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OCT/2019

日程管理もビジネスメールもできません「でも、彼氏に認められたくて社長やってます」メンヘラテクノロジー高桑蘭佳に聞く、仕事と恋の両立

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職場に“恋愛のこと”を持ち込むのはご法度――。そんな職場はいまだ多いはず。恋愛がうまくいかなくて仕事にも支障が出たりすれば、「公私混同するな」と怒られてしまいそう。でも、恋が仕事の原動力になることだってあるはず。彼女を見ていると、そんな確信が湧いてくる。

高桑蘭佳さん――通称“らんらん”。メタリックな金色の髪にあどけない顔立ちからは想像もつかないけれど、彼女はれっきとした会社経営者。でも彼女が本当にすごいのは、単に経営者だからじゃない。会社の名前は、株式会社メンヘラテクノロジー。

起業のきっかけは、「大好きな彼氏と四六時中一緒にいるには、彼氏が営む会社の社外取締役に就けばいい」とひらめいたことから。その実績づくりのため、彼女は会社を立ち上げた。

メンヘラテクノロジー高桑蘭佳さん
株式会社メンヘラテクノロジー 代表取締役社長
高桑蘭佳(たかくわ・らんか)さん

1994年生まれ。石川県出身。神奈川大学工学部に進学後、現在の彼氏と交際開始。彼氏に認めてもらうため、2018年、株式会社メンヘラテクノロジーを設立。現在、東京工業大学の大学院生として研究に励みながら、「幸せに病める世界をつくる」を理念に、病んだときに相談できる相手と安心感を提供するサービス『メンヘラせんぱい』や、歩いた距離で愛情を表現するアプリ『愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きなので歩く』など個性的なサービスを続々とリリースしている
Twitter: @pascarrr

寂しがり屋の病み体質で、恋愛依存。仕事にとってはマイナスでしかないハンデさえ武器に変える異色の経営者に、私たちは“もっと自由でいい”と教えてもらった。

「金髪にしとけば、彼氏が浮気したか分かるかなって」

編集部

高桑さんはご自身のことを「メンヘラ」(※)だと公言されていますよね。最近メンヘラ的なことをしたなと思ったのは……?

高桑さん

彼氏が仕事終わりに麻雀に行くんですけど、よくその雀荘の前で待っていたりします……。

※「心に何かしらの問題を抱えている人」というような意味合いで用いられている通俗的な表現(インターネットスラング)

編集部

行動を監視するタイプの人なんですね。

高桑さん

とにかく彼氏に会えないのが寂しくて。側にいてくれると落ち着くんですけど……。

編集部

そもそも会社をつくったきっかけも彼氏なんですよね。

高桑さん

はい。「彼氏に認めてもらいたい」という気持ちだけで起業しました。

編集部

外見はちょっとパンクな感じですが、性格は内向的?

高桑さん

はい。全然喋れないです。

メンヘラテクノロジー高桑蘭佳さん
ささやくような声で話す高桑さん。インタビュー中、声はずっと小さいままだった
編集部

自分に自信がないタイプですか?

高桑さん

全然なくて。本当、私なんて本当に消えた方がいいと思っています。

編集部

そんなこと言わないで(笑)

高桑さん

自分に自信がない分、唯一私のことを認めてくれる彼氏の存在がすごく大きくて。だから、彼氏に認めてもらえないと余計不安になるんです。

編集部

じゃあ、彼氏から褒めてもらえることがモチベーションに?

高桑さん

はい。会社のこととかいつも報告して、褒めてもらって、それで何とか続けています。

私に限らず、メンヘラの子は承認欲求をこじらせている子が多くて。髪の色も、最初はこういう色をしていたら興味を持ってもらえるかなというところから始まりました。

今は、家に落ちている髪の毛の色で彼氏が浮気したかどうか分かるので、この色にしています。

編集部

ちなみに、今のところ違う色の髪の毛は……?

高桑さん

落ちていないです。

編集部

ほっとしました。

「彼氏に認められたい」働く原動力はたった一つ

編集部

メンヘラテクノロジーはどんなサービスを展開しているんですか?

