大事な決断はLOVEに基づいて下す「自分にも、周囲にも、いっぱい愛を注ごう」【Change.orgハリス鈴木絵美】

これから進む道、20代でどう決める?
「私の未来」の見つけ方

今、女性の働き方・生き方は多種多様。何でも自由に選べるって素敵だけど、だからこそ、何を選択し、どこに進めばいいのか悩んでしまう。「私らしい未来」は一体、どの道の先にあるんだろう……?
そこで今回Woman type編集部では、さまざまな女性たちに聞いてみました。「私らしい未来」、みんなはどうやって見つけたの!?

来るAI時代、「やりたいこと」や「好きなこと」を大事にする働き方が大事だと言うけれど、一体自分には何があるんだろう。一生懸命働いてきたけれど、どうにも「やりたいこと」が見つからない。だって、自分の欲求よりも、周りの期待に応える方がこれまでずっと大事だったから……。

私も、20代の頃は周りの期待に応えたいっていう気持ちだけで、自分のキャリアを決めてしまっていました

そう明かしてくれたのは、日本にインターネット署名運動という新たな動きを根付かせた、オンライン署名サイト『Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)』のアジア・ディレクターを務めるハリス鈴木絵美さん。

世界有数の大手コンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーに新卒入社した鈴木さんは、激務で体を壊し、入社2年目で同社を退職。半年間のリハビリ生活を経て、その後は職を転々とすることに。

ただ、今こうして溌剌とした笑顔を見せる鈴木さんからは、不安や迷いは一切感じられない。20代~30代、鈴木さんにはどんな変化があったんだろう? キャリアの転機と、この先も働き続ける上で大事にすべきだと思うことを聞いた。

鈴木ハリス絵美

Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)
アジア・ディレクター
ハリス鈴木絵美さん

1983年生まれ。イェール大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに就職。2008年、オバマ元大統領の選挙運動にボランティアとして参加。その後、ソーシャルインキュベーター企業Purposeの立ち上げに参画し、2012年にオンライン署名サイトChange.org 日本代表就任。2015年よりインド、インドネシア、日本、タイを束ねるアジアディレクターに就任

「恐怖」によってする選択は
決して人を幸せにはしない

以前読んだ本に、「人は“LOVE(愛)”か“FEAR(恐怖)”で人生の大事な選択をしている」ということが書かれていました。それを見て私、「なるほどな」って思ったんですよ。

今思えば、私は20代のころ、「恐怖」からいろいろな選択をしていたように思います。

例えば、就職がそうでした。金融や、コンサルティング業界の仕事にすごく興味があったわけではなかったけれど、勉強は一生懸命してきたし、親にがっかりされるのが怖かったから、“一流”と呼ばれる企業に入らなくちゃ! て思っていました。そこに自分の意思はなくて、ただ、他人の期待に応えたかっただけ。偏差値の高い大学に行って、有名な企業で働いて……そういう私だから、皆が評価してくれるんだって思い込んでいたんですね。

でも、体を壊してマッキンゼーを辞めて、それは間違いだったと気付きました。リハビリ期間中も家族や友人は私をすごく大事にしてくれたし、自分自身も「不幸だ」と感じることはなかったんです。「なんだ、レールから外れるのってたいしたことないじゃん」、そう思えるようになったら、心の重荷も軽くなり、生きることがだいぶ楽になっていきました。

そこからですね、自分が心から愛を注げる「何か」を本気で見つけようと、動き出すことができたのは。

自分が諦めなければ
失敗はこの世に存在しない

鈴木ハリス絵美

それまで「やりたいこと」なんて真剣に考えたことがなかったので、いろいろな仕事を経験してみて、そこから「自分だけの何か」を探していくことにしました。結果的に、20代では5回も転職を経験したし、1年に3回転職した年もありましたけど、トライアルアンドエラーの中でようやくたどり着いたのがChange.orgの仕事です。

オンライン署名という手法で世の中の課題を解決していくChange.orgの取り組みは、まさに私の「やりたいこと」とフィットしていて、世界へのLOVEに溢れていました。過去にコンサルティングファームで働いていた経験や、オバマ大統領の選挙にボランティアで参加した経験も生かすことができ、「ここしかない」と感じられたのを覚えています。

ただ、せっかく入ったマッキンゼーを辞めてしまったことを、失敗や挫折と思う人もいるかもしれませんね。でも、これだけは言いたい。何が幸せで、何が正しかったかは、結局自分にしか決められないこと。だから、他人の声は一切気にしなくて大丈夫。地位や名誉なんて気にせずに、自分が深い愛を持ちながら働き続けられそうな道を、突き進めばいいんです。

でも、そう言われたって、20代の皆さんが急に「わが道」を進んでいけるようにはならないとも思っています。私だって今はこんな風にお話をしていますが、30代になった今だからこそ、こうやって自分の経験を省みることができているのですから。

まずは行動あるのみ。自分の感性に響くものを探すために、「いいな」「面白そうだな」と思うものには恐れずチャレンジしてみましょう。失敗を恐れる必要なんてありません。そもそも、この世に失敗なんてものは存在しませんから。どんな選択をしたとしても、生きている限りオールOK。あなたの経験のすべてが、これからの人生の糧になっていくはずです。

仕事を続ける上で大事なのは
やっぱり「愛」ですよ

鈴木ハリス絵美

今を生きる20代は、将来のことを考えるだけで不安なことがいっぱいありますよね。「老後に備えてお金をいっぱい貯めておかなくちゃ」とか、「いつ会社が潰れるとも分からないから、なるべく安定した会社に入らなくちゃ」とか、はたまた「稼いでくれそうな人と結婚しなくちゃ……」とか、そんな声を聞くことがたまにあります。不安定な時代だからこそ、損得勘定で自分が進むべき道を決めたくなってしまうのも分かります。

そして、この先AI時代がやってきて、「機械が人の仕事を奪う」なんてことも言われたりしますよね。どこまで現実的な話かは誰にも分からないけれど、未来をやたらと恐れる必要はないと私は断言しておきたい。

というのも、この世界から無くなってしまう職業も実際にはあるかもしれないけれど、それと同時に、新しい仕事が生まれるのが世の常だからです。そして、今までやってきた仕事の「質」が変わることもあると思いますが、それは喜ばしいことではないでしょうか。 

例えば、医師の仕事だったら、「診断する」っていう仕事はAIに任せて、患者さんの心のケアとか、愛情を持って人に寄り添うっていうことがよりいっそう重要な仕事になるはず。それは、本来人間がやるべきだったことに集中できる時がきているとも言い換えられます。

そして、どんな未来がやってきたとしても、人が働き続ける上で大事にしていかなければいけないのは、やっぱり「LOVE」ですよ。だって、「あぁ、有名な企業で働けて良かった」とか、「いっぱいお金が稼げて良かった」って言いながら人生最後の時を迎えたい人はいないですよね?

どれだけ自分の家族・恋人・友人たちを愛し、彼らからも愛されたのか。どれだけ仕事を通じて他者に愛を与え、幸せにできたか。どれだけ自分で自分を大事にし、愛してあげられたか……。それが人生のすべてだと思います。

取材・文/石川 香苗子 撮影/吉山泰義 企画・編集/栗原千明(編集部)

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