12 MAR/2019

育休復帰後“キャリアダウン”した気がするワーキングマザーへの助言――「エンジョイメントのスキルを磨きましょう」

 育児と「豊かなキャリア」の両立を!ワーママ2.0
『育キャリカレッジ』池原真佐子のWebメンタリング
育児と「豊かなキャリア」の両立を!【ワーママ2.0】

結婚しても、出産しても、仕事は続けたい。しかも、ただ働くだけじゃなく、やりがいのある仕事がしたい!――そんなワーキングマザーから寄せられたお悩み相談の数々に、働く女性向けにメンターサービスを提供する『育キャリカレッジ』代表の池原真佐子さんがメンターとして回答していきます!


【この連載の寄稿者】
(株)MANABICIA代表 /育キャリカレッジ 代表 
池原真佐子(いけはら まさこ)さん

福岡県出身、早稲田大学・大学院で成人教育を専攻。PR会社、NPOを経てコンサル会社で勤務。在職中にINSEADのパートタイムのコーチングと組織開発の修士(Executive Master in Consulting and Coaching for Change : 現EMC)を取得。同時に、エグゼクティブコーチング等の人材育成を手がける(株)MANABICIAを創業。その後妊娠するも、臨月でパートナーが欧州に転勤、東京でワンオペ育児開始。産後1年半経ったころ、女性のキャリアに特化したメンターを養成するスクール運営、企業の働く女性へのメンターをマッチング事業を行う「育キャリカレッジ」を新規事業として立ち上げる。2年半のワンオペ育児を経て現在はドイツと二拠点生活。2017年に英ユニリーバDOVEでNourishing SecretのCMに、日本を代表する新しい女性として出演。ワーママオブザイヤー2018受賞。その他、日テレNews等のメディア出演も多数。著書『自信と望むキャリアを手に入れる 魅力の正体』(大和書房:日本と韓国で発売)
■育キャリカレッジ

今回の相談

(Fさん 営業アシスタント/32歳/子ども3歳)

産休復帰後、時短勤務で働いていて、仕事内容もアシスタント的な仕事をメインにしています。バリバリ働いている人たちからは何だか取り残されてしまっている気がして、自分の将来が不安でたまりません。子育てが一段落した頃には、もうキャリアアップできなくなってしまっているのではないかとも思ってしまいます。今はこういう時期だからと割り切ることも必要なのかなとは思いますが、どうすればやりがいある仕事をこの先またできるようになるのでしょうか。

池原さんからの回答

いよいよ本連載も、今回の相談で最終回になります。

毎回、さまざまなお悩みを拝見する度に、日本のワーキングマザーを取り巻く状況の過酷さにため息をつくばかりです。一方で、一人一人の方が、自分に向き合い、悩みや孤独や不安を胸にしながら、前に進むための希望を見出そうとしている姿には感動させられます。

今回の相談者さまのお悩みへの回答を通じて、全ての女性、特に、将来が不安な女性のお役に立てればと思います。

こんな研究があります。

いま幸せだと感じている人は、次に起こることも幸せだと感じやすく、
いまを不安だと感じている人は、次に起こることも不安に感じやすい。

Fさんは、いまの置かれた状況の中で、幸せややりがいを感じることはありますか?

「やりがいある仕事がしたい」と、いろいろな人が言います。私も同感です。ただ、一つ言えることは、やりがいとは、降ってくるものではない。ということです。

そして「やりがいのある仕事が存在する」は幻想です。正しく言えば、「やりがいを感じる状態で仕事に取り組むことができるか」というではないでしょうか?

ワーキングマザー

そしてそれは、置かれた状況の中で、「やりがいのタネ・カケラ」を何とか見出そうと、もがき続けて初めて、いつの間にか積み上がっている状態だと思っています。

Fさんにはぜひ、時短で働くこと、アシスタント的な仕事をすること、育児もすること、この中で何か一つでも「やりがいのタネ・カケラ」を見出すことができるようにしてみてほしいと思います。

私自身、何度か転職しましたが、NPOで働いている時はとても辛い思いをしていました。思っていた仕事と違っており、組織のあり方に疑問を抱くことも多く、息苦しさや将来への不安を感じていましたからです。毎日職場に行くのが憂鬱で、いかに定時で帰るかということばかり考えていたことも(笑)

一方で、いくら定時で帰れるとはいえ、1日の大半を過ごす職場に楽しみを見出せないことも苦痛でした。そこで、「今いる場所が辛いのだとしたら、私は何が好きなんだろう」「今の不安をどう変えたら幸せになるのだとう」と考えるよう、切り替えました。

すると、「組織で働く人をもっと幸せにしたい」という想いに気付き、地道に、人材開発に関する書籍を読んだり勉強会へ足へ運んだりするように。自ら職場のスタッフ向けの勉強会を企画するなどしているうちに、息苦しかった職場でも、一縷(いちる)の楽しみを見出せるようになってきたのです。

そしてこの経験をきっかけに、数年後の転職活動で、人材開発を専門とする仕事を得ることができました。もちろん、転職の面接では、この苦しかった経験と、そこからどのように楽しみを見出し、乗り越えたかというストーリーが評価されました。

どのような場面でも楽しみや「やりがいのタネ・カケラ」を見出す……この力のことを「エンジョイメント」と言います。

「経験学習理論」というものによれば、今いる状況を(例え辛くても)何とか楽しもうとする「エンジョイメント」スキルを磨くことで、どのような経験からでも学び成長することができるといいます。

人生は、自分の意思だけでは思うようにならないことだらけです。

子供が小さい時は育児に重点があり思い切り仕事をできないし、子供が大きくなれば、介護や健康不安など、別の問題も発生したりします。仕事が順調かと思えば、プライベートが崩壊することもあり、好きな仕事をしていても突然嫌な上司が来てしまうこともある。

そのような中で、何とか1つでも、楽しみを見つけて前に進んでいくこと。このようにすることでしか、「やりがいを感じる状態で仕事に取り組める」ようにはなれないのだと思います。

また、Fさんは、将来が不安とも仰っています。将来が不安であればあるほど「今」に集中してみてください。今、自分は何が好きなのか、この仕事のどの作業にワクワクのタネがあるのか。あるいは今、育児で楽しいと感じる瞬間は何か。

もちろん戦略的に、子供から手が離れた後のキャリアプランを設計することは必要です。ですがそれも「今、何が好きなのか」をベースに、「未来に向けて準備する」ことで解決します。

例えば、アシスタントの仕事の中で「人と話すことが好き」なのであれば、コミュニケーションに関連する書籍を読む。あるいは育児の中で「子供の食事に興味がある」のであれば、栄養や健康に関する勉強を少しずつ始めてみる、など。

モヤモヤと不安を感じては自分自身の思考を停止して苦しくなるのではなく、具体的に動くこと、準備すること。そうすることでしか、望む未来は形成されません。

そして、「望む未来」を作るためにも、「いま、私は、何が楽しいか、何にやりがいのタネ・カケラがあるか」を拾い集めること。

連載最後の私からのメッセージは、すべてここに凝縮されています。

半年間ありがとうございました。