高桑さん

今、主力でやっているのは『メンヘラせんぱい』です。

病んだときにチャットで相談できるサービスなんですけど、もともと彼氏がいなかったときに、病むと私は友達に鬼LINEするクセがあって。彼氏や友達の代わりにかまってくれる人をつくれたらいいなと思って立ち上げました。

編集部

自分の病み体質をサービスに生かしているところがすごい。経営者になったことでこれまでとは違う承認欲求の満たされ方をしているところってありますか?

高桑さん

アイデアに関して褒められることが増えたんで、そこはちょっと自信を持てるようになりました。でも、褒められているのはあくまでアイデアであって、自分自身はクソだなって思っているので、あんまり変わらないですかね。

編集部

事業の出発点は「彼氏に認められたい」という超私的願望からでしたけど、この1年経営をやってみて、事業を育てる意義は変わりました? たとえば、もっと社会貢献に目が向くようになったとか。

高桑さん

いや、そこも変わらないです。苦しんでいるメンヘラの子たちを助けてあげられたらいいなとは思いますけど、モチベーションとしてはまだ全然薄いというか……。

編集部

あくまで、「働く意義」は「彼氏に認められること」なんですね。

高桑さん

ですね。ちょっと言いづらいですけど、私はあんまり「働くこと」に社会的意義とか、立派な大義とか、大それたものはいらないかなって思っています。ピンと来ないというか、「世界平和のために」とか言っている人を見ると、「絶対に嘘だろ」って思っちゃいます。

メンヘラテクノロジー高桑蘭佳さん
「ただ、自分の経験がないだけなので、そういうものがないと事業は続かないのかもしれませんけどね。まだ分かりません」(高桑さん)
編集部

正直だ。

高桑さん

もちろん社会が悪くなるものや、人を傷付けるものをつくったりするのはダメだと思うんですけど、良くなるものを生み出しているのであれば、それ以上は別に……。

やっぱり、私のモチベーションはただ一つで「彼氏に認めてもらうこと」。それだけです。

編集部

ブレない。そんなふうにモチベーションが明確だからこそのメリットってあります?

高桑さん

今、ちょうど資金調達を頑張っているんですけど、しんどいことが多くて、辞めたくなることはいっぱいあります。それでも辞めないのは、このまま彼氏に何も認めさせられないまま終わる方が悔しいから。そこはモチベーションがはっきりしている分、強いのかもしれない。

編集部

おそらくなんですけど、折衝とかプレゼンとか得意じゃないですよね。

高桑さん

苦手です……、めっちゃ嫌です……、もう辞めたい……。

編集部

経営をやってみることで、研究やエンジニアリングをやっていた時には味わえなかった感動を味わえることも……?

高桑さん

ほとんどないです。嫌でしょうがないっていう感じです。

「家族のため」はOKで、「彼氏のため」だと何でダメなの?

編集部

日本って公私を分けなさいっていうカルチャーも根強いじゃないですか。高桑さんが会社経営をする動機に眉をひそめる人も中にはいますよね?

高桑さん

いますね。よく彼氏にフラれたら事業を続けるのかっていうことも聞かれます。

編集部

実際どうするんですか?

高桑さん

たぶん続けないです。

編集部

正直すぎる。

高桑さん

だから、投資家の方からしたらすごくリスクなんだと思います。私が彼氏と別れるかどうかって誰にもコントロールできない問題だから。

編集部

確かに、それはリスクと捉えられてしまいますね。

メンヘラテクノロジー高桑蘭佳さん
高桑さん

そうです。そういうリスクを抱えているのは事実だし、だからあれこれ言われるのは仕方ないのかなって。

でも、逆に同じメンヘラの子たちからは、自分のメンヘラ気質を仕事に還元する視点はなかったって驚かれたり、真似したいって喜んでもらえたりしていますね。だから、もちろん公私を分けたいという人がいてもいいし、否定はしないんですけど、同じように私みたいに仕事とプライベートがごちゃまぜになっている人もいていいと思う

両方いていいんじゃないかなって思います。

編集部

結婚すると家庭が仕事のモチベーションになるのは正当だし立派って言われるのに、なぜ恋愛の段階だと彼氏や彼女がモチベーションになったりすると眉をひそめられちゃうんでしょうね。

