「サウナは母であり宇宙」“自分がなかった”女優・清水みさとに「サウナ」という軸ができた理由
「愛」って恋愛だけじゃない――。この特集では、好きで好きでたまらないものがある人たちに、熱烈な“愛”を存分に語ってもらいます。自分の「好き」を深めるヒントや、「好き」を見つけるヒントをもらっちゃおう!
仕事がしんどくても、恋愛で落ち込んでも、それがあれば頑張れる。好きなモノに囲まれたり、好きなコトに打ち込んだりする時間は、リフレッシュや癒しとなって、心を自由にしてくれるもの。
女優・清水みさとさんにとって、サウナはまさにそんな存在。「もともとは“自分がない”タイプだった」という彼女の人生は、サウナという大好きなものに出会ってどう変わったのだろう。
約8年、ほぼ毎日サウナへ。時には1日に2〜3回行くことも
−−清水さんは舞台を中心に女優として活躍する一方、サウナにほぼ毎日通い続けている「サウナー(サウナ愛好家)」としても知られています。本当に毎日通っているんですか?
もちろん! 1日に2~3回行くこともありますし、オフの日にはサウナのはしごもします。
−−1日に2~3回!?
仕事の前後や仕事の合間に行くんですよ。朝ウナ(朝に行くサウナ)はまっさらになって集中力が上がるし、逆に仕事の後は気持ちをリセットできるんです。
仕事の合間は空き時間が限られているから、移動も服を脱ぐのも体を洗うのも分刻みのスケジュール。ずっと動き続けて、サウナ室の中でようやく止まる。体から一気に緊張が抜ける瞬間がすごくいいですね!
いつもありがとうルビーパレス!やっぱり一番朝ウナ(朝サウナ)がすきかもなぁ!朝のサウナ、いいよ〜いいよ〜 pic.twitter.com/IeiO5AXfFt
— 清水みさと (@misato0305) 2019年3月15日
−−もはや“ヘビー・サウナー”ですね(笑)。いつ頃からそんな生活を?
大学1年生の時からなので、約8年になります。サウナに目覚めて以来、サウナを欠かしたことはほぼないですね。
−−歴が長い(笑)。最近は女性の間でもサウナが人気ですが、当時のサウナは「おじさん」の文化ですよね。ハマったきっかけは何だったんでしょう?
ちょっと遡ってお話しますと、私、昔は「自分がない」タイプだったんです。好きなものもこれといってなかったし、高校も大学も、母のオススメの学校の中からあみだくじやサイコロで決めたくらいでした(笑)
−−出身大学は日本大学の映画学科でしたよね? もともと女優を目指していたわけじゃないんですか?
そうなんです。だから入学当初は映画を全然知らなくて。大学の友達はみんな映画が好きで、自分を強く持っている人ばかりだったので、引け目を感じていました。私自身、ちょっと人見知りだったり、人に合わせてしまったりするところがあるので、正直、無理して周りに合わせていましたね。
−−そんな中、どういう流れでサウナに出会ったんでしょうか?
夏休みにダイエットのためにジムに通い始めたんですけど、同じ時間帯に出会ったおばちゃんやおばあちゃんたちと仲良くなって。彼女たちとは自然体で話せたんですよ。それが嬉しくて、ジムのサウナにも一緒についていくようになりました。
そこで、「サウナで温まったら水風呂に入るのよ」って教わって。真似してみたら気持ちがすっごくスッキリして、 嘘みたいにリラックスできたんです!
−−それからすっかりハマってしまった?
サウナだけを目当てに昼も夜も通い、夏休みが終わっても学校からサウナに直行するようになりました(笑)。大学と違って、サウナでは”頑張らない自分”でいられる。おばちゃんの中には映画好きな人もいて、古い映画作品について教えてもらったことが、映画を好きになって女優を目指すきっかけの一つでした!
−−ジム以外のサウナにも通うようになったのは、いつ頃?
大学3年生のころにグラビアのお仕事を始めてからですね。スカウトされて挑戦したものの、私は赤面症なんですよ。人前で水着になることにすごく緊張してしまって。もう一つ、体型維持のために、むくみを残さないように「サウナで老廃物を出さなければ!」と思ったことも、サウナ通いがエスカレートしたきっかけです。
仕事帰りに立ち寄れそうなサウナを調べ、気に入ったところに通い続け……すっかり「サウナに行かないと無理!」な状態になってました(笑)
「湯」ピアス!念願!オーダーメイド!かわいい!
