野村周平は“自分らしく”幻想に縛られない―「人と自分を比べない。誰にも媚びない」潔い生き方

一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!
プロフェッショナルのTheory

今をときめく彼・彼女たちの仕事は、 なぜこんなにも私たちの胸を打つんだろう――。この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります。

その日、彼の足には靴ズレがあった。歩くと痛むそうで、インタビュー中は衣装の革靴を脱いでいた。そんな状態だけに、撮影時は「足元が入らないカットを撮りましょうか」と声を掛けると、「大丈夫です。撮りたいのを撮ってください」と自ら革靴を履き直した。

野村周平

野村 周平(のむら・しゅうへい)
1993年11月14日生まれ、兵庫県出身。10年、俳優デビュー。12年、NHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』で注目を浴びる。近年の主な出演作に、『サクラダリセット 前篇/後篇』『帝一の國』『22年目の告白‐私が殺人犯です‐』『ちはやふる-結び-』『ラブ×ドック』『純平、考え直せ』などがある。現在、主演ドラマ『結婚相手は抽選で』(東海テレビ・フジテレビ系)が放送中
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気持ちのいい人だ。明るくて、潔い。俳優・野村周平さん、24歳。インタビューでもそこかしこでボケを入れて聞く人を笑わせるそのサービスマインドの高さは、彼がプロフェッショナルであることの証でもある。

仕事を楽しみたい。だからムードメーカーも買って出る

「ムードメーカーっていうのはよく言われます。僕が勝手に騒いでいるだけなんですけどね……笑」

そう自分で茶々を入れるところも、らしいな、と思う。日頃から撮影現場の盛り上げ役であると共演者から証言されることの多い野村さん。最新主演映画『ビブリア古書堂の事件手帖』でも、W主演を務める黒木華さんらと和気藹々とした時間を過ごした。

「黒木さんはめちゃめちゃ良い人なんですよ。最初は大人しい方かなと思っていたら、すごいお喋りだし。俺みたいな人にも全然話し掛けてくれる素晴らしい方です」

野村周平

野村さんがそんなふうに現場でのコミュニケーションを積極的にとるのには、理由がある。

「人を楽しませようというよりは、俺自身が仕事を楽しむためかな。この現場は楽しいって体に染み付けておけば、仕事に行くのがつらいとは思わなくなる。カッコつけずに言うと、それだけなんです」

朝、「今日も仕事か……」とため息をついたことがある人は多いはず。気持ちが下がったまま職場に行っても、良いパフォーマンスだってあげられない。だからこそ、自分で自分のモチベーションをコントロールできる人は強い。

仲良くないと、いい芝居はできない。明るい空気が、いい仕事を生む極意

また、共演者やスタッフなど、一緒に働くメンバーと親睦を深めていくことは、「作品づくりにおいても間違いなくプラスになっている」と野村さんは話す。そう証明してみせたのが、黒木さん演じるビブリア古書堂の店主・篠川栞子と、野村さん演じる五浦大輔の関係に亀裂が入ってしまう、とあるシーン。野村さんの抑制と解放のバランスがとれた演技が光るワンシーンだが、そのシーンを演じる上で気を付けたことを聞くと、「いや、ないですね」とさっぱりした顔で答える。

「喧嘩をするシーンって、相手と仲良くないとできないんです。お互いが遠慮したり探り合っているような関係性じゃ、本気でぶつかれない。仲良くなれたらなれた分だけ、いい芝居ができる。だから、『いいシーンだな』と観客の皆さんに思ってもらえたら、それはちゃんと役者同士が仲良くなれた証拠だと思います」

野村周平

そもそも野村さんのすごいところは、パブリックイメージはストリートがよく似合うヤンチャな青年だが、お芝居になるとそうした野村さんのイメージは一瞬で消えるところだ。本作でも、スクリーンにいるのは、心優しく実直な五浦大輔その人。若手でも指折りの演技派だが、あれこれ細かく役づくりを考えるタイプではないと言う。

「頭で考えるより、現場でつくり上げていくという感じです。やっぱり行ってみないと、どういうものを求められているか分かりづらい。もちろん台本を読んで、こういう人だろうなっていうイメージは頭に入れていきますけど、あとはその場次第。そこの空気を吸って、セットに触れて、キャストやスタッフの皆さんと話して。そこで自分のお芝居をするというのが、僕のやり方です」

人と比べず、自分を偽らず。それだけで皆もっと楽に生きられる

今の世の中は、周りの空気を読んだり、足並みを揃えることが求められがち。その反動だろうか。「もっと自分らしくありたい」という声は日に日に増しているように思う。そんな中で、野村さんはとても自由でオープンに見える。Instagramを覗けば、バイクやスケボーなど趣味を楽しむ動画や画像がズラリ。そこにおさめられた姿は、芸能人というよりも、ごく普通の24歳の青年という感じだ。すましたり、飾ったりしない。野村さんを見ていると、いつでも自分らしく堂々としていて羨ましいなとさえ思う。

野村周平

「『自分らしく』っていうのは普段考えないですね。だって、『自分らしく』って意識しながら生きるって、しんどくないですか?」

そう野村さんは笑った。周りの俳優と自分を比べて悩むことはないか聞いても、野村さんは答えを迷わない。

「比べないですね。俺以外に俺みたいな人はいないから。だから比べる必要がないと思っています」

私たちはつい自分らしくありたいと願ってしまうけれど、野村さんを見ていると、そもそも自分らしさなんてものはわざわざ意識してつくるものじゃないんだ、ということに気付かされる。

野村周平

「無理してオンリーワンになろうとも思ってないです。仕事も遊びも、自分が一番楽しめる姿でいるだけ。わざとこういう強気なキャラを演じているんだとしたら、それはそれで天才かも(笑)」

SNS越しに見るいろいろな人の生活が気になったり、上司や周りの人間関係に窮屈さを感じたり。息苦しさを覚えることの方が圧倒的に多い生活の中で、せめてほんの少し野村さんみたいに何のしがらみもなく自分を貫き通せたら、たぶん私たちの毎日は、もっと楽しくなる。

「SNSは、いろいろ気になるなら一度閉じてみたらどうかな? 職場で人間関係にやりづらさを感じていてそれが本当にストレスになっているなら、思い切って違う環境に身を置いてもいい。我慢しないで、頑張り過ぎないでいいですよ」

やっぱり野村さんは、気持ちいいくらい潔い。あれこれ上辺を塗りたくらず、思考はいつもシンプル。周囲から慕われるのも、彼がどこまでも本音で生きていて、嘘がないからではないだろうか。

「自分らしく生きたいなら、自分を持つこと。何を言われても曲げない自分を持てばいいと思います」

これ以上ないくらい明快な言葉が返ってきた。野村周平、24歳。多くの監督や共演者に愛される人気者。その根底にあるのは、決して偽らず、どこまでもオリジナルな、「野村周平」という生き方だった。

野村周平

取材・文/横川良明 撮影/竹井俊晴


【作品情報】
映画『ビブリア古書堂の事件手帖』

公開時期:2018年11月1日(木)全国ロードショー
出演:黒木華、野村周平、夏帆、東出昌大
原作:三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫/KADOKAWA 刊)
監督:三島有紀子
脚本:渡部亮平、松井香奈
© 2018「ビブリア古書堂の事件手帖」製作委員会
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