思っていたんです。でも、夫の転勤が決まった当時の私の弱みが、「数字に弱いこと」と「語学力」だったんですね。英語だけならできたものの、第2言語の強みがなかった。そのときにパートナーのインド駐在が決まって、「家族だからついていく」という決断とともに、「会社で働きながらではできないであろう勉強をしたい」と思ったんです。インドにいる間は、米国公認会計士と内部監査人と、証券アナリスト一次などの資格を取りました。「これで数字に強くなった」「ヒンドゥー語もちょっとやったぞ」というところで、当社に舞い戻ってきたわけです。

――普通であればブランクになってしまう期間を、ご自身のステップアップのために活用したわけですね。

岡野:そうですね。その期間、「海外で働く」という選択肢もあったんですけど、3~4年の短い期間に米国公認会計士の資格をとったり、出産をするということを考えると、どれも中途半端になってしまうと思いました。だから、この期間は「勉強、出産、最初の育児」の3つにしっかり焦点を置こうと決めたんです。

とはいえ、私の性格的には「働かない」ことが辛過ぎて(笑)。人と関われない不安があったりとか、そういう状態にいる人は私だけではないのではと思って過ごしていました。

――シンガポールに赴任されていたという中山さんはいかがでしたか?

三井物産

中山:私は「海外駐在に行きたい」という強い想いがあったので、それは夫にも以前から伝えていました。そして、やっと海外駐在のチャンスが与えられて家族会議をした時に、夫は賛成してくれることは分かっていたけれど、子どもたちがどういう反応をするのかは懸念点でした。

岡野:結局、シンガポールにはお子さんも連れていったんですか?

中山:はい。子どもたち3人、「一緒に行きたい」と言ってくれたので。夫だけ日本に残りました。シンガポールはそんなに遠い場所でもなかったですし、一生シンガポールに住み続けるという話でもないので、3~5年という期間の中であればそういうカタチもいいよねということで。

――家族にとっては大きな決断だったかと思うのですが、会社としてのサポートもあったのでしょうか?

中山:会社としてのサポートというよりは、ある程度子どもも大きくなっていたので、自分たち家族でマネジメントしたという感じでしたね。

母になって変わった働き方、キャリアの考え方

――結婚・出産などのライフイベントがあるなかで、「キャリアアップのチャンスがなくなってしまう」と感じてしまうことはありました?

河合:私は全く感じなかったです。上司も周りの仲間たちも、サポートしてくれますし、仕事ぶりをちゃんと見ていてくれるから。

中山:それは多分、河合さんのアウトプットのクオリティーが高いからっていうのもあると思いますね。アウトプットがちゃんとしていると、「これぐらい任せても大丈夫なんだ」って周りに信頼してもらえますから。

岡野:職場で「ワーキングマザーだから」という理由で、過度に配慮をされた経験はあまりないですね。逆にわーっと仕事が来て、それを調整する感じの方が近いかも(笑)。もちろん、無理に押し付けられるということもありませんし。「今日は17時半までに帰らないといけないので無理なのですが、いいですか?」と話すと「いいよいいよ」と言ってもらえます。逆に子どもを産む前の方が、できないくせにあれもこれも引き受けていっぱいいっぱいになって周りに迷惑を掛けていた気がします。今の方がよりフランクに、自分ができること・できないことについて伝えられるようになりましたね。

――中山さんは、部下を持つライン長の仕事をしながら、家庭のこともやるって大変じゃないですか?

中山:私が室長になったときは、これまで自分がやってきたことの延長線上での室長ではあるものの「景色が違ってきたな」という感覚はありました。担当のときは今やっている事業そのものを推進していくという意識だったのですが、室長になって組織・チームとして最大限の成果を上げていきたいと思うと、室員・部下の人たちがどんなことをやっているかとか、どんな考えを持っているかを知る必要が出てきます。そうなると、いつもそのことばっかり考えちゃうしプレッシャーもありますが、チームとして成果が出せるのであればそれはそれで嬉しい。

岡野:室長になったことで、物理的な時間の拘束があって苦しいことってないですか? 例えば飲みに行かなきゃいけない、とか。

中山:時には飲み会もありますが、室長という立場上、スケジュール的に難しければ調整しやすい立場でもあるからね、そんなに困らないですよ。管理職だからといって、家庭と仕事のバランスを取るのが難しいっていうのは、物理的な面ではあまりありません。どちらかというと、考えないといけないことが増える方が大変で、それは男性も女性も変わらない。

――皆さんは、今後のご自身のキャリアパスをどのように考えていますか?

河合:海外駐在にはチャレンジしたいと思っています。

中山:キャリアパスというと、室長になって、海外駐在して、管理部に行って……みたいなイメージがあるかもしれないですけど、実は私はあんまりそういう想いがなくて。役職的なことではなくて、私個人の仕事のクオリティーを上げていくというのが目標ですね。

岡野:夫も当社の社員なので、もしまた夫が駐在になったとき、もしかしたら三井物産を辞めてついて行くかもしれない。そのときには、「現地のスタッフとして採用してください」とお願いするかもしれない。あるいは、違う会社で働くかもしれないし、単身赴任かもしれない。ありとあらゆる選択肢があるというのが実情です。

――すごく共感できます。中山さんはいかがですか?

中山:私も役職に就くことを目指すというよりは、目の前にあるものに一生けん命取り組んで、その結果としてキャリアを積みあげていきたい。チャレンジすることを奨励してくれるような環境があるからこそ、自分にふさわしいキャリアパスが自然とできていくんじゃないかと思いますね。

――皆さん、貴重なお話ありがとうございました。

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