東京帰ってきて、さっそく駒の湯!さすがのわがホームサウナ!心おちつく〜
6月は、ひたすら、あたふた、がさがさ、ばだばたしてますがサウナとともにがんばる! pic.twitter.com/vhkWQ5tVbG— 清水みさと (@misato0305) 2019年6月15日
頭がパカーン! サウナは豊かな時間を与えてくれる
−−なぜそこまで好きになったんでしょう? サウナのどんなところが好きなんですか?
うーん、何でだろう……。私にとっては歯磨きするのと同じくらい、サウナに行くのが当たり前なんですよね。毎日いろんなことがあるけれど、サウナに行くと全部ゼロになるんです。頭がパカーンとなって、モヤモヤしてた気持ちもスッキリ晴れて、空っぽになれるというか。
−−パカーンとなって、スッキリ晴れて、空っぽに………?
閉ざされたサウナ室の中には外からの余計な情報が入ってこないので、無になれるんです。ただそこにいるだけで自分の心と向き合える。みんなすっぽんぽんで、生まれたままの姿ですから、人の目を気にすることもありません。
そうやって高温の室内でバーッと汗をかき、ファーッとなってから、冷たい水風呂にザバッと入る。すると、今度は頭がワーッとなります。その一連の流れを繰り返すうち、体も心も、全てが解放されていくんですよ!
−−バーッときて、ファーとなって、ワーッとなる……。解脱できちゃいそうですね(笑)
そう! そうなんですよ! 日頃、外を歩いているだけでもいろんな余分なものが入ってきてると思うんですが、サウナを出る頃には、汗と一緒に全部抜けるんです。
私、つらいことがあった時には、誰もいないサウナ室で、「うえーん!」って言うんです。そうすると涙がどんどん出てきて、自然に声を上げて泣けちゃう。その時の開放感がめっちゃ最高です!
−−汗と涙と一緒に、つらい気持ちや悲しい気持ちが放出される、と。
サウナは、すごく豊かな時間を与えてくれると感じます。サウナ室の中では考え事をすることが多いんですけど、普段の生活の中だと、余計なことまであれこれ考えて思い悩みやすいんです。でも、サウナ室の中だと素になれる。
そして水風呂に入ると、不思議と自然に顔が上に向いて、気持ちまで前向きになれるというか。無駄なものが全部削ぎ落とされるので、日頃、どれだけ肩に力が入っていたのかがよく分かりますね。
ユラユラしがちだった自分に、サウナという一本の軸が通った
−−サウナとの出会いは、清水さんの仕事や人生にどんな影響を与えていると思いますか?
サウナがなかったら、今の自分はなかったかもしれないです。グラビアをやっていた頃、インタビューで趣味を聞かれて、初めて「サウナが好き」と話したんですよ。そうしたら、「面白いからもっと発信した方がいいよ」って言われて。当時は、女性サウナーがほとんどいなかったんです。
それでTwitterでつぶやくようになったら、『サ道』というサウナ漫画を描いているタナカカツキさんと対談することになり、そこからサウナ関連イベント出演などに広がっていきました。
#サウナの日 だもんな。
やっぱり載せなきゃな。
サウナイキタイポスターを草加健康センターさんで撮影したものです。みなさんどこのサウナでトトノイましたか?わたしはこれからです。
サウナ水風呂外気浴👼 pic.twitter.com/WkomBjPRpZ— 清水みさと (@misato0305) 2019年3月7日
−−大好きなサウナから、仕事の幅が広がった?
お仕事が広がったこと以上に、「私はこれが好きなんだ!」って胸を張って言えるものができたことが大きかったです。「サウナが好き」と心から言えることは、私にとってのアイデンティティなのかもしれません。
それまでは、やりたいことや好きなものがしっかりある人に引け目を感じていて、心のどこかでずっと、「私も何か探さなきゃいけない」って思っていたんですよ。
−−「これが好き」と言えるものができたことで、自分の中に軸ができたんですね。
サウナは人から勧められたわけでも、探そうと思って出会ったものでもない。でも、自分にとってすごく大事で大好きなものだし、サウナについてだったら初対面の人にも緊張しないでいくらでも話せる。そんな自然な自分でいられることが、すごく居心地良いんです。ユラユラしがちだった自分に、一本の軸が通ったのを感じますね。
−−もしかして、グラビアをやめて女優を目指したのも、サウナのおかげ?
