『おっさんずラブ』視聴熱ランキングでぶっちぎり1位! プロデューサー貴島彩理が貫く「トレンドに流されない」信念
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Webサイト『ザ テレビジョン』が独自に調査・集計する「視聴熱ランキング」でぶっちぎりの首位を記録するなど大フィーバーを巻き起こしたドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日)。
この春を象徴するモンスタードラマの産みの親は、28歳のプロデューサー・貴島彩理さん。一見するとアンタッチャブルな題材のはずが、どうしてこれだけ広く受け入れられたのか。貴島さんの言葉から、“何かあれば即炎上”のこの時代に、多くの人から愛されるコンテンツをつくるために必要なことが見えてきた。
観終わった後は、ハッピーな気分になるものを。「ドラマくらいは夢を見させて」
――『おっさんずラブ』はタイトル通り、男性同士の恋愛が描かれます。今、LGBTに関する話題が至るところで広まっていて、題材としては非常にセンシティブなものでもありますよね。このデリケートな題材を扱うことに対する懸念はなかったのでしょうか。
――『おっさんずラブ』はタイトル通り、男性同士の恋愛が描かれます。今、LGBTに関する話題が至るところで広まっていて、題材としては非常にセンシティブなものでもありますよね。このデリケートな題材を扱うことに対する懸念はなかったのでしょうか。
「誰かを傷つけるためにドラマを作っているのではない」という想いはずっとありました。特に去年ごろから段々『弟の夫』(NHKプレミアムドラマ)や『隣の家族は青く見える』(フジテレビ)など、LGBTを扱ったドラマも増えて、その渦中で『おっさんずラブ』の放送が決まって。特にこのタイミングでと意図していたわけではないのですが、世の中の関心が高まっている今だからこそ、より純粋にまっすぐドラマ作りに挑まなければと、単発ドラマの頃以上に強く意識するようにはなりました。
――その意識は、具体的に作品づくりのどんな部分に現れていると思いますか?
あくまで私個人の考えで、知識も豊富でない中、語るのもおこがましいと思うのですが……、そもそもあまり同性同士の恋愛をタブーだとか、思っていないんだと思います。異性同士が恋をするように、同性同士が恋をすることもごく普通にあるんじゃない? と。それは決して私に限ったことではなく、私の世代やそれ以降の人たちって、世間が思っている以上にもっとフラットなんじゃないかなぁと。
だから自然に『おっさんずラブ』に出てくる人間たちも、同じ世界観で生きているのかもしれません。春田と牧が付き合っているとカミングアウトしても、天空不動産の人は“この2人、付き合ってるんだ!”って驚く。それは社内恋愛が発覚した時、周りがキャーってなるのと同じ。牧の父親が実家へのあいさつで怒るのも、春田が男性だからではなく、“大事な娘が彼氏を連れてきた時”に巻き起こる、世の父親が取るであろう当たり前のリアクションを切り取ったホームドラマというか……。
――そこに男女は関係ないわけですね。
あくまでやりたいことは恋愛ドラマだから、ラブストーリーとしてまっすぐつくることを大切にしました。その上で、もしこの作品が日本の皆さんに面白いと感じてもらえたり、誰かの心の中をすこし変えられたなら、それは嬉しいこと。そういうドラマになればいいね、という話は途中から圭さんともよく話していて。最終話は、そんな気持ちも込めてつくりました。
――今は少し表現が行き過ぎると、すぐにバッシングされる時代です。テレビに限らず、企画一つ立てるのにも細やかな配慮が必要ですが、貴島さんが大事にされていたのは「誰も傷つけない」ということなんですか?
