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OCT/2019

「私、失敗しないので」人気ドラマ『ドクターX』大門未知子の生みの親が歩んできた“失敗だらけ”の会社員人生【テレビ朝日プロデューサー内山聖子さん】

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「私、失敗しないので」――この、名台詞を生んだテレビ朝日の人気ドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(以下、『ドクターX』)。本作の主人公は、米倉涼子さん演じるフリーランスの外科医、大門未知子。大学病院の医局に属さず、ちょっと怪しい医師紹介所「神原名医紹介所」に所属しながら、さまざまな病院を渡り歩く切れ者の医師だ。

ドクターX
テレビ朝日提供

このドラマの生みの親、テレビ朝日ドラマ制作部エグゼクティブプロデューサーの内山聖子さんは、「彼女と私は大違い。私の人生は失敗だらけです」と、微笑む。

今や“ヒットメーカー”と呼ばれることも増えた内山さんだが、過去を振り返れば「自分が企画したドラマが打ち切りになってしまったこともあるし、大コケした経験ばかり」だと話す。

成功体験なんて邪魔なくらい」というのが彼女の持論。世の中は、効率や生産性を重視する声が高まり、若者が失敗しにくくなっているということも言われているが、“失敗できない時代”に、良い失敗を重ねて自分の糧にしていくためにはどうしたらいいのだろうか……? 「私、失敗だらけですから」そう明かす内山さんの話に、耳を傾けてみよう。

ドクターX 内山聖子 プロデューサー
株式会社テレビ朝日
総合編成局 ドラマ制作部 エグゼクティブプロデューサー
内山聖子さん

1988年テレビ朝日入社。秘書室に配属された後、ドラマ部へ異動。最初に手掛けた『Missダイヤモンド』は視聴率が振るわず、APへ降格。その後『イタズラなkiss』などのプロデュースを手掛ける。代表作に『つぐみへ…~小さな命を忘れない~』『松本清張 黒革の手帖』他。2012年より『ドクターX』シリーズのプロデュースを手掛ける

視聴率が良ければOK? 何が成功で失敗か、問い直す時が来ている

私がテレビ朝日に入社したのは、今から約30年前。記念受験したらなぜか内定をいただいてしまい、最初は秘書課に配属されました。「テレビ局にも秘書がいるのかぁ」なんてのん気に思っていたくらい、何も知らない若者でした(笑)。そこから、ドラマ制作部に移り、ずっとドラマづくりに携わっています。

90年代は、今のようにインターネットもなければ、番組をヒットさせる「型」のようなものもなく、全てが手探りの時代。ドラマ制作も、若手が失敗することは折り込み済みで、「とにかくチャレンジしてみろ」という感じでした。

だけど、今はどうでしょうね。これはあくまで私の一意見ですが、テレビ局全体が、過去の成功体験に縛られて大胆な企画が出せずにいるような気がしています。

最近は、世界中の成功事例、失敗事例に容易にアクセスできるようになり、「失敗しない」ことを選べるようになってきました。番組づくりの現場で働く人たちも、失敗しなそうな無難な企画を何となくチョイスしがち。テレビ局も企業ですから、お金を無駄にするような失敗ばかりできないのは当然なのですが、大きな冒険をしなくなっているのでは? そんな印象です。

でも、テレビ局に限らず、あらゆる会社が「何が成功で、何が失敗なのか」、そこから問い直す時に来ているのかもしれませんね。

例えば、当社のプロデューサー貴島彩理(29)が手掛けたドラマ『おっさんずラブ』は、視聴率だけなら社内的には大失敗だったと思います。

ドクターX 内山聖子 プロデューサー
©2019「劇場版おっさんずラブ」製作委員会

ところが、SNSから火がついて、ものすごい勢いでコアなファンが増え、爆発的に人気が広がっていきました。Twitterでは「おっさんずラブ」のキーワードで世界トレンド1位も取っています。

ドクターX 内山聖子 プロデューサー
©2019「劇場版おっさんずラブ」製作委員会

これも新しい形の成功で、だからこそ、劇場版や続編の製作が決まっていきました。何が失敗かは正直なところ分からない、だからとにかく夢中で「やってみる」。そんな良い事例になったと個人的には感じます。

肝いりの初担当ドラマが打ち切りに……

さて、どうすれば若手の皆さんが「良い失敗体験」が積めるのか、ですよね。これは、私の経験を元にお話していきたいと思います。

私がテレビ朝日に入社して初めてプロデューサーとして手掛けた連続ドラマは、『Missダイヤモンド』(1995)という作品でした。結果は大失敗。自分がやりたいと言って企画を通した作品だったのに、視聴率が伸びず途中で打ち切りになってしまいました。

社内では「ミスったダイヤモンドだな」なんて先輩たちにからかわれたりもしたものです。しかも、ドラマが途中で打ち切りになるとなれば、出演してくれた役者さんたちの所属事務所なども巻き込む大迷惑な事態。菓子折りを持って事務所を訪問して歩き、とにかく謝り倒しました。

もちろん当時はすごくつらかったし、傷付きもしました。せっかくプロデューサーになったばかりだったのに、AP(アシスタントプロデューサー)に降格もしましたから。でも、「自分がやった失敗だし」と正面から受け止めて、「またアシスタントとして学び直せるなんてラッキーじゃん」くらいの気持ちで、次のドラマづくりに取り組んでいたような気がします。