そうですね。グラビアの仕事も誇りを持ってやっていましたが、自分の意思でその道を選んだわけじゃないんだなと気付いたんです。
私は自分の意思があまりなくて、ずっとフワフワしてきたけれど、大好きなサウナがあるっていうことは、つまり「自分」がちゃんとあるってこと。そう思ったら、子どもの頃みたいにすごくワクワクした気持ちになれて。その時に本当の意味で自由になれたというか。
「誰かみたいになりたい」とか、「スカウトされたから」ではなく、本当に自分がやりたいことをやろうと思えるようになったのは、サウナのおかげです。
−−働く女性の中には、以前の清水さんと同じように「私はこれが好き!」って胸を張れるものがないことに引け目を感じている人もいると思います。どうすれば清水さんのように、大好きなものと出会えるんでしょう?
私の場合は無理するのをやめたことで、「そうか、私はサウナが好きなんだ」と気付けたんだと思います。「特別な何かを見つけないと」って意識でいる時って、感覚が閉ざされてしまうから、何をしてもスッと入ってこなくなる気がするんです。一生懸命になればなるほど、自分にとって大切なものが見えなくなってしまうというか。
だから「無理に探さなくても、まぁいっか」くらいの気持ちで、変に意識せず、素のままでいる方が見つかるのかなと思います。友達や世間が良しとすることや流行にのってみても、自分が興味なければ、無理して合わせるだけになってしまうんですよね。
−−無理して何かを好きになろうとするのではなくて、興味のままに素で楽しんだ結果、「好き」に気付けるわけですね。
今となっては、かつての自分に「大丈夫だよ」って言ってあげたいです。考え過ぎず、人の目を気にせず、居心地の良い方に進んでいったら、私はサウナに出会えて、自分自身が大きく変われた。素直に心地良い方に向かっていけば、きっと何か好きなことが見つかるだろうし、そこから自然体の自分が見えてくるんだと思います。
−−では最後に、清水さんにとってのサウナを一言で表すと?
うーん……母であり、宇宙でしょうか。胎内に還っているような感覚になれるんですよね。サウナの代わりになるものなんてないし、サウナがない人生なんて考えられないです(笑)
清水さんオススメのサウナ
私は昔ながらの銭湯のサウナが好きなんですが、常連さんが多く、ローカルルールがあったりするので、最初は気軽に楽しめるスーパー銭湯から挑戦するのがいいと思います。私はサウナでいっぱい汗をかいて肌が強くなったおかげで、普段はほぼノーメイク。末端冷え性もやわらいだし、女性にとってうれしい効果がたくさんありますよ!
■「湯けむりの庄」
「平日1200円、土日1400円で入浴できてお手頃。おしゃれで、天然温泉もあります」(清水さん)
■「スカイスパYOKOHAMA」
「夜景が一望できて素敵。入浴料は2000円前後と少し高めですが、スチームサウナでアウフグース(アロマの香りを楽しむサウナプログラム)も楽しめます」(清水さん)
*入り方のポイント1
湯船に浸かって、体を軽く拭いてからサウナに入るのがオススメ。熱で肌が乾燥してしまうのを防げるし、体を拭いた方が汗が出やすくなります。“汗玉”をぜひ楽しんでくださいね!
*入り方のポイント2
汗玉が出てきたら、軽く汗を流してから水風呂に入りましょう。最初は勇気がいるかもしれませんが、水風呂まで入ってこそサウナ! 死にませんから、大丈夫です!(笑)
*入り方のポイント3
一人で行く場合は体育座りをするとじっくり考え事ができますし、あぐらをかくと無になれます。サウナ室の中で一人でじっとしているのがつらい人は、お友達と一緒に行くといいですよ。誰かとしゃべっていると気が紛れます。
取材・文/上野真理子 編集/天野夏海 写真提供/サウナイキタイ
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