【土屋太鳳】実写映画の吹き替えに初挑戦!「もっと自分を新しく、更新していきたい」

一流の仕事人には、譲れないこだわりがある!
プロフェッショナルのTheory

今をときめく彼・彼女たちの仕事は、 なぜこんなにも私たちの胸を打つんだろう――。この連載では、各界のプロとして活躍する著名人にフォーカス。 多くの人の心を掴み、時代を動かす“一流の仕事”は、どんなこだわりによって生まれているのかに迫ります。

土屋太鳳さんは、とても真摯な人だと思う。インタビュールームに入ってくる時からにこやかな笑みを絶やさず、取材スタッフに対しても「土屋太鳳です。よろしくお願いします」と丁寧にお辞儀をする。

そんなパブリックイメージ通りの礼儀正しく謙虚な印象から一転、シャッターを切ると、どこにそんな顔を隠していたのだろうとため息が出るほど艶っぽい表情が。

土屋太鳳

土屋 太鳳(つちや・たお)
1995年2月3日生まれ、東京都出身。2005年『スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックス』で最年少にして審査員特別賞を受賞。08年に『トウキョウソナタ』でスクリーンデビューを果たす。15年、NHK連続テレビ小説『まれ』のヒロイン役で一躍国民的女優に。以降、『青空エール』『PとJK』『兄に愛されすぎて困ってます』『トリガール!』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『となりの怪物くん』『累 -かさね-』『春待つ僕ら』など主演映画多数

お芝居からダンスまで、表現に身を捧げてきた彼女のポテンシャルをまざまざと見せつけられたようだった。現在24歳。主演映画が続々公開される若手筆頭株は、「常に自分自身を更新していきたい」とストイックだ。

今回は、主人公・チャーリーの声を担当した映画『バンブルビー』(大ヒット公開中)のお話とともに、土屋太鳳さんが貫く仕事のポリシーを聞いた。

新しい仕事に挑戦するときに必要なのは強い覚悟と自己研究

世界的大ヒット作品『トランスフォーマー』シリーズの最新作にして、“エピソード・ゼロ”的位置付けにあたる映画『バンブルビー』。舞台は、シリーズ1作目から遡ること20年前。人気キャラクター・バンブルビーのこれまで語られることのなかった過去が明らかになる。

土屋さんが吹き替えを担当したのは、最愛の父と死別し、孤独を抱える少女・チャーリー。ボロボロになったバンブルビーとチャーリーが出会うことで、世界を救う冒険が始まる。

「作品自体はファンタジーな要素もありますけど、私はこの映画を、心に傷を負った者がその傷をどう乗り越えていくか、というドキュメンタリーのようにも感じました」

土屋太鳳

作品を語る言葉にも、オリジナルの感性が光る。土屋さんはそう切り出してから、本作の柱にあるものを自分の言葉で話し始めた。

「父を失ったチャーリーは心に傷を負っていて、普段はそれを隠しながら生きている。そんなチャーリーだからこそ、バンブルビーの負った傷に気付くことができたんだと思いました。傷を負った二人が、心を紡ぎ合わせることで、本来の自分を取り戻す。そのやりとりが本当に微笑ましくて。チャーリーと同じように大切な人を亡くしたり、心に傷を抱えたりしている方がご覧になったときに、きっと前向きになれるストーリーだと思います」

洋画アニメの吹き替えの経験はあるものの、実写映画の吹き替えに挑戦したのは今回が初めて。普段の女優業とは違う、声だけの演技に臨む上で必要だったものは、ある2つのことだ。

「前回吹き替えのお仕事をやってみて、声だけの演技がどれだけ難しいかは実感として分かっていましたし、弟が声優をやっているので、どれだけレベルの高い世界で闘っているのかも私なりに見てきました。しかも、この『バンブルビー』は多くのファンがいらっしゃる人気のシリーズ。お受けするには、相当な覚悟が必要でした」

土屋太鳳

プレッシャーと向き合い、期待に応え、成果を出す。未知の領域に踏み出すために必要なのは、まず覚悟を固めることだと土屋さんは言う。そして、次にすべきは自己研究。日頃から多くの吹き替えを担当する声優の方々との演技の違いは何かを考えた。

「声優さんの吹き替えは、話す言葉は日本語なのに、ちゃんと海外の空気が伝わってくる。きっとその域に到達するにはものすごく努力が必要で。私にはまだまだ経験も技術も足りない。だからこそ、自分がやっていいものか悩んだのですが、私もチャーリーと一緒に戦おうという気持ちでアフレコに臨みました」

日本語の吹き替えでも、きちんと海外の空気感を出す。その目標に向けて、土屋さんは“呼吸”に意識を向けた。

「吹き替えの台詞って、普段の話し言葉と比べてもずっと呼吸が深いんです。例えば『嘘でしょ?』という台詞も、普段ならさらっと『嘘でしょ?』と話すところを、吹き替えでは大きく息を吸ってから、そのまま吐き出すようにして『嘘でしょ?』と言った方が自然に聞こえる。そうした呼吸の違いは、今回すごく意識しました」

また、普段の演技は台詞と台詞の「間」も自分の感情でコントロールできるが、吹き替えはチャーリー役を演じたヘイリー・スタインフェルドに合わせなければいけない。そこでも土屋さんが注目したのは、“呼吸”だった。

「ヘイリーの呼吸に合わせて声を当てていると、自然とチャーリーの気持ちが分かってきて、一緒に感情移入することができました。アフレコでは、ずっとヘイリーと一緒に旅をさせていただているような気持ちでしたね」