再度プロデューサーになってから挑んだ連続ドラマ『独身3!!』(2003)を担当した時も、痛い失敗を経験しました。映画『銀魂』などでもお馴染み、今ではヒットメーカーと名高い福田雄一監督が、初めてテレビドラマの脚本を手掛けたのがこの作品です。

当時、構成作家だった福田さんの作品を見て、「この人なら良いコメディーが書けそうだ」と思って私が口説き落としたんです。ところが、視聴率は平均して6.7%と散々……。金曜ナイトドラマという枠での放送だったのですが、その枠の中では過去最低の視聴率でした。

「何でこうなったのか」ずっと考えていましたが、思い返すと、『独身3!!』は作り手の意思がバラバラで、コミュニケーション齟齬が多かったなと。私の作りたいもの、脚本家が書きたいもの、撮影者が撮りたいもの、全部が噛み合っていなかった。面白いものができなくて当然だったと猛省しました。

でも、これらの失敗経験が今の自分をつくってくれたし、私自身もちょっとやそっとのことでは折れないくらい強くなれた。「自分が失敗しました」って正直に言って、とことん落ち込んで、そこから逃げ出さないことが唯一“失敗体験”を自分の糧にできた理由だと思います。

「問題から逃げないで」失敗したときの対処法は新人もベテランも一緒

「私、失敗しないので」――そんな人、絶対いませんよ(笑)。先ほどお話した私の失敗だって、ごく一部ですから。50代になって、“エグゼクティブプロデューサー”なんて偉そうな肩書きがついた今もそうです。

『ドクターX』は、次の放送(2019年10月17日)でシーズン6に突入します。

ドクターX 内山聖子 プロデューサー
テレビ朝日提供

シーズン1ではたった数名のチームでつくっていた『ドクターX』も、今では200人以上の人が関わる大所帯のチームに。20代、30代の部下もチームにはたくさんいて活躍してくれています。

ドクターX 内山聖子 プロデューサー
テレビ朝日提供

でも、私から見ると毎日楽しそうに働いていた子が、いきなり仕事を辞めてしまうことが過去に何度かありました。そんな時は、「私は一体何を見ていたんだ……」と自分にがっかりしますし、管理職失格じゃないかって落ち込んだりもしました。

でも、新人でもベテランでも、失敗したときにどうすればいいのか、対処法は基本的に一緒ですね。素直に「私、失敗しました」と自分の非を認めて、潔く迷惑をかけた方には謝ること。絶対に言い訳せず、他の人のせいにしないこと。そして、ちゃんと傷付くことも大事です。「失敗したけど全然自分は傷付いていません」という人がいるなら、それはまだ心のどこかで他責にしている証拠かもしれません。

失敗して傷付いたことって、面白おかしく人に語ったりしているうちに、いつか癒えてくるものです。一時は大ダメージに思えても、その問題から目をそむけて逃げ出しさえしなければ、それがあなたの「生き様」や「強さ」になるし、必ず癒える。それに、若者がした失敗を、いつまでも気にして恨むような大人もそういませんよ。だから大丈夫。大胆に挑戦して大コケして傷付いて、また前に進んで笑っていけばいいと思います。

作り手が熱狂している企画は、どんな成功につながるか分からない

冒頭で、番組づくりの現場全体が「無難」に走りがちだという話をしました。でも、大成功する若手って、絶対に“無茶なこと”をするものなんですよ(笑)。逆に言えば、無難に、失敗せずに……と思っている人のところに“大ヒット”は絶対にやってこない。

貴島(彩理)もそうですが、成功する子は「これをやりたい」っていう企画を、かなりの熱量で伝えてきてくれます。一度や二度、企画をボツにされてもめげずに、数年かけてブラッシュアップし続けた企画を「これなら絶対面白いから」って言いながら持ってきてくれるんです。

時には、若手が持ってきてくれた企画を見て、「これは失敗するかも」って思うこともありますが、作り手の熱量が異常なものは、どんなカタチの成功につながるか分かりません。だから、「やりたい」という気持ちにはできるだけ応えたい。「失敗するかどうかはさておき、無難なものより大胆なものを持ってきて」って若手には伝えていきたいですね。

ここまで、「失敗してなんぼ」というお話をしてきました。こんなに失敗だらけの私も、テレビ朝日に入社してもう30年以上。楽なことはほとんどなかったけれど、ここまで長く働き続けてこられた理由を振り返ると、私が他者からの評価をあまり気にしなかったことも大きかったです。

ドクターX 内山聖子 プロデューサー
テレビ朝日提供

『ドクターX』のシリーズ1が大ヒットして、いろいろな賞をいただきました。それは確かにうれしかったのですが、私は何より「ドラマをつくること」自体が楽しかった。他者からの評価はあったりなかったりするけれど、ドラマづくりが好きで楽しいという気持ちは今も変わりません。だから、夢中になって働いています。

何が幸せか、何が楽しいのか、決められるのは自分だけ。そんな自分の軸がしっかりしていれば、多少の失敗なんかにはへこたれず、仕事を続けていけるはず。そう思います。

取材・文/石川香苗子 企画・編集/栗原千明(編集部) 

書籍情報 『私、失敗ばかりなので:へこたれない仕事術』(新潮社)

『私、失敗ばかりなので:へこたれない仕事術』(新潮社)
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ドラマ情報

木曜ドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)
2019年10月17日(木)スタート!【毎週木曜】よる9:00放送!
>>オフィシャルサイト

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