高桑さん

変だなとは思います。職場に奥さんを連れて行くのはOKなのに、彼女を連れて行くと「何アノ人」って言われちゃいますよね。

でも、中には、「社員旅行に彼女や彼氏を連れてきていいよ」っていう会社もあるみたいで、私の友人の会社がそうでした。支えてもらう人は大事だし、その人に自分の仕事や職場のことを理解してもらうのも大事だからって。それはすごくいいなと思って。

もっと家族とか恋愛とか関係なく、プライベートも認めてもらえるようになったらいいのにとは感じますね。

編集部

おそらく職場で困るのは、恋愛感情の浮き沈みで、仕事に支障が出ることですよね。ちなみに、高桑さんは気持ちの浮き沈みは……?

高桑さん

すごくあります。

編集部

ですよね。

メンヘラテクノロジー高桑蘭佳さん
笑ってくれたのでちょっとうれしい
高桑さん

彼氏と喧嘩したら、もう仕事もやりたくなくなります。

編集部

それ、どうやって復活するんですか?

高桑さん

Twitterにグチを書いたり、友達に話したり、あとはひたすら寝ます。で、最後は彼氏に「許して」って言って仲直りをしてもらう。

編集部

感情のコントロールをできるようになるのが大人とはいえ、したくてもできない人もいますしね。

高桑さん

だから、そういうときは強制的に休めたらいいですよね。私みたいに浮き沈みが激しい人って、沈んでいるときは本当に使いものにならないんで。それをどうにかしろって言われても、無理なんです……。

でも、調子がいいときは、すごいパフォーマンスを発揮したりもするので、そこで挽回すればいいかなと。そういうタイプの人もいるって、認めてもらえるとうれしいですね……。

完璧は無理。苦手なことは「人にお任せしたい」

編集部

高桑さんみたいに、気持ちの浮き沈みが激しかったり、得意と苦手が極端だったりする人はいっぱいいると思います。そういう人が社会でうまくやっていくにはどうすればいいでしょう?

高桑さん

苦手なことや分からないことは、人に頼ったらいいと思います。無理に、全部できるようにならなくてもいいんじゃないでしょうか? 私、人に頼るのはすごく得意なんです。できないことや分からないことがあると、すぐ人に甘えます。

編集部

できないことって、たとえば何ですか?

高桑さん

電話、メールの返信、日程管理、プレゼン、ミーティングの仕切り役。そういうものは、できる限り、得意な人に全部やってもらいます。メールもどう返していいか分からないものは全部彼氏に読んでもらって、返事を書いてもらっています。

編集部

潔い。で、自分の得意なことに全能力をつぎ込む。

高桑さん

そうですね。そこはちゃんとやる。

編集部

自分の強みってすぐに見つけられました?

高桑さん

いや、すぐではなかったと思います……。ただ、大学の先生にすごい褒めてくれる人がいて。

私、プログラミングがめちゃくちゃできるわけじゃないんですけど、研究のアイデアが良いって褒めてもらって。そこで「アイデアを考えるのは得意かな」って思えるようになったんです。だから、私みたいに苦手なことが多い人は、とにかく褒めてくれる人の側にいることが大事だと思います。

メンヘラテクノロジー高桑蘭佳さん
編集部

逆に否定してくる人は避けた方がいい?

高桑さん

そうとも限らなくて。私は自分を否定してくる人に対するイライラで、自分に火が付くタイプでもあるので。それこそ、もっと前は彼氏の仕事関係の人が私のことをすごいディスってきて。「何であんなのと付き合っているんだ」って。そういう人と会うと、「いつか見返す」「認めさせてやる」って思えるんですよね。

編集部

褒めてくれる人と、否定してくる人、両方必要ってことですね。仕事をしていると、いろいろなタイプの人とも付き合わないといけないから大変ですよね。

高桑さん

はい、すごくつらいです……。

編集部

でも、そんな高桑さんがこんなふうに世の中に注目してもらえるぐらい頑張れているのはなぜ?

高桑さん

彼氏がいるからです。

編集部

ブレない。ちなみに、彼氏のどこが好きなんですか?

高桑さん

顔です。

編集部

最高です。ありがとうございました!

取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太

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