単純に私は、ドラマを観てハッピーになりたいタイプなんです。現実世界で生きていると、優しい人や頑張っている人ほど損をしたりするけど、それでも頑張っていればいつかは報われるかもって信じたいじゃないですか。だから、ドラマくらいは夢を見させてっ! て(笑)。疲れて家に帰ってきた人たちに「あ~明日もちょっとだけ頑張ろうかなぁ」って思ってもらえたら幸せだなと思って、日々ドラマづくりに向かっています。
――その考え方はすごく今日的だなと思います。今はネットでも悪意の方が拡散されやすい。でも、そんな世の中に皆、少し心がカサカサしていると思うんです。皆が幸せになれるものをつくる、というのは、これからのあらゆるものづくりにおいて重要なことではないかと。
うーん、なぜ『おっさんずラブ』がこんなに反響を頂けているのか、自分でも実は全然分かっていなくて……。何でしょう。きっと、日本が思っていたよりずっと良い国で、皆が良い人なんじゃないかって思いますね(笑)。
初回を放送する前は、題材も題材ですし、「攻めてる」とか「笑いものにしているんじゃないか」というご意見もあって、私たちのやりたいことは伝わらないかもしれないと不安を感じたこともありました。
でも、ちょうど3、4話あたりから「恋がしたくなった」とか「恋愛に性別や年齢は関係ない」というご意見をたくさんいただくようになって。SNSを見ても、皆さんの声が温かくて、そこには優しい世界が広がっていたというか。そういう風にドラマを一緒に作ってくれたキャストやスタッフにはいくら感謝してもしきれないし、反響を受け止めながら、「まだまだ日本は捨てたもんじゃないね」と、圭さんと鋼太郎さんともよく話していました。
トレンドにはおもねらない。自分が観たいものを信じて、つくり続ける
――そういう意味で恐らくターニングポイントになったのは第2話のクライマックス、牧が春田のおでこにキスをする場面だと思います。あれを観て、多くの人が王道の恋愛ドラマとしての感動を覚えたのではないかと。
そうですね。春田が牧を走って探すところとか、恋愛ドラマの定番の流れですよね(笑)。
――この『おっさんずラブ』は月9的な王道の恋愛ドラマを目指したと他のインタビューでおっしゃっていましたが、むしろ今は1話完結の職業ドラマが全盛で、月9的なものは流行らないのがテレビドラマのセオリー。トレンドを逆行しているようにも見えます。
そうですね。でも、どんなに数字に現れなくても「恋愛ドラマはなくなっていいジャンルじゃない」という思いがあって。私は学生時代に月9のような恋愛ドラマに夢中になって憧れて、だからこの仕事を選びました。まだまだ未熟者で、正直ドラマのセオリーも何もわからないけれど、迷ったときは“自分はこんなドラマが観たい”という気持ちが、きっと視聴者と一緒だ、と信じて作るしかなかっただけです。もちろん、自分が視聴者とズレてしまったら終わりですが……。
『おっさんずラブ』の前は『オトナ高校』(テレビ朝日)というドラマをつくっていたのですが、あの時も学園ドラマがなくなってほしくないという想いがあって。その上で、じゃあどうやったら観てもらえるんだろうと考えた末に生まれたのが、“性経験がない30歳以上の大人たちが、今更学校に入学させられて青春をやり直す”というアイデアでした。
――そこが貴島さんのプロデューサーとしての強みにも見えます。『おっさんずラブ』しかり『オトナ高校』しかり、正統派のジャンルにエッジの立った切り口をミックスするというのは意識をされているんですか?
いや、私はいつも真面目にやっているつもりなのですが、周りから「また変な企画を立てて」って言われてしまいます……(笑)。
多様化が進む時代だからこそ、必要なのは普遍的であること
――今、「テレビのオワコン化」という言葉もよく見かけます。そういった中で、20代のご自身は、これからのテレビについてどう考えていますか?
視聴の方法はどんどん多様化していますし、今後いろんな指標は変わっていくのかなとも思いますが、テレビそのものが終わることはないと私は信じています。テレビは小さな子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、誰もが無料で楽しめるもの。私自身、以前ちょっと入院をしたときに何もやることがなくて、もう毎日ずーっとテレビが心の支えで、一番嬉しい差し入れはテレビカードでしたから(笑)。多様化が進む時代だからこそ、誰もが楽しめるものとして、テレビがあり続けたらいいなと思っています。
――そういう意味でも『おっさんずラブ』は誰もが楽しめるドラマだと思います。最終回が終わり、改めてこの作品が深く愛された理由を分析するなら、どこにあると思いますか?
“人を愛するとは、どういうことなのか? ”というのが『おっさんずラブ』のテーマ。若い世代もぶちあたる問いだし、きっと何十歳になっても答えは出ない。設定は突飛に感じる部分もあるかもしれませんが、題材は恥ずかしいくらい普遍的だからこそ、皆さんが共感したり応援してくださっているのかなぁ、と。
先ほども申し上げたとおり、でも、ここまでの反響というのは想定していなかったので、むしろこの結果に一番ビックリしているのは、私です(笑)。温かい日本の皆さまに、今一度、感謝申し上げたいです。
取材・文/横川良明 撮影/栗原千明(編集部)
(C)テレビ朝日
>>【おっさんずラブ】の舞台裏、貴島彩理プロデューサーが明かす――「『あげないよ』は遣都さんのアドリブです」
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【発売日】 2018年10月5日(金)
【価格】 Blu-ray 21,600円+税(5枚組)/DVD 17,100円+税(5枚組)
【特典映像】 『おっさんずラブ2016』など
【発売元】 株式会社テレビ朝日
【販売元】 TCエンタテインメント株式会社
※レンタルも同時スタート。(※レンタルはDVDのみ、特典映像ディスクなしの4枚組となります)
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