モヤモヤとしたネガティブな感情も、ちゃんと因数分解すれば楽になれる

父の死から立ち直れないチャーリーは、家族とも距離を置き、孤立状態。大人になっても傷付くことはたくさんあるけれど、仕事をしている以上、そう塞ぎ込んでばかりはいられない。

誰もが悲しみや失望を何とかなだめすかして生きている。土屋さんは、そういったネガティブな感情とどう向き合い、乗り越えているのだろうか。

「すごく難しいですけど、私の場合は、嫌だなって思った気持ちが本当はどこから来ているのか、マイナスな気持ちの正体を因数分解するようにしています。例えば誰かに何かを言われたとして、その傷付いた気持ちは自分を否定されたからなのか、それとも相手を羨ましく思う気持ちから来たのかで、飲み込み方がまったく変わってくる。漠然とモヤモヤするのではなく、根本にあるものを見極めるだけで、意外と気持ちが楽になったりします

土屋太鳳

確かに、自分の胸の内をざわつかせるものの正体が分かるだけで、対処法も見えてくるし、何だそんなことかと拍子抜けすることもある。ネガティブの迷路は、迷路のままだから苦しいのだ。地図を手に入れたら、何も恐れることはない。

「何よりそうやって自分の気持ちと向き合う時間そのものが大切な気がします。昨日の夜も、そんなことをあれこれ考えながら一人でいっぱい悩みました(笑)。今話していることは決して自分が完璧にできているわけではなくて、そうやってジタバタしながらでも、自分の気持ちをちゃんと因数分解できるようになりたいという、願いでもあるんです」

どんなときもひたむきでいられるのは、常に危機感があるから

土屋さんは、丁寧に、丁寧に、言葉をたぐり寄せるようにして、質問に答える。どんなことにも絶対に手を抜かない。土屋さんのすごいところは、そのひたむきさだ。生真面目過ぎるぐらい、何事にも一生懸命。

これがまだデビューして間もない新人の頃なら、分かる。でも、もう芸能生活も10周年を超えて、いくつもの映画やドラマに主演する立場になった今もなお、土屋さんは変わらずにひたむきなままだ。

キャリアを積めば、どうしたって初心を見失いがち。謙虚であろう、誠実であろうと心に誓っても、ひたむきさの鮮度を保ち続けるのは存外に難しい。土屋さんはなぜそれができるのだろう。そう尋ねると、「どうだろう……」と首を傾げて考えた上で、こちらを見つめ返した。

「“いつでもあると思うな、お花とお仕事”だからですかね(笑)」

土屋太鳳

そう照れ臭そうに頬を綻ばせてから、「母からの言葉なんですけど」と土屋さんは付け加えた。その言葉を聞いて、以前彼女が別のインタビューで、順調なキャリアと対照的に「まだまだ成長は感じられない」と現状の自分を辛口に採点していたことを思い出した。

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「危機感は、常にあります。作品を見ても『何で自分はこうできないんだろう』とか『もっとこうできれば良かった』と思うことばっかりですし。大好きなお仕事をさせていただけることは幸せですが、その一方でこれからどういうふうに生きていくかということはとても考えます」

土屋さんがひたむきなのは、危機感を自覚しているからだ。土屋さん流のロジックで言えば、モヤモヤとした不安や焦りと向き合い、その正体が危機感から来るものだと突き止めたからこそ、打ち勝つためにひたむきさを惜しまない。

「だからこそ、今はもっともっと自分自身を新しく更新していかないといけないって感じています。衣装もメイクもそうですし、どんどん新しい土屋太鳳をつくっていきたいなって」

土屋太鳳

撮影の時に見せた、あの射抜くような大人の眼差しも、今、彼女がどんどん更新している最中だからだ。

「例えば社交ダンスをやってみようとか、タンゴをやってみようとか、今の自分に何が必要か、よく考えて、思いついたものはどんどんトライしたい。今回も、せっかくジャパンプレミアでヘイリーとご一緒させていただけるんだから、少しでも自分の言葉で気持ちを伝えたいなと思って、英語を勉強してみました。そういうちょっとしたことの積み重ねでいいから、自分を更新し続けて、常に新しいものを生み出していけたら」

そう目を輝かせたその日に行われたジャパンプレミアで、土屋さんは堂々と英語でスピーチを披露した。こんなふうにして彼女は自分のできることを広げ、イメージを塗り替えていくのだろう。

危機感こそが、動力源。胸をかすめる危機感に打ち勝つべく、自分を更新させていく貪欲さが、彼女をプロフェッショナルたらしめている。

取材・文/横川良明 撮影/吉永和久


<作品情報>
『バンブルビー』大ヒット公開中
監督:トラヴィス・ナイト『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
原案:クリスティーナ・ホドソン
脚本:クリスティーナ・ホドソン、ケリー・フレモン・クレイグ
製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、ドン・マーフィ、マイケル・ベイ、マーク・ヴァーラディアン
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、ブライアン・ゴールドナー、クリス・プリガム
キャスト:ヘイリー・スタインフェルド(『トゥルー・グリット』、『スウィート17モンスター』)、ジョン・シナ、ジョージ・レンデボーグJr.、ジョン・オーティス、
ジェイソン・ドラッカー、パメラ・アドロン、ステファン・シュナイダー
声の出演:土屋太鳳、志尊淳、ほか
配給:東和ピクチャーズ
公式サイト:bumblebeemovie.jp/
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